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明けましておめでとうございます!
『珍しい光の魔法は授業中に火傷を負った怪我をたちまち治してしまった』
などという光の娘が授業中光の魔法を使っていた事は、噂でよく耳にする事であった。
光の娘の学校での振る舞いには皆疑問に思っているものの、光の魔法を目にする事も滅多にない事もあり、自慢話としてもよく話題に上がっていたのだ。
黒魔術は自分の魔法を犠牲にして使う魔法だから、光の魔法を使っているのだとすれば自身が黒魔術を使えるようになった訳ではないのだろう。
「ヒロメニア様が黒魔術を使ったとは思えないのだけど……」
「光の魔法に人の心を操るような作用はないのですか?」
「うーん、そもそも光の魔法に関する文献が少ないからね。でも、そんな作用があれば皆知っていても良さそうだ」
お嬢様も、婚約者殿も、光の娘本人が何か魔法を使ったとは思っていないみたいだった。
たしかに、光と闇対極にあるその魔力が同じ作用を引き起こすとは普通考えないはずだ。
だが、だからこそ、人を惑わす魔法になり得るのではないかとナディアは思っていた。
ふと横を見ると、いつも口が回るヒュンベルは、じっと黙ったまま何かを考えているようだ。
「ヒュンベル」
「……」
「ヒュンベル!」
「っ……はい、なんでしょうか」
「はは、どうした。ここは我々しか居ないよ」
「あ、ああ……実は、光の魔力が色々な魔法具の媒体として非常に優秀だと、どこかで聞いた事を思い出していたんだ」
だから、咄嗟に侍従としての反応をしてしまったとヒュンベルは顔を赤くしながら答えていた。
ヒュンベルは、コホンと一つ咳をすると説明を始めた。
「光の魔力が媒体となるなら、彼女自身も媒体となるかもしれないだろう」
「闇の魔力を持つ者が別にいるとして……ヒロメニア嬢を媒体として、ヒロメニア嬢の近くのものに闇の魔力をかけられるかもしれないと?」
「まぁ、そんなところだね」
「……」
再び全員が黙り込んだ。
ナディアすら、そんな恐ろしい存在を相手にしていたのかとゾッとする。
もし、ヒュンベルの仮定が成り立つのであれば、光の娘の近くに居るだけでも闇の魔術にかかる可能性があるという事だ。
ナディアは自分を分かっている。
光の娘が言う、『本来のナディア』は、盲目的に光の娘を慕って、自ら望んで闇の魔力を持ったはずだ。
もし、同じような人が現れたら、そして、彼女が望む方向へ無理矢理周りを巻き込もうとしているのであれば、早く闇の魔力の持ち主を見つけなければ大変なことになるだろう。
だが、あくまでも仮説にすぎない。
ナディアの中ではその人物が居るだろうと確信めいた何かがあったが、実際に見たわけでもない。
「ナディア」
「は、はい」
「何か心配ごと?」
「あ……」
ナディアは知らないうちに3人から見つめられていた事に気がついた。
「そんな恐ろしい人を相手にしていたのかと思うと怖くなりまして」
出てきた言葉は、『心配事』を避けたものだった。だが嘘はついていない。
ナディアの言葉にお嬢様は首をかしげ、ヒュンベルは目を細める。ナディアの答えに何かありそうだと2人とも考えていた。
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