6月27日(月)12:35
期末考査まであと一週間。はあ。しんど。もちろんテストは何だってしんどいけど、期末は一番重い感じがする。だって、期末だし。部活もないし、これはもうお昼ご飯が唯一の楽しみといっても過言ではないかもしれない。まあ、母の手作り弁当は、半分は冷凍食品でできているけれど。でもこれはこれで美味しい。
五十嵐くんは弁当を食べている日とパンを食べている日がある。今日も4限が終わるとすぐにいなくなったようなので、おそらく購買にパンを買いにいっているのだろう。うちの高校に学生食堂というものはないが、校舎から少しだけ外れたところに学食の建物自体は存在している。昔はそこで普通に定食なんかを提供していたらしい。しかし採算がとれないのか衛生面の問題なのかよく知らないけど、今となってはただの食事スペースだ。そして、そここそがパンを売っている場所でもある。
私も母が忙しいときなんかはパンを買いにいくけれど、あそこは昼休みになったとたんにもの凄い人混みになる。漫画とかでよく、パンを買いたい生徒たちが購買に群がって、死にものぐるいの争奪戦になっているような表現がされたりするが、まさにあんな感じだ。給食を食べていたような頃は、そういうのを見て、ちょっと大げさすぎでは……なんて思ったこともある。でも高校に入ってわかった。あれは決して大げさなんかじゃない。
もちろん、何のこだわりもなく、残ったやつでいいやという精神ならば、何かしらのパンは買えるだろう。でも、うちの購買のパンはパン屋が持ってきてくれるという謎のこだわりっぷりでとてもおいしいので、どうせなら好きなものを買いたいところだ。それに、残ったやつなんて悠長なことを思ってのんびりしていては、昼休みの時間なんてあっという間に減っていく。確かに何を買うかも重要だ。でも、どれだけ早く買えるかも重要なのだ。ただただ購買で待ちぼうけて昼休みを消費してしまうなんて、そんなの時間の無駄すぎる。つまり購買が戦争状態になるのは、自然の摂理というわけである。
「限定5個のロイヤルクリームパンとかいうやつゲットした」
「え、すご。というか戻ってくるの早っ」
4限が終わってからまだ5分くらいしか経ってないんだけど。さてはこの人、校内を全力疾走したな。
「限定? そんなものがあるのか」
「ああ、四月一日は購買行かないから知らないか。時々こういうのあるんだよ」
「へえ、購買行ったことないの?」
「一度もないな。しかし限定品があるとはなかなか面白い」
「まあ、普段は俺、あえてこういうの買ったりしないけどな。でもなんかこれ、八木沼さんが好きそうだと思って……はい、半分こ」
「え、本当に? 私、わりと遠慮なくもらうよ? いいの? ありがとう……!」
そうか。いつも四月一日くんのお菓子を喜んで食べているから、こういうの好きそうって思われたわけね。でもそれでわざわざ買ってきてくれるとか、五十嵐くんイケメンかよ……。
「ん……え、やばい。こんな甘くて滑らかでコクがあっておいしすぎるクリーム、初めて食べたんだけど。さすがロイヤル」
「うん。マジでうまいな。これはロイヤルだわ」
「……」
「これに見合う対価なんて、私には用意できない……とりあえず卵焼きあげる。二個あげる」
「お、やった」
「……俺もついに菓子パンに挑戦するときがきたか」
「いやそこ張り合うなよ」
隣の席の四月一日くんはどうやら購買でパンを買ったことがないらしい。




