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7月29日(金)13:00

 夏期特別講座は午前中で終わるけど、そのまま教室で勉強を続ける人もいる。だからあんまり延々と教室で話し続けるのも悪いし、私たちはいつも適当なところで教室を出るわけだが……案の定、五十嵐くんが暑さでダウンしてしまったため、魔王がフィフィーを魔王軍に勧誘していた件についてあまり詳しく聞くことができなかった。いや、詳しくも何も、それが全てなんだろうけど。でもやっぱ気になる。だって。だって。




「フィフィーって、勇者アーロン一行だよね。勇者パーティーにいる人間を、なんで魔王が勧誘するの」

「うむ……」




 二日続いた猛暑日だったが、今日はそこまで気温が上がらなかったおかげで五十嵐くんがダウンしていない。いやまあそれでも真夏日ではあるんだけど。とりあえず35度さえ超えなければ一応、五十嵐くんは大丈夫なようだ。うん。話しの続きをするなら今しかない。




「……フィフィーはいつでも優しく、慈悲深く。ひどい怪我だろうと、どんな難病だろうと。誰に対しても分け隔てなく、その治癒の力で極上の癒やしを人々に与えていた」

「……それはなんというか……さすがヒーラーというか」

「四月一日の主観がだいぶ入ってそうだけどな」

「客観的事実だ。……だが、フィフィーの治癒の力は、俺たちの想像を遙かにしのぐ能力だった」

「……というと?」

「フィフィーの治癒は……魔族にも強い効力を発揮したんだ」

「……ごめん、何が問題なのかわからない」

「僕わかったかも」

「なんでわかるの」

「ゲームとかでよくある設定だと、魔族のエネルギーは負なんですよ。で、治癒は正のエネルギーだから、魔族にかけると逆効果になったりします」

「……魔族は治癒できないってこと?」

「うむ。魔族を治癒できるのは魔族だけ。それも、上位の魔族の中でも一握りにしかできないような高等技術だ」

「……え、なんでフィフィーがそれできるの?」

「フィフィーはどうやら、その能力の高さ故に、治癒する相手によって適切にエネルギー変換をすることができたらしい。正の力は正の力なんだが、相手が魔族ならばそれに見合った形に変えられるというか。もちろん、普通の人間にできるような芸当ではない」

「……フィフィー凄いね」

「凄い通り越してやばいな」

「魔王が欲しがるのもわかりますね」

「だから俺は余計に魔王が嫌いになった」

「フィフィーを取られそうになったわけか」

「取られてない」






 隣の席の四月一日くんはどうやらフィフィーを狙う魔王のことが嫌いらしい。

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