4月9日(土)10:00
皆が当然のように四月一日くんのことを知っているような空気が不思議でならない。このままではもやもやするので、去年同じクラスで仲の良かった友だちにメッセージを送ってみた。
『隣の席の男子が異世界転生者だった』
『ああ、四月一日?』
『え、なんでわかるの』
『だって有名人じゃん』
『待って。知らない』
『1年生のとき、クラスの自己紹介で【俺は昔、勇者と旅をしていた。もしかしたらこの世界にも仲間がいるんじゃないかと思っている。できればまた一緒に悪を滅ぼしたい。俺のことを知っているやつは名乗り出てほしい!】ってぶちかましたことは同級生なら誰もが知ってる』
『知らない(知らない)』
『……噂を鵜呑みにしないのはいいことだと思うけど、あんたはそれ以前に知ろうとしなさすぎ。まあ、私は1年のときに四月一日と同じクラスだったから知ってるんだけど』
『あ、同じクラスになったことあるんだ……そういえば、自己紹介で四月一日くんの順番が回ってきたとき、クラスが変な空気になった』
『ほら皆知ってる』
『委員会は迷わず風紀委員を選んでた』
『ずっとやってるもんね。皆知ってる』
『マジか』
四月一日くんが勇者パーティーにいたことは、この高校の3年生にとっては常識のようだ。もちろん、変なことを言っている痛いやつ、という意味で。そして、ずっと風紀委員をやっていることも常識のようである。
隣の席の四月一日くんはどうやら同級生なら誰もが知ってる有名人らしい。