7月21日(木)13:00
今日から夏休みだやっほーい!
とはならないんだなこれが。今日から始まるのは夏休みではない。夏期特別講座である。そう、受験生に夏休みなんてあるわけがないのだ。進学校ならばなおさら。正直、それならいっそ普通に授業続ければいいじゃんって気もするけど、それだと気が滅入りそうなのでやっぱり今の形がベストなのかもしれない。授業だとこんなに早くは帰れないし。
運動部ならがっつり部活をやってるところも多いだろうけど、私のところなんて自由参加だからね。一応、文化祭に向けて写真の準備はしないといけないけど、それだって別に絶対学校に来なければならないわけではない。写真なら、家でも外でもどこでも撮れる。部長や先生に見せる必要があったとしても、それはデータで送ればいい。つまり究極的なことを言ってしまえば、夏休み中は全く部活に行かなくともオッケーということである。もちろん、とか言いつつ結局夏期講座で学校に来ているわけだから、時々は部室に顔を出すかもしれないけど。でもまあ今日はいいや。いいよね。
「じゃあこれから僕の家遊びに来ます?」
「いやなんで?」
夏休みの初日、朝から律儀に部活に出ていたらしい二ノ宮くんは、3年生の夏期講座が終わる頃を見計らってなぜか教室に私を迎えにきた。
「前に、一緒にテレビゲームとかやりましょーって話したじゃないですか」
「いや話したけどさ。だからって本当に行くとは思わないじゃん」
「えー。大丈夫ですよ、親なら仕事でいないので」
「何も大丈夫じゃないな。俺も誘えと言っただろう」
「もー、四月一日先輩、こういうときホント目ざといですよね」
「え、待って。なんでお前らだけで盛り上がってんの。俺も混ぜて」
五十嵐くん、普段は四月一日くんに対してドライなくせに可愛いところもあるな。やっぱ自分の知らないところで遊びの計画されてたら気になるか。いや、計画した覚えはないけど。
「二ノ宮くんの家、いっぱいゲームあるんだって」
「マジか。全然意外じゃないわ」
「だよね」
「……僕そんなにゲーマーに見えます?」
「いや見えない」
「あ、見えないんですね」
二ノ宮くんはどこからどう見ても優等生である。ただ、私たちは二ノ宮くんと関わり、ゲーム好きと知ってしまった。ただそれだけのことだ。
「正直、二ノ宮の家に興味はある。でも初日から遊ぶってどうなんだ。とりあえず宿題終わらせた方がよくね?」
「確かに。早めに終わらせときたいよね」
「まあそうですね。僕もう半分以上は終わってるんで、そんなにはかからないと思いますけど」
「同じく」
「出たよ天才組」
「いや、四月一日先輩とセットにされるのはちょっと」
確かに夏休みの宿題といっても全てを終業式に渡されるわけではないので、早めに解き始めることはできる。もちろん、私だって夏休み前から宿題は始めている。始めているが……それにしたって、もう半分以上終わってるはさすがに早くない?
「まあとにかく、宿題が終わったら遊びに来てくれるってことですね。楽しみです!」
「いや、うん。いいけど」
「そのときは俺も誘え。絶対誘えよ?」
「まあせっかくだし俺も」
隣の席の四月一日くんはどうやら夏休み初日の時点で宿題が半分以上終わっているらしい。




