8月1日(月)13:00
四月一日くんが語ったフィフィーの治癒能力についてのお話は意外と面白く、うっかり聞き入っちゃったりなんかしちゃったわけだけど。土日を挟んで冷静になると、あ、中二病全開だな……って思った。名前はフィルフィエールで職業はヒーラー。与えられて理解していた情報は正直それだけだったけど、もしかして実は、四月一日くんの中でがっつり設定が作り込まれていたりするんだろうか。なんかいろいろ考えてても不思議はないよな、四月一日くんだし。
もしも壮大な世界観があったりしたらどうしよう。確実についてけない。
「ちなみに、フィフィーが魔族を治癒できるって、どうやって判明したんですか?」
「二ノ宮くん、意外と興味津々だね。まだその話題続けるんだ」
魔王呼ばわりされるのは嫌だろうに、具体的にゲームっぽい設定が出てきたせいでちょっと面白くなっちゃったのかな。でもまあ言われてみれば確かに、人間が魔族の治癒なんてできないのが普通なら、そもそもどうしてやってみようと思ったのか。フィフィーが魔族を治癒したのって、一体どういう状況なのか。気になるといえば気になる。
「この前も言ったとおり、フィフィーは誰に対しても分け隔てなく癒やしを与えていた。そんな心優しい彼女の前に幼い魔族が現れて、目の前でぶっ倒れたりしたらどうすると思う」
「なるほど手を差し伸べたんですね」
「というか幼い魔族とかいるんだ」
「魔族も人間と同じように親から生まれてくるからな」
「私、普通に異形っぽいの想像してたんだけど」
「そうだな。獣みたいなのも確かにいるが、人に近い姿をしたのも少なからずいるぞ」
「……僕、完全に理解しましたよ」
「え?」
「獣にしろ人型にしろ、魔族には黒い羽がついてて飛べるんでしょ。人型は羽さえ隠せば人間と見分けがつかないから、実は人間社会に紛れてたりするんですね。でもその幼い魔族はなんらかの理由で体調を崩していて、魔族の象徴である羽をさらけ出してしまった」
「その通りだが、なんだその突然の理解力は。さては何か思い出したか」
「思い出す……? っていうか、異世界ものではわりとありそうなパターンなので」
「そうなんだ。つまり王道ってこと?」
「はい。四月一日先輩、案外ちゃんとポイント押さえてますよ。ちょっとテンション上がっちゃいました」
「いや、例え王道だとしても、四月一日がそれを知ってるっていうのは意外なんだが。お前、どこから情報仕入れてるんだよ。漫画とか読まないだろ」
「? 俺は事実を話しているだけだが」
隣の席の四月一日くんはどうやら異世界もののポイントをちゃんと押さえてるらしい。




