9月13日(火)14:00
「ねー先輩」
「なにかな二ノ宮くん」
「文化祭の展示用の写真、なんで全部猫になってるんですか」
「……かわいいからかな」
「いやいや。もっと他にも写真撮ってたし、先週はいろいろプリントしてたじゃないですか。どこいったんですかあれ」
「いや。なんかもう、いいかなって」
「なんか、先輩の展示スペースだけ完全に猫写真展になってるじゃないですか。しかも全部同じ猫だし。いや、かわいいですよ。かわいいんですけどね。猫で攻めるなら、せめてもう何種類か別の猫も撮るとか」
「まあ、昨日たまたま見かけた猫を、延々と撮り続けただけだからね」
「衝動的すぎる」
やっぱダメかな。同じ猫ではあるけど、一応、構図は全部違うのを選んだんだけどな。連写したせいで同じような写真がめっちゃ撮れたからね。そこはちゃんと考えて選んだよ?
「写真部員が多くて、一人一人の展示枚数が少ないならまあ、それでもいいかもしれないですけどね。うち、人数少ないせいで、一人がけっこうな枚数の写真を出さないといけないじゃないですか。なのにそれが全部同じ猫っていうのは、さすがにどうかと思うんですけど……」
「そうだねぇ……。近所の犬とかも撮ってくればよかったかな」
「あくまで生き物縛りなんですか? 先週プリントしてたやつはボツ?」
「うーん。特にこだわりがあるわけでもないけど……」
デジカメを起動して、猫より前に撮った写真を順番に眺めてみる。そもそも私、これまで何撮ったっけ。別に深く考えて撮ってるわけでもないから、あんま覚えてないや。
「あー。トンボの写真とか、蝉の写真とかあるよ」
「まさかの昆虫。え、でも、トンボは飛ぶの早いのに、綺麗に撮れてますね。いいんじゃないですか、これ」
「本当? 蝉は?」
「蝉は……木と一体化しててちょっとわかりにくいですね」
「わかりにくいか。じゃあこの、人間がこぼした食べ物をせっせと運んでいる蟻とか。それかこっちの、バッタを背中に乗せたバッタとか」
「先輩、地味に面白い写真撮ってますよね」
思えば小さい頃はよく、公園で虫捕りとかしてたような気がするな。今はもう公園に行く機会はないけれど、学校の中庭には意外といろんな生き物がいたりする。別に自分から探しているわけでもないけど、一カ所にとどまって花やら空やら捕ってるだけでも、昆虫が目に飛び込んでくることはよくあるのだ。
「なんかいけそうな気がしてきた。生き物縛り」
「確かにいけそうですね。今度は昆虫展になりそうな感じもしますけど」
「……花や木も生き物だし、その辺の写真も入れとこう」
「それがいいと思います」
「うむ。俺はこの、電線に止まってるスズメの写真が好きだ」
「うわっ、びっくりした。四月一日くん、気配消して近づかないでよ……」
「すまん、ついくせで」
「気配を消すのがくせになることってあります……?」
「まあ、魔王が近くにいれば仕方がない」
「あれ、もしかして気配を消して攻撃するとかそういうあれですか? え、やめてくださいね?」
隣の席の四月一日くんはどうやら気配を消して魔王に近づくくせがあるらしい。




