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夕方になり自室に戻ってきたナディアは、先日から書き始めたノートを取り出した。既にびっしりと書かれたそのノートを開くと、ナディアはため息をつく。
最近『嫌な予感がする』と感じることが多すぎる。しかも、ヤケに具体的に嫌なイメージが頭に浮かび、その全てに光の娘が存在するのだ。
人の予知夢などは信じないナディアだが、この情報を知っていたにも関わらず事故を防げなかったなどがあれば、自分を許すことが出来なくなるだろう。
ノートには既に、起こり得た可能性がいくつか記されている。
そして、光の娘が声をかけたという生徒達の名前も。
ナディアは何故だか見覚えのあるその名前達を指でなぞった。最近の記憶ではなく、自分の奥底から知っていると告げる記憶。
その中でもやはり、第一王子、お嬢様の婚約者殿、その侍従の名前があまりにも記憶に染み込まれている。
今まで共に過ごしてきたからだけではない。この文字の羅列の中に並ぶその中で、よく選ばれたような記憶があるのだ。
そして、彼らの本来知るはずもない趣味思考が何となく分かってしまう自分に吐き気がする。
ナディアより明らかに身分が高い人達の繊細な情報、ありえないとは思いつつも殆ど間違ってはいないだろうとする不気味な自信。
それら全てがナディアを不安にさせていた。
「私は一体何者なんだろう……?」
誰にも伝わらない言葉は無情にも空気に溶けた。
一体誰がこの問いに答えられるのか。
その部屋に知る者は誰も居なかった。
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