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「ナディア!!」

「……こんにちは、ヒロメニア様」


 お茶を淹れるためには食堂のキッチンに行かなければならない。

 食堂には料理を作る作業員と、学校専属のメイド、そして侍従、侍女として来ている生徒しか入ってはいけない事となっている。


 理由はキッチンでは情報交換が常に行われており学校内で最も噂話が集まる場所でもあるため、『人を率いていく為に学校に通う者が、そのような場所に来てはいけない』というのが表向きの理由である。噂を集める為必要もないのに侍女を学校に連れてくる生徒もいるらしい。


 ナディアはため息を飲み込む。ここに『将来人を率いる人間となる通常の生徒』のヒロメニアが来ていいはずがない。



「ヒロメニア様、ここは通常生徒の方は立ち入り禁止です」

「そんな固いこと言わないで!少しくらいいいじゃない!」

「いいえ、困ります。ルールはお守りください」

「なんで?私も平民みたいなものでしょ?」

「……」



 食堂の作業員と侍女や侍従全員が平民とは限らない。

 この学校は王家が運用しており、料理の研究もされている。料理長は何かの功績を讃えられ男爵位を貰った方が勤めているはずだ。



 それに平民であっても優秀な学生はこの学校に無償で通っている。特別枠のため常に一定の成績を修めなければ退学となってしまう平民の生徒は、ある程度はお金を払えば通える貴族の子供達からも憧れの対象とされているのだ。


 彼らは、自立し、優秀で、特質した技術を持つ者が多く、卒業時には、王家が管轄する特殊機関で勤務できる権利を得る事が確約されている。


 学校に通う間、平民という理由で貴族の子供達から酷い扱いを受けることはない、寧ろ貴族の子供たちは積極的に友達になろうとするだろう。




 この学校の中で『平民』という言葉は自分を貶す為に利用する者は誰一人として居ない。また、貴族として、働く平民を守り、共に協力する事が美徳とされるこの国で光の娘の発言は一番やってはいけない行為であった。


 ただ、ナディアはそこを指摘するほど彼女と親しい間柄ではないと判断している。



「こちらに通う平民の学生もここには立ち入り禁止ですよ。ヒロメニア様」

「ええー!うそー!」



 __ギリリリ


 ふと、横から何かが軋む音がした。

 ナディアがチラリと横を見ると、少し前からお茶を淹れていたソフィーという侍女がポットをぎゅうぎゅうと握っている。

 怒りで顔は赤く、何か発言を我慢しているようだった。


 これはまずい、と思ったナディアは何とか光の娘を外に追い出し、くるりと向きを変えたその瞬間想定よりも低い声が聞こえてくる。



「クソビッチが……」

「ごほっ!!」



 ソフィーはかなり線が細く、陶器のような白い肌を持った可憐な少女であるが、そんな彼女から出た汚い言葉にナディアはつい吹き出してしまった。


 そして、バンッと机を叩き、頬を染め、涙目で訴えてくるソフィーを前にし、求められた言葉を述べない訳にはいくまい。


「な、何かあったの?」

「聞いてよ、あのビッチが!!アレク様をたぶらかしたのよぉぉー!うわぁぁぁーん!」




お読みいただきありがとうございます!!

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