5月16日(月)7:35
「ねえ五十嵐くん」
「どうした八木沼さん」
「四月一日くんがアーロンって呼んでる相手って誰なの?」
「残念だけど、俺には心当たりがないよ」
「そうなんだ……勇者アーロン、マジでどこからきたわけ」
昨日。とりあえず招待を受けてギルドに参加してみたものの、ギルドメンバーは思った通り私と五十嵐くんと四月一日くんだけだった。実際にアーロンという人がいるわけではないらしい。もちろん、五十嵐くんが知らないだけという可能性もあるけれど、いやいやそれはないだろうって気持ちの方が強いというのが正直なところだ。四月一日くんの交友関係って狭そうだし、あの五十嵐くんが把握していないとは考えにくい。
ちなみに、この「モンドテーレ」というゲーム内で役職を勇者にすることはもちろんできるようだが、いろいろ条件が厳しくて、実際になるには相当ゲームをやりこまないとダメらしい。さすが勇者である。
「おはよう。何の話だ」
「あ、四月一日くんおはよー。私より遅いなんて珍しい」
「二人のおかげでググるという技を覚えたからゲームの事を調べていたんだが、いろいろ関連記事が出てくるからやめるタイミングがわからなくなってしまった」
「あー、あるあるだね」
「あるあるなのか。今後は気をつけなければな。……で、何の話だ」
「いやほら。アーロンってどこからきたのかなって」
「アーロン……勇者の名前だが」
「いやそれはそうなんだろうけど。学校の誰かとか?」
「学校にはいないな」
「じゃあ、外部?」
「いや、少なくとも俺が生まれてからはまだ出会えていない」
「まだ出会えていない」
「おーい、八木沼さーん。深く考えるなー」
あ、うん。そうだよね。四月一日くんの言葉の意味を深く考えて理解しようとしたらダメだよね。
だって四月一日くんだもん。
隣の席の四月一日くんはどうやらまだ勇者と出会えていないらしい。




