9月27日(火)12:40
今日もなぜか三谷くんが来ている。五人で一つの机を囲むのはさすがに狭すぎるので、私の机を四月一日くんの机にくっつけてみた。四月一日くんはちょっと嬉しそうだったけど、そんなことより昨日の話である。
「それにしても三谷くんって、なんでそんなに二ノ宮くんのこと尊敬してる感じなの? 応援演説もかなり気合入ってたし」
「二ノ宮くんが凄い人間だからですね」
「シンプルな回答きた」
「……あー。四月一日って時々、うちの部に遊びに来たりするんだけどさ」
「え、なんで」
「知らんけど。三谷と顔見知りになったのはそういうわけ」
「ほう」
「それで、俺と四月一日が将棋指してたときに、なんか二ノ宮が写真撮りにきて」
「え、なんで」
「知らんけど」
「いやー。四月一日先輩が将棋指してるのがなんというか、珍しかったので」
「……まあいいや。それで?」
「三谷と二ノ宮が将棋で勝負することになった」
「え、なんで」
「知らんけど」
「いえその。自分も若かったと言いますか」
「高校生は全員若いよ」
「そんで二ノ宮が圧勝した」
「マジか。二ノ宮くんって将棋も強いの? 本当になんでもできるじゃん」
「えへへ」
「そうして将棋部員でもない1年に完敗した三谷は、さぞ悔しがってるかと思えば、気づくと二ノ宮に弟子入り志願していた」
「え、なんで」
「知らんけど」
「二ノ宮くんの強さに感服したんです」
「……五十嵐くんと四月一日くんも、三谷くんより強いんだよね。でも二ノ宮くんにだけ、だいぶ態度ちがくない?」
「そうですね……確かにお二人が強いのは認めます。でも、五十嵐先輩に感じるのはライバル心。そして四月一日先輩に感じるのはそこはかとない苛立ちですね」
「う……ん。まあ言いたいことはわかる気がするけど」
それにしたって、なんで後輩に対してだけこうも敬意を表してるんだ。二ノ宮くんとの将棋が、そんなに凄かったの?
「僕は普通に将棋を指しただけなんで、そんな、凄かったとかはないと思いますけど」
「まあ……二ノ宮くんとの将棋で、他にはない、特別な何かを感じた、と言いますか」
「曖昧だな」
「正直、決定的な何かがあったとかではないんですよ。ただ、自分がそう思ったから、そうだとしか」
「はあ……ルークレインはな……そうなんだよな……」
「え、なに」
「ルークレインだもんな……」
「というかその、ルークレインっていうのは本当になんなんですか」
隣の席の四月一日くんはどうやらルークレインに思うところがあるらしい。




