表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【22万PV突破!】Anemone ~ 君とまたいつの日か。  作者: NexT
#── Capture4.5  Restart! ──#
41/53

#—— 19 ——#

 


 ——私、片瀬君と付き合うことになったから


 ——ごめんね。でも、仕方ないでしょ?  さきに私からすべてを奪ったのは、皆瀬さんのほうなんだから。それに、痛い思いを一方的にするのは不平等でしょ? だから、これでやっと平等になったんだよ


 あの日、あの冬の日、寒い寒い冬空の下、それは亜麻色の髪を靡かせた彼女に言われた言葉。


 ——これで、平等に大切なものを失った


 確かにその通りだった。

 五年前のあの冬の日、皆瀬雪音な存在を失った。たったひとりの、大切で、大事な幼馴染の存在を。

 いつも大切なものほど目も前にあるものだから、当たり前のようにあるものだから、今まで気づけかった。

 あのとき、彼を失ったとき、皆瀬雪音ははじめてその価値の尊さを自覚した。

 でも、それを認識したときには、もうすべてが手遅れだった。


 それでも、雪音は知っている。


 五年という長い歳月をかけてようやくわかったことがある。

 それは、一度失ったものは同じ形には戻らないということ。

 失ったピースは別の何かに補われ、異なった模様を描き出すことができるということ。

 例えそこに、探し求めていた幼馴染の姿がなくても。

 例えそこに、そんな彼と仲慎ましげにじゃれつく女の子がいたとしても。


 そのすべてを差し置いてでも、立ち向かわなければならない人物がいる。


「久しぶりだね、皆瀬さん」


 五年前と変わらない亜麻色の髪は、あのときよりも随分と短くなった。


「五年ぶり、だよね?」


 もともと愛嬌のあった垂れ目は、あの頃よりも随分と大人っぽい魅力に溢れていた。


「私のこと、もう、わかってるよね?」


 モデルのように整ったプロポーションを持つ、元クラスメイトの彼女。


「桜美彩花」


 かつて、雪音から大切な存在を奪い去っていた少女が、五年という時を経て、今、雪音目の前に立っている。あのときと変わらない、ゆったりした微笑を浮かべて。


「そ。正解……と言いたいところだけど、まあ、それはお互いに言いたいことは募ってるよね」


 警戒心を強める雪音の瞳を他所に、彩花は一方的にそう告げる。そして、背後に向ける意味ありげな視線。その先には肩を並べて歩く二人の男女。それだけで彩花が言わんとすることが雪音には伝わった。


「ここで話すと色々と気にちゃうだろうし、まあ、その辺も含めておいおいあっちの方で話そうよ」


 そう言って、立ち竦み警戒する雪音の脇を通り抜け、彩花は公園の出口の方へと向かって歩いて行く。

 本当は、今すぐにでも腹の底から溢れ出す感情をぶつけてやりたい。やりたいけど、今はそのときじゃない。彩花もそれがわかっているからこそ、この提案を持ち出してきたのだろう。


「……」


 視線の先で遠ざかって行く幼馴染の背中を瞳に映し、雪音は後ろ髪を引かれる思いで彩花の背中を追った。

 だから、スマホに届いたLINEの着信音には気づけなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ