請求
請求
犯罪集団の同時テロ襲撃から1週間後の平日。襲撃に遭った5カ国は被害状況や復興支援などの打合せとして、各国の首脳会談として、合衆国に集結していた。無論、その会談の内容に日本国からの請求関連も盛り込まれていた。先ずは犯罪集団の本拠地があった連合王国からの話である。
「先ずは事の経緯をお話ししよう。まあこれは言わなくても分かるだろうが、先週、我が国の西端部にある都市から程近い洞窟にその犯罪集団の本拠地が存在していた。ここは既に日本国の爆撃により消滅しているが、出来る限りの調査をしたく、派遣した。これがその結果だ」
「・・・。なるほどな。犯罪集団の正体は7割が国に忠を尽くした奴であったか」
「みたいだな。しかもこの調査報告によると、私の国のみならず、この場にいる5カ国全てに最低10人以上は所属していた事になるな。それが賊にまで堕ちたか」
「しかし何故今まで息を潜めていたんだ?ここまで大きくする必要が無いような気がするが?」
「俺もそう思って捕虜に尋問をしたんだが、なかなか口を割らなくてな。現時点で分かったのが、母国に復讐、だそうだ」
「「「「母国に復讐」」」」
「ああ。何しろ単なる犯罪集団ではないのは君らだって襲撃に遭って分かった事だろ。こやつらは単なる集団ではない事を」
「あ、ああ。どう見ても武器を振り回しているだけの素人ではないのは分かったし、寧ろ手練れにも思ったんだが。まさかだったな・・・」
「ああ。しかも7割のうちの5割以上が元軍人と来た。武器の扱いに慣れているはずよ」
「そら統率能力にも長けている訳だ」
各国が襲撃時、何故あんなに襲撃連中のレベルが高く、苦戦を強いられてきたのかが不明だったが、ここでその理由が判明した。当然各国もその正体に納得した。だがまだ不明なところがある。
「ええ。ですが不明点もありますね。残りの3割です。この方達の出所は?」
「残りの3割は単純に犯罪者や盗賊として登録されている奴らだ。それが全ての残りの割合を占めている」
「あ?そうなのか?それがどうやったらそやつらも組み込めれるんだ?」
「ここも単純な話だったぞ。何でも力関係を示したそうだ。敗者は勝者に対して忠誠を誓わなければならない。背けば処刑という方法でだ」
「おおう・・・。敗者は忠誠宣言か処刑か、一択しかないな。そら大きくなるわな。けど犯罪者も盗賊もバカか?元軍人に勝てる訳がないだろうに?」
「実際にバカなんだろ?実際にあいつらに思考という単語を持ち合わせていると思うか?」
「・・・ないですね。普通にホイホイ引っかかると思います」
「だろ?それにこれは頭良いと感心したんだが、わざとヨボヨボな爺さんを装って盗賊や犯罪者に近づいて、手を出そうと来たら撃退して言う事を聞かせていたそうだ。歯向かえば力関係を示したりな」
「あれ?さっきの処刑は?直ぐにしないのか?」
「何でも先ずは決闘して、そこで賭け事をするそうだ。決闘とすることで背く事をさせないようにするそうだ」
「なるほどな。結構知能も回るみたいだな。それを続けた結果がここまで巨大になったと」
「けどそれでしたらどこからあんな大量な武器や魔道具などを?」
話は武器調達に変わる。
「どうやら武器商人が融通利かせて横流しをしていたそうだ。まあ犯罪集団なら都市の店では犯罪リストに掲載されているし、それに警備隊や衛兵、果てには冒険者たちが黙ってないだろうしな」
「けど一度に大量には流せないだろ?」
「いや、色んな方面に人脈があるそうでな。一人二人ではない。それこそ多い時は100人と繋がりを持っていたそうだ」
「それだけの人数がいれば確かに武器も簡単に集めれるな。道理で犯罪集団の割に武器が豊富な訳だ。・・・しかし厄介だな。武器商人か」
「ええ。この星で武器商人は正規に手続きしていれば犯罪には問われない。つまりその武器承認も正規の手続きを踏んでいるはずです。聴取は出来ますが、牢屋には入れる事は出来ませんね」
「とりあえずそこはいずれ任意として聴取しよう。俺も心当たりがある」
「おや大統領。武器商人に知り合いが?」
「まあな。安心しろ。正規商人だから」
「そこは心配していない。まあこの話はこの辺にして、冒険者ギルドにはどう通達する?あいつらが活発になり過ぎた結果がランクに見合わない賞金首確保か討伐だぞ?」
「あ〜そう言えばそうだったな。当時はランクC−で良かったが、急に勢力を拡大して凶暴化したからな」
「そのせいでAランクでも対処しきれない事態にも発展したしな。まあ盗賊団が犯罪集団に取り込まれたなんて話、信じないだろうからな〜」
「ええ。ですがこの事態は国をあげて対処しないと私たちの威信にも関わります。とりあえずここは此度の件で依頼失敗扱いされた冒険者の特別措置はどうでしょう?例えば条件をクリアすれば依頼失敗を取り消すとか」
「例えばなんだ?」
「別に難しく考える必要はないかと。普通に依頼をこなすだけでも十分では?」
「まあ、上級ランクは自分の実力を把握しているだろうしな。今回はあくまでも相手が強過ぎただけ。何も悪くないと考えれば良いのか」
「ですがそんな他人事で良いのか?というのと冒険者ギルドがそれを許すのかが重要ですね」
「「「「ああ・・・・」」」」
冒険者ギルドのみならずギルドというのは、1国の干渉や肩入れを請けない契約をギルド支部を置く全ての国と結んでいる。つまりギルドというのは一つの国家でもあるのだ。
各国の国王らが少々顔を顰めている理由は、ここまで巨大かつ強大な勢力になった犯罪集団を今まで野放しにした事態に陥っても国軍を出さなかった国家に対し、その要請を受け入れるのかというハードルがあるのだ。しかもその報告を受けていたのにだ。結果国軍を出しても対処しきれなくなり日本国に応援要請をし対処に当たって貰った為、各ギルドから説明を受けていたのだ。『どの面下げて言うんだ?』とな。
「そこは我々のミスとして謝罪しようと思う。勿論ここまで拡大させ被害も出たのだ。そして本拠地を我が国に作らせてしまった責任も取ろうと思う」
「まあ、そこはお前一人に背負わせないさ」
「「俺たちもだ」」
「私も同意します」
「すまんな」
そこから会談は着実に進んでいき、最後にこの議題となる。そう、日本国からの請求である。
「さて、最後の議題に移ろう。まあ正直言えばお前らもこれが気になって仕方なかっただろうが」
「まあ。そこは一緒だな。一応聞くが請求書はお前らにも来たのか?」
「恐らく全員来たと思うぞ。なあ?」
「「「「(コクコク)」」」」
「この通り、各国の財務関連が請求書を受け取っている。それで一つ聞きたい。お前らはどうやって支払いするんだ?」
「多分お前らと同じだろ?犯罪集団から押収した物品や金品を換金してそれで支払いをする。と」
「まあそうなるだろうな」
「俺もだ」
「俺も」
「私もです」
「満場一致か。まあそうなるだろうな。それで?お前らは全額払えるのか?因みに俺はギリギリ足りないから多少は国庫から出す羽目になるな」
「そんなに高額なのか?まあ俺も結構高額ではあるが、合衆国程ではないのだろう。こっちは全額支払いが出来る」
「う〜ん。恐らく支払いが出来るのは王国のみでは?俺ら帝国も国庫を開ける事になるな」
「そうですね。宗教国も同じですね。しかも私たちは分割での支払いが確定しているのです」
「「「え!?」」」
「あ〜宗教国もか・・・」
「「「も?」」」
「え?も、てことは、連合王国もですか?」
「ああ。俺も分割支払いだ」
「何で2国は分割なんだ?」
「まず私の国ですが、犯罪集団の対処に当たっていた宗教警備隊ですが、かなりの被害が出てしまったのです。それも私たち宗教警備隊が押され、東端部の都市を制圧されたくらいに」
「奪われたのか!?」
「はい。なのでそれも含め、日本国に追加支援を要求したのです。そしたら追加費用は掛かるけどその代わりその都市制圧を保証すると打診があったのです。その提案に考える余地はありませんでした。それでその追加支援を飲んだのです。これでも温情で安くはして貰ってますが、それでも高額に変わりはありません」
「宗教国はそんな感じか。連合王国は本拠地があったのも相まって日本国に救援要請した時に次いでに言ったんだ。『本拠地爆撃も頼む』とな。だから費用も掛かってしまったのだ」
「因みに請求金額を見ても良いか?」
「はい。担当者。こちらに」
「はい」
「なら俺も出すか。おい」
「はい」
請求金額を見る3カ国。その請求金額を見て仰天した。
「おい!?結構高くないか!?」
「まあでもこんなものと言われたらこんなものか・・・」
「ああ。何しろ空軍を動かしているんだ。それだけ高くなるのも無理ないだろ」
「はい。しかも私の国の都市奪還もして頂いたのです。その対価と考えれば安いものかと」
「「「・・・」」」
「因みに日本国って動員数は?」
「詳しくは聞いてないが、恐らく5カ国合わせて6千人くらいじゃないか?」
「「「「6千!?」」」」
「はあ!?いくら何でもそれはないだろ!?」
「けど動員数聞いたら千人オーバーくらいだと言ってたぞ?」
「あ、それ私も言ってましたね」
「てことは本当に多くても6千?100万に6千?」
「10軍団規模相手に2〜3連隊規模で打ち勝つ日本国って・・・」
「しかも相手の大半は元軍人。生半可な敵じゃなかったのに普通に勝つなんてな」
「ああ。俺たちが必死こいて戦った敵に僅かばかりの動員数で圧倒するとはな」
「つくづく敵に回すものじゃねぇな」
「ええ」
こうして超強大な犯罪集団の事案は幕を閉じた。各国は、厳密に言えば2カ国はこれから毎年の支払いとして国家予算の5%を日本国の支払いに充てる。これを5年にした。5年にした理由はこれも日本国からの提案である。多少支払いがキツいかもしれないが、5年以内に返済出来れば金利が高くなることもないし、国民の負担も減らせれるといった考慮からである。勿論2カ国ともそれに同意した。それとこれからそれぞれの国の復興もある。これからそれに尽力しろという無言の援助でもある。各国はそれを分かってるのかは、まあ各自に任せる。




