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翌日〜1週間後

前回の続きです。

次回、別の物語となります。

翌日〜1週間後





飲み会の翌日、本人はとある場所に向かっている。



「ここに来るのも久しぶりだな・・・我が家」



本人の生まれ育った場所だ。だが顔色はそこまでよろしく無い。理由は後で判明する。とりあえずノックをする。

コンコン



「お〜い・・・。誰かいるか〜?」

「・・・」

「いないみたいだな・・・。まあ今日は残りの荷物を片しに来ただけだから、長居は無用だな」



そう言い、自室に向かう本人、いやまもなく元自室になる我が家に乗り込んだ。自室に上がるまで我が家を探索していた。まあ如何せん12年も帰ってなかったのだ。何となく新鮮に感じてしまうのも無理ない。だが直ぐに気持ちを切り替え、自室に入ると少々目を見開いた。



「まあ流石に12年間一度も帰ってないとこうなるか・・・」



何故溜息が出たかと言うと、簡単に言えば模様や家具が様変わりしていたのだ。恐らく険悪な仲である()()がしたのだろう。殆ど本人の私物が残ってなかったのだ。



「まあ早くから自立するために私物を出来る限り増やさずにしたからな・・・。けど流石にあれは残ってるかは確認しないとな。確か俺の隠し所の・・・、クローゼットの・・・ここだ」



そう言いとある場所を開けた。そこで目を見開いたと同時に安堵の雰囲気になった。残ってたのだ。



「流石に13で急に家出を決意したんだ。急だったから記憶があやふやだったが、以前の俺が忘れずに、そして悟られる事なく残ってたな。たった2年だったが、とても楽しかった思い出の品々。特にあの女子は絵がとにかく上手かったからな。色褪せも破けも無く残ってるのは、流石に感動するな・・・。あの時、急に俺たちと親しかった奴らとの集合絵。色々バカやったな・・・」



そう思いに更けていた。が、その時間は突如終了を迎える。



「さて・・・飯は・・・」



ここの家族のお帰りである。



「流石に長居し過ぎたか・・・。まあ鍵が変えられてなかったのは幸いしたが、施錠はしてないからな。不審がるだろう。しくったな・・・。まあ窓から見る限りはアイツらではなく、兄弟らだからそこまで気にしなくて良いかもな

。まあちょっとだけ様子を見て、窓からか普通に接するかはそこで決めるか」





・・・・・





その頃、一家集団は談笑に浸っていた。



「姉貴。今日の飯は?」

「今日はカレーだよ」

「お?俺好物」

「私も〜」

「けどよく手に入ったな?今価格が高め傾向だろ?」

「ええ。けどいつも行ってる野菜売り場が盛況に賑わってたのよ。そこで私も釣られてね。行ってみたら野菜がお手頃価格で販売していて、おばちゃんに聞いたら『冒険者達が害虫駆除してくれたお陰で野菜が採りやすくなったから今までの詫びと共に安く販売する事にした』と言っていたのよ。そこで私も大量購入したの。ほら。私達の家族って大家族でしょ?」

「まあな。何なら上の兄貴と姉貴は金の無駄使いを避ける為に奥さん旦那さんと共にうちに住んでるしな。そのうちパンパンになってしまうぞ?」

「でも賑やかなのは良いことよ?」

「まあな。それよりこの野菜を早く調理しようぜ」

「それもそうだね・・・ってあれ?」

「どうした?」

「鍵・・・開いてる・・・」

「『え?』」

「誰か閉め忘れたか?」

「え、でも私たちで無人よ?」

「俺も見たな・・・お前が閉めるのを」

「私も見た〜」

「俺もだ」

「じゃあ〜誰?」

「まさか・・・泥棒・・・とか?」

「『・・・』」

「マジ?」

「分からないわ・・・ちょっと考えましょ?」

「ああ・・・」



「あれ?どうかしましたか?」

「何地面に座ってるんだ?」

「何してるんだ?お前ら」

「・・・何かあった・・・?」



「長姉、義兄、長兄、義姉」

「お姉ちゃん達。実は泥棒が入ってる可能性が・・・」

「『は?』」

「マジなのか?」

「うん。鍵閉めたのに、何故か開いているのよ・・・」

「そうか・・・なら義弟、俺たちの出番だぞ」

「おうよ義兄貴!!俺たち現役冒険者の出番だな!?」

「ああ。俺が魔法で偵察する。お前は安全確保しながら泥棒のいる部屋まで行け」

「義兄貴は?」

「お前の後ろに付いて行く。目的の部屋に着いたら同時に乗り込むぞ。俺は魔法で。お前はその剣で斬れ」

「おうよ!!!」

「私たちは?」

「お前らはここで待機だ。鉢合わせたら安全の保証を持てない」

「分かったわ」

「気をつけてね?」

「ああ。奥さんを置いて逝けるかよ」

「うん・・・」

「行くぞ!」

「おう!」





・・・・・





その頃、本人は普通に冷静でいた。いやこの状況下で冷静になれるのは何か違う気がするが、そこは突っ込まない。



「う〜ん・・・・。どうやら12年見ない間に家族が増えているとはな・・・感慨深いな・・・。っと感傷に浸ってる場合ではないな・・・。ここは窓際に立って奴らが突入するのを待つか」



いや、だから何故平然と居られる?下手すれば不法侵入した泥棒だ。その思考に何故ならない?

そうこうしてるとギシギシと階段を登る音が聞こえ、止まる。



「ここみたいだ」

「気配は?」

「ある・・・。一人だな?しかも動いていない?」

「は?盗品を漁るのに必死になって視野が狭まってるとかか?」

「さあな・・・。突入するぞ・・・」

「ああ。義兄貴のタイミングで入るぞ」

「分かった・・・ゴ〜!!!」

「誰かいる!!」

「俺は魔法で、お前は斬れ!!」

「おう!!くらえ!!!」



「えっと?魔法にはこの魔法で相殺。剣技は剣を防ぐ手袋で掴む!!」



シュン!!!ガシ!!!



「「!?」」

「お見事だお前ら。だがまだまだだな?」

「何者だお前・・・」

「俺の剣技を受け止める!?お前何者・・・ってか剣が動かない!!!こいつどれだけ力が強いんだ!?」

「待ってろ!!今助け」

「はい。また魔法を相殺したぞ?」

「く・・・」

「俺は冒険者ランクCーだぞ!?それに勝てないとか・・・」

「まあその辺にしておけ。それよりそろそろ気づいてほしいな?特に弟には」

「「弟??」」

「バカ言え!!この家には何人も兄弟姉妹がいる!!出て行った奴なんて・・・なんて・・・あれ?」

「どうした?」

「・・・」

「なあお前?確認させてほしい」

「何だ?」

「お前・・・、12年前に急に出て行った・・・、次兄か?」

「え!?」

「覚えてくれたようで有り難い限りだ」

「・・・」

「どうした?」

「いつ帰ってきたんだ?」

「15分前だ。12年前の私物の残りを取りに戻ってきただけだ。そろそろ退散しようと思ったらお前らが帰ってきたと言うことだ」

「そうだったのか・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」



突如沈黙が訪れた。まあ急に帰省した行方知らずの次兄と突如の対面である。それと義兄とも初対面になる為、一時気まずい雰囲気が漂う。それを打ち消したのが



「ねえ・・・どうなったの?」



下で待機してた家族の登場だ。



「あ、ああすまない。泥棒は居なかった。居なかったのだが・・・」

「何?曖昧ね?」

「いや、義弟がな・・・」

「何?弟が何かあったの?」

「いや、目の前の人物を見て固まってるんだ・・・」

「え?どう言うこと?」

「こっちに来れば分かる」

「?・・・・え・・・・」

「お前らも」

「「え?」」

「大きくなったなお前ら」

「『・・・』」



一同、またもや静粛になってしまった。まあ時間も時間の為、今日のところは退散しようとした本人。だが本人の姉から「今日は色々話したいから泊まって」との鶴の一言で泊まる事になった本人。だが懸念点もある。両親だ。



「親は?アイツらが帰ってくるのなら俺は泊らんぞ?」

「それは平気だと思う。ちょっと用事で1週間ほど帰ってこないから」

「そうか?なら良いが・・・」

「泊まっていきなさい。久しぶりに積もりに積もった話があるし」

「・・・お手柔らかに頼む・・・」

「はいはい」



本人は両親が帰ってこない事に安堵し、お世話になることに。なお本人は部外者の為、料理などを手伝おうとしたが、姉が却下した「客人は大人しくしろ」とのことだ。なので比較的直ぐに打ち解けた下の弟妹らと戯れ、ある程度遊んだ後食事となり、食事を済ませた直後に話が切り出された。



「晩御飯の後にごめんね。早速話を聞きたいの」

「何をだ?」

「まずは初対面と挨拶」

「あ?ああ済まない。12年前に家出以降一度も帰ってこなかった、次兄だ。兄弟順では3番目になるな」

「これはこれはご丁寧に。私はこの家に入った婿になります。よろしくお願いします。それと先ほどは・・・」

「気にするな。そうなるのも無理ないしこちらも配慮が無かった。済まなかった」

「いえ・・・。次は?」

「私になるね。君のお兄さんと結婚したの。今はさっき紹介した夫婦共々子供はまだ居ないけど、よろしくね」

「はい。お願いします。それで?」

「次は、今この場にいる全員に突然の消息不明になったことへの誠意」

「・・・まあ何も言えんな・・・。12年前に急に消えて申し訳ないかった、が、原因は分かってるだろ?」

「まあね・・・。まさか本当にあの後家出するとは思わなかったんだもん。私、悲しかったよ」

「済まんな」

「まあ次兄と親の仲は最悪なのは知ってはいたが、こうなるとはな。そしてこうして急に戻ってくるとはな」

「だから済まんって。それとまさか冒険者ギルドに登録してるとはな」

「まあな。今は金稼ぎに勤しんでいるんだ。勿論無理はしてないぞ?」

「そう言ってダンジョン弾丸踏破をやってのけたのは誰だっけ?」

「あ、あははは・・・」

「まあまあ、その辺で。他には?」

「そうね・・・。急に居なくなった12年前から今の今まで、何をしてたのかを聞きたいわね。話せれる範囲でいいから」

「と言ってもな?実はあの時学校に通ってたのは知ってるだろ?」

「うん。そうだね」

「あの学校にあの後も普通に通ってたぞ?」

「『え?』」

「け、けど一度も見なかったわよ!?」

「俺が避けてた。だから見なかったのも無理ない」

「そうなの・・・。それで、卒業まで居たの?あの学校に」

「ああ。一部の生徒以外は良い奴ばかりだったから助かったな。んで卒業式終了後直ぐにこの国を出た」

「『国外へ・・・』」

「通りで見つからない訳だ。国外にいちゃ俺たちも探せんな」

「まあそう言うことだ。そこからは俺も冒険者と商業に登録して流浪として5年間過ごしたんだ」

「お兄ちゃんも冒険者してたんだ。ランクは?」

「当時はDくらいだな。偶に珍しい植物とかを採取して、それを商業とかに売ってた」

「そうだったんだ。けどDだったら俺たちの攻撃を防げないよな?」

「そこは俺も不思議に思ってた。そこは?」

「当時のままならお前らの攻撃を交わせなかった。確実にな。変わったのは7年前だ。とある国に住居を構えた。今はそこに住んでる」

「何処なの?」

「日本国だ」

「『え!?』」

「あ、兄貴って日本人になったのか!?」

「ああ。この通り身分証も日本に帰化してる」

「けどあの国って観光目的でも入国が厳しくよね!?どうやって!?」

「姉ちゃん。落ち着け。話すから」

「ご、ごめんなさい・・・。それで?」

「観光目的でも厳しい審査があるのは当然だな。じゃなきゃ治安維持出来ないからな。まあ俺は当時着のみ着のままで仕事を探してたからな。というのもちょっと依頼失敗してな。違約金を支払って路銀が底つきそうになってたからな。ちょっと必死になってた。そこで入国審査の際、入国目的を移住希望、但し戦争難民とかではない項目にマルして、審査が通って初めは移住前の審査があって、そこで色々と試験があるんだ。内容は言ってしまうと情報漏洩に当たるから言わないでおくけど、とにかくそこで頑張ったんだ。その試験を3年以上毎日一個一個クリアしていって初めて日本国の住民になったんだ。住居構えたのは資金も相待って3年前だな。そこから転職を一回して今に至る」

「試験が3年以上って・・・何があるのよ・・・」

「それは行ってからのお楽しみ。因みに試験通過率は3割らしい」

「良くその試験を通過したな・・・。義弟よ」

「まあな」

「これだけは教えて?試験って紙なの?」

「紙は一切使わない、事だけは教えておこう。これ以上は情報漏洩で逮捕される」

「ここは国外よ?だいじょうぶ」

「日本は監視社会だ。日本在住の条件にその監視社会に馴染む必要がある。今も監視中だ」

「『え!?』」

「遠方から見てる。例えば試しに・・・『ここの試験内容は』」



ピーピーピーピー!!!



「な、何!?」

「このステータスに異常を知らせる。表示するとこう書かれている。これは読んで良いぞ」

「『貴殿は情報漏洩の疑いがある。今回は貴殿の家族に警告の意味として一部分の単語使用したと確認した為、今回は不問とする。これ以上は法執行機関からの出動の可能性がある。注意しろ。日本国』」

「このように警告を発する。これ以上踏み込むと俺は日本国の牢屋に入れられる」

「に、日本国ってそんなに生きづらいの?」

「普通に生活してる分には大丈夫。変な話学校試験の対策とかはある意味漏洩なんだが、それは平気だし、それすらダメとなると本当に生きにくくなる。あと別に食材や金の取引は合法なら国も関わってこない。要は監視社会だけど、普通に生活してる分には構わない、と言うことだ。対象はあくまでも国が発行、配布、施行などをしたのみになる。変な話『企業の誰々が辞めた』とかを部外者に言ったところで対象外。まあ勿論企業の情報漏洩は国や企業関係なく犯罪ではあるが、それくらいだ。逆に言えばこれはこれで生活しやすいぞ」

「は?何でだ?」

「犯罪者確保が迅速に出来る。言ったろ?監視社会だと。色んな場所に見張りの機械がある。カメラと言うんだが、これが至る所にあるから、犯人の逃走経路を割り出すことが出来るし、カメラ自身も攻撃能力があるから足止めにも出来るんだ。あとは確保されるのを待つだけだから、あの国で犯罪は滅多に起きないんだ」

「それはそれで良いわね。最後に発生した犯罪は?」

「犯罪ではないかな?喧嘩の仲裁に警備隊が駆けつけたくらい。本当の犯罪はここ1年起きてない。最後に起きたのは去年で盗みだが、10分で犯人確保した」

「『すげ〜・・・』」

「あの国は数千年経っても凄いのは分かったとして、今は義弟は何の職業に就いてるんだ?冒険者とかではないんだろ?」

「ああ。初出勤はまだなんだが、今ここで働いている。これだ」

「?これは?」

「バッジと?」

「IDだ・・・え」

「『え!?』」

「ね、ねえ・・・。見間違いかな・・・。今日初対面の・・・夫の弟が・・・あの・・・、日本の警備隊の・・・バッジを・・・持ってるんだけど・・・」

「落ち着けよ我が嫁・・・。見間違えではないぞ。俺の目にも同様の光景が広がってるぞ・・・」

「と言うことは見間違いではない・・・てこと?」

「そう言うことだ。俺は日本国に戻った後、日本の国家警察、日本の都市又は地方警備隊に所属が決まってる」

「『・・・』」

「どうした?」

「どうしたもこうしたもないわよ・・・。粗相したか確認をしてるのよ!」

「気にしなくて良いのに・・・。それに俺の階級は一番下だから威張る事も出来ないぞ?」

「私たちにとっては十分威厳が凄いの!!」

「そうなのか?まあ別に良いや。そこは気にしなくて良いぞ」

「それは・・・」

「それより時間はいいのか?」

「え?」

「もう10時だぞ?」

「嘘!?明日の支度をしなきゃ!!もう!!弟のせいよ!!」

「俺のせいなのか?」

「罰として手伝いなさい!!」

「はいはい・・・」

「あ、それと、おかえり」

「『おかえり!!』」

「ああ、ただいま」



こうして超特急で食器や翌日の仕込みを終えた家族はそれぞれ寝床についた。本人は久しぶりの会話を楽しみ、明日以降の予定を立て、目を閉じた。

家族が目を閉じ夢へを旅だった頃、別の場所ではとある会議が執り行われた。



「お父様。並びにご出席の方々。準備が整いました」

「ご苦労我が息子。協力者は?」

「はい。そちらも抜かりなく」

「宜しい。では取り巻きと共に初めてくれ。どうせ学生時代からの付き合いだ。話は通ってるだろ?」

「はい。では失礼」

「侯爵様。まもなくですね。私参謀感動でございます。あと数時間後にあの領地は我が当主になるのですから」

「ああ。あの忌々しい平和領主にあの地位は似合わん。ここで我になり、果ては・・・公爵、国王、になるのは世襲制だから脅迫も、だな」

「はい。今の平和は少々我々には弊害でございます。そこで我々が掌握するのです」

「ああ。だが我のみではどうしても遂行できない。そこで、お前ら協力が不可欠だ。勿論成功の暁には褒美を用意しよう」

「はい。私と妻、いつまでもお付き合い致します」

「だが家族が付いてこなかったのはな・・・」

「ええ。ですがいつかは必ず、家族も・・・」

「そうなる事を祈ってる」

「はい」





翌日、いつも通りの起床時間ではあるが、どうもいつも通りの起床とは違ったのを本人は見逃さなかった。



「とりあえず起きるか・・・」



そう言い、下のキッチンに移動する。そこで朝飯調理中の義姉と出会う。



「おはよう」

「ああ、おはよう義姉」

「何でぎこちないの?緊張してるの?」

「そう言う訳ではない。ただ胸騒ぎがな」

「何?嫌な予感って事?それって日本の都市警備隊が故の?」

「可能性はあるな。あの学校に入校すると何が何でも五感が鍛えられるからな」

「・・・聞きたいような聞きたくないような・・・」

「聴かない方がいい。それと恐らく俺の予感は当たる。それを取り除くために行ってくる」

「そう。気をつけてね?他には私から言っておくから」

「頼みます」



そう言い、家を出た。行き先は取り敢えず向かうがままに。大分ザックリ過ぎるが、意外にこれが功を奏する時がある。そう思いとある方面に足を運んだ。そのまま都市を出て2時間歩いた後一旦足を止める。そしてとある山脈を注目する。



「恐らくあの山から変な感じがするな・・・。一応偵察用魔法を発動すると同時にこの国の王家直属の衛兵の派遣を・・・、って思ったが、そもそも一般人、しかも外国から来た民の為に派兵するとは思えんな・・・。かといって俺の権限だとこの国では通用しないしな・・・。おとといの飲みの席では偶々近くにいたから簡単に引き渡しが出来たから良いとして、今回はどうするか・・・。恐らく俺の予感は何処かの上級階級貴族だ。辺境伯とか侯爵とかな。となると本来は同等かそれ以上なんだが・・・、一か八か試すか。まずは偵察、目標はあの山っと・・・」



取り敢えず、とある作戦を実行に移す為には情報収集が重要と考え、魔法で偵察。その結果



「ビンゴ〜。そして音声もここで入手っと。そして偵察しながら映像及び音声チェック」

『当主。作戦実行日はいかほどに?』

『3日後の昼間に行おう。そこであの侯爵は没落してもらおう』

「3日後の昼間?結構時間無いな・・・。それと公爵?侯爵?どっちだ?」

『しかしこれで大規模都市に4つの貴族のうち一つを潰すことが出来るのです。一歩覇権に近づきましたね』

「一つの都市に4つの貴族・・・。と言うことはあの襲撃者は侯爵貴族当主それと関係者、そして4つの貴族が乱立している都市はこの国では5つ都市があるが、4つは伯爵以下だ。辺境伯以上は1つしかない。ということは被害者は奴らと同様の階級の侯爵だな。侯爵が侯爵を潰す。何ともまあ良くある光景だな・・・他には・・・おっと?」

『おい。貴族軍の様子は?』

『はい。問題ございません。あるとすれば皆戦いたくて仕方ないみたいです』

『はっは!!血の気の多い連中なこった。良いことだ!!ベースは?』

『は。領地の様子も以前変わらず。問題ないです』

『宜しい。この作戦が終えた後はお前に良い女を紹介してやろう』

『良いですね。ただ我妻にも良い男を』

『分かってる分かってる』

「まさか両親をここで見てしまうとはな・・・。落ちる所まで落ちたな。それとベース。ベースってあの当主らのアジトで良いんだな。まあそれ以外には考えられんな。といっても同じ都市内でそんな野蛮ってバレないものなのか?」

『協力者は?』

『はい。我々の取り巻き連中は皆準備を終えています。いざとなれば彼らも派兵が可能です』

「どうやらそういうことみたいだな。情報を分散させるとは、中々頭回るみたいだな。だが音声ではどうしても物的証拠に欠けるな・・・。他には?」



そう言い、更に軍団の中を奥へ奥へ進め、指令部と思われるテントを見つけ、侵入する。



「おっと?これは好都合。どんどんムービーで捉え、クラウドに保管。しかも更に好都合なのはあの中に取り巻きの正体や協力者の名簿があった事だ。まああれだけの規模だから覚えきれんのだろう。しかしこれはこれで困った。どう考えても1チームでは足りないな。まあ幸いなのは王城内に協力者が無いのは幸いだが、現状最低千人は欲しいな・・・。しかもこれはあくまでも必要最低限の動員数だから、あの軍団や抵抗された事を考えるともっと欲しいな・・・。しかも同時に現場を抑える必要があるから失敗も許されんしな・・・。まあ取り敢えず録画しながら王都へ向かうか・・・。転移魔法起動。行き先王都門前」



そう言い王都へ向かった。検問所が空いていることを祈って。結果は



「20分待って通れたからまだマシか。それより王城王城。距離があるから路地裏から転移して・・・はい到着」



王城前の路地裏に転移し、王城正門に向かう。



「ここか。すいません」

「なんだ?ここから先は立ち入り禁止だぞ」

「すまんが取次いでもらいたい人物をお願いしたい。名前は分からない」

「名が分からんが取り次げ?何故に?」

「まあ不審がるのも無理ないな。だがこうやって門番に話通しているんだ。最低でも不審者では無い。聞くだけでも。それともお前は話すら聞かずに追い返すのか?」

「・・・まあ良いだろ。それで?誰に取次いでもらいたいんだ?」

「先ほど申した通り名前は分からない。そこを前提にお願いしたい。先ず国王及びその周辺」

「お。お前!」

「まあ待て。話は最後まで。何もまだ終わりでは無いから」

「終わりではない?続けろ」

「どうもありがとう。先ほど申した人物と、法律関係、貴族関連、経理関係、宰相や大臣にも取次いでもらいたいな」

「結構多いな。他は?」

「それとこれはお前らにも関係あるんだが、憲兵または衛兵、それと警備隊隊長たちも取次を」

「「?」」

「どうした?」

「あ、いや・・・。その役職が付く人物の取次をお願いする、そして貴族関連も出るということは、もしかして」

「・・・」

「貴族の汚職か何かか?」

「ご明察。だが俺はその汚職した貴族の名前を知らない。分かるのは階級のみだ」

「その階級は?」

「侯爵だ。公の方では無い方の侯爵だ」

「「こ、侯爵家!!??」」



お?これは良い反応だぞ?とニヤリ



「ああ」

「因みに何処の領主だ!?」

「話によれば1つの都市に4つの貴族だ」

「おい・・・。まさか・・・」

「間違いない・・・。あの都市だ・・・。失礼。最後に聞きたい。証拠はあるか?」

「あるがここでは出せない。周りが気になる」

「確かにスパイのリスクはあるな・・・。分かった。急いで取り次ぐ。但し条件としてはお前の後ろに近衞兵が付く。それだけは了承しろ」

「ああ。それは構わない。それより急いで呼んでくれ。恐らく時間の問題だぞ」

「分かった。おい各方面に取り次げ。俺はこいつを玄関まで連れて行く」

「俺らが行こう」

「頼む。要望は?」

「そうだな・・・。急ぎたい為、飲み物のみ受け付ける。菓子等は不要とのみ」

「分かった。頼んだ」

「了解した」



思ったより早く取り次ぐ事ができ、先ずは一安心するが、状況は刻一刻と悪化している。流石に時間は無駄に過ごせないと思ったのか、少々力技を使うことに決めたのである。その技は直ぐに分かる。



「お待たせしました。こちらの席でお待ちください。お飲み物は如何いたしましょう?」

「温かいのであれば何でも良い」

「かしこまりました。お待ちください」



「お待たせしました・・・ではお待ちください」

「ああありがとう。ああそうそう。メイドさんはこの後は?」

「私は私の業務がありますので、このままこちらの部屋から後にします。如何されました?」

「出来ればメイドさん達やメイド長、それと執事長や執事達をこの部屋へ。貴女達も関係ある話ですので」

「?はぁ・・・。でしたら少々お待ち下さい」



そうして暫く経ち、召集を受けた者が全員集まり、席につき飲み物を配布していた



「ありがとう。下がって良いぞ」

「はい。ですが今回こちらの来客様が私達執事やメイドにも同室をお願いされております。何でも私たちにも関係があるとか?」

「そうなのか?まあそれなら良い」

「ありがとうございます」

「さて、急に我ら王族にも召集をかけるとかほとんど無いんだが、呼び出し人は私の対向に座ってるお主で宜しいな?」

「はい。私がお呼びしました。突然のご訪問申し訳ございません」

「良い良い。幾つかの書類を片すのに時間を要してるだけだ。他も急ぎはないのだろう?」

「『はい』」

「でしたら幸いです。では時間がないため早速本題に移らせていただきます」

「ああ、何でも貴族の不正を暴きたいそうだな?確かに一部の貴族がそういうのに加担してるのは知ってるが、証拠がなくてな・・・。持ってると聞いたが?」

「はい。お持ちです」

「なら出してくれ。それとお主は何者だ?」

「まずは私からお話ししましょう。私は13までこの国に住み、今は別の国で国家機関にて職務を、厳密に言えば初勤務がまだなのですが、現在はそこで来週から職務に励みます」

「別国の国家機関?失礼だが、その国は?」

「はい。では私の胸当たりをご覧ください。バッジがお見えになるはずです。お立ちします」



一同が本人の首から下がってるバッジを見て固まる。そう、少々力技を使う方法は、早速自分の身分を証明する為である。そして



「『た、大変申し訳ないです!!!お待たせしてしまい!!!!』」



国王含め一同皆膝ついた。



「言う順番が逆だ。お待ちして申し訳ない、だろ?別に構わん。それと俺の権力は外国では効かない。外国でもお構いなしに権力が効くのは国家警備隊、つまりは日本の国家憲兵だ。俺はあくまでも本国でしか効かない都市警備隊。捜査権も逮捕権もない。なのでこうやって貴方達に協力を願い出るしかないのです。引き受けていただけますね」

「は、はい!!それは勿論!!」

「では今から証拠を出します。こちらをご覧ください」



そう言って現在まで録画している映像を見る一同。その軍団数とこの不正に関わった数、協力者、関係者。その数に呆然としていた。やがて国王が口を開く。



「こ、このような証拠をどうやって・・・」

「まあそこは日本の技術だな。教えは出来ん」

「だろうな。だがこれは確かに日本の技術そのもの!!音声も記録として残ってる。これを使って更なる証拠をかき集めることが出来る!!だが問題は・・・」

「はい。時間がないことですね。今日を含め残り2日で各拠点に配備しなければなりません。それも被疑者に悟られる事なく。正直間に合いません・・・」

「どうしたら・・・」

「おい。何か忘れてないか?」

「え?何がです?」

「俺は日本の都市警備隊だぞ?お前らの移動なんて容易に出来る」

「どうやって・・・」

「俺は転移魔法が使える」

「『!!!』」

「そ、それは本当か!?」

「ああ」

「ま、まさかロストマジックを使えるとはな・・・」

「言っとくが、日本では覚えさせられる。それほど迅速な行動が求められるんだ。まあ確かに数はそれでも少ないがな」

「そ、そうなのか!?」

「ああ。だから明日までにかき集めれる分だけ掻き集めろ。移動は俺の魔法で転移だ」

「ですが魔法の消耗が・・・」

「構わん。不正を見逃すことが俺には不都合だ」

「・・・感謝する!!」



その後も打ち合わせを行い、今日の会合を終えた。王城から去り際に本人から出たセリフに皆戦慄した。そのセリフは



「ああそうそう。この件で失敗した場合は、日本領土からの派遣を要請します。その際一部土地が焦土と化す可能性があります。それを踏まえた上で作戦を練ってください。私は引き続き証拠収集に努めます」



どう考えても脅迫である。しかも作戦失敗=国の面目丸潰れどころか、焦土と化す=領土減少を意味する。その為国王含め王城全員今回の作戦に失敗は許されない。それが胸に刻み込んだ瞬間でもあった。


翌日。朝から王城に赴いていた。



「どうも」

「お、お疲れ様、です」

「そこまで噛まなくて良いし緊張もするな。普通に接しろ。それで?人員は集まったか?」

「一応大部分は集まった、が、まだ完全には集まってない」

「残りは?」

「千ちょっとだ。どうしても軍団に対抗する数を集めるとなるとな」

「なら他拠点は全て集まったのか?」

「ああ。そこは全て集まった」

「なら準備出来次第直ぐに飛ばすか」

「飛ばすと言っても、一応転移魔法を使うとは聞いているが、そんなに大規模の輸送なんてできるのか?」

「アホか。それくらいの訓練は受けてる。さてと。入るぞ」

「ああ。この門を入って左手に皆集めてる」

「分かった」



「流石王家所属と直属兵士や警備隊達だな。この数ならどうにかなるだろ」

「お疲れ様です」

「お疲れ様。えっと?」

「今回合同で犯罪者を捕らえる為、選出していまして先ほど終えました。私が総隊長です。担当は軍団への派遣です」

「ああ。よろしく頼む。それで?結構集まってるなら飛ばそうかと思ってるんだが」

「あ、はい。そしましたら軍団への派遣以外はいつでも構いません。既に事前に打ち合わせも終えていますので」

「分かった。なら頼む」

「はい。お前ら!!仕事だ!!!悪徳領主らを捕らえるぞ!!!」

「『おおおおお!!!!』」



そう総隊長が各隊員に鼓舞をし、その直後に転移魔法で各拠点へ転移。残りは軍団への派兵のみとなった。



「それで?いつまで掛かる?」

「もうまもなく終えます。あれで最後です」

「思ったより時間が掛かったな」

「すいません。どうしても急には集めれなかったので」

「まあその辺りは仕方ないな。取り敢えず飛ばすか」

「お願いします」



「それで?どちらですか?」

「あの山だ。あの山の中に軍団がある。ほれ偵察」

「おい。千里眼を使え」

「はい・・・。確認できました。紋章および人数も確認。約1万を確認です」

「1万か・・・。まあ貴族軍だしな」

「どうだ・行けそうか?」

「はい。この先以降は我々にお任せ下さい。貴方は引き続き偵察を」

「はいよ。頼んだ」



ここで本人の思考に移ろう。


いや〜もう既にやること終えてるんだよな・・・。簡単に言えば既に証拠も完璧に掴んだし、原本も回収したし、賄賂や改竄の証拠もあるし。何より違法人身売買の被害者も保護したからもう俺の出る幕はないんだよな・・・。まあこの先はあいつらに任せて、俺は徹夜続きだから寝るとするか・・・。おとといから偵察で徹夜なんだよ・・・。


視点を戻し、翌日の決行日。結果から言えば大成功に終わった。何しろ敵は次の日に決行予定がまさかの王家から派遣された兵士や警備隊達に作戦を潰され、尚且つ囚われの身となったのだ。勿論反発したが、動かぬ証拠がわんさか出て突きつけられた結果、項垂れる事となった。逮捕された数は3桁にも上り、関係者諸共最低でも永久前科持ち。次に生涯犯罪奴隷として売られる事となり、各国に犯罪者として記録に残った。それは勿論侯爵貴族当主は勿論の事、その子供も加担してた為、同じように処分された。加担してなかったのは本当に知らなかった極一部と使用人のみだった。そしてこの夫婦も死刑として言い渡された。



「な、なあ。お前らは俺たちの事信じているよな?そうだよな?」

「『・・・』」

「ね、ねえ?そうよね?そうだと言って?ね?」

「『・・・』」



そう。あの家族の両親である。あの貴族投手の側近として色々手を回し、圧力の権力で握り潰し、買収や改竄を平気で行っていたのだ。当然の報いである。そしてこの男も両親がしてきた所業を忘れてなかった。



「やあ。このような形で出会うとはな?」

「お、お前は・・・!!」

「3番目に生んだ息子!!な、なんで・・・。いなくなったんじゃ・・・」

「ああ。実際に居なくなったぞ。つい数日前に帰ってきた」

「そ、そうか。それは喜ばしい。それより俺たち死刑を言い渡されたんだ。何かアイツらに言ってやってくれ」

「何をだ?」

「私たちは無実をよ。本当に知らないのよ。あの男が勝手にしたことよ?」

「そうなのか?」

「そうよ!それで・・・」

「証拠があるのにか?」

「しょ、証拠?な、何言ってるのよ?あんなの出鱈目よ?母親を信じないの?」

「いやあんなに証拠出されてまだ白を切るとはな・・・。こんな音声も俺持ってるけど?」

「な、何よそれ?」

「裁判長。こいつら何も反省しないので追加の証拠を出します」

「まだ閉廷していません。良いでしょう」

「こちらです」



その音声と映像にはあの母親がやった所業が映し出されていた。旦那と同じように買収や改竄もそうだが、こっちは更に酷かった。なんと殺人に違法人身売買の関係者だったのだ。これに一同ドン引き。その母親は



「ど、どうしてこんな映像が!?で、出鱈目よ!!」

「そうか?ならこれを見ても?はい、バッジとID」

「そ、そんなの見たって・・・、見たって・・・え!?」

「お、お前!!??そ、それは・・・」

「これで分かったかな?お前らはある意味あの国(日本国)公認の犯罪者、しかも死罪になった記録として一生残る。おめでとう〜。これでお前らは天国へは行けずに意思の無いアンデットとしてずっと酷使されるからな。地獄へも行けないぞ〜?」

「お、お前・・・」

「貴様!!母親に対して!!!なんて事を!!」

「おいおい。俺はお前らを一度も親と思った事はないぞ。だってよ?物心付いた時からお前ら何した?わざと食事を与えずに栄養失調で倒れる寸前で保護されたのを皮切りに、兄弟に手出ししようものなら俺が毎回防いでいたのに、それを俺の責任にしたり犯罪者の片棒をさせようとしたり挙句には腹裂いて臓器を提供しようとしていたし。まあ俺以外の兄弟には一切しなかったのが幸いだったが、まあそういうのも相まってお前らは時が来たんだよ。その身をもって知りな。神、まあ俺は何処にも信仰していないから良いとして、神すら敵に回したお前らを受け入れるところは無いのをな」

「「き、貴様〜!!!」」

「はいはい叫んでも、無駄だ。裁判長。判決を」

「うむ。お主も大変だったな・・・」

「今はこうやって日本の都市又は地方警備隊として職に就けたのです。平気ですよ」

「ではその考慮も入れ、その夫婦には死罪、即日執行を言い渡す」



ガンガン!!!

遂に判決が下った瞬間である。裁判長が閉廷を言い渡すと、あの夫婦は処刑台に連れて行かれた。公開処刑である。当然ながらその最期を見届け、今回の事件は終幕した。


翌日、いよいよ出発の日である。いや厳密に言えば日本へ帰る日である。



「さてと。そろそろ行くわ」

「気をつけてな」

「ああ。一応両親は失ったが、俺はせいせいとしてる」

「だろうね。兄さんは私たちの事をいつも守ってくれたもんね。ありがとう〜」

「またいつでも来てくれよ。待ってるから」

「ああ。今度会ったときは家族が増えてると良いな?」

「バカ!おま・・・」

「ストレート過ぎるのよ・・・」

「その様子だと夜の営みは忘れていないみたいだな。感心感心」

「感心するな・・・。ま、気をつけてな」

「ああ。さっき聞いた問題ない」

「このまま帰るの?」

「いや。王城から呼ばれてるから、そっちに行ってからだな。その後はここに戻らずにそのまま自分の居場所に帰るわ。その方が近いし」

「そうかい。これ俺たちからだ。道中に食ってくれよ」

「握り飯か・・・。良いね〜。これでこそ家族だ」

「何言ってるんだ?俺たちは既に義家族を含め、家族だろ?」

「はっは。違いないな。んじゃ行くわ」

「おう」

「『バイバーイ!!』」



そうして生まれた家を旅立ち、次に向かったのは王城である。



「どうも。呼ばれたから来たんだが?」

「聞いているぞ。お待ちだ。今度は右手にある庭園にてお待ちだ」

「分かった。それと出るのは反対方向の門だ。その方が近いからな」

「そうか。なら会うのは最後か」

「たまには来るが、期待するなよ?」

「はいはい。それよりお待ちだ。早く行け」

「おう」



「お待たせしました」

「おう。今日が発つ日だったな」

「発つと言っても日本に戻るだけなんだがな」

「いよいよか?」

「ああ。職が始まる時が来たという事だ」

「そうか。それでお主を呼んだ訳なんだがな?2つあるんだ」

「2つ?」

「ああ。先ずは一つ目にこれだ。今回の報酬だ」

「報酬って・・・、あの時いらないと言ったはずだが?」

「そう言うな。これは俺たちからの世話になった気持ちでもあるんだ。受け取ってくれないと俺らが嫌なんだ」

「王様達ってそんなに頑固だったか?」

「意外とそんなもんだよ。それに今でこそ敬語は使ってないが、本来は?」

「んなもん知ってるさ。だからこれを職務中にすると上司からドヤされるのは間違いないだろうな」

「分かってるのなら良い」

「それにしても・・・。持つだけで分かる・・・。報酬、多すぎないか?」

「言ったはずだ。気持ちだとな」

「だからと言ってな・・・。どう考えても2千万フィート以上は入っているだろ・・・。こんなにいらないだろ」

「残念ながら金額増加は可能でも減額は許さん、とだけ言っておこう」

「はいはい・・・こっちが折れますよ・・・。もう一つは?」

「うむ。入れ」

「『失礼します』」



入ってきたのは4人組男女だ。ただどう見てもただの一般人ではないのは確かである。



「えっと?こちらは?」

「俺の息子らとその付き人だ」

「それがどうした?」

「まずその男二人は両方俺の息子なんだが、日本国に見学したいと言い出してな」

「見学〜?何しに?」

「色々だそうだ。文化から歴史、そして学力や技術もみたいそうだ。それを学校の課題として提出するそうだ」

「あ、確か今は春休み。けど学校の課題が出てるのか?確か学年が変わるんだよな?」

「ああ。だがこれも課題の対象だからな。勿論成績にも反映される。例え学年が変わるとしても鍛錬を怠るのは許されないのだ」

「・・・まあそこは良いや。けどお忍びは検問で引っかかるぞ?」

「そこは普通に公表してくれて構わない。来国目的はあくまでも本当に先ほど申した通りだからな」

「そうか。なら良いや。それで?今度はこちらのお嬢さん方だが、こちらは?」

「まず茶髪ロングが俺の娘で隣の金髪ゆるふわヘアはそのメイドだ」

「こちらも観光目的?」

「いや、こちらは違う。これは本人に聞いてくれ」

「?はぁ。それで?何が目的でしょう?」

「ズバリ、貴方の奥さんになる事です!!」

「・・・」

「フーーン!!!」

「・・・鼻息荒くしているところ申し訳ないんだが、もう一度申してくれるか?」

「あれ?聞こえなかったのでしょうか?ではもう一度、あ・な・た・の・奥・さん・です!!」

「聞き間違いじゃないか〜・・・つまり俺と結婚したいから今この場で求婚した、そしてそのメイドさんは付き人だから付いてくる、と。そう言うことか?」

「いや・・・。どうやらそうとも違うみたいだ」

「はあ?」

「言ってやれ・・・」

「はい。私お付き人の立場ながら、同じく殿方に見惚れ、恋に落ちてしまいました。ですので同じように求婚致します」

「・・・」

「固まるなんて初めて見たな・・・」

「そらそうだろ・・・しかしなんで王女とその付き人が?」

「因みにただの付き人ではないぞ。隣国帝国の皇帝の妾の子供だ。それが研修として当国に来ている。つまり実質2国の王女から求婚されている訳だ」

「はぁ〜〜〜・・・。この事を皇帝は?」

「今この場で同席しているぞ?」

「・・・お前か・・・どう見ても何処かの王に見えるわ・・・」

「まあそう言うこった。改めて、俺が隣国帝国の皇帝だ。以後よろしくな」

「しかしあれだな。王国王女の種族は吸血鬼なのに皇女は天族なんだな。本来敵対している種族じゃないか?」

「それは勿論いるが、こっちは比較的良好だな。なんなら二人は小さい頃からの幼馴染でもある」

「ていうか吸血鬼に天族とか、単なる人族の俺は直ぐに昇天する存在だぞ?」

「それでも良いの。あれに惚れたんだから」

「私も同じです」

「それで?返事は?」

「・・・」

「「・・・」」

「・・・はいはい・・・。受け入れますよ〜・・・」

「なんか、投げやりになってないか?」

「・・・」

「これは、突っ込まない方が良さそうだな・・・。すまんが娘を頼む。彼女の年齢は人族基準で24だ」

「意外と行ってるな?今までは?王族といえば10代で結婚相手を見つけると思っていたんだが?」

「人族基準ならな。だが吸血鬼が故、成長がな。なので今くらいの体格になったのはほんの10年前だったんだ。それまではどうしても幼女体型でな。送り出そうにも出来なかったんだ」

「そう言うことは、こちらの実質皇女様もか?」

「ああ。まあこっちの場合は天族からのしがらみもある」

「ああ。種族でのあれか?試験みたいなものか?」

「ああ。あれに合格したのが20年ほど前。その時既に今のような美少女なんだ。そこからもちょっととある事情で時間を要してな。まあここも天族が故のだから気にしなくて良い。今先ほど美少女体型と言ったが、今彼女の年齢は人族で22だ。十分嫁に送り出せる」

「だからそれは俺が人族だから・・・もう良いや・・・それで?付いてくるのか?日本国まで」

「ええ。それは勿論よ」

「お供します。最後まで」

「はっはっは・・・それは心強いね〜・・・。はいはい。では2つの依頼。承りますよ〜と」

「すまんが頼むな」

「娘共々よろしくな。時々帝国にも遊びに来い」





こうしてまさか故郷で嫁を連れて日本に戻ると思わなかった本人。少々面倒くさがりだが、面倒見の良いところに惚れたのかもしれんな。頑張れ。

「頑張りたくねぇ〜な〜・・・」

頑張れよ。手抜きは許さんぞ。

「はいはい」

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