6月1日(水)12:45
「頼もおぉ」
「おい何か二ノ宮が道場破りみたいに入ってきたぞ」
五十嵐くんの冷静な突っこみいただきました。何ていうか、1年が単身、3年の教室に喧嘩を売りに来たようである。まあ、四月一日くんが一番後ろの廊下側の席だから、そこまで大げさな感じにはなってないけど。ドアに近くてよかった。
「どうしたの二ノ宮くん」
「あ、八木沼先輩。一緒にご飯食べましょー!」
「え、うん、いいけど」
「おいこら魔王。何でそんな堂々と混ざってくるんだ」
二ノ宮くんは私の前の席から椅子を持ってきて、嬉しそうに隣に座る。いや、いいんだけどね。え、ご飯食べにきただけ?
「……いやいや、さっきの道場破りのテンションはどうした。どう見ても何かある感じだっただろ」
「あ、そうでした。よくぞ聞いてくれました五十嵐先輩」
四月一日くんの机の隅に弁当を置くと、二ノ宮くんはポケットからスマホを取り出す。起動したアプリはお馴染み、モンドテーレだ。そうして彼は、四月一日くんの目の前へとばっと画面を突きだした。
「四月一日先輩。言われた通り、ユーザー名変えましたよ!」
「そうか……はあ。まあ約束は約束だからな。仕方ない。ギルドに招待してやる」
「やったー!」
おっとこれは。もしかして前に言ってた譲歩? 本当に譲歩してあげたの?
「なになに。どんな約束したの」
「四月一日先輩が、僕のユーザー名をネクトに変えたら一緒に遊んでくれるって。もの凄く嫌そうに言われたんですけど、魔王になるよりは全然簡単なので、条件をのみました」
「へえ。かなり拒否反応を示してたわりには、随分ハードル下がったね。というか、何でネクト?」
「さあ。何でですか?」
「? 魔王の名前だが。魔王ネクト」
「……そっか」
「なるほど。じゃあせめて魔王じゃなくて、今度からネクトって呼んでください。そっちの方がマシな気がします」
「まあ、いいだろう」
「いや、普通に二ノ宮って呼んでやれよ」
隣の席の四月一日くんはどうやら二ノ宮くんのことをネクトと呼ぶことにしたらしい。




