噓つきは雨に埋もれる
やはり 人間は嘘つきかもしれないね、君もさ。
僕の事を愛しているかいと聞けば、愛してないと言うし。世界は素敵かいと聞けば、ええ 綺麗よと答える。極めつけはこれだ、死にたくは無いかいと聞けば、まだ死ぬには若すぎるもの と答えた君。
そんな君がいつも朝、僕に美味しいコーヒーとサンドウィッチを用意してくれたんだ。それはそれは嬉しかったね、ぺろりと食べちゃったよ!!
その小鳥のさえずりがひどく耳に残る朝に、こんな話をしたんだ。明日も晴れているらしいから一緒に海へ行こうと。君は言ったよ、満面な笑みで えぇ と。
なのになぜこうなるんだ、君は死んだよ。自らで自分の命を絶ったんだ。
仕事から帰ってきたら、妙に浴槽から水音がして変に思ったんだ。近づいて扉を開けると、浴槽の中に左腕だけが浸っている。右手にはカッターナイフ。
なぜ?
僕は困惑したよ、でも机に置かれていた手紙を見ていたら、その気持ちも薄れたんだ。
君は君のつくった世界だけで生きていたけど、僕の事は愛していてくれたんだね。よく愛しているのか嫌いなのかで、論争になったけど、それは君に聞くのは野暮だったんだ。他人に優しくすることで自分の傷が深まり、とても息苦しかったんだね。笑顔が君を死なせたんだ、そう思ったよ。
(明日はもう雨で良い。)
(世界のすべて 海に 埋もれてしまえ。)