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確か、『私のためだけの危険な能力』などと言っていたな。とナディアは思い出していた。
ナディアが倒れてから数日が経過している。
毎日のようにあの日をいくら思い出しても、体調が悪かった記憶もなく、あの光の娘に話しかけられて突然気を失ったとしか考えられなかった。
私のためとは、一体いつ自分の天と地がひっくり返ったのかとナディアは眉を顰めた。
胸くそが悪いあのセリフで自分が倒れた事さえも許し難い。しかもお嬢様の目の前で。
「万死に値するわ!」
しかしお嬢様はナディアの謝罪を受け取ることを拒否し、『無理があれば言うように』とまで言ってきた。
万死に値するものの、数日でも学校が適当に寄越した輩をお嬢様につける事もナディアの中ではあり得なかった。
コーコリア公爵家で育てられた選りすぐりの侍女がお嬢様の世話に付いたところまで見届けねば死んでも死にきれない事だろう。
確かに休日は欲しいものの、それはお嬢様の安全が確保された環境で定期的に会える条件付きでの休日だ。
ナディアはお嬢様の事を宝物のように思っている。
それは当たり前のように植え付けられた感覚でもあるが、唯一の専属侍女として、兄弟のように、親子のように、ナディアはお嬢様の事を想っている。
その感情を無理矢理動かされた感覚だった。
まるで心臓を握りしめて止められそうになったような……。
–コンコン
ナディアは既に病室から出て自室に戻ってきている。
今は夜更けも良い時間、こんな時間にナディアを訪ねてくる人物は今まで誰も居なかった。
「はい?」
「…………」
「あの……」
ナディアの声が聞こえていないのか、ドアの向こう側からは物音一つしない。
あまりにも怪しい様子に、ナディアはゆっくりと椅子から立ち上がりゆっくりとドアまで近づくとドアノブに手をかける。
「……」
その瞬間、ドアの下から紙切れが差し込まれた。
驚いたナディアは、パッと手を上に上げると紙切れを凝視する。
「……これは」
「……アナタシアの事が好き?」
「は……?」
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