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「もう、本当にひどいですわ!」
「すまないと言っているだろう!私もあれ以上どうしたら良いか分からないんだ!」
目の前で言い争いをしているのは、この国の第一王子であるフレデリックとその婚約者レイリーである。
この2人、常に行動を共にし、挨拶の頬へのキスはもちろん、ハグや、突然の見つめ合い行動を取るほどの熱愛っぷりなのだが、今は少しだけ違うようだ。
その原因が、第一王子の隙をここぞと攻めてくる光の娘にあるようだった。
ナディアは、お嬢様のご友人であるレイリー様とももちろん、第一王子とも何度か顔を合わせたことがあるため、2人の仲の良さは自身で体験している。
以前、お嬢様のお願いでこの2人のパレードの馬車に同行したのだが、にこやかに笑いながら外に手を振りつつ、馬車の中で手を絡めあい愛の言葉を囁き続けていた2人に『バーナーで炙ったらカラメルができますね』と声をかける事を非常に絶えた経験があるのだ。
終始にこやかに過ごしたナディアを、お嬢様ですら褒めてくれた。
その2人に喧嘩をさせるとは、あの光の娘は特別な力でも使っているのではないか。もしわざとであれば才能だ。
「じゃあもう、ずっと一緒にいるしかないわ!」
「それがいい!以前から片時も離れたくはなかったのだ。これを口実にずっと一緒にいよう。こんな事しか考えることが出来ない私を許してくれるかレリー」
「許すわ、フレッド。私の愛しい人……」
ナディアがふと横を見ると、お嬢様は何処かを見つめ、真顔でお茶を飲んでいた。ただそのカップにはすでにお茶は入っておらず、何かを耐えるためにカップを口に運んだようだ。
「砂糖吐きそう」
「お嬢様声に出ております」
「大丈夫よ、あの2人には聞こえていないわ」
確かに、ナディアとお嬢様の存在を忘れ去られているかのように、2人は2人だけの世界に入り込んだらしい。光の娘の力もどうやらここまでのようだ。
お嬢様はいそいそと本を取り出して読み始めてしまった。
「ナディア、お茶淹れてもらえる?砂糖はいらないわ」
「かしこまりました、お嬢様」
ナディアはなるべくゆっくりお茶を淹れてこようと席を立った。
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