6
「……たは…………でなければ……本物の……」
「力を……解放……」
「……世界を……助け……」
誰かが会話をしていた。
声は遠いのか、はたまた近いのか、途中でもやがかかったように聞こえてこない。
男か女かも分からない声はやがて全く聞こえなくなり、ナディアはゆっくりと目を覚ました。
昔から見るその夢は、以前よりも鮮明になっている事をナディアは気がついていたが、今の自分には関係ないと全く気に留めていなかった。
それよりも、この夢の後は酷く頭が重くなり、いつものペースで動けない事実の方が余程深刻であり、ナディアにとっては嫌な夢として認識していたのであった。
「あら、またあの夢でも見たの?」
「はい……申し訳ありません、寮での初日なのに」
「問題ないわ、いつもより距離に余裕があるのだし。ゆっくり準備しなさい」
「ありがとうございます……」
既に何年も見ている夢なので、ナディアはお嬢様へこの夢の事を話していた。仕事に支障を出すつもりはないが、どうしても表情には少し出てしまう。
ある日お嬢様から聞かれたタイミングで、夢の内容と体調不良になると伝えたのだった。
「ああ、でもそうだわ。近いし丁度良いと思って、あなたも授業に出てもらうことにしたから」
「……はぁ、そうですかって……はい!?」
「寮にはハウスメイドがいるから部屋の掃除はやってくれるし、料理も出てくるし……時間余るなら勉強しても良いと思ったの」
「い、いやいや!私勉強なんて!」
「昔一緒に勉強してたし、毎週一緒に課題やってるから大丈夫よ」
「一緒って、お嬢様が私に課題押し付けてただけじゃないですか!」
「だって、見ただけで分かっちゃうんだもの。新しいお勉強した方が得策じゃない」
「くー!これだから勉強できる人は!!」
「あら、元気のいいこと。これなら授業出れるわね」
ほほほと笑うお嬢様を恨めしい目でにらみつつ、ナディアは心の中でお嬢様に対抗できうる内容をかき集める。
いつも唐突に色々な事に巻き込まれてきたが、まさか学校に通う事になるとは聞いていない。
ナディアはゆっくりと結っていたお嬢様の髪を勢いよく纏めると、体で覚えた通りに手を動かした。
あっという間に出来上がる化粧を鏡越しで満足げに眺めるお嬢様に最後の抵抗を試みる。
「試験、受けてませんけど」
「この間の課題、時間計ったわね?」
「……はい」
「従者のウィリアムも同席していたでしょう」
「……はい」
「ウィリアムは教員免許を持っていて、学園に臨時教師として在籍しているの。知っていて?」
そんな事知らないわぁ!!と胸の奥底で叫んだナディアは、無言だが慣れた手つきでお嬢様に制服用のワンピースを着せた。
今日も完璧な仕上がりである。
「ほら、そこに貴方の制服置いてあるから。早く準備なさい」
「……可愛い」
「そうよ、着たいって言ってたし丁度いいわね。さっ、早く」
「ぐぬぬ……」
憧れの制服を前に完全に完敗したナディアは10分で支度を整えるとお嬢様と教室へ向かう事となったのだった。
お読みいただきありがとうございます!!




