5月17日(火)18:45
私が所属している写真部は大して人気もなく、少人数で小規模に活動している。しかしそれでも不思議と入部が途絶えることはなく、新たに数名の1年生が入ってきてくれた。今年も廃部になることはなさそうで一安心である。しかし、なぜだか入ってきた1年生のうちの一人がやたら私に懐いてくる。理由はさっぱりわからない。何なんだろうこの子。私たち、君が見学にきたあの日が初対面じゃなかったっけ。え、違ったっけ。
「あ、八木沼先輩。最近、モンドテーレ始めたらしいですね」
「なんで知ってるわけ」
「すっごい人気みたいですけど、面白いです? 先輩が始めたなら僕もやってみようかなー」
「ねえ、なんで知ってるわけ」
「実はずっと遊んでたゲームがサ終しちゃって。ちょうど何かいいのないかなって思ってたんですよね」
「ねえ、聞いてる?」
写真部に入部してきた1年生の二ノ宮くん。彼はなぜか初めて会ったときからフレンドリーだった。いや、もしかしたらナメられているだけかもしれないけど。誰に対しても人当たりがいいのかと思えば、写真部の他の上級生に対しては適度な距離感を保っているようでもあるし。私にだけぐいぐい来る理由が本気で謎である。
「もう部活も終わったし、さっそくダウンロード……と言いたいところですけど、そういえば帰りに買い物頼まれてるんでした。今日は親が遅いので」
「あ、そうなんだ。大変だね」
「えへへ。まあ、とにかく今日はこれで帰ります。お疲れ様でした」
「お疲れー」
ちなみに二ノ宮くんとの初対面は彼が部活見学に来たときだけど、私が初めて彼を見たのはもっと前だ。それは4月にあった、1年生との対面式のとき。あのときに新入生代表挨拶をしていた、例のイケメンの彼こそ二ノ宮くんである。成績トップなんていうから勉強ばっかしてるのかと思ったけど、意外とゲーマーらしい。まあ確かに、勉強ができる人ほど趣味が充実しているものなのかもしれない。時間の使い方がうまい的な。
「あ、よかった。まだいた」
「四月一日くん」
私も帰ろうかなと荷物をまとめて外に出ると、どこからか四月一日くんが現れた。手には何だか美味しそうなものをもっている。
「今日はフィナンシェを作ったからいつも通り差し入れようと思ったんだが、一気に大量に作っていたら遅くなってしまってな」
「え、すごい。めっちゃ美味しそう」
「よかったら食べてくれ」
「わーい、ありがとう。あ、でももう皆帰っちゃったよ?」
「フィフィーが食べてくれれば問題ない。いつもお前のために作ってるし」
「そっか……ん?」
いつも? お前のために?
……ん???
「……家庭部の人、時々こうやって差し入れくれるよね」
「家庭部の人というか、俺だが」
「……お菓子を大量生産したときに、いろんな部活に配ってるんじゃないの?」
「写真部にしか持ってきたことないが」
「……私、1年のときから家庭部のお菓子食べてる気がするんだけど」
「1年のときから持ってきてるからな」
隣の席の四月一日くんはどうやら1年の頃から私のために写真部に差し入れしていたらしい。




