知らぬ間に身代わりで死んだので転生させてくれるらしい
僕、御神 奏28歳は・・・・・・
気付いたら何にもない空間にポツンと一人で立っていた。解せぬ?!
いやいやいや・・・僕は確か今日も今日とて営業で忙しく外を駆けずり回っていたはずだ。走っては無いけどね!それは置いておいてだ。
「うーん。朝何時ものように出社して、上司と同僚と報連相をした後で新規で契約してくれた会社に出向いて相手の担当とお話しして・・・そこを出た後上司への連絡を入れてお昼をとった後・・・その後どうしたんだっけ?んんー?あ、そのあと突然腹の辺りに痛みがきてすっごい熱いような感じがしてその後・・・その後どうしたんだ?ん?何だこれ?あれー?俺透けてる?もしかして幽体離脱とか?・・・なんてな~」
「なんてな~じゃなくお主は死んだのだ。幽体だから透けておるのじゃ現実を見るのじゃ」
「は?マジで僕死んだの?え~でも僕は死んだ記憶なんてないんだけど?!って誰?」
「気付くのが遅いのじゃ!!わしは一応お主の居る地球の神じゃ。詳細は省くが、お主は本来死ぬはずではなかったのじゃ。じゃがの~外部からの呪を受けて身代わりで死んでしもうたのじゃ。ここまでは良いか?」
「いやあの・・・良いか悪いかと聞かれれば悪いんですが」
「そうは言ってもの~もう死んでしもうたのでどうにもならないのじゃ・・・諦めとくれ」
「諦めろって言われてハイソウデスカって素直に言える訳ないでしょ?って身代わりって誰の身代わりなんですか?誰かに庇われた覚えも誰かを庇った覚えなんてないんですけど?」
この場所に来る前の事を思い出しても誰かに声をかけられた覚えも誰かに庇われたり誰かを庇った記憶なんてない。通り魔にあった覚えも事故にあった覚えもない。なのに貴方は死にましたと言われて納得できるものではない。それに呪って何だ?呪いとかそういった系?そもそもこの世にあるとか思えない。だとしたら突発事故の方が納得できる。したくないけど。
それなのに目の前にいる自称?神様という喋り方が古臭い?年より臭い?桃色の小花の散った薄い水色のゴスロリっぽい着物を着た黒髪長髪で奇麗な空色の瞳をしたどう見ても幼女は一人頷いてる。何を納得してるんだと突っ込みたい。
「うむうむ。それは仕方がない事なのじゃ。わしとしても本来なら戻してやりたいところじゃがそれも出来んのじゃ。お主は腹からブシャーとスプラッタも真っ青な状況でのぉ・・・あれは即死じゃて」
「・・・・・・・・・はい?どういう事ですか?あの時何か事件でも起きてたんですか?僕にはそんな記憶ないんですが?」
「そうじゃろうのぉ~身代わりと言うたがそれはこの世界、地球で起こった事件の身代わりじゃなくての・・・異世界で起こった事なのじゃ・・・まぁそれはその世界の神から聞くとええ」
は?異世界で起こった事件の身代わり?異世界の神?何が起こってるの?僕はしがない社畜だよ?異世界と繋がってるとか無いから!!何その厨二病設定みたいなの。
「僕は普通のしがない社畜であって異世界とか無関係ですよ?って言うかこれやっぱり夢ですよね~どうやって目を覚ませばいいんですか?」
「ふむ。現実逃避しても事態は変わらんのじゃ。目を覚ましたとて身体は無いのじゃぞ?すでに即死認定されとるからの~それに魂の尾がもう切れとるから身体に戻ることなど出来んのじゃ。それに社畜はしがない普通のとは言わんと思うのじゃが」
「一日の大半・・・朝八時に出社して良ければ午前様悪ければ仮眠とるくらいしか時間が持てないっていうくらい仕事漬けなので普通のしがない社畜としか言いようがないのでそれは諦めてるんです。じゃなくて魂の尾?何ですかそれ?」
グルっと自分を見てみると背中・・・尾てい骨辺りにふよっとした紐のような物が付いていたが先が切れてた。
「これが・・・魂の尾ですか?」
ふよっとした紐のような物を摘まんで聞けば頷かれた。・・・マジか。
「それが身体と魂を結ぶ物での~切れてしまったら戻せんのじゃ。突発的なものはどうにでもできる時があるがお主はそうはいかんのじゃ。それは即死というのもあるが、この世界の出来事の範疇を超えてしまっておるからのぉ・・・これが異世界からの影響でなければどうにかできたのじゃが・・・わしの力不足じゃ許せ」
神という幼女が頭を下げてくるのを見て焦ったのは悪くないだろ?だって小さい子を虐めてるみたいじゃないか。僕にそんな趣味は無い。無いったら無い。断じて無いから。
「いやあの頭を上げてください?異世界の神様ってここにいるんですか?」
「ふむ。許してくれるのか。・・・アヤツはここには居らん。ここはわしの空間じゃからの。今回の事はアヤツの責じゃしの。他の世界への干渉はご法度なのじゃ。それをあやつは・・・他の世界のアレな本を見ておって見逃したとか・・・神の風上にもおけん所業じゃ!!そのせいで何の関係もないお主が死ぬことになったのじゃからの・・・さて、ここまでは理解したかの?」
あ、うん理解したってより聞き捨てならない事があるのだがそれを突っ込んでも仕方ないんだろうが・・・アレな本って何?しかも他の世界のアレな本って?俗にいう薄いヤツとかR指定が付くヤツですか?聞きたいようで聞きたくない。聞いて肯定されたら僕の死の真相、理由がアレな件になってしまう。ここは聞かなかった事にしておく。
「何となく理解したくないけど理解はしました。それで僕はどうなるんですか?このままあの世へと行くという事ですか?」
心残りが無いと言えば嘘になるだろう。両親や祖父母は悲しむだろ現在超反抗期の弟も何だかんだと悲しんでくれる・・・といいな。まぁずっと悲しんで欲しい訳じゃないけど、笑顔で元気でいてくれればいい・・・弟には社畜にだけはなるなと伝えられれば伝えたい伝えられないが。
「普通ならばそうなのじゃが死ぬはずではなかったお主が行く場所がないのじゃ。それにのお主の魂の核には呪によって付かんでいい傷が出来てしもうてな・・・そのままではこちらの世界で転生も難しい・・・で!じゃ。ここからが本題じゃ!
こうなったのもアヤツの怠慢じゃそこで異世界での転生に相成ったのじゃ」
「はい?え・・・?異世界で転生ですか?それ何処のラノベ?!」
「この世界では結構そんな話があちこちで囁かれとるの~わしもよく愛読しておる。面白い展開もあって飽きんの~」
「えぇーそれってそんな展開が見たいから僕を転生させるとかじゃ・・・?」
「見てみたいというのはちょこっとだけあるがそれだけでは無いと言っておくのじゃ。異世界からの呪によって魂の核に傷があってはこの世界で転生出来んのは本当の事じゃからの。この世界で付いた物なら何とかなるがお主に付いている傷は異世界からの呪によるものじゃからこの世界では癒せんのじゃ・・・だからお主が受けた呪の傷を癒すにはその呪が生成された世界で癒すのが一番なのじゃそれにその呪と真逆の性質の力が存在しておるそれによってゆっくり癒されるのが理想じゃ」
「あ、なるほど。そういう理由ですか。ただ見てみたいっていう理由じゃなくてよかったです。それで僕は異世界へ行って転生して魂に付いた傷を癒さなきゃならないってことですか?」
「うむ。理解が早くて助かるぞ。という事であちらの世界へ送る。まぁ向こうの神がキチンと説明してくれるじゃろ・・・わしも出来るだけ見守っとるよ。では達者での~お主があちらの世界で生涯を終えて戻ってくるのを楽しみにしとるぞ」
そう言った神様・・・幼女が手を翳すとグニャリと空間が歪んだ。次の瞬間目の前には土下座をしたゲッソリと窶れた顔色の悪いイケメンがいた。
え、何この状況?何で土下座?この世界の謝罪って土下座なの?っていうかこの状況だとこの土下座してる人が神様なのかな?何かやだな・・・声かけたくないな。
「すまん!!俺がついうっかり愛読書に見入っていた為に君が死ぬことになってしまった本当にすまん!!」
「あのーとりあえず立ってください。それでこれからの事を聞かせてくれませんか?」
当たり障りない事を言って立たせるのに成功した。愛読書の中身は知りたくもないからね~突っ込まないよ?突っ込まないったら突っ込まない。聞いてほしそうにしてても僕はスルーしますよ。ハイ。
「・・・ゴホン。君が来る前から反省の意味も込めてしておけとずっとこの態勢でいたので足がしびれて腰が痛くて大変だった。君が優しい人で助かったよ~。君の世界の神様って俺の先輩でね怒らせると大変なんだ」
「ええっと・・・この話聞こえてないんですか?大丈夫ですか?」
「・・・だいじょばない・・・。あぁうん気を取り直して・・・俺のせいで君の人生半ばで終わらせてしまって申し訳ない。それでこっちの世界で転生させるにあたってお詫びとしてなるべくは君の望む形にする事にするから・・・望みは?」
だいじょばないんだ・・・顔色悪いな・・・この後の事を考えると幼女神に叱られるんだろうな・・・何となくその状況が脳内に浮かんだが打ち消した。何かシュールな絵面だった。
それにしても僕の望むこと?
そんな事考えた事なかったな・・・んーそれならあれだな。
「ゆっくりのんびりスローライフを送れたらいいかな?会社に入ってからずっと忙しかったからできれば平穏無事にのんびり暮らしたいかな?」
「フムフム成程・・・分かったよそれじゃぁ早速」
え?それだけ?注意事項とか何もないの?地球の神様がこっちの神様がキチンと説明してくれるって言ってたんだけど説明ナッシングじゃなくて・・・っていうかさ・・・この世界って僕を身代わりにした奴がいるんでしょ?それって大丈夫なの?問題ないのどうなの?
っていうかホント悪いと思ってるの?説明も質問も回答も何もなく異世界の神が手を振ると・・・段々と瞼が重くなって意識が遠のいてきた。
「あ・・・説明忘れてた・・・うん・・・きっと大丈夫だよね?お詫びとしてある程度能力を付けておいたし?加護もあるし?・・・うんきっと・・・大丈夫なはず・・・うん・・・あぁあぁぁ先輩に殺されるぅぅ~~」
あ、やっぱり説明忘れてるんだ・・・この神様色んな意味でダイジョブか?
という思考と神様の焦った声を最後に本当に僕の意識はシャットダウンした。