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飲み会

飲み会





数日前、各々地元に帰省し、のびのびと過ごしているこの頃。その日の夜、とある一人が同窓会に誘われている。そう、学生以来の再会なのである。ただ当の本人はそこまで乗り気でもなかった。というのも・・・



「誘われたのは別にいいが、何故タイミング良く俺が帰郷したその週で行われるんだよ・・・。しかも学生時代に仲良くしてたアイツから誘われるとか・・。はぁ・・・」



と、このようにウダウダ言いながら飲み会の貸切酒場に向かっていた。何故そこまで乗り気じゃないのかはこの後分かる。


十数分後。酒場に到着

チャリ〜ン〜〜〜



「いらっしゃい!!」

「どうも。こんばんは」

「お客さん、今日は」

「あ、いいよ。私の仲間だから。さ、こっちこっち」

「・・・」



入店後、早速とある女子から声をかけられる。そう、あの時の同級生の一人だ。更に言えばこの主催者でもある。



「いや〜まさか今までずっと断り続けた君が応じるなんてね。数日前は私と同じ主催グループが目を見開いたよ」

「そうなのか?」

「そうだよ〜。だって君、一度も応じなかったでしょ?だからみんな君の事を心配したんだよ?」

「なんでだ?」

「だってほら・・・。卒業前に・・・」

「あああれか。まあ確かに散々な目に遭ったが、あれから色々あったんだ。もう大丈夫さ」

「そう?それなら良いんだけど・・・」

「それで?」

「?」

「そう言うって事は、アイツらも参加してるのか?」

「・・・」

「正直に言ってくれて構わない」

「・・・」

「・・・」

「・・・うん・・・」

「だろうな・・・」

「けど!変な勘繰りは止めてね!?別に意図した訳じゃないから!!」

「そこは気にしてない。お前とそのグループの事だ。恐らく当時の面々全員に参加して欲しかったんだろ?当時から分け隔てなく接していたからな」

「・・・うん・・・。誰でも仲良く、そして気兼ねなく参加して欲しかったんだ。勿論都合が合わないのなら仕方ないのも分かるから、強制はしない。ただ・・・」

「卒業してから会う機会がかなり減って当時いた面々が無事かどうかも確かめたかった。そんな感じだろ?」

「・・・」

「何驚いているんだ?」

「いや・・・。なんか変わった?」

「そうか?」

「うん。なんて言えば分からないけど、男前というか、堂々としてるというか・・・」

「あれの成果か・・・」

「あれ?」

「いや何でもない。とにかくこの通りピンピンしてる」

「そう?それなら良いわ。さ、ここよ」

「因みに今日の出席者は?」

「偶々当時の学年全員揃ったの。だからクラス単体ではないよ」

「・・・よくそれだけの人数をこの酒場は用意出来たな?」

「ここの店主、結構なやり手だよ。こういった大規模な飲み会や同窓会を想定して大きな会場とかを酒場と共に経営、管理、貸出してるの。ここもその一つだよ」

「だからか。このドアの先か?」

「そうだよ。お先どうぞ」

「ならお先失礼して・・・」



ガチャン!!!ゴロゴロゴロゴロ!!!



「『?』」

「もう同窓会は始まってるんだけど、誰?」

「あれ?今日は貸切だよな?」

「だよな?ということは同級生?もしくは同学年?」

「ねえ?誰か知ってる?あの人?」

「知らな〜い」

「・・・」



どうやら10年以上顔を出していなかったからか、記憶が飛んでいるようだ。まあ仕方ないのも無理ない。だが当の本人はこう思った。「人族系ならまだしも長寿系までも忘れるとはな・・・」



「えっと・・・」

「あれ?けどあの人誰かに似てない?」

「?記憶あるのかお前」

「う〜ん・・・。あ、ある。うん!ある!!」

「え?誰?」

「・・・あ、お前!!!」

「え?誰?」

「いたか?」

「さあ・・・」

「ほらあの人!!!学年の人気者達のお誘いを学生時代から悉く断り続けたあの男子!!」

「『え!!??』」



ここで視点をその向けられた本人に向く



「俺ってそんなふうにこいつらの記憶に残ってるのか?まあ確かに学校の催し物には一切参加しなかったが・・・」

「けど裏方の準備とかには参加してたじゃん!」

「まあな?けどこいつらの場合はそのように記憶されてるが?」

「それは・・・」

「あとそんなに悉く断り続けたのか?そんなに断った記憶が無いんだが・・・」

「うん。そこは他が言ってることが事実。だって学校のイベントのみならず、学生内でのイベントにも100%断ったでしょ?それで覚えられているのかも?」

「そうか・・・。そこまでした記憶は無いんだが、それはすまなかったな」

「良いのよ。誰だって都合が悪い時だってあるのは知ってるから」

「まあそれなら・・・。おっと、こいつらが固まったままだな。その通り、その人物で間違えない」

「という事は、君の種族って男としては珍しい、ハーフリンク族?」

「合ってる」

「学校、学生のイベントに一切出席しなかったあの?」

「それも合ってる」

「なら最後に確認させて?辛いと思うけど・・・。卒業式前に酷い目にあった、あの?」

「そこまで言わなくてもいい。その通りだ」

「『・・・』」

「?」

「『久しぶり!!!!』」

「おっと。一気に押し寄せてきたな。久しぶりだなお前ら」

「久しぶり!!けど10年も見ないうちに結構変わったな?」

「そうか?」

「ああ。初め全く分からなかったぜ。ここまで変わるもんなんだな・・・。しかしお前らもよく分かったな?」

「ええ。けど私も驚いたわよ・・・。だってあの時、あんなにヒソヒソと角とかにいたあの男子が、こんなに堂々としてるもん!そら人目では分かる訳ないでしょ?」

「私も、長寿族なんだけど、それでも全く面影がなかったから初めは不審者かと思ったもん。けどあの学園の人気者が後ろというか、隣に居ながら不審者として扱うには少々違うと思って、何とか記憶を辿ったよ。お陰でちょっと疲れたけど」

「それはすまなかったな。けど俺にも色々あったからさ。そこは許してくれ」

「良いってことよ〜。お前がここに来るだけでもそれだけ価値があるってもんだ」

「そうなのか?」

「ああ。だってお前だけだぞ?同窓会に参加していない生徒は」

「あ?そうなのか?」

「『うんうん』」

「だから学年の中心にいるこいつらもどうにか参加してもらおうと躍起になってたんだから。ちょっと怖い場面もあったが・・・」

「うんうん。あの時のこの子達、ちょっと怖かったもんね」

「うんうん」

「ちょっと!?貶すのはやめて!?私たちも反省してるから!!」

「?何があった?」

「それがね・・・」

「ちょっと!?言わないでよ〜!?」

「い〜や〜だ〜。男子!!ちょっと取り押さえて〜〜」

「『おう!!』」

「ちょっと〜〜〜!!!!」

「・・・」

「なんだ?」

「本当にあるんだな・・・。黙らせる為に連れ去りなんて・・・俺呆然としてたぜ・・・」

「まあ、それほどということだ。何があったかと言うと」



今本人と話している彼らは同じ学年で本人と比較的良好に接している彼らだ。特に現在対面している男子2人と女子3人と本人が仲が良い。卒業前の出来事があるまで年に1〜2回だったが、一緒に宿泊するほどの中でもある。それに本人はあまり知らないが、ある出来事の犯人をとにかく卑下している気の良い仲間でもある。まあ彼らが人族では無いのもあるのだろうが・・・。実はこの気の良い仲間とあの学年の中心のグループは繋がりがあるのは秘密だ。そんなの発覚した際には十中八九あの当の本人が彼らから離れていくのは必然であるからだ。話を戻そう。



「学年の中心でいたあの女子4人組、何とかお前をどうにかして同窓会に参加させようと必死になってたんだぜ」

「そうなの。まず何だっけ?初めは君だけ参加費用無しにしようとしたんだっけ?」

「そうだね。3年も参加しなかったあたりからだから、そうだね」

「は?参加費用無料?その皺寄せは?」

「勿論俺ら」

「バカか・・・」

「そう。アホの思考をしてたんだ。その後は好意を抱いている奴の同伴とか」

「何だそれ?俺が思慕する誰かと同伴って事か?」

「そうだ。けどお前はそう言う話は聞いたことがないことで却下され」

「次に問題となったその当事者の不参加でも手を打ったそうだけど、当然ながら不参加」

「確か5年過ぎた辺りから君、返答もしなかったでしょ?」

「ああ。忙し過ぎて返信する暇がなかった。思い出してもとても伝書鳩では、間に合わない日数でな」

「でしょ?そこから壊れ始めたんだ。誰か連行してこいとか無理やり好意を向けさせるとか、挙句には裸体晒す案まで出たそうなのよ。流石に止めたけど」

「・・・どうやったらそんな感じな思考になる・・・」

「多分彼女達も必死だったのだろう。あの件の事もあって罪悪感もあったのだろうな」

「そこで何故罪悪感で俺を引っ張り出そうとする?」

「だから言っただろ?必死だと」

「力を発揮する方面が違うだろうが・・・」

「いよいよ策が無くなってきて八方塞がりになろうとしてた時に、今日お前が来て念願叶った、という事だ」

「そういうことか・・・。何か申し訳ない事したな」

「途中からはこいつらの勝手な暴走だったからそこは気にしなくて良い。それより今はお前の久しぶりの顔を拝めたんだから、今はそれを祝おうぜ?」

「やめてくれ。俺はそんな大それた人物ではない」

「何言ってるんだ?十分大それた人物なのを忘れるな。それより乾杯しようや。酒飲めるか?」

「弱くないが強くもない。それでもなら」

「ならこれなら飲めるか?」

「お?度数の高くない酒だな。頂こう」

「なら注いでやる。但し乾杯の合図はお前がやれよ?」

「・・・まあいいや・・・はよ注げ」

「はいよ・・・はい」

「どうも。では簡単に。久しぶりの面々でそこまで変わらなくて正直安心した。まあ俺が言えたセリフでもないがな。とにかく、久しぶりに会った仲間と共に祝おう。乾杯!!!」

「『乾杯!!!』」



本人とその仲間は酒の席で大いに盛り上がっている。まあ当然であろう。10年以上ぶりの再会に喜ばない奴などいるはずがない。同級生も同学年も、当時の先生達も、一同が酒を煽っていた。ここまでは良い話で終わるが、そう問屋は下ろす事はなかった。



「おいおい!!何か盛り上がってると思ったらお前のツラ、久しぶりに見たぜ〜?」

「本当だなアニキ!!相変わらず臭そうなお顔をしてるぜ〜へっへっへ〜」

「ねえ見てよあれ〜。イメチェンでもしたのかしら〜?」

「は!んな訳ねえだろ?()の蹴りで失神した奴だぜ?この女の蹴りに屈した奴が」

「・・・不愉快・・・」

「ね〜〜」



そう。あの集団のご登場である。男2人は師弟関係、女4人は昔馴染みで特に2番目に発した女はかなりの武闘派で地元では有名でしかも恐れられている。それと最後の2人は姉妹である。



「・・・」

「お?やっぱり黙り込んだぜこいつ!!」

「やっぱり昔から変わらねえなお前!!今まで何処に行ってたんだよ?」

「・・・」

「喋らないですぜアニキ?」

「・・・気に食わないな・・・」

「な〜に〜?強がってるの〜?」

「知らん」

「ここは酒の席だぞ?」

「『あ?』」

「だから言ったはずだ。ここは酒の席だと」

「ああ聞こえたな?それが何だよ?」

「笑わせてるのか?」

「大人しく飲もうぜ?お互いの為にも」

「・・・」

「・・・プッ・・・」

「『ハッハッハハッハ!!!』」

「いや〜本当に笑わせてきたぜ!!こりゃ面白くなりそうだな!!!酒の席?ならこれでも飲みな!!!おら!!」

「おい!!ちょっと!!!!」

「キャ!!!!」



ドバドバドバドバ!!!!



「どうだ!?うまいか!!??美味いよな!!??」

「へっへっへ!!アニキの言う通りですぜ!?」



こいつら、酒の入ったジョッキを本人の頭からかけてやっていた。当の本人は涼しげな顔をしていたが、周りはドン引きである



「気は済んだか?」

「は?」

「確かに美味かったぜ。この酒、店員さん。この酒お代わりを」

「・・・」

「店員さん?」

「は、はい!!直ちに!!!」

「お願いします。それで?気は済んだかと聞いている」

「何だお前?本当に今までのお前か?」

「さあな?けどお礼は返さないとな?」

「お礼?」

「ああ。ちょっと待ってろ?」



「おい!!平気か?」

「平気だ」

「平気じゃないだろ!!」

「折角の飲みの席なのに・・・」

「先生!!!」

「お前ら!!!ちょっと」

「待て!!」

「『?』」

「先生、お前ら、下がってろ」

「「けど・・・」」

「下がれと言ってる。分からないのか?」

「「・・・」」

「聞こえなかったのか?」

「「あ、ああ・・・」」

「あとタオル頼む」

「あ、ならこれ使え。今日はまだ未使用だ」

「すまんが借りる。恐らくまだ使うことになるだろうからな」

「お、おう・・・」



先生と仲間達、同級生や同学年の連中は驚愕を隠せなかった。それもその筈。学生時代には無かった覇気が、今は勇ましく見えたのだ。とても同じ人物には思えなかったのも無理はない



「ねえ・・・。本当にあの今までの男子なの?別人に見えるけど?」

「私も同じ気持ちよ・・・あんなに眼力ってあったかな・・・」

「俺も初めてだ・・・。というか鬼圧を感じた・・・」

「先生も驚きだ・・・。反論出来ないとはな・・・」

「俺たちも同じだ。あれ本当に彼か?」

「貴女達はどう?私は見たことないよ?」

「私たちもよ・・・。今までの彼は何というか、生きるのに必死というか、いつもいじめっ子の対象にされてたから」

「ストレート過ぎるわよ。けど私も一緒ね・・・。それにこれ私だから知らないけど、血気盛んに見えるの」

「血気盛ん?血の気が多い感じがするのか?あいつから?」

「正確には匂いや顔からかな?ほら、血気盛んな方って大体怒りやすいでしょ?」

「うんそうだね」

「全員とは言わないけど大体がそうだな」

「知っての通り私は吸血鬼族。だから分かるの。あれ、今彼怒ってるわよ?」

「『え!?』」

「これは私も予想外ね・・・。この10年間の間に何があったのか、知りたいわね・・・」

「けど相変わらずお前は小さいけどな」

「・・・」

「・・・」

「後で処刑」

「『同意』」

「同意するな!!!」



そんな会話がされている事を露知らず、本人はその迷惑グループに向かって歩み寄っていた



「待たせたな?」

「は?」

「もう直ぐ来る」

「何が?」

「お、お待たせしました・・・。追加の酒です・・・」

「ありがとう。もう一杯貰えるかな?このテーブルの上に置いといて良いから」

「?はい。分かりました」

「それとここには近づかないように」

「はい」

「それで?」

「さっきのお礼をしなければと思ってな」

「だから何だそれ?」

「俺に酒被せたでしょ?」

「あ〜あれか〜。傑作だろ〜?」

「だな。だからその仕返しとして、お前にも、な」

「は?」

「『え!?』」



ドバドバドバドバ!!!

な、なんと仕返しの酒返しとして頭から酒を掛けやがったぞ此奴!!!



「どうだ?美味かったか?ほらタオル〜」

「『・・・』」

「う、嘘・・・」

「あ、アニキ・・・」

「あ、あいつが・・・」

「仕返し!?」



すると掛け返された奴が怒り出した



「このクソ野郎・・・。上等だゴラァ!!!あの時の用にボコボコにしてやる!!!」

「あの時ってあれか?卒業式前に学校敷地外に授業中にも関わらず外に出て、俺は注意しようと付いて行き、声を掛けたら、お前ら全員から一方的に拳や蹴り、棍棒や鉄棒、魔法などでボコボコにされ、金も盗られた挙句に俺を強姦の犯人としてでっち上げたあれか?あれは酷すぎたな〜・・・」

「ああ、あの時の様にだ。だが今回は目撃者も多い。なので物裏とかではなくここでボコボコにしてやる!!お前ら!!!」

「出番っすね!!アニキ!!!俺もムカついていましたから!!!」

「うわ〜君。それはマズイね〜。これは教育が必要だよね〜?」

「まさかお前がこのような暴挙を・・・成敗してやる!!!」

「・・・私刑(リンチ)・・・」

「ね〜〜〜」



その光景を見て止める者



「おい待て!!!」



警備隊か衛兵を呼ぶ者



「だ、誰か呼んで!!!」



どうにかしようと右往左往している者



「ど、どうしよう・・・」



とにかくカオスだった。だがその混乱な状況を止めたのは、冷静な彼だった



「お前ら、うるせぇ!!!!!!!!」

「『!!??』」

「誰かを呼ぶのは構わん!!!だがこれは俺と奴らの問題だ!!!口出しするな!!!」

「『・・・』」

「分かったな!!!」

「『・・・はい・・・』」

「これで俺とお前らだけだ」

「・・・どこで学んだ・・・。その度胸をよ・・・」

「関係ない。さあ、喧嘩しようや!!」

「上等だオラァ!!!」



そこからは喧嘩の戦いであった。何故過去形か?それも筈。喧嘩ばかりで体術も剣術、魔術などもないのが訓練された者に敵う筈がない。なので師弟が放った拳や棍棒、鉄棒などは悉くいなされ、棒などは素手で破壊、拳もただの握力で粉々にされた。女子4人はその光景を見て遊びではなく本気で殴ろうとして、自慢の蹴りや魔法などを使い、姉妹の妹の方は魔獣を使役し対抗しようとしたが、こちらもあっさり返り討ち。蹴りには蹴りで対抗し、蹴った同時に地面の着いている足を軸に敵を身体ごと蹴飛ばす。回転で勢い付けて。魔法には同じく魔法で対抗。初めは出力を抑え攻撃魔法を相殺、相殺後に魔法で敵の魔力を根こそぎ奪い取った。使役の魔獣は、目標の実力差を戦闘前に把握。逆に懐柔し召喚魔法を実施した女を目標として変更。現在追いかけ回されている。最後の女は昔と今の差に驚き、尻餅を突いて股間から液体を漏らしていた。



「これでお終いかよ・・・。昔の俺はこんな奴に敗北してたんだな・・・。我ながら情けない・・・」

「お、終わったのか?」

「ああ。終了した」

「そ、そうか・・・。本当に変わったなお前。後で話を聞かせてくれ。この10年。何があったのかを」

「別に何もないけどな・・・。それと来たみたいだぜ」

「警備隊かな?」

「大丈夫だ。俺たちが証人だ」

「ありがとな」

「いや。今まで何も出来なかった贖罪も兼ねてな」

「そうか・・・」



「通報があったのはこちらですね。被疑者は?」

「そこのグループです」

「・・・あれは・・・」

「?どうしたんですか?」

「いや、男は良いんですが、女がな・・・」

「何か問題でも?」

「実は貴族の娘と有力者の娘でしてな。何か証拠が無いと厳しいのですよ」

「証人が居てもですか?」

「はい。実は今までも彼らは問題を起こしていたのです。なので問題児達なのは私らも把握しています。ですが仮に私らが連行しても恐らく今回も権力で釈放なのです。それとここでお聞きになるのは些か恥ずかしいのですが、我々警備隊上層部が権力や利権に癒着していましてな。なので尚更・・・」

「そうか・・・」



どうやらどこの世界も癒着、賄賂とかで無かったことにすることはあるようだ。だが今回は相手が悪かったことをこいつらは思い知ることになる。



「とりあえず連行はしてみますが、期待は・・・」

「分かりました。お願いします」

「ちょっとすいません」

「はい?」

「上層部がそんな感じですよね?」

「はい。私らとしてはそんなの信念に反しているのですが、どうしても・・・」

「なら今回はこのまま連行を。ただ10分だけお待ち頂けますか?多分衛兵か憲兵も来ますよね?」

「はい。恐らく現場保全の為にも来るかと」

「でしたらちょっとだけ。あいつらから声を掛けられても軽くいなしてください」

「?よく分かりませんが、分かりました」



「おいお前!!何でそんなに強くなってるんだ!?」

「?別に教える必要はないだろ。それにそんな状況だと一生誰かを殴れないだろ?ん?」

「・・・お前、わざとだな・・・」

「ああ。二度と誰かを殴れないように、神経を途絶した。日常生活でも多少支障が起きるんだ。殴れる訳ないだろ」

「お前・・・。こんなことしてタダで済むと思うなよ?」

「は?」

「俺と舎弟の背後には犯罪組織と繋がりがある。分かるな?」

「『!?』」

「ふぅ〜ん?だから何?」

「だから、お前は死ぬんだよ!ガッハッハッ!!!」

「それで?どこの犯罪組織と繋がってるんだ?」

「は!!そんなの教える訳ないだろーがバーカー!!」

「誰が教えろと言った?それこそバカだろ。それに既に分かった」

「は?何も言ってないのに分かる訳がないだろ?」

「安心しな。えっと紙は・・・。これだ。・・・これだろ?」

「「!?」」

「お、おま・・・何処で!!??」

「何故?という顔をしてるな?それは答えないでおこう。それに答えせずともそこは間も無く崩壊する」

「は?何言って・・・おい何処へ行く!?おい!!!」



男共から離れ、今度は女共に歩んで行く



「・・・」

「何よ?言っておくけど、どうせパパの力で牢屋から出てやるわ〜。その時が楽しみね〜」

「俺の蹴りを止めやがって・・・いつの間にそんなに強くなってやがるんだ?」

「・・・私の魔法が・・・、相殺された・・・。修行を重ねておく。覚悟すると良い・・・!!」

「ね〜〜」

「何を次の機会があると思ってるんだ?お前らは終わりだぞ」

「終わり?」

「こいつ、俺たちをバカにしてるのか?してるよな〜!?」

「・・・してる・・・。間違いなく・・・」

「ね〜」

「まあ、最後に言っておく。今回は諦めろ。そのまま前科や制裁を受けると良い」

「何言ってるの?そんなのパパや私の仲間のお父様がどうにかするわ!!」

「諦めるのは今回はそっちだぞ」

「だから何言ってるの?もしそこの警備隊に衛兵に告げ口しても無駄だよ!賄賂でどうにかするわ!!」

「それで上層部諸共か・・・」

「ええそうよ!!!」

「・・・」

「は!諦めたか!?」

「・・・」

「なんとか言ったらどうだ!?」

「・・・」



トコトコトコトコ・・・

近づく足音に本人は静かに告げた



「来たか・・・」

「誰がよ?」

「彼らさ。入り口を見な」

「『・・・』」

「・・・」

「『・・・』」

「こんばんは。外道の取り締まりに参りました〜」

「『え!?』」

「お疲れ様です」

「ああ。お疲れ様」



一同、例外なく皆固まっていた。その来場した方達の制服を見ながら



「な、なんで・・・」

「ここに・・・」

「いるのよ!!!!」

「日本の憲兵、国家警備隊が!!??」

「簡単さ。俺が呼んだ」

「『よ、呼んだ!!??』」

「な、何故呼べたんだお前!?」

「それを言う前にお前らに言っておく事がある。お願いできますか?」

「おう。おい、あいつらを」

「『はい』」

「あいつらって何だ?」

「その目に焼き付けておけ。恐らくお前ら膝付ける結果になるだろうからな」

「は?何言って・・・え!?」

「あ、アニキ・・・。何でここに捕らえらてた首領達がいるのでしょうか・・・」

「それは俺・・・、まさか!?お前が!!??」

「ああ。先に先手を打たせた。どうぞ首領ら。何かあればお話しください」

「・・・」

「しゅ、首領?」

「お前・・・」

「はい?」

「お前のせいで!!俺たちは全滅した・・・」

「「!?」」

「しゅ、首領!?俺たちは」

「言い訳無用だ!!!牢獄内で覚悟しろ!!!生き残りでお前らをたっぷり可愛がってやる!!!」

「「そ、そんな・・・」」



ペタッ・・・



「さて、男どもはこれで制圧。次に女共だが、連れて参りましたか?」

「ああ。呼ぶか?」

「お願いします」

「こっちも注目しろ。それと警備隊と衛兵の皆さんも」

「『あ、はい』」



「え!?パパ!!??」

「嘘!!??お父様!!!」

「そう。今度はお前らの親御さんの登場だ。勿論証拠も上がっている。なので逮捕されている。今後はお前ら諸共裁判だな。おめでとう。日本公認の犯罪者だぞ〜??」

「そ、そんな・・・。パパ・・・」

「お父様・・・」

「うるさい・・・。パパと呼ぶな・・・」

「お前もだ・・・バカ娘共・・・」

「こいつらも贈収賄罪で逮捕されている。今後は関係各所も捜査の手が入るのは確定している。当然ながらお前らの罪も白日の元に晒される。覚悟しな?」

「お前・・・。しくじったな!!!おかげで今までのキャリアが最悪な形で崩壊した!!もう生きていけない!!」

「俺もだこのバカ娘共が!!!日本公認の犯罪及び前科持ちなんて、後世まで語り継がれるぞ!!!一家は離散だ!!!」

「そ、そんな大袈裟な・・・」

「大袈裟な訳あるか!!既に直系は皆牢屋内だ。それと血筋の繋がりの無い嫁や関係各所は皆離婚や絶縁だ。挙句には国からも見放された。これがどう言う意味か分かるな?」

「・・・家も無くなったって事?」

「それだけではない。地位も名誉も名声も、歩んだ軌跡どころか歴史にすら見放されたんだ。放浪者と何も変わらん事になったんだ!!!いやまだ放浪者の方がマシだ!!!!前科に犯罪者でも無いからな!!!」

「で、でもお父様・・・」

「だからお父様と呼ぶな!!!いいか!?俺たちはお終いだ!!!人生諸共な!!!!冥土の土産は前科持ちだ!!!天国には行けずに地獄の片道切符だ!!!お前らのせいでな!!!もう二度と顔を見せるな!!!お前らを妻と一緒に産んだことを後悔している。『産むんじゃなかった』とな!!!」

「そ、そんな・・・」

「お、お父様・・・」



ペタッ・・・



「これでこいつらはお終い。最後にお願い出来ますか?」

「ほいよ」

「えっと?最後に何が?」

「直ぐに来ます。入り口に注目を」

「「あ、はい・・・え・・・」」

「ご存知ですよね?」

「あ、はい。総長達ですね」

「こっちも衛兵の隊長達ですね」

「はい。既に身柄拘束しました。容疑は収賄容疑ですね。証拠もございます。これから上層部は刷新されることでしょう。何しろ日本国から睨まれたのですから」

「そうですか・・・ありがとうございます・・・」

「いえ、泣くのはまだですよ。信用を失ってる可能性があります故、回復は容易じゃないですよ?」

「はい。覚悟しています。ですが何とかしてみせます。何処かで見ててください」

「その心構え、迷いはなさそうですね。期待してます」

「はい。では我々はこれで。ほらお前らも」



これで事件は終幕した。当然あの問題児グループは日本の国家警備隊と共に連行されていった。これから激しい尋問が始まるだろう。ま、あいつらは耐えられないだろうなと思い描いていた。これで学生時代の悩みの種であった奴らの仇を討ち、安堵に浸っている本人、最後に疑問が残ったのを同級生らは忘れていなかった。



「な、なあ?」

「うん?」

「あいつらの始末は有難いし、俺たちも悩みの種だったから良いんだ。だが感傷に浸ってるところ悪いんだが、何故お前は日本の国家憲兵を呼べる事が出来たんだ?」

「ああそれか。なら飲みながら話そうや。俺が今日まで歩んだ10年間の軌跡を」



こうしてちょっと荒れてしまった会場の片しを行い、再度飲み直した同窓会。そこで怒涛の10年間を歩んだことに言葉を失う一同、と同時にそれだけ濃密な10年間に感心していた。そんな会話をしながら酒の席は進む。


最後にあの迷惑連中は全員裁判にて有罪、その事実に受け入れずに廃人になったのが続出、持ち直した奴も今後の人生は文字通り茨の道である事に・・・連中は・・・。どうなったかはご想像にお任せする。

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