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慌ててお嬢様の場所へ戻ったナディアは、先ほどと変わらない光景にとても安心した。
何故ここまで不安に思ったのか不思議に思ったものの、動揺を隠しつつお茶を提供するためにお嬢様の側へと寄る。
最近、砂糖がなくても深い味わいが楽しめると評判のアールグレイの紅茶をカップに注ぐと、お嬢様が本から顔を上げた。
「いいわね、この紅茶」
「お嬢様の好みはお任せください」
にこりと笑ったお嬢様は、まだ終わらない第一王子とその婚約者のいちゃつきを細い目で見つめると、ため息をついた。きっと、ナディアがお茶を淹れている間ずっとやっていたのだろう。真面目なお嬢様的には以前手本になる市民の前でこの2人の行動はあり得ないと笑顔で語っていたことをナディアは思い出した。
ふとお嬢様の本の中身を読むと、『君主を更生するためには〜』という文章が書いてある。
「……」
第一王子の護衛が迎えに来たタイミングで解散となったお茶会後、お嬢様と一緒に図書館へと向かった。授業終わりに呼び出されるお茶会も大切な仕事と言うお嬢様の顔は少しだけ疲れていた。
「なるほど、ではあの2人はずっと一緒に過ごすようになりそうだね」
「ええ……あのお二人についている侍従と侍女は確か『貴族』の枠として来ているし、きっと私たちが一緒に行動しなければならないわ」
この学校の仕組みとして、侍従、侍女として入る人間は『貴族』の枠と『付き添い生徒』の枠がある。『貴族』の枠で入ることができるのは、もちろん貴族の人間だけ、授業の選択が自由にできることが『付き添い生徒』と違う部分だ。
授業中は教室の内側と外側に護衛の人間が付き、その間に何か事件が起これば学校が責任を持って対応を行うという保証が付いているためにこの2枠が採用されている。
ただ、唯一である国の王子とその婚約者だと少し話が変わってくるのは誰しもが理解できるだろう。事件が起こることを誰かが事前に防がなくてはならないのである。
なぜ第一王子とその婚約者は『付き添い生徒』での侍従と侍女を選択しなかったのか。それは、ナディアのお嬢様とお嬢様の婚約者殿がいるからに他ならない。
「こうなることは分かっていた……あの2人の行動を傍で見るだけだと思えば……」
「わざわざ同じ授業を取らされたので、こうなる可能性は考えていましたが……」
第一王子とその婚約者はほとんど同じ授業を取っているが、一部だけ将来の仕事内容の違いにより必須授業が異なった。授業を2つ違う内容を取る必要があった第一王子とその婚約者は侍従達が同じ授業に入れるよう、その間だけは別れることは仕方ないとしていたのだが、今回の事件により自分たちを優先したことでそれが叶わなくなるらしい。
そんな不親切仕様の必須授業により、それぞれ将来の側近として既に指名されているお嬢様と婚約者殿が側に控える結果となったのだった。
「アナタシア、取らされたなんて言ってはだめだよ」
「そうですわね、申し訳ありません」
「いや……分かるけれどね。私も詳しい皇室の歴史を授業で取る必要はないし、アナタシアも皇室の礼儀作法を授業で取る必要はないだろうから」
他にも数個ある、生徒の見本となるために必須となる授業はお嬢様達にとって、とても簡単な授業だが、将来市民の見本となることも勉強であるとされて別の意味で必須科目となっているらしい。
ここのあたりはナディアは詳しい事情は聞かされていないので分からないが、つまりは、侍従や侍女にはもっと将来役に立つ有意義な勉強をさせたかったのだろうとナディアは思っている。
少し説明が多めだったかもしれません。。
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