7月26日(火)13:00
「終わってないから」
「まだ何も言ってないです」
また宿題が終わったか聞かれそうな気配がしたので、今回は先手を取ってやった。というか、こんなにも宿題が終わったかどうかを気にされるの、人生でも初めてなんだけど。
「私別に、夏休み最終日まで宿題が残ってるようなタイプじゃないからね。どちらかといえば、いつも早く終わらせてる方だからね。今だってちゃんと順調に進めてるからね。二ノ宮くんが異常なだけだからね」
「矢継ぎ早ですね。そして異常とまで言いますか」
「ごめん言葉が悪かった。でも少数派には違いない」
「うーん。他人と同じというのはつまらないので、少数派に属せているならそれは嬉しいことな気がしますね」
「なるほど。二ノ宮くんは皆で赤信号を渡っているのを横目に、誰も知らない地下通路を悠々と通り抜けたいタイプってことか」
「なんか聞いたことあるようで初めて聞くような例えですけど、人と違うことをしたいっていう気持ちは的確に表現されてますね。多分そういうタイプです」
「へー。俺は皆で赤信号を渡っているのを眺めながら、次の横断歩道まで歩くタイプだな」
「自分が被害を被らないようにさり気にその場を離れる感じが五十嵐くんらしいね」
「俺は赤信号を渡っている奴らを斬り伏せるタイプだ」
「うん。知ってた」
「いや斬り伏せるなよ」
「口で注意する前に手が出ちゃうんですか」
四月一日くんは、ルールを破る人のことは許せないんだもんね。だから斬り伏せるなんて言葉が出てきても違和感はなかったりする。でも確かに、口より先に手が出るというのは意外かもしれない。真面目な彼のことだし、うざいくらいに説教でもかましそうな気もするんだけど。
「注意をするなら渡る前だからな。もう渡ってしまっているということはつまり、何を言っても聞く耳を持たなかった奴らということだろう」
「ああ。そういう」
「すでに注意はし終わってる想定なんですね」
「お前そういう想像力抜群だよな」
「む。そう褒めるな。照れる」
「褒めてねーよ」
隣の席の四月一日くんはどうやら赤信号を渡る人たちを斬り伏せるタイプらしい。




