朝飯
今回は短めです
朝飯
翌朝、アレクサスは何かお腹辺りに温かいものが被さっていることに違和感を覚え、起床する。それもそのはずだ。何故ならアレクサスは何も毛布も掛けずに就寝したのである。なのでアレクサスは「?誰か先に起きたのか?」と思い、辺りを見渡すが、誰も起床してなかったのである。それどころか外を見るとまだ日すら登っていなかった。まだようやく夜が更け始めた時間である
「?鍵は・・・閉めてあるな。ならこの中の誰かがトイレかなんかで起きてそれで何も掛けていない俺に掛けてくれたのか?・・・考えても仕方ないな。取り敢えず五時間も寝れば良いほうだな。流石に二度寝する気はないから、こいつらに朝飯でも作ってやるか・・・」
そうアレクサスは思い立ち、ギルド内にある厨房へ向かう。厨房は二階にあり、食堂にも通じている。基本は職員以外は原則立入禁止だが、超早番や超遅番の人たちに早朝や深夜は職員でも料理できるように、開放しているのだ。但し、食材泥棒を防ぐため入り口には巡回の職員が必ず最低一人は見張り番として立っているのだ。という事で厨房に着くと足跡で察知したのか、二人がアレクサスに注目する
「・・・誰だ!?」
「この先は立入禁止です!!」
「俺だ。アレクサスだ」
「あっ、これはこれはアレクサス君。おはようございます。どうかしましたか?」
「まだ時間は四時半前ですよ?」
「簡単だ。俺が腹が減ったのとパーティーメンバーに朝飯でも作ってやろうと思ってな。それでここに来た」
「?朝ごはんですか?作るのは構いませんが、その割には早すぎないですか?」
「いくら何でもこの時間で朝食を作らなくても、炊飯担当の職員が調理しますのでアレクサス君が作らなくても良いのでは?」
「いいや、ただ単に俺の自己満足だ。それとも一般の方は入っていけないのか?一応早朝か深夜は入っても構わない、但し許可制のため要相談、と書かれていたから、それでここに来たのだが?ダメだったか?」
「いいえ、確かに別段この方は入室不可というのはないので、そこは大丈夫なのですが・・・」
「そうではなく、何故アレクサス君がわざわざこの時間にここに来るのが不思議でして・・・」
「だからさっき言った通り、自己満足だって。それに昨晩は半ば強制で宿を変更されたからな。恐らくはそれで昨日の晩飯が食えなかったはずだ。食えたとしても急に変えられたら誰だって不機嫌になるだろう?それで俺なりの詫びとしても今日の朝飯は俺が作りたくてな」
「そういう事でしたら・・・分かりました。入室を許可します。但しここには書かれていないのですが、調理中は窃盗などが無いように、私達がその調理を見学します。それだけはご了承ください」
「邪魔はしませんのでお願いします。これが規則なので、ご協力をお願いします」
「そういう事なら仕方ないな。構わないぞ」
「ありがとうございます」
☆
チュンチュン・・・チュンチュン・・・
「朝か・・・急に宿変更とはいえ、ここのベッドも寝心地最高だったな。流石は冒険者ギルドの寮」
「・・・う~~ん・・・朝ね・・・あれジャリーグ?もう起きたの?早いわね・・・おはよう」
「ユレイナか。ああ、おはよう。いや俺も今起きたところだ・・・どうやら俺達が一番早く起きたっぽいな・・・取り敢えずカーテン畳んでくるわ」
「ええ、お願い・・・ふわ~~・・・?」
「今日も絶好の狩り日和になりそうだな。?ユレイナ、どうした?」
「うん。椅子で寝ていたはずのアレクサスが居ないのよ」
「・・・本当だ。しかもご丁寧に俺達が掛けた毛布を畳んでいるしな。これは今日一番早く起きたのはアレクサスっぽいな」
「そうね。それにしてもアレクサス君は相変わらず早起きね。サラ王女が言っていたのよ。『従兄さんは結構早起きなのよ。その後必ず何かしらしているから、それで遅くなることがあるけどね』と言っていたのよ。どうやら外に出てもアレクサスの早起きは健在のようね」
「そうみたいだな。それにしても・・・ったく俺達はガキじゃないっての」
「ふふっ。アレクサス君のまさかの行動に皆驚いてしまったわね。危うく寝たふりを皆していたのに、s誰かさん二人のせいで気づかれると思ったしね」
「・・・悪かったわね・・・まさか私達もそう来るとは思わなかったのよ」
「・・・俺は何とか我慢は出来たが、アレクサスが寝息を立てるまでは我慢が持つか怪しかったからな。アレクサスはああ見えて結構警戒強いしな」
「そうね・・・っていつ起きたの?リアリィとアーカイブ?」
「私はユレイナが言った『アレクサス君のまさかの行動』からね」
「俺はジャリーグの『ガキじゃない』からだな」
「そうか。まあ確かにあれは俺達も予想してなかったからな。しかも俺達の顔を見た理由が異常がないかどうかだしな。ご丁寧に布団を掛け直してくれたしな。女子陣はその行動にドキッとしたんじゃないか?」
「・・・そうよ・・・結構ドキドキものだったのよ?」
「妾も流石にあの行動には不本意ながらトキめいてしまったしのう・・・」
「・・・私もですわ・・・お陰で今思い出しても顔が熱くなってしまいますわ・・・///」
「うわっ!?お姉さま顔が真っ赤よ?まるで恋する乙女が彼から告白されて嬉しさのあまり、顔を真っ赤にして彼に迫る人みたいだわ・・・」
「レラカイナ、言わないでくださいまし・・・絶賛その最中なのですから・・・///」
「女子陣は恥ずかしながら起床、と」
「対して男子陣は・・・」
「・・・流石にあれだけ騒げば嫌でも起きるわ・・・」
「俺もだ・・・しかし、今思い出しても不思議な行動を取ったものだ。何も俺達の顔色を見なくても何も異常などないのにな」
「きっと彼なりに僕達を心配しているのでしょう。そこはありがたく受け取りましょう」
「さて、これで全員起床ね。あとは、アレクサス君の居場所だけど、誰か知っている人っていない?」
「『・・・・・』」
「これは知らないパターンね・・・どこに行ったのかしら・・・」
「まさか、筋トレではないよね?アレクサス君ならやりかねないと思うけど」
「流石にそれは無いだろう・・・だってここはギルド内だぞ?流石にアレクサスも大きな問題にはしたくない筈だが・・・」
『ねえ、聞いた?』
『聞いた聞いた!小さいけど男前の男の子が料理していて、それが大好評なのでしょ?食べないことは無いよね!?』
『そうよね!食べに行こう!!ああ・・・食べた後は軽く運動しないと・・・』
「ねえこれって・・・」
「アレクサスくさいな・・・まさか筋トレしない代わりに料理するとは・・・けどあいつって料理できたか?」
「そこは分からないけど、見に行けば分かるんじゃない?」
「そうだな。行ってみるか」
☆
「へい!朝飯セット百人前おまち!!」
「アレクサス君!!こっちも注文!!朝飯セット三百人前!!」
「了解!!五分待て!!」
「分かったわ!」
「・・・アレクサス君・・・一体何してるの?」
「おう、起きたか。見ればわかる通りギルド職員に朝飯作ってる。へいお待ち!!」
「何でアレクサス君が作ってるの?」
「いや~、初めはお前らの分を作ればそれで終いだったけどな?見張り番に味見を頼んだのが間違いだったみたいだ。そこから噂を噂が呼んでこうなった。追加の分お待ち!!」
「ちょ、調理担当は!?」
「調理担当の職員は俺の出した味に再現できなかったみたいで角っこで意気消沈している。お陰で俺一人だけでここを切り盛りする羽目になった。デザートもお待ち!!」
「そうなのね・・・しかもさりげなく調理も終わらせているし」
「まあそんなことで、もうちょい待っててな」
「分かったわ。私達はのんびり待ってるわ」
「すまんな」




