潜入捜査 事案発生
潜入捜査 事案発生
警察本部での報告会から数日後、各々の法執行機関は麻薬密輸や流入を阻止すべく警戒強化に当たっていた。特に国家警備隊傘下の国境警備隊と海上保安庁は不審人物や不審船の捜索に当たっていた。その甲斐あって摘発数は格段に上がっていた。そんな中、遂に事案が発生する。
海上保安庁海上交通センター
「?おい、これ何だ?」
「どうした?」
「今レーダーに反映されたが、この船舶、凄い速度で沿岸に接近してるぞ?」
「この速度は確かに異常だな。速度やレーダーから察するに、小型船舶だな?」
「しかも一隻じゃないな。確認できるだけで5隻は確認できるな。これは巡視船に通報か?」
「一旦課長を呼ぼう。課長、第3エリアの南西方向から複数隻高速走行で沿岸に近づいてくる船舶を捕らえました」
「おう。俺も今見てる。これはあれか?数日前にあった麻薬密輸関与の疑われる事案があったが、それ関連か?」
「恐らくはそうかと。まだ確定ではないのですが、拿捕する必要性ありかと」
「今海上警備は俺たちだけだ。ここで逃すわけにはいかんな。よし!近くの巡視船に通報しろ!それと基地からも巡視艇を派遣させるんだ!」
「『了解!』」
海上保安部基地
「今日の昼飯も最高だったな」
「まあな。相変わらず日本の食事のレベルは異世界1だな。つくづくここに入れた事に感謝しないとな」
「しかもただの一般平民でこれだからな。祖国だとそもそも満足に飯も食えんし、場所によっては貧乏貴族ですら飯に在り付けないのもあるしな。感謝しないとな」
「な〜にしみじみしてるのよ」
「おうお疲れ。潜水訓練は?」
「さっき終わったわ。まあ私は人魚族だから溺れはしないんだけど、それでも誰かを担いだり運搬は辛いわね。それはさておき、何でしみじみしてたのよ?」
「ああいや、こんな美味い飯は祖国では在り付けないと話しただけだ」
「あ〜。まあそれはそうね。こんな豪華な食事を3食なんて私たちの国だと無理な話だし、無理もないわね」
「だろ?だから感謝してたんだ」
「因みに君もこれから昼飯かい?」
「あ、うん。男二人で食事中ごめんなさいね。私はあっちでお約束があるから」
「「あっち?」」
「うん。あっち」
「あ、アイツらか。相変わらず仲良いなお前ら。あの二人って両方高貴な令嬢じゃなかったか?」
「そうだね。片方が…ってこっち来た」
「何3人して私らの噂話をしてるのかしら?」
「気になりますねぇ〜?」
「そんなに睨むな。別に普通の話だけだ。だろ?」
「ああ。ただ単に2人が高貴令嬢なのに親しいなって疑問に思っただけだ」
「あれ?そんなに珍しいかしら?」
「下級貴族なら平民との距離は近くなるからそこは良いんだが、お前らって辺境伯と公爵令嬢だろ?普通の平民は近付けないから親しくするのが出来ないじゃないかと思ってな」
「そういうものだったかしら?確かに身分の差でどうのこうのはあるけど、どう?」
「さあ?私はそうは思いませんでしたが…。まあ私の口調とかで近寄りがたいのはあったかも知れませんが…」
「そういう訳でもないんだが…。まあいいや。すまんな女子会に口挟んで」
「良いのよ別に」
5人で談笑中に緊急指令が入る。
『ピーポーピーポー!!!』
「『!?』」
食堂内が一気に緊張に包まれる
『緊急指令緊急指令!第3エリア南西に不審船数隻を確認!こちらの対処に迎え!詳細は後ほど無線にて傍受せよ!出動巡視艇と巡視船はCL10、13、19、20。PC11、15、17。PM22。以上8隻の出動を命ずる!乗組員は直ちに乗船せよ!』
「行くぞ!!飯は中止だ!!」
「おう!」
「私も招集ね!ごめんね!!ご飯はまた今度!!」
「分かったわ。気をつけて!!」
『追加指令!!航空基地からも航空支援を派遣!!スカイ3と羽翼族の派遣を命ずる!!』
「おっと今度は私ですね。こちらも行きます!!」
「帰ってきたらまたおやつでも食べながら話しましょう!」
「ええ。用意をお願いします!」
「おらお前ら!!走れ!!!」
「『おう!!!』」
「結局お前もか!」
「はい!私自身羽翼族ですからね!!このままここから飛び立ちます!」
「いや待て。一旦俺の船に乗れ。恐らく距離がまだあるから現場到着前にへばるぞ。近づいてから飛んだ方が体力温存になるぞ」
「それもそうですね。ではお言葉に甘えます。どの船ですか?」
「PM22だ。多分お前以外にも羽翼族かそれに準ずる種族が乗船してるはずだ」
「でしたら心強いですね!では乗りましょう!」
「おう!」
PLHとPM2隻
「穏やかな航海ですね。このまま帰港出来れば良いのですが」
「最後まで気を抜くなよ?いつどこで事案が発生するか分からんからな」
「ですが船長、暇すぎて欠伸が出そうですよ?サイドのPMものどかに航海してますし」
「気持ちは分かるが気を引き締めろよ?気を抜くと何があるか分からんからな」
「…は〜い…」
数分後
『PLH30。こちら管区本部』
「管区本部、こちらPLH30」
『了解。海上交通センターから入電。当船から程近い位置に不審船複数隻捕捉。こちらの対応をPM2隻と共に当れ。位置はレーダーに反映させる。船舶の大きさは小型船舶の模様。詳細は不明だが、数日前に発生した密輸グループかと思われる。ヘリと羽翼族等が乗船してるのであれば派遣を指示する』
「了解。対応にあたる。それと現在地から現場まで恐らく20分は掛からない予想」
『了解。それと現場に到着後は当船がCPとして各方面に指示を出せ。以上管区本部』
「PLH了解。ということだ。事案が発生したぞ。全員気を引き締めろ!それと今のうちに銃火器関連の確認。魔法が使える乗組員は使用確認せよ。それとヘリと羽翼族の出動を命ずる。直ちに飛びたて。人員はヘリ1機と羽翼族4人だ。反射ベストを忘れるな」
「『了解!!』」
「PM25、26。こちらPLH30。さっきの無線は聞いたな?」
『PM25。傍受済み』
『26も同じです』
「なら先に現場に向かって先着した巡視艇と共に対応に当れ。俺らもその後追い付く」
『了解。先向かう』
『分かりました。全速力で向かいます』
「頼んだ」
『こちら管区本部。不審船事案対応中の各方面に告ぐ。現在航海中の船舶にも応援を命じた。これよりCPをPLH30とする。指示はPLH30から受けろ。それと無線混線を防ぐ為、周波数の変更を頼む。以上管区本部』
「PLH30から不審船対応中の各方面。周波数を150に設定せよ。繰り返す。周波数は150に設定せよ」
「『了解!!』」
数分後。航空隊が先着
『PLH30。こちらミニ(羽翼族)1〜3。現場上空に到着。現在ホバリング中』
「了解。船舶の特徴と乗組員の人員は?」
『船舶の大きさは小型船舶。恐らく漁船程の大きさが4隻。人数は2隻が10人未満。2隻が3人しか確認出来ない為、恐らくこの2隻に密輸品が入ってると思われる』
「了解。そのまま追尾しろ。巡視艇とゴムボートが来るまでは待機せよ」
『了解。引き続き追尾する』
『ミニへ。上空から確認できるか?間も無く基地からPCとCLが到着する』
『確認した。PLH30。巡視艇複数隻到着。陸からの航空隊も現着した』
「了解。船長。どうします?」
「PM2隻があと数分で到着する。到着後に接近、対応せよ。もし攻撃されたら発砲を許可する」
「了解です。PLH30から各方面。PM2隻が数分以内に到着する。到着後対応を開始せよ。それとPLH30船長から命令。攻撃された次第反撃せよ」
『『了解!!』』
『ミニからPLH30。上空からの攻撃はどうする?』
「それも許可する」
『了解!下降する!』
更に数分後、PM2隻が到着
『PLH30。こちらPM25。こちらも現着した。対応開始する』
「了解。PM22は到着次第対応を開始せよ」
『PM22了解』
・・・・・・・・
不審船一味
「へっへっへ。これを日本国内に流通させれば麻薬市場を一気に広げることが出来るぞ」
「ですが、あれから先行班からの連絡が無いのですが?」
「多分人目を避ける為に敢えてだろう。一旦気にしなくて良いぞ。それよりブツは?海水で濡れてないか?」
「大丈夫ですぜ兄貴。定期的に確認しています」
「よしそれなら」
「あ、兄貴!!」
「何だ!?どうした!?」
「マズイです!!見つかりました!!」
「見つかった?誰にだ!?」
「日本国の沿岸警備隊に!!」
「な、何!?お前ら!!何が何でも阻止しろ!!全速力で逃げろ!火力に物言わせろ!!」
「『了解!!』」
・・・・・・・・・・
PM22
「やはり武器を持っていたか」
「どうする?こっちも火器使うか?」
「いや。一旦PCとCL。それと航空隊の火力に任せてみよう。恐らくはそんな長くは持たないだろう」
CL10
「やっぱり魔法を使って対抗してきたな!!」
「ああ!!こっちも行くぞ!!この銃火器と」
「この火属性魔法を」
「「食いやがれ!!」」
PC15
「流れ弾に気をつけろ!!」
「あいつら、煙幕を使ってきたぞ!!」
「大丈夫だ。こっちには暗視装置がある。それを使え」
「見えたぞ。相変わらず魔法を使ってるが、無意味だ」
「ミニ!上空から閃光弾投下出来ないか?奴らを怯ませたい!その間にPCとCLとゴムボートで接近して乗り込む」
『了解!接近して投下する!一旦離れて!!』
「PC、CL!一旦散開」
『『了解!』』
ミニ
「よし!更に下降して閃光弾投下!個数は一隻3個だ!」
「『了解!!』」
「ミニから各方面。現在投下中」
数分後
ピカーーーーン!!!!!
「PLH30から各方面。接近開始!!乗り込め!!!」
『『了解!!!』』
・・・・・・・
不審船
ピカーーーーーーーン!!!!
「な、何だ!!??」
「み、見えない!!!???」
「おい!!!何が何でも死守しろ!!!」
「そう言われてもこれだと何も見えないし聞こえない……(バタッ)」
「あ、おい……(バタッ)」
「く、クソ…。何がどうなって」
グギ!!!(何かをへし折る音)
「ぐわぁぁぁぁっぁぁ!!!!???」
「うるさい」
「な、何しやがった……」
「別に何もしてないさ。ただ単にお前の何かをへし折っただけだ」
「お、お前らは何者だ……」
「私たち?私たちわね?日本国海上保安庁。日本国の沿岸警備隊だよ?これから強制調査するよ〜」
「ってその必要はないぞ。この通り宝の山だ」
「という事らしいから逮捕ね。14時15分」
「お〜い。そっちはどうだ〜い?こっちはあったよ〜」
「こっちもあったぞ。これは重量超過だな〜。恐らくこの2隻が輸送船舶で?」
「こっちの2隻が護衛というか、見張りなのだろうな」
「という事だから、全員逮捕」
「因みに容疑は密輸で良いのよね?」
「そうだな。密輸だな」
「ならちょっと待って?誘拐と監禁も追加で」
「は?…まさか!?」
「そのまさか。気絶してるのか、奴隷の首輪を付けた奴隷が複数。船底に居たわ。しかも正気じゃないわね。どう見ても麻薬投与された結果なのか、見るも無惨な姿にされてるわね」
「どれどれ…。あちゃ〜…」
「これ、PLH30に運び込んでどうにかなるかしら?」
「聞いてみるか。PLH30、こちらCGO(海上保安官の略)46」
『CGO46。こちらPLH30』
「拿捕した船舶一隻から複数の違法奴隷を発見。PLH30に収容要請したい」
『可能だ。注意事項は?』
「その、恐らく凄惨に扱われたのだろう。欠損のみならず麻薬投与と思われる症状や生気がない者、挙句には魔法か何かで肉塊にされた者までいる。治療は可能か?」
『保証は出来ないがやってみよう。その一隻だけか?』
「ちょっとお待ちを。どうだ!?」
「こっちにも居ました!7人です!」
「分かった。他は!?」
「居ない」
「こっちも」
「2隻で合計15人」
『15人か。PLH30が自ら接近するからゴムボートに乗せてくれ…ってどうしました船長?変われ?はい。すまん、PLH30の船長だ』
「PLHの船長って階級何だっけ?」
「えっとPLとPL Hは一緒で確か階級が、二等海上保安監だったような?」
「軍隊だと?」
「士で正で監、しかもその二等だから二佐。ということは?中佐?」
「『中佐!?』」
「あ、はい。何でしょうか?」
『何でそんなに緊張してるかは分からんが、その奴隷らって肉塊になってる奴以外は意思疎通は出来るのか?』
「意思疎通ですか?少々お待ちを。どうだ?」
「ちょっと待って?君たちって言葉分かる?」
「『………』」
「私たちは日本国沿岸警備隊よ?」
「『………』」
「ダメかな…」
「そっちはどうだ!?」
「(首を横に振る仕草)」
「あっちも同じみたいだな。PLH30船長。多分精神が崩壊してるかと思います。意思疎通は現状不可です」
『それなら逆に好都合かもな。その方が治療がしやすい。分かった。PLH30内で治療する。移送を頼む。引き続き証拠集めを頼む』
「了解です。被疑者輸送はどうします?」
『PM22に全て収容する。PM22は収容後帰港し警察に引き渡せ』
「CGO46了解。引き続き捜索を続ける」
『PM22了解』
10分後。PLH30が現場に到着
「よ〜し。ゴムボートを下ろすから、それを使って拿捕船に近づいてくれ」
「PLH自体が近づけば良いのでは?」
「アホか。こんだけデカい船舶が近づけば波に煽られて転覆する可能性があるだろ。それとスクリューの水圧に対抗出来なくて巻き込む可能性だってある。これ以上は近づけん」
「そういう事ですか。では行って参ります」
「4隻下ろしたから、恐らくは乗りきるはずだ」
「分かりました」
『PLH30。こちらPM22』
「PM22。こちらPLH30」
『被疑者収容完了。これより帰港する』
「了解。CL10、13とPC11とPM26、それと航空隊が護衛として追尾する」
『PM22了解。10分後出発する』
「それと出発後は周波数を元に戻してくれ」
『了解』
『CL10、13了解』
『PC11了解』
『PM26了解』
『航空隊了解』
ゴムボートが拿捕船に到着
「待たせた」
「お疲れ様。今見れば分かる通り、違法奴隷がある船舶2隻をロープで繋いでいる。運び出しが容易いはずだ」
「ありがとう。それで?奴隷は?」
「こっちだ。閲覧注意だぞ?」
「映像は…撮ってるか。そらそう忠告しないとな」
「だろ?これだ」
「オウ…想像以上に酷いな。性別は?」
「多分大多数が女だな。あっちに乗ってる2人が男で肉塊は分からん。因みに年齢は不明だ。あまりにも損傷が酷くて特定出来ない」
「これはそうだな。衛生面も宜しくない。運ぶのを手伝ってくれ」
「分かった。それにしても何でPLHの船長が無線に応答したんだ?」
「その船長が治癒系を得意としてるんだ。だから大まかにで良いから知りたかったんじゃないか?」
「そういう事?それなら納得だな」
30分後。運び出しが完了した
「よし。これで全員だな。助かった」
「良いって事よ」
「船長。今から帰船します」
『了解』
20分後。治療室
「失礼する。違法奴隷は?」
「奥にいます。念の為檻内にいます」
「まあ、仕方ないな。手伝ってくれ」
「はい。この奥からになります」
「えっと?…これは酷いな。けどどうにかなるか。治療を開始する」
1時間後、15人の治療を終えた。結果は
「ふう。上手くいったな。この方達の面倒を頼む。衣類は今は魔法で良い。羽織る物は制服の上着を貸してやれ」
「分かりました」
「すまん。意外と時間が掛かった」
「いえ。大丈夫ですよ」
「拿捕船は?」
「殆ど終了しました。まず乗組員は4隻合計20人オーバー。全員収容済みです。次に船内の中身ですが、全て麻薬でした。重量は正確には分かりませんが、約4デン(20トン)かと思います」
「凄い量だな。大収穫じゃないか」
「そして最後に、乗組員の一部が指名手配されていました。罪状は誘拐、暴行、密輸、薬物などです」
「まさにワルの極みだな。これは今日は長くなるかもな」
「覚悟していますよ。じゃあ帰ろうか」
「はい」
『PLH30から各方面。CLとPCが拿捕船の曳航し帰港せよ。それ以外は元の任務に戻れ。以上で作戦終了とする』
『『了解。お疲れ様』』
「お疲れ」
こうして海上事案は終結した。この後陸に戻った巡視船に待ち構えてたのは、通報を受け待ち構えてた大量の警察職員である。そこで押収した麻薬量に一同驚愕したのは言うまでも無い