6月9日(木)12:40
「そういえば、私の友だちも剣道部だわ」
「えっ」
「え?」
「八木沼さん、友だちいるの?」
「……え?」
五十嵐くんが純粋に失礼なこと言ってくるんだけど。いやまあ実際、友だちそんなにいないけど。いやでも、それでも少しくらいはいるよ……多分。
「だって八木沼さん、いつも俺たちといるし」
「私が君たちといるんじゃないよ。君たちが私といるの」
「……一緒じゃね?」
「……一緒か」
結果的には一緒かもしれないけど、気持ち的には違う。気がする。
「まあね。確かにこのクラスでは完全に他の友だち作り損ねたけどね」
「そうか? フィフィーは十分、クラスに馴染んでいるように見えるが」
「そりゃ四月一日くんに比べたらね」
三ヵ月も経てばクラスメイトの顔と名前くらいは覚えるし、会話だってする。でも、友だちかって言われると、ほら。ね。ちょっと違うじゃん。
「いや、でもその剣道部の子は本当に友だちなの。去年のクラスメイトだけど」
「そうなんだ。八木沼さん、最初の頃はずっと一人で昼飯食べてた気がするけど、その子と食べればよかったんじゃないの?」
「……よそのクラス行くの緊張するじゃん」
「まあわかるけど」
「それにその子が新しい友だちと仲良くお弁当を食べてたりしたら、私はどうしていいかわからない」
「なるほど。八木沼さんは人見知り、と」
「クラス替え、ホント嫌い」
「あはは……でも、俺たちとはわりとすんなり話すようになったよな。四月一日が話しかけられなかった長い期間は置いとくとして」
「それは、まあ。二人がこっちを気にかけてるのは気付いてたし」
「気付いてたか」
「自分から話しかけるならハードルは高かっただろうけど、四月一日くんの方から話しかけてくれたし。一応」
「そっか。よかったな、四月一日。ちゃんと自分から話しかけて。じゃないとマジで関われないまま卒業までいくところだったぞ」
「あ、ああ」
「四月一日?」
「いや、その」
「どうかした?」
「フィフィーの友だちって……いや、何でもない」
「?」
隣の席の四月一日くんはどうやら私の友だちのことが気になるらしい。




