王都へ
王都へ
ようやく変な冒険者から解放された俺は、マニーと一緒に王都までのプランを立てる。立てると言っても別に深い意味はなく、単純にホットゾーンを切り抜けるルートを立てるだけだがな
「ヘビー。こっちのルートはどうですか?」
「そっちは?・・・遠回りだけど、比較的ホットゾーンを避けて通れるな。このルートだと、到着予定時刻はどれくらいだ?」
「えっと・・・。あ、このルートだと早くても最終日の明け方に到着予定なので、ちょっと厳しそうですね・・・」
「そうか。ならそのルートは破棄だな。ならこっちはどうだ?」
「?このルートってホットゾーンは避けてますが、敵の移動ルートじゃないですか」
「まあ、確かにそうだが、時間もそんなに残されてないからな。こっちのルートはどうだ?」
「・・・こっちだと、翌日の昼間に到着予定なので、時間は大丈夫なのですが、今度はその時間って王都の規制が厳しくなる時間なので、こっちはこっちで厳しそうですね」
「今度はそっちの問題か~・・・。早くって出来ればホットゾーンに干渉しない場所と言ったら・・・こっちはどうだ?」
「?なるほど川沿いを行くルートですね。こっちは・・・?こっちは時間も大丈夫そうですね。このルートだと翌朝の大体7時に到着予定なので、こっちが良いですね。ただ・・・」
「そうだ。このルートは若干ホットゾーンを干渉している。下手に動けば鉢合う可能性もあるからな。細心の注意が必要になってくる。けど、今のところこれが最適と考えるが、マニーはどうするんだ?」
「・・・少々リスクはありますが、このルートで行きましょう。HQに連絡しますか?」
「いや、予定外のことがあったら不味い。王都の宿に着いてからでも良いだろう」
「分かりました。取り敢えず、川沿いですね」
てことで俺達は川沿いのルートを選択した。というのも丁度ホットゾーンを川を中心に左右に裂けているのだ。てことでこの沿いまたはボートに乗れば、ホットゾーンギリギリを避けて通れる寸法である。けどこのルートにも難点がある。実は川沿いの道は王都に直結していない。途中で分岐しなければならないのだが、実は分岐した先が軽くホットゾーンに入るのだ。これを迂回するルートは残念ながらなかったのだ。なので途中からはリスク承知で通らなければならない、が、一早く王都に向かう方法がこれしかないのだ。という事でこのルートを選択した訳だ
「えっと?川沿いまでは、大体10キロですね。その先川沿いに進むのですが、分岐点までは約170キロ。分岐点からホットゾーン突入は約25キロ。ホットゾーン突破後王都までは15キロですね」
「まあ、多少は迂回するからな。しょうがないだろう」
暫く軽く雑談も兼ねて川沿いに向かって進んでいった。道中雑魚盗賊や魔物を薙ぎ払いながら。そして川沿いに辿り着く
「ヘビー。この川沿いを、北でしたっけ?」
「そうだ。北だ。普通なら時間短縮でボートとか作ったり出したりするんだが、それしたら水切り音で敵に察知される恐れがあるからな。歩いていくぞ」
「勿論、私もそのつもりですよ!」
「・・・お前、本当はボートに乗りたいのじゃないのか?」
「確かに乗りたいですよ?そのほうが体力の消耗を抑えられますからね。けどそんな贅沢は言ってられませんからね」
「おお、いつになく真面目だな。てっきり休みたいからとかいうと思ったが、確かにその理由もあるわな。関心関心っと」
「・・・ヘビーもそうなのですが、他の方って私のことをどう思っているのですか?」
「単語一つで言うなら”ぐうたら人間”だな」
「・・・否定したいのに否定できない・・・!!」
「つまりはそういう事だ。改善するこったな」
「・・・補償はしませんが、努力はします」
「まあ、今は別にそれでいいや。今は良いが、その時になったら最悪は自衛隊史上一番過酷な訓練に身を投げ出してやるから、そのつもりでな?」
「ギャーーー!!その訓練って、どんなにぐうたら人間でも戦闘狂に変わってしまう、あの訓練じゃないですか!!それは絶対に嫌ですよ!!」
「なら改善するこった」
「・・・酷いです」
「まあ、今はこの任務だ」
「・・・はい」
その後、暫く川沿いの道のりをひたすら道なりに進んでいった。道中罠?みたいなのを避けながら、何とか分岐点に辿り着く
「ここが分岐点ですね。今度はこれを?」
「北東だな。それを進めば、ホットゾーンないし王都に辿り着ける」
「うへ~・・・この先に敵兵が・・・」
「まあ、うじゃうじゃいるだろうな」
「・・・気持ちは沈みっぱなしですが、何とかやり切りましょう・・・」
「声まで覇気が無くなっているぞお前」
「・・・気にしないでください」
今度は暫く北東に進路を変えていく。暫く歩くとホットゾーンに近づいてきた雰囲気が窺えてきた。というのも
「うわ~~~・・・。ここは地雷原ですか?いろんなところに落とし穴やら罠やらが乱立しているのですが・・・」
「まあ、ホットゾーンに近づいているのがこれで分かるわな。普通この道沿いにこんな大量に罠とか仕掛けないからな。あらかた罠とか引っかかったりしたら即貴族国軍が来る寸法になっているんだろうな」
「これが・・・暫く?」
「大体10~15キロくらいだ」
「・・・気を付けないと・・・」
「だな」
マニーはビクビクしながらも、少しずつ進んでいく。するともう少しでホットゾーンを超える辺りで急に罠が作動した。因みに作動者は俺達ではない
「え!?今罠作動しませんでした?」
「落ち着け。確かに作動したな。けど作動させたのは俺達じゃない。別の奴らだ。しかし罠の発動確認が鳴子とか、まあ中世時代みたいなものだから、妥当か。けどこの場に留まるのは流石に不味いな。幸い周囲は木々だらけの森だ。もう少し先に行き過ぎると草原というか、サバンナだからある意味では助かったな。もう直ぐで貴族国が来るはずだから、それに恐らく大量の人数が来ると思う。それに伴って騒音もある筈だから、この先は木々の枝をつたった方が良いな」
「・・・仕方ないですね」
俺達はすぐ、木々の上に乗っかりながら移動を開始した。すると正面から大勢の軍が押し寄せてきた
「やはりかなりの数が出てきたな。これは集団を抜けるまではつたったままの方が良いな」
「はい。この中にハマったら抜け出せそうにないですね」
暫くすれ違いながら進むと、ようやく集団と離れることが出来た。更に、丁度サバンナに辿り着いた
「丁度サバンナに出ましたね。しかも丁度ホットゾーンを切り抜けましたよ!」
「後は王都まで一直線だな。但し気を抜くなよ」
「はい」
サバンナに入った後はかなり楽で、その先は特に兵士とすれ違うとかもなく、問題なく王都に辿り着いた。到着予定時刻も丁度定刻通りだ。そして何より
「え?検査とかしないのですか?」
「ああ、さっき君達は南西から来たろ?その時、こっちに来る途中で大量の兵士とすれ違っただろ。あれでかなりの人数を持っていかれて、俺達門番に手が回らなくなってしまってな。だからこの時だけは省略しているんだ」
「そうなのですね。でしたら入場は?」
「ああ。構わないぞ」
「ありがとうございます」
と、なんと人員不足で手が回らなくなってしまったので、省略されて難なく入ることが出来たのだ。これはラッキーだな
「さてヘビー。宿はどうします?」
「そうだな・・・ちょっとお高い宿でいっか。信頼もありそうだしな」
「そうですね」
という訳で、道中衛兵に聞いて、宿を教えてもらった。念のため冒険者ギルドにも聞きに行った結果
「ここですね。雰囲気は悪くないですね」
「だな。入るか」
「すいません」
「はい。いらっしゃいませニャー。ご宿泊ですかニャー?」
「そうです。二部屋一泊って可能ですか?」
「はい。開いていますニャー。料金は90フィートですニャー」
「お?そんなに悪くない値段だな。決まり。お願いします」
「かしこまりましたニャー。料金を受け取りますニャー・・・ありがとうございますニャー。こちらが二人の部屋ですニャー。どちらも4階ですニャー」
「分かった」
この受付の女性、猫族なのか、結構ニャーニャー言ってるな。いや、これが普通か?
「ここっぽいな。開けるか・・・結構いい部屋だな」
「ですね。これなら会議も平気でしょう。早速HQに連絡します」
「頼む。念のため、結解も頼むぞ」
「残念でした~。もう既に展開済みで~す。HQ。こちらマニー」
『マニー。こちらHQ。どうした?』
「王都に到着。現在宿にてヘビーと一緒にいます」
『そうか。了解した。予定通りに動いてくれてこちらも助かった。これから会議するが、良いか?』
「こちらヘビー。いつでも構わない」
『了解した。では打ち合わせを開始する』
ようやく王都に辿り着いた俺達は早速、貴族審議会解散に向けて会議を始めるのであった




