5月20日(金)14:30
今日は生徒大会だ。生徒会が活動方針を示し、生徒同士で議論を交わし、学校生活をよりよいものにしていこう、とかいうやつである。全校生徒が体育館に集まって、クラスごとに並んで床に座る。そして生徒会役員たちはステージに椅子や机を並べてスタンバっている。
ちなみに四月一日くんはあっち側だ。そういえば風紀委員長になったとか言ってたもんな。四月一日くんは発言はいろいろとあれだが、真面目には違いないので教師受けはそう悪くはないようだ。もちろん、悪くはないだけでいいわけでもないだろうけど。でも、ほら。真面目なのは本当に事実だから。ルールを破るような奴は許せないとか言ってたし。
それにしても。生徒大会が始まって、役員たちが順番にマイクを握って言葉を発していくわけだけど。四月一日くんの話す声、めっちゃ聞きやすいな。低く、ゆったりとした声に、はきはきとした滑舌。これは聞き流せないし、内容がすんなりと頭に入ってくる。中には喋るのが下手な人もいるっていうか、むしろ聞きづらい喋り方してる人の方が多いっていうのに。普通に凄い。普段の会話だと意味不明な内容の方に気を取られるし、四月一日くんの声がこんなに聞きやすいだなんてこと、全然気付かなかったや。
役員たちの説明が一通り終わると、そこからは質疑応答の時間となる。全校生徒がいるなかで手を上げて質問するなんてなかなかできるものではないが、こういうときに発言したがる人というのは意外といるものだ。何事もなく、しーんとしたまま生徒大会終了、とは案外ならない。
思った通り、ちらほらと手は上がって、いろんな質問が繰り出されていく。図書委員長に対して「蔵書を増やす機会が少なすぎるのではないか」とか、美化委員長に対して「ゴミ出しが面倒」とか、学習委員長に対して「どうして置き勉したらいけないのか」とか。いや凄いね。思ってても普通、そういうこと言えないよ。やっぱりこの生徒大会といういつもとは違う空気が、生徒たちの感情を表に出しやすくしているんだろうか。
そうやって、しばらくはいろんな人たちの言葉を何とはなしに聞いていたのだが、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきたので思わずそちらに顔を向けた。
「風紀委員長に質問です。風紀委員の活動内容に駐輪場の整備がありましたよね。僕は自転車通学なのですが、いつも自転車たちが雑然としていて非常に止めにくいし、景観が悪いです。どうにかなりませんか」
「……駐輪場周辺のゴミ拾い、草むしり。そして並んでいる自転車の整理はうちの委員たちで定期的に行っている。これ以上はどうしようもない。あとは自転車通学の生徒たち一人一人に、意識して綺麗に自転車を止めてもらうしかないな」
答えているのはもちろん四月一日くん。そして質問しているのは私の写真部の後輩、二ノ宮くんであった。まさかの知り合い同士の議論、開幕である。
「その意識をどうやってさせるかって話なんですけど」
「それは……」
「僕はまだ1年ですが、多分何年もずっとこういう状態なんですよね。先輩はこの学校に入学して3年目なわけですけど、改善案とかないんですか」
「む。改善案と言われてもだな。やれることはやっているつもりだが」
……おや? 二ノ宮くん、何だかやけに攻撃的では? どうした?
「例えば、駐車場の白線みたいに、駐輪場も1台1台のスペースをわかりやすく確立するとか。駐輪場自体は広いし、奥まで行けばちゃんと空いているのに、後から来た人が面倒がって近場に無理矢理突っ込むからあんなぐちゃぐちゃになるんですよ」
「た、確かに」
「止めるスペースをはっきり目視できれば、それ以外の場所には心理的に止めにくくなります」
「う、うむ」
「そうして明らかにはみ出してる自転車には赤紙でも貼って取り締まってください」
「くっ……何てことだ……なるほどと思ってしまった……」
「少し考えれば思いつくことです」
「正論だ……敵のくせにまともな意見を……」
「ふふっ。先輩の頭が足りないんですよ」
「くそう……」
え、何。あの二人、知り合いなの? そして敵なの? え、どういう関係?
隣の席の四月一日くんはどうやら私の後輩も敵認定しているらしい。




