9月1日(木)12:40
「八木沼さんって、どんな写真撮るの?」
「何急に」
「いや、深い意味はないんだけど。写真部って事実は知ってるけど、実際のところ写真部って何やってるんだろうなって思って。あの二ノ宮が写真撮ってる姿もあんま想像つかないし。いや、八木沼さんの写真を撮ってる姿なら想像つくけど」
「なに!?」
「いやそんな写真撮らせてないから」
何やってるんだろう、なんて興味持たれてもな。ホントに写真撮ってるだけなんだけど。五十嵐くんだって、将棋部って何やってるのって聞かれたところで、将棋やってるとしか言えないでしょ。つまりそういうことだよ。
「まあ、野に咲く花を撮ったり、流れる雲を撮ったり、天を仰いでぼーっとしたり、躍動する生き物を撮ったり、その辺の無機物を撮ったり、フィルムで撮影したり、暗室でプリントしたり。そんな普通のことしかやってないよ」
「ほう。フィフィーはいろんなものを撮っているんだな」
「いやいやいや。しれっと普通じゃないの混じってる」
「えー。たまにはぼーっとすることだってあるって」
「それじゃない。え、フィルムで撮影すんの? 暗室って、あれ? 暗い部屋で、紙をなんか水にさらして、そうすると写真が浮かび上がってくる、みたいな」
「あー……そうだね。だいたいそんな感じ」
「違うみたいだぞ、アルフィー」
「あ、いや。イメージとしては合ってると思うよ。多分」
ただ、写真のプリントには行程がもっといろいろあるわけで、それを説明するのは少々難しいというかぶっちゃけめんどくさい。私も別にそんな詳しいわけじゃないし。
「暗室でプリントしてると言っても、別に0から10まで全部一人で完璧にやってるとか、そんな凄いのじゃないからね。一応、写真部としてそういう知識は身につけときましょうみたいな、年に数回ある通例行事みたいなもんだから。ほとんどは普通にデジカメ撮影だよ。なんならスマホでも撮るし」
「そうなのか。いやそれでも凄いわ」
「うむ。俺もフィルム撮影は好きだが、さすがに自分でプリントはできない。凄いなフィフィー」
「まあ褒められると悪い気はしないけど。というか四月一日くん、フィルム使うんだ」
「スマホよりは簡単だからな」
「いやスマホの方が圧倒的に簡単だと思うよ」
「お前はデジタルの方が難しいと思い込んでるだけだろ」
隣の席の四月一日くんはどうやらフィルムカメラを使えるらしい。




