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6月22日(水)7:30

「おはようございますっ! ああ、フィフィーおはよう」

「おっ、おはよう……ございます」




 びっくりした。四月一日くんが正門に仁王立ちして、とても良い声であいさつ運動をしてた。いや、そういえば風紀委員って確かに、時々こういうことやってたな。今年見るのは初めてだけど、もしかして私、四月一日くんを認知する前からこうやってあいさつはしてたのか。だって四月一日くん、ずっと風紀委員やってるって言ってたもんね。




「……そろそろ登校時間か。俺も戻る。一緒に教室に行こう」

「あ、うん」




 他の風紀委員たちに声をかけ、解散させる四月一日くん。こう見ると、普通にまともな風紀委員長である。後輩からすれば、中身さえ知らなければむしろ、立派で素敵な先輩なのではないだろうか。真面目だし。仕事はできるし。うん、中身さえ知らなければね。いや、そんなことより、やっぱちょっと確認しとこうかな。なんか、気になってきたし。




「……ねえ、あいさつ運動って1年の頃からやってるよね」

「ああ、そうだな」

「私、四月一日くんにあいさつしたことあった?」

「あ……あった」

「やっぱりそうなんだ」




 一瞬言いよどんだものの、小さな声であったと呟いた四月一日くん。その様子はどことなくそわそわしているようにも感じられ、私は何ともいえない気持ちになってしまった。私、どうして同じクラスになるまで四月一日くんのことを認識してなかったんだ。こんなに存在感があるのに。いや、多分、あいさつした瞬間は思ったんだと思うよ。この人、体でかいなとか。声でかいなとか。でもどうせ知らない他人だしってすぐに忘れちゃったんだろうな……。




「最初は、偶然だった」

「ん?」

「高校に入学し、俺の性格にぴったりだと思った風紀委員に立候補。そうしてやってきた、初めてのあいさつ運動の日」

「うん」




 四月一日くんが何か語り出した。私は靴箱で靴を履き替えながら、適当に相づちを打つ。




「目の前を通り過ぎていく生徒たちに、ひたすらおはようございますと繰り返す俺。そのときふと目に止まった、こちらへ向かって歩いてくる、同い年らしき女子生徒」

「うん」

「それは、今まで見たことがないはずの女子生徒だ。しかし、彼女が顔をあげ、俺を視界に捉え、ふわりと微笑みながらあいさつをしてくれたその瞬間……俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。ああ、そうだ。俺はこの人を知っている、と」

「うん……うん?」

「同じクラスにはアルフィーがいた。残念ながらグレースもいた。しかし君はいなかった。でも、ついに見つけた」

「……」

「話しかけたかった。だが、勇気がなかった。……そうして俺は、唯一君とまともに言葉を交わせるこのあいさつ運動の時間が、何よりの楽しみとなったんだ」

「……あ……えっと……うん。そっか」






 隣の席の四月一日くんはどうやら1年の頃から私とあいさつを交わしていたらしい。

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