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大きなあくびを噛み締めて、ナディアはお嬢様の髪の毛を結っていた。目の下には大きな隈がある。
「随分と眠そうね、また夢でも見たのかしら」
「いえ、あ……はい、そうです」
「ナディア、嘘は良くないわよ」
「……申し訳ありません、少し気になることがありまして」
結局、昨日の疑問は解決することは出来なかった。
見たこともない情報を知識として持っているなど、まるで前世を覚えている転生者のようである。ただ、転生者としては普通【物】に対する知識だけ残り、今同じ世界に生きる人間の事を知っているのであれば、自分は転生者としては不適合。
他に、人の趣味嗜好などを把握する為には黒魔術『思考把握』の使用が必要だが……。
「お嬢様、黒魔術って何故使用禁止になったんですか」
「ちょっと、気になることって黒魔術の事なの?」
ナディアの何気ない問いかけに、お嬢様はひどく慌てた様子で振り返った。
既に完成間近だった三つ編みが手から離れたナディアは、お嬢様の様子にビクリと肩を揺らす。
「い、いえ、直接的には違います」
「じゃあ何でその疑問が浮かんだのかしら」
「……心を、読む、魔術は黒魔術だった気がして」
ナディアが調べた限り、黒魔術の使用はかなり前に禁止されており、万が一使用した場合は極刑になるほどの術である。
また、黒魔術は自分の適正魔法を犠牲として使用するため、一度でも使用すれば二度と普通の魔法は使えなくなる。
「……まさか使ってないわよね」
「使いませんよ!命は惜しいですから」
「ふーん……」
「……」
怪しまれていると分かりながらも、黙っていることしかできないナディアだ。
お嬢様はナディアを心配しているはずだった。下手に言葉を告げさせればナディアが牢獄へ入ることだってあり得てしまう。
「何も、悪いことはしておりません」
「そう」
黙ってしまったお嬢様に、ナディアはより丁寧に三つ編みを施してスルリと手から離す。
お嬢様には迷惑をかけたく無い。
その気持ちだけがより大きく広がったことは、ナディアだけが知っていた。
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