7月8日(金)16:45
「わーい、八木沼せんぱーいだー!」
「二ノ宮くん。テンション高いね」
「だって久しぶりに先輩に会えましたし。嬉しいに決まってるじゃないですか! 先輩だって僕に会えなくて寂しかったでしょ?」
「え? あ、いや、うん。そうだね」
「えー。返答に気を使ってくれるなら、ちゃんと最初から最後まで気を使ってくださいよ」
あ、返答に気を使うこと自体はいいんだ。本心は別に寂しくないってところを突っ込まれるかと思った。
「いや、というか、会いたかったんなら教室に来ればよかったのでは。二ノ宮くん、気付くと普通に私たちの昼ご飯に混ざってるじゃん」
突然現れては一緒にご飯を食べていくというのを繰り返すうちに、いつの間にか完全に馴染むようになってしまったような気がする。もちろん毎日というわけではないけれど。1年生のくせに堂々と上級生の教室にやってくるなんて、考えてみればなかなかの度胸だよね。
「いやー、期末ありましたし、さすがに自重しましたよ。勉強なんて余裕で、テスト前でも全く焦らないような僕がそばにいると、ちょっとあれでしょ?」
「自分で言うんだ。その通りだけど」
いや、でも本人の口からここまではっきり余裕とか聞くのは初めてか。やっぱこいつ頭いいんだな。テスト前に勉強余裕とか、私も言ってみたいものである。
「まあ、と言いつつも四月一日先輩とはちょくちょく会ってたんですけどね」
「あ、そうなの?」
「もちろん会いたくて会ってたわけではないですけど。朝の駐輪場って、あの人とのエンカウント率が高いんですよ」
「ああ。生徒大会で二ノ宮くんが出した案が採用されたんだっけ?」
「はい。それでよく、四月一日先輩自ら、駐輪場からはみ出している自転車がないかチェックしているみたいです」
「効果のほどは?」
「最初の頃はなかなか変化が無かったですけど、時間をかけてじわじわ効いてきてますね。狭いスペースに無理やり自転車を突っ込むような人は、減ってきたと思います」
「おぉー」
「まあ、案を出したのは僕ですけど、やっぱり四月一日先輩の力が大きいと思います。あの人、本当に律儀に赤紙用意してしつこく貼り続けてるみたいなんで。常習犯には枚数を増やしまくったり、無駄に大きな紙を貼ってみたり。貼られる方からすればかなりうっとうしい嫌がらせですね。もちろん、綺麗に自転車を止めない方が悪いんですけど」
「……うん。さすがは真面目な四月一日くんって感じだね」
隣の席の四月一日くんはどうやら駐輪場からはみ出た自転車に赤紙を貼りまくっているらしい。




