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14ハクション アフターカーニバル(後編)


 体育館を出て一息つく。 

 ふう、自業自得とは言えとんでもない目にあった。皆の恋バナが聞けてちょっと楽しかったけど、ああいう魔女裁判はもう遠慮したいなあ。


 外では花菜とモモが楽しそうにキャピキャピと鉢植えに水を撒いていた。

 校門から続く桜並木の、満開の桜の花を背景に背負(せお)った彼女は妖精みたいで壮絶に可愛くて、俺の心にも花が咲いていくのを感じた。

 友達と交わす自然な笑顔を見る度に、俺の心は化学反応を起こして、ポカポカと暖かくなって、そしてキュンと締め付けられる。


 愛しい。


 苦しい。


 あいくるしい。


「花菜」


「あ、春太郎」


 花菜は俺に気付くとホースをこっちに向けて「かけちゃうぞー」とふざけて笑う。


「かけていいよ」  


 かけてもいいよ。


 ホースが向けられてるのも構わずに花菜に近付いていく。手を伸ばせば届く距離まで近付いて、抱き締めそうになるのを我慢して止まった。


「冗談だよ、今日は風が冷たいもの。風邪ひいちゃうよ」


 かけていい。かけてもいいんだ。

 君のためなら、俺の人生をかけてもいい。


「あ、桜の花びら」


 ひらひらとピンクの花弁が舞い落ちて、花菜の唇の端に引っ掛かってとまった。

 反射的に手を伸ばして、それを取ろうとした時、彼女の唇にこの手が触れた。

 瞬間、昨日の事(ベッドの中でのキス)がフラッシュバックする。


「しゅ、春太郎?!」


 花菜もそうだったのだろう。顔を真っ赤にして、俺の手を振り払おうとする。でも彼女の手にはホースが握られていて、水が勢いよく跳ねた。


「ちょっと花菜! ホース!」


「えっ? うわっ!」


 驚いて咄嗟にギュッと握り締めるもんだから暴発してしまって、結局花菜は頭から水を被ってしまった。髪も服もビショビショだ。


「うわぁやっちゃった……春太郎大丈夫? ハッ、ハッ、『またキスしたいよ~!』ハッ『春太郎ラブラブ!』ハッ『早く春太郎とイチャイチャしたい!』」


 4月とはいえまだ風が冷たい。花菜はくしゃみが止まらなくなって、冷えた花菜とは対称的に俺の頬はどんどん熱くなって決して冷める事はなかった。



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