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「は?」
それはつい溢れた言葉だった。
光の娘の確信した表情からナディアは身体の芯から底冷えする感覚が支配し、足が止まる。
「私、見えちゃうんだよね。そういうの」
「そういうの……とは」
人差し指を唇につけ、ふふふとこもった笑い声を上げた光の娘は、上目遣いでナディアを見やる。
「黒いやつ」
ビクリと体が跳ねた。
ナディアは手に持ったノートを落とさないように慌てて抱え直す。
黒、とは、黒魔術の事を指しているのだろうか。
「黒って、驚かせるつもりですか。そんな……」
「ふふ……何でそんなに怖がってるの?ナディア」
「……」
嵌められた、とまでは言えないものの、ナディアは自分の言葉を反省した。
ただ黒と言っただけの光の娘に必要以上に反応を見せてしまった。
お嬢様の優秀な侍女としてあってはならぬ失態に、ナディアは唇を噛む。
にやにやとした顔を隠そうともせず、光の娘はジトリとした視線をナディアに向けていた。
自分の能力を披露した事で狼狽したナディアの反応が、あまりにも嬉しかったのだろう。
「ナディア、だめよ。その能力は私のためだけの危険な能力だって教えてあげたじゃない」
ーーぐらり。
ナディアの視界が急にボヤけ、ふらりと体が壁へと流れた。突然襲った立ちくらみのような症状に、ナディアの口から乾いた咳が込み上げる。
頭がガンガンと痛み、意識が浮いた感覚が続いた。
ナディアは息を荒くし、荷物を落とさないようにゆっくりとしゃがみ込む。
「ナディア?」
「お……じょうさ……」
「ナディア!!」
何処からかお嬢様の声が聞こえて、心配しないよう伝える為に出した声は役割を終える前に掻き消え、ナディアはそのまま意識を失った。
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