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入国まで

入国まで





入国当日。現在世界一周企画を遂行している芸能グループは、次の開催国である日本国に向かっていた。そしてその国境に差し掛かる。



「プロデューサー。あとどれくらいで国境なのですか?」

「一応既に軍管理区域に入っているからまもなくだな。ほら、手前で検問所があっただろ?あそこから国境までがその区域なんだ。確か距離はそこまでなかった筈。1キュウくらいだったか?そこまではない筈・・・。何だが」

「『何だが?』」

「どうしたのプロデューサー?目を丸くしているよ?」

「ああ、いや。あれを見てみろ。国境に繋がるあの列を」

「『列?』」

「列って・・・、待ってまさかあれ?」

「ね、ねえお姉ちゃん・・・。何あの超長蛇の列?」

「わ、分からないけど、あれ全部入国待ちなの?」

「入国?だがまだ俺たちまだ出国もしてないじゃないか?」

「『あ』」

「てことは、あそこから出国を超えて入国まで繋がってるのか!?」

「『ええええぇぇぇぇ!!??』」

「ど、どうするのよプロデューサー!!??」

「・・・とりあえず近くの方に聞いてみるか」



ということでプロデューサーは列最後尾に並んでいる方に声を掛けた。見た感じドワーフのようだ。



「あ、あの〜」

「なんだ?どうした兄ちゃん達?」

「これ、何の列ですか?」

「何って、そら出国待ちと日本国の入国待ちの列に決まってるだろ?」

「『ま、マジか〜〜・・・』」

「お?よく見れば、お前さん達は放送に出ている世界的な有名な芸能人じゃないか?」

「あ、はいそうです。私はここのプロデューサーを務めています」

「そうかそうか。ここで対面できるなんて光栄だな。俺はファンって程ではないが、よく放送で君らの活躍を見ているよ。頑張ってな?」

「『ありがとうございます!』」

「それで?この列に並んでいるということは、お前さんらの次の開催は日本か?」

「そうですね」

「因みに日本は初めてか?」

「私は4回目ですが、彼らは初めてですね」

「俺は何回も往復してるんだがな。ちょっと今日は混んでるな・・・」

「そうなのですか?私は3回来ましたけど、列に並んだ時間はせいぜいMAX2時間くらいでしたけど」

「日によってバラバラなんだよ。混雑日もあれば閑散日もあるんだが、今日は混雑日に当たってしまったか。これは時間掛かるぞ〜?」

「因みに入国までにどれくらい掛かるのですか?」

「さあな。それは俺にも分からないし他の奴らに聞いても同じだろう。ああそうそう。見えるか?この列の先に途轍もなく大きな壁を」

「ああはい。あれが国境ですね?」

「そうだ。あの技術は日本国にしかできないんだ。恐らくだがあの壁はあくまでも国境を隔てているだけで、あの先にも列は繋がっているはずだ」

「『ええ〜〜・・・』」

「それとプロデューサーさんは4回目になるから知ってるだろうが、日本国の入国レーンはかなりあるのは知っているよな?」

「あ、はい。レーンによって区別されていましたね」

「そうだ。まあこっちは公国という小さな国だからレーンも少ないが、それでも入国と出国それぞれ10レーンずつはあるからスムーズの時はスムーズに行くんだが、今日混んでいるという事はレーンが埋まって先に進まないのだろう。それか別室送りが多いとか」

「別室送りが多いとどうなるのですか?」

「そもそも質問数が多いし疑惑があればその時点で一時そのレーンを封鎖するんだ。それで別室送り込むまで封鎖し、送ったら再度開始だから、恐らくそれで時間も掛かってるのだろう」

「『・・・』」



別室送りという単語に一同は気を引き締める。そんな中列を横目に歩く集団が現れた。



「おうお疲れ」

「どうも〜。お前らは帰りか?」

「そうだ。いや〜疲れたぜ。けどこの列に並ばなくて良いのはありがたいな」

「お前らが羨ましいぜ・・・早く行きな」

「おう。またな」

「ねえねえドワーフのおじさん。なんであの人たちは列に並ばないの?横入り?それともズル?」

「まあ、お嬢さんの言いたいことは分かる。俺もそう思った時期もあった。けど奴らは良いんだ」

「え?何故ですか?何か優先でもあるのですか?」

「ああ、ある。けどそれは極特定の一部だけだ」

「何ですか?」

「さっき俺が言ったセリフを思い出せ」

「さっき?えっと『お前らは帰りか?』・・・あ、もしかして?」

「そこの野郎は察しが良いな。その通りで、あいつらは日本に帰化している。つまり国籍や身分を日本にしているんだ。無論アイツら全員さ。だからアイツらは単に日本に帰国するだけ。何処でもそうだろ?帰国時の審査は早い。それは日本でも変わりないんだ。それにこの国から何処か別の国ならまだしも、隣国に行く、というか隣国に帰るだけだしな」

「そうなのですか・・・。優先権が行使できればそのやり方をご教授できればと思いましたが、そう簡単にはいかないですね」

「そういうものさ。ま、気長に待つっきゃないな」

「因みにどれくらい時間掛かるか予想できますか?」

「ここから入国審査までか?そもそも出国すらしてないからな。しかもこの列だし俺並び始めてから15分後にお前らが来てそこから会話始めて進んだ歩数が2〜3歩だろ?平気で12時間掛かるんじゃなかろうか?」

「『うへぇ〜・・・』」

「その間食事やお手洗いはどのようにされるのですか?」

「ここは軍管理区域だが、その軍から許可を得た商人が一定時間に通るんだ。その際に飯を買い込むか臨時食事処を設営するから、そこで飯食う感じだな。トイレもその商人随伴で来てくれる。そこで駆け込む」

「まあ、あるだけでありがたいですね」



またしばらく待つと背後から荷車が通過する。それも列を成して。



「そういえば貨物って列が違うのですか?」

「ああ。貨物のみの荷車はこの先の分岐路で分かれて貨物専用レーンに行く。それと日本国のトラックもな」

「『トラック?』」

「トラックってあのトラックですか?」

「流石4回目になるだけあって分かってるな。あのトラックだ」

「トラックって何だ?」

「多分来るぞ?あれだ」

「『・・・』」

「あれが、トラック?」

「馬は?」

「繋がってない?」

「あの鉄単体で動いているのか?」

「博識だな坊主。その通りだ。日本国は移動に馬や牛を必要としていない。あれでいけるんだ。しかも結構載るぞ」

「え?どれくらい載るの?」

「俺が知る限りだが、商業ギルドに運び込んだ量が最大だったな。重量で言えば1台のトラックに大貨物荷車5台分は載ってたな」

「『え!?』」

「え!?そんなに載ってたのですか!?」

「流石に仰天するだろ?けどアイツらは更に載せれる荷車があるらしい。けどそれはあくまでも国内限定みたいだ」



※因みに大貨物荷車5台分の積載量は、1台で約2トンなので合計約10トンとなります。



「そうなのですか。ちょっと見てみたいですね。操縦者は?」

「そもそも日本国内で走ってる車両は全て日本軍管理だ。つまりドライバーは全て軍人かその関係者ということさ」

「そうなのですね。因みに荷車の審査に掛かる時間は?」

「量や荷車の数にもよるが、繁忙期以外なら圧倒的に貨物が早く抜けれる。けど忍び込むのは止めておけ」

「しませんよ。けどそう言うって事は?」

「いたんだよ。そう言うバカが。その結果が前科者だ。日本公認のな。そうなった奴らはそうなったかは知る由もないがな」

「でしょうね・・・」



ドワーフと談笑すること数時間後。遂に公国の出国審査に到着した一同。既に疲れはピークだがまだ終わらない。



「はぁ・・・。漸く出国審査のブース前まで来れた・・・」

「俺もう足裏が痛ぇ・・・」

「私もふくらはぎが痛い・・・」

「お主らも大変だな。けど今日は混雑日の割にはまだマシだぞ?」

「え〜。これより激しいのがあるの〜?」

「ああある。俺は最大入国まで3日は要したな。厳密に言えば並び始めて62時間は経過してたな」

「『62時間!!??』」

「え!!??その間休息は!?」

「いや普通に寝たぞ?しょうがないから地面にだが」

「抜かされなかったの!?」

「ああ。そこは平気だった。日本国から整理券を配布されてな。それ通りに呼ばれるから呼ばれるまでは通路で寝てたな」

「整理券か。横取りとかなかったか?」

「身分持ってる奴はそれに送付されてたから盗られるとかはなかったな。身分持ってない奴は一時的な契約を結んでたからこれもなかったな。もし盗難されても元の契約者に元に戻ってたし、日本国も優秀だから盗難したやつを牢獄に入れて裁判かけて前科持ちにしてやったりとかしてるしな。平気だぞ」

「タフですね・・・」

「まあ、数え切れないほど行き来きしてるんだ。慣れるさ。じゃ、先ブース内に入ってるぞ」

「あ、はい。しかし本当に時間掛かるな・・・」

「プロデューサー。プロデューサーの時はどれくらい時間掛かったんだ?」

「俺は入国までに6〜7時間。そして入国審査に3時間だから合計10時間掛かったな」

「10時間か・・・。けどそれってかなり早い方なんじゃないか?」

「かもしれないな。何しろ62時間は聞いた事がなかったが」

「既に並び始めてから8時間経って漸く出国審査なんだよな〜。特に小等部高学年くらいの連中は既に眠そうだ」

「まあ、取り敢えずまもなく私たちの出番ですし、一旦気合い入れましょうか。その後は一旦寝かせましょう?」

「そうしようか。ほら〜お前ら〜。ちょっと起きてろよ〜?もうすぐ俺たちの出国審査の順番だぞ〜」

「『・・・は〜い・・・』」

「既に眠そうね?」

「眠いよ〜お姉ちゃん・・・。疲れちゃった」

「まあこれは辛いね」

「ねえ?お姉ちゃん達。日本で開催する意味ってある?」

「『?』」

「急にどうしたの?」

「私たちも知ってるよ?一応世界的な有名な私たちだし知名度もかなりあるけど、お姉ちゃん達もそうだけど日本国での知名度はかなり低いのを知ってるよ?だから思ったの。日本で開催する意味ってあるのかなって」

「『そうなの?』」

「あらら。眠そうにしてたあなた達まで起きてしまうなんてね」

「そうなのか?プロデューサー?」

「・・・」

「沈黙ということは?」

「・・・残念ながらな。日本での知名度は極一部のコアなファンしかいない。それ以外はグループ名や名前を言っても知らないと言うのがばかりだ」

「でも何でなんだ?」

「簡単なんだよ。日本国ってね?何でもあるの。私たちが簡単には手に入らない物が何でも手に入るの。それは物のみならず夢とか希望とかもね。だから皆努力するのよ。けどそれにチャレンジする数があまりにも膨大すぎるのよ。例えば星を跨るアーティスト部門で10年間ナンバーワンの方がいるでしょ?」

「うん。いるな?」

「けどその統計って日本国は含まれてないの。だってその方よりもっと上の方が居るから」

「『そうなの!?プロデューサー!?』」

「ああ、その通りだ。10年ナンバーワンが日本の統計を含めたら順位は一気に下がる。確か最近だと百何十位とかだったはずだ。これは本来非公開情報なんだが、いつかは公表する予定だったから、君らに見せるよ。これだ」

「『・・・』」

「本当だ・・・。日本国含めるのと含めないとでは明らかに順位が違う・・・」

「それだけレベルが違うということだ。一応今回のスケジュールに日本国の芸能人との練習をする予定を組み込んでいる。そこでみてほしいんだ。君たちとどう違うのかを」

「晒し上げにしろと?」

「そういう訳ではない。ただ単に何処が違うのか、学ぶところはあるのか、そういったのをここで目や身体で体感してほしい」

「まあ、そういうことなら・・・」

『次の方どうぞ〜。団体さんでしたら一同にどうぞ〜』

「呼ばれたな。行くぞ」

「『はい』」



遂に出国審査の順番が回ってきた一同。ブース内に入る。



「お待たせしました。40人ですか?」

「はい」

「30人というのは?」

「変更になりました」

「構いませんが、日本国の入国審査はとても厳しいです。入国審査前までに訂正をお願いします」

「分かりました」

「ところであなた達は世界的な有名な方々ですね?次の開催国は日本国ですか?」

「はい。なので出国理由はその開催する為に、です」

「分かりました」

「ここまでどれくらい時間かかりました?」

「呼ばれて丁度9時間ですね」

「大変ですね・・・」

「それはお互い様では?」

「かもしれませんね。以上です。先へどうぞ。それとこちらを送付します」

「何ですかこれ?」

「後ほど分かります」

「分かりました。ありがとうございます」

「それと入国までにかなりの時間を要します。今のうちにお手洗いや食料を準備した方がいいです。ここを抜けて左にトイレ。右が売店になります」

「『ありがとうございます』」



一同は出国審査を終え、今のうちにトイレやら食料を調達し始めた。その時にあのドワーフと合流した。



「おう。無事に出国できたな?」

「はい。まあこれからが本番ですね」

「ああ。ここから先が長い。多分この出国審査の建物出るだけでも1時間は掛かるだろうな」

「そうなのですか。まだあるのか・・・。しかしまた外に出るのは憂鬱ですね。暑いじゃないですか」

「季節は夏だからな。けど安心していいぞ。確かに外ではあるが、日本国の考慮で国境間は屋根付きだ。風は防げないが雨と太陽からの日差しは避けれるぞ。それに屋根まで高いし広いぞ」

「それ聞いて安心しました。君たち朗報だぞ。屋根付きが日本国まで伸びてるぞ。日焼けはしないから安心して良いぞ」

「それはありがたいね。私たちは既にボロボロよ〜」

「まあ、気持ちはわかる。さ。皆終わったみたいだし進もうか」

「『はい』」



出国審査を終えた一同。次は日本国に入国する為に入国審査に進む。当然一同は芸能人の為、同建物内にいたファンからサインや握手を求められていた。一通り終え、更に進み外に出る。だが既に夜を迎えていた。



「外は真っ暗ですね」

「まあ、既に19時だしな。今日は国境間で寝泊まりだな」

「寝泊まりと言いましても、列は常に進むんですよね?」

「ああ。日本国の出入国審査場は24時間開いている。だから常に列は進み続けるんだ。けど寝ないと並んでる最中に倒れるぞ?」

「それはそうですが・・・」

「安心しろ。出国審査官から何か送付されただろ?」

「ああはい。これですね?」

「そうだ。それが整理券だ。順番が回ってきたらその整理券自体から通知が来る。これで寝てても順番が抜かされない意味だ」

「これが・・・。確かにこれは抜かされませんね。けどどこで寝たら?」

「国境間の連絡通路、つまりこの通路から出なければ何処でも寝てても良いぞ。種族によっては天井の骨組みや監視所の屋根に寝るのもある」

「それって良いのでしょうか?」

「公国はどう思ってるかは分からんが、日本国は見逃すそうだ。現にほら。あれが日本の憲兵さ」



巡回で回ってる国家警備隊。その際天井や監視所の屋根も注目するが、寝てることを確認しながらも声を掛けない。



「な?見逃すだろ?寧ろあの長命種の親子には監視所内での仮眠を勧めてるだろ?」

「そうですね。寛容というか寛大というか何というか」

「まあそういうことだ。何処でも寝てていいぞ。あいつらが見回りしてくれるから」

「それもそうですね。ではちょっと寝ますか」

「おう。俺も寝とくか」

「お前らも明日に備えて仮眠くらいは取っておけよ」

「『は〜い』」



一同は夜遅いということもあり、思い思いの場所で寝る事に。特に広々としたブロック塀の上に寝るのが多いようだ。恐らくは冷たくて寝やすいのだろう。当然その光景を見ても誰も咎めない。寧ろ巡回中の国家警備隊からこんな会話が聞こえるほどだ。



「今日も多いな〜。なあ陸曹長」

「まあな。だが仕方ないだろ。入国審査を厳重にしないと俺たちの国は犯罪者の温床となってしまう。だから致し方無しだ。まあ、善人者にとっては苦痛でしかないが、我慢してもらうしかないな。それより空曹長。屋根くらいは良いが、屋根を伝って不法侵入しようとする輩はいるか?」

「暗視ゴーグルとそのスキル及び熱源を辿っているが、今のところはないな。ドローンも同様だ」

「なら良いか。続けるぞ」

「ああ。日付変更時は俺は上空から監視するから、その時は別の隊員に変わる」

「分かった」



こうして一同の1日目の滞在は国境間で寝過ごした。そして翌朝の日の出と共に起床する。



「・・・朝か・・・」

「みたいですね・・・。はぁ〜〜。よく寝た」

「よく寝られたか。それは何よりだ」

「それで、何処まで進みましたかね?」

「さあな。今は順番がバラバラだから、一人一人に声かけてそこの間に入るしかないな」

「けどそれって横入りになりませんか?」

「いや、横入りにはならん。この整理券が証拠だからな。それに横入りしたらその時点で初めからやり直しだからな。そんなする馬鹿はいないってことだ」

「そうですか。なら安心ですね。えっと?では何処でしょうか?」

「取り敢えず他の連中も起こしてからにしろ」

「「・・・」」

「『ぐ〜〜』」

「「そうします」」



一同の残りを起こし、再度並び直す為に整理券の番号を確認する。そしてその番号付近に到着する。



「ここ見たいですね」

「みたいだな。結構進んだのか?」

「どうなの?プロデューサー?」

「さあ?どうですか?」

「う〜む・・・。一応国境自体は超えているから進んでいることには間違いないが、予想より進んでないな。これ多分正午過ぎるぞ?」

「『正午越える!?』」

「え!?マジですかそれ!?」

「多分な。だってよ?考えてみろよ。俺らは出国審査場から出て少し進んだ場所で寝たんだぞ?そして日の出と共に起床。なのに進んだ距離は国境越えた段階。ってことはどう考えても午前中に入国審査場に入るのは不可能だ」

「『・・・』」

「無論。例外は腐るほどあるが、恐らくその可能性が高い」

「マズいですね・・・」

「何がだ?あ、お前らのレッスンか?」

「はい。一応念の為日数には余裕持たせてありますが、想定では今日中に入国審査を終える想定で来たのですが」

「流石に今日中に入国審査場に入ることは出来るだろう。だが通過できるかと言えばそれは違う話になってくるな」

「はい。ですのでどうにかしてもらいたいですが、できませんよね?」

「無理だな。法律に抵触する。どうにもならんな。まあ調整なら通信機器があるから、あれに通信したらどうだ?」

「あ、それは一応先ほど終えました。ですのでそこは良いのですが、彼らの事情もありますし・・・」

「まあ、こればっかりはな・・・」

「はい・・・」

「マジかよ・・・。まだ掛かるのか・・・」

「まさかこれほどとはね〜。想像もしてなかったわ」

「ったく。これ以外の入国の方法はなかったのか?プロデューサー?」

「無いな。陸路の他は空路に海路だが、空路は日本国籍限定しか乗れないし海路は貨物限定だ。これ以外にはない」

「テレポートは?」

「あるにはあるが、日本国は設定していない。それにそれは軍管理だしな。許可人物は受け入れないんだ」

「厳重すぎないか?日本。それだけ厳重だと生きにくくないか?」

「いや?これ私の知り合いが言ってたんだけど、生活は断然日本が良いと言ってたよ。寧ろ故郷が不便すぎて生活が出来ないとか何とか言ってたよ」

「それって地方だからじゃないか?」

「ううん。帝都暮らしだったよ。けど結婚して移住で日本に帰化したんだ。その彼女が言うんだから、それ程ということじゃないかな?」

「そうなのか?まあ俺らには分からない領域なのかもな」

「ね〜」



そして正午を過ぎ、更に時間が進み日が沈もうとしていた。だが既にその時は入国審査場に入場していた、が、一同の顔が酷い状況になっていた。



「お前ら・・・。顔が変だぞ?プロデューサーさんも」

「あなたは平気なのですか?」

「まあな。確かに長かったが、まだ平気だ」

「本当にタフですね・・・。私たちはもう疲弊してますよ。疲れ過ぎて何もやる気が起きませんよ〜」

「まあ気持ちは分かる。俺も初めは同じだったからな。まあここまで来ればもう少しだ。日は既に沈んだが、ここまで来れば今日中には入国出来るぞ」

「本当ですか?」

「ああ。だが最後の関門が待ち構えているのを忘れるな」

「入国審査ですね?」

「ああ、そこの嬢ちゃんの言うとおりだ。一人に掛かる時間は平均2〜3時間だ。まあこれはお前ら団体さんなら別ブースで案内されて一斉審査だろうから、そんな一人に2時間も掛からないだろう。それに代表者がしっかりしていれば残りはただの付き添いだ。そこまで緊張しなくて良いぞ」

「それって逆に言えば私の責任が重大では?」

「それが代表というものだ。頑張れよ。プロデューサー」

「『お願いします!!プロデューサー!!』」

「お前ら、俺に頼りすぎだ・・・」

「『はっはっは!!!』」



そして遂にその出番が回ってくる。



「おっと。俺の番が回ってきたな。ではなお前ら。幸運と企画成功を祈る!!」

「はい!ありがとうございます!!」

「『ありがとうございます!!』」

『次の団体。こちらの部屋へ入れ。全員だ』

「『はい』」



団体専用の部屋に案内された一同。先程までの気楽な雰囲気や疲れによる眠気があったが、一気に目が覚め緊張感が漂ってきた。



「お待たせした。先ずは代表者の方は前へ。入国目的と滞在日数、それと宿泊施設の情報や滞在中の関連する連絡先も申すように。書類もこの場で出してくれ」

「はい。代表者は私です。入国目的はこの国でイベントを行う企画がありそれを実行する為です。こちらがその書類となります。人数は41人。内40名がそのイベントの出演者です。当初は30名の予定でしたが40名に変更となりました。次に滞在場所ですが、イベント主催者が用意した宿泊施設に滞在予定です。こちらがその宿泊施設とイベント主催側の情報となります。滞在中の連絡先はこちらが私代表のものと、イベント主催の企業、それと私らの所属している企業となります。最後に滞在期間は何もなければ1週間の予定です。何もなければというのは、次の開催場所との交渉次第、という意味となります。以上です」

「分かった。照会する。頼めるか?」

「はい。お前も手伝え」

「分かった」

「ではしばらくお待ちを」

「『はい』」



職員が情報の照らし合わせの為一旦部屋を出た。その際双方共言葉を発する事はなかった。それもその筈。警備隊は極力会話を避ける様に教育をされている。寧ろ一つ一つの動作が虚偽の見分けともなる様に訓練されている。その為警備隊隊員は目を片時も話す事なく一同の行動や仕草を観察していた。その鷹の目の様な眼光に一同は戦慄する。



「(ちょっと!?めっちゃ怖いんだけど!?)」

「(それは俺も同じ!!何だあの獰猛な目は!?)」

「(待って。怖過ぎて乙女が崩壊して漏らしそうなんだけど・・・)」

「(そこは抑えろ!!ここで耐えないと追い出されるぞ!!)」

「(けどあっちの子達も見てみ?超怖いお兄さんの顔の前に泣きそうな顔、いやもう既に泣いている子もいるね)」

「(いや分かるけど、耐えて?俺も怖いからさ)」

「何だ?何かあるのか?」

「『いえ!!何でもありません!!』」

「なら大人しく待ってろ!!」

「『はい!!!』」

「『(超怖!!!!何!!??エスパ!!??)』」



暫く時間が経過したが、一同は何とか意識を保つのに必死だ。というのもこの空気感を保つのに並大抵な覚悟では乗り切れないのを分かっているからである。それに飲まれると一気にマズい方向に行くことも分かっているからだ。暫くすると照会の為部屋を出た職員が帰ってくる。



「確認取れました。全て異常ありません。不備も虚偽も無いことを確認しました」

「分かった。次に持ち物検査だ。男女に分かれ、別々の部屋に入ってもらう。先に行っておくが下着を除いて全て着脱する様に。アクセサリーもだ」

「『はい』」



ということで今度は所持品検査である。ここでは下着以外の衣類を全て脱ぎ、持ち物はX線で通される。勿論持ち物は全て外に出され、用途の説明も必須である。まあ変な持ち物は無いのでここは割愛、とはいかない。



「お前とお前とお前。3人は再検査だ」

「「「え?」」」

「え?じゃねぇ。何指示に従わないんだ?俺は事前に言ったよな?アクセサリーも外せと」

「「「あ」」」

「あ、でもない。再度詳細部まで検査だ。こいつらは一度指示を無視した。徹底的にやれ」

「『了解』」



ということで再検査の結果だが、こちらもクリア。だが再検査された3人は威圧的な職員にひれ伏せ、顔を青白くしていた。その顔を見た一同はショックを隠しきれない。



「え?何があった?」

「どうした?目が虚だぞ?」

「お〜い?どうした〜?」

「「「酷い目にあった・・・」」」

「何があった?」

「私たちの好奇心がマズかったの・・・。調子に乗ってアクセサリーを外さなかったから、再検査の際凄い問い詰められたわ・・・。実は諜報道具とか、実はこのアクセサリーには違法な物が入っているとか、違うと言ったらなら何故初めの段階で外さなかったんだ?とか言った正論をかましながらの尋問はキツかった・・・。ちょっと漏らしてしまったから急いでお手洗いに駆け込んだわ・・・」

「あのタフで有名なお前が・・・」

「ごめんなさい・・・」

「いや、大丈夫だ。気をつけような」

「「「うん」」」



その後も続く入国審査に一同の体力は限界を超え、気力だけで立っていた。所持品検査の後に違法薬物試験や道具の持ち込み、禁止されている食品などの持ち込み検査、所持している武器の確認など多岐に渡り審査を受け、全て終了したのは入国審査開始から2時間半が経過していた。そして職員から結果が知らされる。



「失礼する。審査の結果が上がった」

「そうですか。それで?どうでしたか?」

「条件付きでの入国を許可する」

「条件付き、ですか?」

「なに。内容は至って簡単だ。滞在期間延長の申請は期間終了2日前に申請すること。なければ期間終了後直ちに出国すること。遵守出来ないなら警備隊が君らを追う、といったことだ」

「それなら大丈夫です。しっかりと管理致します」

「宜しい。ではこの場を持って入国を許可する。身分証または一時入国証を発行する。お疲れ様」

「『はぁ〜〜〜・・・・』」



その言葉に崩れ落ちる一同。漸く入国出来たのだ。その時間並び始めてから40時間が経過していた。そして職員が来るまでの十数分間の間に脱力する光景が広がるのであった。

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