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ソフィーは男爵家の娘で、伯爵家の嫡男アレックスと婚約している。2人は恋人とは行かないまでも仲良く過ごしていたらしい。
「私は好きだったけど!あまり近づいたら嫌われちゃうと思って!!」
「うん、うん」
ソフィーは号泣しながらハンカチの端を歯で噛んで手でグッと引っ張った。何処かで見たことのある光景に、まさか現実でもこんな事をする人がいるなんて、と思った気持ちを引っ込め、ナディアはソフィーの背中をさすった。
ナディアは、以前お嬢様に紹介して頂いたアレックス様の事を思い出した。確かに綺麗な顔立ちをしていたかもしれない。
「そしたら、あの、ヒロメニア様が、アレックス様に近づいて、今アレックス様はあの女にメロメロで……!」
「そうなのね」
ざめざめと泣いているソフィーを宥め、また話しを聞くからとお茶の準備を済ませたワゴンを滑らせる。
「…………」
光の娘の行動範囲が広い。一体何人の男性に声をかけたら気が済むのか。
これまでナディアはソフィーの他に3人の生徒達から光の娘の相談を受けていた。内容はどれも、婚約者や恋人が奪われそうだというものだ。
ナディアからすれば、そんな目移りするような男はやめた方が良いと思うのだが当事者達からすればそうも言っていられないのだろう。
少なくとも6人には声をかけ、誘惑をしているのだから騙される男達の目は節穴すぎるとも言える。
ただ、これらが光の娘が何か特別な力によって引き起こしているのであれば……。
ナディアは、何か嫌な予感がして無意識に足を早めていた。
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