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里帰り

里帰り





それぞれ卒業試験に卒隊試験を終えた彼らは、初出勤前の里帰りをしようとしている。その一部をお話ししよう。今回は日本領から1万キロ離れた故郷へ帰郷する10人グループのお話しである。因みに彼らの故郷の規模はロシアの100倍以上だが、それでもこの星では中規模ほどの規模である。



「いや〜大変だったな。警察学校」

「まあな。お陰で少し筋肉付いたし痩せたし」

「まあ、あれだけの運動量やストレスなどを抱えてたらそりゃ痩せるわな」

「ああ。しかもまさかあそこまで頭に知識を大量に叩き込まれる日常まであるとは思わなかったな〜」

「あ〜あれはな・・・」

「特にそこの男二人はバカだから大変だったじゃないか?」

「「なんだとおいコラ!?」」

「そうカッカするな。それで?どうだったんだよ?」

「まあ確かに大変だったな。実は俺はまだマシだったんだが、こいつがよ・・・」

「『?』」

「・・・」

「いや、寮内の同室なのよ。でさ?こいつその寮内随一バカでさ。その・・・連帯責任で・・・」

「『ああ〜』」

「そこで納得するな!!!」

「勿論俺もバカだが、ギリギリクリアしてたから何とかなったんだが、いやまあ俺も補習とかもあったんだけどな?けどこいつはほぼ毎回のように補習対象になってたから、同室の奴らがこいつに教え込むのに必死だったな。その時の眼力がな・・・」

「『察した』」

「察するな!!!!」



どうやら男衆5人組の内1人はかなりの頭脳が乏しいやつであるみたいだ。恐らく学生からの付き合いであろう。その談笑に割ってはいるグループがきた。女子5人グループである。



「どうした〜?またこいつがバカやらかしたのか〜?」

「まあこいつならありうるよね〜」

「うんうん。よく聞くもん。補習対象に呼ばれるのが」

「しかも偶に頭脳が良い女子にも頼み込んでたのも見てるし聞いてるし?」

「まあ、私たち15からの付き合いだもんね〜。色々分かってるわ〜。ところでその頭脳って種族の関係ってあるのかな?」

「さあ?鶏なら分かるけど、彼って翼属じゃないでしょ?確か耳はあるけど尻尾の無い狼族だったはず」

「あの種族って結構差が激しいのかな?」

「さあ?こいつ限定じゃないか?」

「『かもしれないね。はっはっは!!!』」



どうやら女子グループも昔馴染みみたいだ。まあじゃなきゃあんな口調も出来ないと思う。



「うるせえ!!お前らは!?」

「何がよ?」

「成績は!?」

「そう叫ばないで?まあ私達は特に問題なかったわよ。確かに結構頭は使ったけどね」

「そうなのか?お前でもキツかったのか?あのテストというか、知識の詰め込みは」

「まあね。清楚で綺麗な彼女も今でこそ平気だけど、当時は頭抱えてたわよ〜?」

「『!?』」

「え!?本当かよ!?」

「ええ。まさか知恵熱で倒れ込む光景を目の前で見てしまったのもね」

「『ええ!?』」

「それ言わないでよ・・・。私も恥ずかしいんだから・・・」

「ごめんね?でも事実だし、私らもこいつを軽く侮辱してたけど、人の事言えないと思ってね?」

「まあ・・・」

「それで?なんで知恵熱が出たんだ?」

「それは彼女に聞いて?私らも詳しくは知らないのよ」

「『・・・』」

「話さないよ」

「『・・・』」

「だから話さないってば」

「『・・・』」



無言の圧力が続く。流石に居心地が悪かったのだろう。彼女は観念したようだ



「はぁ〜分かった分かった。話すよ。どこから話したら良い?」

「取り敢えず、知恵熱が出た経緯かな?」

「彼女とは同室でしょ?気づかなかったの?」

「いや、気づいたよ。けど声を掛けなかったのよ。彼女の性格を知ってるでしょ?」

「ああ。集中妨害されたらキレる、か」

「そうなの。だから声を掛けなかったの。そしたら数日後にあれよ」

「分かったわ。じゃあ経緯だけど、実は採用試験の段階で気づいたのよ『あ、これ結構難易度が高すぎる』ってね」

「それってどれくらいなのか分かるか?」

「バカな俺でもわかりやすく頼む」

「一応私達の母校ってちょっと名の知れた学園というのは知ってるでしょ?」

「ああ。貴族と庶民が一緒になって学ぶ場所。しかも軋轢も差別もない珍しい学園。まあこれは日本国と戦争してこっちが敗北した経緯もあるが」

「それは今は良いわ。それで、確かに名の知れた学園、つまり入学には少々レベルが高い。そして入学後もそれが伴う、卒業するまで。みんなはどの教科やテストがレベル高かった?何でも良いよ?」

「・・・多分・・・」

「『卒業前試験』」

「だよね。恐らく皆そこでかなり勉強したよね?卒業する為に、そしてこの先の将来の為に」

「ああ。俺一応国営に携わる仕事として国家機関に入ろうとしてたし」

「俺は騎士、特に高位クラスに登り詰めようと思ったし」

「私は魔法教師として教え子を持とうと思ったし」

「あたしは外交関連」

「そうだよね。私も初めは研究者として国に忠義を示そうと思ったんだ。まあそれは叶わなかったけどね」

「まあそれは他も一緒でしょう。儚い夢で崩れたのもいれば夢叶ったけど辞めたのもいたし」

「まあそれも置いといて、つまりそれほど大変だった。勉強も試験も。けどね?あの時君たちも思ったでしょ?日本国の警察採用試験でかなりのレベルだというのが」

「ああ。いくら学歴なしでも入れるとは言ってたけど、あそこまでレベルが高いとは思わなかったな・・・」

「私も。あまりにもレベルが高すぎて途中で思考回路が死んだのを覚えているわ」

「実はあれ、私も同じなの。私も途中で思考回路が途切れたの『え?何この試験。あまりにも難易度高すぎない?』ってね」

「『え!?』」

「お前が!?」

「思考回路死んだのか!?」

「うん。終わってた」

「嘘でしょ・・・。だって学園であの一番キツかった試験であんた成績と試験共に最優秀だっただしょ!?」

「うん。でも死んでた。私自身が驚いているの」



一同驚愕を隠せないでいた。それもそのはず。彼らが通ってた学園は他校に比べレベルの高い学園として有名なのだ。成績やテスト、授業態度や交友関係などが成り立たない生徒は、例え貴族や有力者でも容赦なしに切り捨てる。なのでズレた思考をした生徒はハッキリ言ってとても通えない学園なのだ。それが故、国家機関からのオファーもその信頼が故なのだ。だが更にそれを凌駕する話題が出たのだ。その口火を切ったのは例の渦中である彼女からだ。



「それと、これ採用試験後に発覚して採用担当に聞いた事だけど、聞く?」

「え、何その意味深な発言は?気になって仕方ないけど、何?」

「実は今回の試験、まあ初回だったけど、その試験に合格した大卒以上または同等の資格者がいたのに、警察では一番下からのスタート、しかも警察学校では私達と同じ期間を共にした事実を」

「『?』」

「どういうことだ?」

「言ってる意味が分からないんだけど?」

「警察では大卒以上は、警察学校では10ヶ月〜1年ではなく、本来半年程なの」

「『え!?そうなの!?』」

「うん。そうなの。だから聞いてみたの。何で?って」

「それで?」

「何て答えたんだ?」

「簡単に言えば、テストでの成績が合格ラインに達しなかった。それが理由だって」

「マジかよ・・・」

「大卒以上なのに」

「その合格ラインに達しないなんて・・・」

「因みに私達の国からもいたの。採用試験に合格した方が」

「そうなの?」

「うん。偶々寝るベットの隣の方だったんだけど、卒業した学校が凄いの」

「は?どこなんだ?」

「多分驚くよ?私達も知ってる学校だから。私達の国で自治体または貴族当主が運営している学校は割と普通にあるけど、その彼女が卒業した学校が凄かった。国立大学卒業だって」

「『国立大学!!??』」

「国大卒が何故・・・」

「そこは分からないけど、国立大学に入れるだけでかなりの名誉な事なのに、そこを卒業だもん。私も驚いた。種族は天族だから、まあ分からなくはないんだけど、また更に驚く事実があるの」

「まだあるのか?」

「うん。まだあるの」

「これ以上何があるのよ・・・」

「思い出して?私が言った事」

「何だっけ?」

「忘れないでよ〜もう。ほら、さっき言ったでしょ?大卒者はいたけど合格はしたけどその基準に達したなかった事」

「ああ、言ってたな・・・まさか!?」

「そのまさかなの。私達の国で学校は人口も相まってかなりの数。多分今は200億を越したかな?その数に合うように学校も過多な位にある。その中で国立大学は両手で数えるくらい。8か9校だったはず。その全ての大学がその国のレベルを上位10校を総ナメしてた筈。更に言えば定員もかなり限られる。確か9校あったとして9校でちょうど1万人だったね。その大学に入れるだけで凄いのにその人は最終的にその大学で第五位に輝いた成績の持ち主。確か国立大学全体でも15位くらいだって言ってたね。その輝かしい成績の持ち主がまさかの採用試験に合格したが大卒以上または同等のラインに達しなかった」

「『あ〜・・・』」

「あとこんなことも言ってたの『こう言っては何だけど、ここまでレベルの高い試験は初めて。大卒者しかも成績優秀な私がこれ。世の中広いわね〜』と呟いていたのを未だに覚えているよ」

「流石日本、技術力もさる事ながら、学力も高いとな」

「うん。だから全員学歴無しで採用したみたいなの」

「だからか・・・これは故郷も大騒ぎになるな」

「だろうね。彼女も故郷に帰ってこの出来事を話すと言ってたからね」

「母校もか?」

「らしい」

「そうか。さてと、そろそろ到着か。しかしこれも凄いな。流石日本」

「ああ。これが民間にも存在するとはな。何て言ったっけ?」

「確か、飛行機」



彼らは現在日本本土から持ち込まれた民間航空機を使い、母国の空港まで搭乗している。尚、所有や使用は日本国が管理している。無論空港も然りだ。使用機材はA350。だが広大すぎる異世界の土地で直行はまず無理。恐らく燃料補給で3〜4回は最寄りの空港で補給する必要がある。現在航空機は4回目の燃料補給を終え、目的地まで残り1時間まで来ていた





2時間後。彼らは降機し、手続きを終え空港の外へ向かっていた



「まさか故郷の都市までたった2日で行けるとはな・・・。文明の力はつくづく驚愕させられる」

「そうね。私達の移動手段といえば徒歩か馬それか荷車だもんね。しかも国境まで1年、そこからも道中は長い。なのに日本領土からここまでたった2日。もう何も驚かないわよ私」

「だね。車に鉄道、船に飛行機。これが私達の国にも出来れば」

「まあ。色々変わるな。荷車はトラックに、飛行船は航空機に。木製の手作り船は鋼鉄の船に、これは海軍でも使われている。鉄道も凄いな。線路を伸ばせばどこへでも行ける」

「持って帰りたいけどね・・・」

「やめておいた方が良いわよ。日本の耳に入れば即敵対だから」

「そうなれば・・・」

「戦争・・・」

「最悪は俺たちは戦争を引き起こした重罪人だ。とても生きてはいけないだろうな・・・」

「ああ。後世まで語り継がれるだろうな」

「まあ、そんな話は置いといて、そろそろ空港の外に出よう。多分待ってるぞ」

「ええ。行きましょう。私達の家族のもとへ」



「う〜〜〜ん!!!!」

「どうした?」

「いや?遂に帰ってきたと思ってな。背伸びと深呼吸してた」

「そうか。だが再度するのは今は止めておけ。俺たちの家族がお待ちだ」

「だな。帰ったぞ」

「お帰り。無事で何よりだ」

「試験はどうだった?」

「難しすぎるなあれは。俺たちの仲間の彼女。ほら卒業式で最優秀生徒に輝いた彼女」

「ああ」

「彼女が手も足も出なかったそうだ」

「そうなのか?」

「ああ。だろ?」

「うん。先にみんなに話したんだけど、ここでも話します。警察採用試験は全員合格したんだけど、大卒以上の学歴持ちがその合格ラインに辿り着かなかったの」

「『え!?』」



彼らは苦笑している。何しろ数時間前に彼らも同じ表情をしていたからだ。その経緯を聞いた彼らの両親は驚愕を隠せなかった



「嘘だろ?国立大卒がいたのにそのラインにも達しなかったのか?」

「うん。ダメだったみたい。彼女自身も言ったからね」

「彼女の両親は?」

「私たちより先に帰郷したの。だからそのうち話が広がると思うよ」

「そうか。まあそれは今は置いておこう。他には?日本国はどんなところだった?まあ俺たちもこの空港や港を見るまでは半信半疑だったが・・・」

「港?港湾がどうしたの?もしかして日本の港湾がこっちにも?」

「ああ。日本の船が出入りする際限定ではあるが、その港が使われている。まあ流石に船から降ろす先は荷車であるがな」

「そうなのね。あれ?日本が出入り時のみ?他は?」

「使用されない。冷遇とかではないんだ。だけどほら、漁船だと」

「ああ。岸壁の高さに合わないのね。それは仕方ないわね。ああ、話戻すわね。まあ色々よ」

「うん。移動先でも相手と話せる携帯。いつでもインターネットというものを使って調べたりそれを使ってやり取りも出来る機材。紙だと嵩張ってしかたないのにパソコンというものを使って保存できるクラウド。挙句には食材までも改良できる技術を彼らは持っているわ」

「そんなに凄いのか・・・。実際に行ってみたいな。日本という国に」

「良いけど結構厳しいわよ」

「みたいだな。実際に俺の知り合いが追い払われている。背後関係が不明とかなんとか」

「それって本当なの?ただ単にやっかみとかは?」

「いや、本当だ。実際に彼の関係者に反社会的勢力がいるのも事実だ。まああくまでも深入りはしてないが、仕事上仕方なくな。まあそういうのも相まって日本入国はとても厳重、指示に従わないと日本公認の前科持ちになる可能性もある。そうなった暁には何処にも行けないし暮らせなくなる、というのは皆周知だ」

「そう。それなら良いわ。確かに日本をターゲットに諜報を送った結果関係者全員逮捕し、前科持ちが知れ渡りその関係者が制裁がなされ、最終的に死んでしまったのもあるしね。分かってるなら良いわ」

「まあここで長話もマズイだろ」

「いや?別に平気なはずよ。その為に広々と作られているし、その為に待合室もあるわ」

「まあ、それでもだろ?やはりまだ移動もあると考えると早めに帰路につく方が良い」

「まあ、それもそうね。帰ろっか?」

「だな。帰るか!我が家に!!」

「『俺(私)の家に帰ろう!!』」



彼らはこうして故郷に帰ってきた。そして各自生まれ育った家に向かう。いつの間にかその背中は大きくなったと両親は感動しているのを本人たちは気づかずに、それぞれ歩み出した。彼らの任務はこれからだ。

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