合格発表
合格発表
警察庁支部内
「警視正、一等空佐。結果はどうでしたか?」
「結果から言えば警察側の総応募者数1000万強のうち合格者数は700万前後。ま、そのまま7割合格だな」
「自衛隊としては総応募が500万弱で合格者数は350万。こっちも7割だな」
「結構な数ですね・・・。まあ現在の異世界での日本領土の規模的に見るとこれでも足りないことは変わりないですが」
「まあな。それにふるい落としはこれで終わらん。最後の卒業試験に合格してからが本番だ。そこでどれだけ生き残れるかが分かる」
「そうですね。あ、そうだ。そこの巡査に陸士長。今回の学歴区別は?」
「大学クラスでの応募は警察では100万、うち合格は80万」
「自衛隊では今回は居なかったですね。ですので幹部へ行くのは下士官からになりそうですね」
「いや分かりませんよ。今年は居なかっただけで、来年になれば応募してくる方もいるかもしれません」
「そうですね。俺としても人手不足が顕著に出てるのは肌で感じていたので、早くこちらに来て欲しいですね」
「焦るなお前ら。どんなに早くてもまずは教育が先だ。警察では大卒は半年、それ以外は10ヶ月〜1年」
「自衛隊は3ヶ月だがとにかくハードだ。音を上げて辞めていかないかが焦点になりそうだ」
「けど無事にクリアすれば晴れて法執行官として働ける訳ですし、何とかなりますよ」
「それに我々に自覚はありませんが、ここ異世界では我々日本の機関というのは彼らにとって神以上の存在らしいです」
「『え?そうなのか?』」
「はい。まず膨大な規模。こちらは日本ではあまり馴染みありませんが、警察が約30万というのはこちらではありえないそうです。どんなに多くても10万、しかも都市間街道には全く取締りが行われていないのも普通にあるとか。そんなの我々ではありえない話なのですがな。
軍事力は確かに異世界の他国の方が規模としては多いのですが、海自保有の軍艦の数に陸自保有の戦車に輸送車、空自の戦闘機。そして各軍事所有のヘリや船。まあ空自に船は所有していませんが、それでも異世界から見ればこの軍事力は強大な他ないそうです。それを実行できる能力や統率能力を更に神を助長させる要因にもなっているそうです」
「確か俺も聞いたことがあるな? 確か俺の先輩が言っていたんだが『先祖の防衛省が異世界での事案に堪忍の緒が切れて異世界全土を焦土へ化す作戦を実行した』とか何とか言ってたな?」
「『・・・』」
「何ですかそれ・・・」
「詳しい話は聞いてないのか?」
「確か空自の戦闘機でまずは上空から爆撃、その後陸自が戦車や装甲車、戦闘ヘリで敵を銃弾の雨と化し海自は主砲やヘリを使い異世界の軍港を容赦なく襲撃したとか・・・。ってこれって世界大戦と変わらないじゃないか・・・」
「・・・聞くほどでもないかもしれませんが、結果は?」
「一つの星につき十数国が消滅、次元を超えて別の異世界では一つの星が事実上消滅したそうだ。現地ではとても言葉にできないほどの凄惨な光景を目撃したとかなんとか」
「よくそれで俺たちに復讐という信念を抱きませんでしたね」
「それがここまで来るとどうしようもないそうだ。『敵対時即焦土へ化す』のが異世界に定着したそうだ。面白いのが異世界の一部なんだが、俺たちより更に発展した文化でも恐れられているそうだ」
「『は?』」
「何でだ?俺たちより発展したのならあっちが勝利を手にしてそうだが?」
「それがそうでもないそうですよ警視正。何でもその世界では実銃は存在せず、よくゲームとかである光の銃、光銃が武器を用いているのです。向こうではこれが敵を貫通するそうで」
「けどそれでは防弾を貫通しないのではないか?」
「はい。その通りなのです。てっきりレールガンか何かかと思ったのですが、本当にただの光銃なだけなので、防弾どころか生身でも貫通しなかったのです。ですのでこちらより遥かに発展した文化でも恐れられている存在だそうです。挙句にはこの試験にその出身者もいる始末」
「『・・・』」
「ま、まあ取り敢えず、合格通知を送付するか」
・・・・・
あれから暫く経った日、とある日常を破壊する出来事が起きようとしている。それが
ピピッ
「『?』」
「何今の音?」
「私じゃないよ?」
「俺でもないな・・・」
「『?』」
「あ、もしかして!!」
「何?」
「来たかも!!」
「来たって何がよ?」
「合否発表!」
「『何の?』」
「日本国警備隊または日本憲兵の!!!」
「『・・・』」
「『な、何!!!!』」
「お、おい!!遂に来たぞ!!」
「俺もだ!!!」
「き、来たよお姉ちゃん!!」
「?あ・・・」
「?お〜いどうした〜?」
「・・・」
「・・・緊張してるな・・・」
「・・・ああ・・・」
「それで!?どうだった!?」
「まだ分かんない!!取りに行ってくる!!」
「取りに行くって、晩御飯は!?」
「大丈夫だよ!!日本国から借りてる物があるんだよ!!ちょっと待ってて」
「これだよ」
「これって?」
「端末。こうやって起動すると・・・」
ブォーン!!!
「『うわ!!』」
「こうやって空中に文字が浮かんでくるの」
「す、すごいなこれ・・・」
「流石日本国の技術ね・・・」
「俺の科学者としての熱が高まりそうだ・・・」
「それより結果は?」
「そうだった!えっと?下にスクロールすれば・・・あった!!」
「『!!』」
「読んで!」
「うん『合否の結果が判明したので送付する。試験番号第3689034の合否は以下とする。合格とする。今後の流れは追って通達する。お疲れ様。日本国警察(警備隊)』」
「『・・・』」
「ご、合格・・・?」
「う、嘘・・・」
「・・・受かったのか?妹が・・・」
「ゆ、夢じゃないよな・・・?」
「ねえ・・・。誰か私の頭を思いっきり叩いてくれないかな・・・」
バシーーーーーン!!!!!
「い、いっったーーーーーい!!!!・・・・・・はっ!!!見返して・・・・合格・・・。夢じゃない・・・夢じゃないよ!!!」
「夢じゃないな!!!!おめでとう!!!」
「おめでとう!!!これは急いで豪華にしなくちゃ!!」
「おい弟に妹よ!!お祝いだ!!!!」
「『やった!!!!』」
「お姉ちゃん!!!おめでとう!!!!」
「ありがとう!!!」
「おい!!合格したぞ!!!」
「っしゃあ!!」
「私、合格した!!!合格したよ!!!」
「お〜うなんか騒ぎになっているな〜?」
「そういうお前もな。表情を隠しきれてないぞ?」
「だな。何しろこれほど嬉しいことはないからな!!」
「俺受かったぞ!!お前は?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「え?落ちたのか?」
「・・・なんて言うと思ったか?これを見ろ!!」
「・・・合格・・・お前もじゃないか!!!焦らせやがって!!!」
とある魔王城
「我が娘はどうだったんだ?」
「はい。少々お待ちください」
執事が目にも留まらぬ速さで我の前から消え、即座に戻ってくる
「戻ったか。それで?」
「はい。あの顔は・・・」
「顔は?」
「変顔しておられました」
「それは?良い結果か?」
「・・・」
「どうなんだ?」
「魔王様。私の顔でご判断を・・・」
「・・・その顔は・・・、受かったのだな?」
「はい。それはそれは。とても満足そうな顔で」
「それは何よりだ・・・。ふう〜・・・」
「お疲れですか?」
「・・・いや。この場合は心労だな。だがそれが報われた瞬間でもあるな」
「・・・なるほど。確かに娘様はどの職にも付かずに部屋におられましたね。それがこの件により出てくる。魔王様の苦労が報われたのも頷けますね」
「ああ。すまんな。執事のみならず、この場にいる臣下らも心配かけたな」
「『いえ。大丈夫です』」
「だが本番はこれからだな」
「はい。確かに本番はこれから。確か日本国の訓練は一言で言えば過酷と言う言葉が生ぬるい程に過酷。その訓練に娘様が付いていけるかが焦点ですね」
「それは他の合格者も同じだろうな・・・」
「はい。ですがかの日本国です。魔族だからって言って、そして経歴がどうであろうと手は抜かないでしょうし、種族差別をされた際にはした輩を粛清するでしょう」
「『?』」
「粛清?そんなに惨いのか?」
「いえ。物理的にどうとかではなく、例えば訓練の量を三倍にするとか、そう言ったことを課すそうです」
「『うわぁ〜・・・』」
「た、ただでさえ途轍も無い訓練量を三倍で罰を受けさせる。か。それは。それは、それは・・・」
「王よ。言葉が出てませんが?」
「だってよ?どう表したらいいか分からんぞ・・・。お前らは?」
「『(ブンブン)』」
「まあ。確かにそれは同意見ですね」
「王よ。進言、宜しいでしょうか?」
「何だ?国防相よ」
「これに乗じて日本国の秘密を知るのは如何でしょう?」
「『?』」
「つまりあれか?日本国の軍事力などを知り、あまつさえ俺たちの軍事力にか?」
「それもありますし、技術力を奪えば?」
「『転用できる!』」
「確かに良いですね!これを奪えば日本国に対抗できると言うことですな?」
「はい!如何でしょうか?」
「・・・」
「『・・・』」
「悪いが却下だ」
「『!?』」
「な、何故です!?折角の機会なのに!?」
「簡単な話だ。今の会話、俺たちだけだと思うか?」
「『?』」
「ま、まさか!!」
「察しが良いな。流石は我が相談役だな。そういうことだ」
「・・・」
「何?何です?」
「つまりですね。今の会話。いくら私たちで消音魔法や魔道具で秘匿にしたところで既に聞かれていた。そういうことですね。国防相」
「『え!?』」
「そうなのですか魔王!?」
「ああ。恐らくあと10秒ほどで来るだろうな」
「だ、誰がです!?」
コンコン
「し、失礼します」
「何だ?取り込み中だぞ?」
「も、申し訳ございません・・・。ですが、自分に止める権力はございませんでした」
「どういうことだ?」
「彼らが来たの・・・あ、ちょっと!?」
「どけ。邪魔だ。失礼する」
「な、何だおま・・・え・・・え!?」
「時間通りだな・・・。日本国憲兵様・・・」
そう。俺が待っていた彼のお出ましだ。大きなバッジを首から下げながら
「予想してた顔だな?まあいい。どういう事か分かるな?」
「ああ・・・。令状も持っているのだな?」
「ああ。だからここにいる。そこのいかにも悪人顔である国防相。お前を逮捕する」
「な、何故だ!?しかも悪人顔って失礼だな!!何の罪で!?」
「心当たりないか?なら聞かせてやろう。はい」
すると俺の目の前で日本の憲兵さんは先ほどの俺たちの会話を映した映像を流した。これには国防相のみならず、皆顔を青くした。無論俺も
「それで?何か言い訳でもあるか?」
「『な、ないです・・・』」
「まあ今回はそこの国防相のみ逮捕状を発行した。罪状は日本国にスパイ、諜報しようとした罪だ。恐らく当年での死刑執行だろうな。それで?お前らはどう釈明する?」
「『・・・』」
「まあこの国の王である魔王は初めから止めとけという顔をしていたから今回は不問とするし、王の相談役である吸血鬼の彼女もただ単に傍観者だけだったしな。けど臣下のお前らはもう少しで発行するところだった事を伝えておこう」
「『(ゴクリ)』」
「ああそれと、お前の娘さんに伝えておけ。『お前のお父さんの部下を引っ捕らえた。理由はお父さんに聞け。それと合格おめでとう。俺たちの訓練はキツすぎるが、いつか俺たちと一緒に働くことを願う。俺たちは一切種族差別をしない。した輩は粛清する事を約束する』伝えておけ」
「は、はい!!」
「では。ほら行くぞ」
「く、クソ!!」
すると元国防相は連行に抵抗し、魔法を発動し魔族の身体能力を駆使して逃れようとしたが
「ぐはぁぁぁ!!!」
「バカかお前?確かに人族である俺だが、そんなの鍛えれば問題ないし、魔法も対魔法を覚えれば造作もない」
普通に国防相から放たれた攻撃魔法を打ち消し、力で捻じ伏せようとしたのに逆にねじ伏せられていた
「それで?まだ続けるか?俺は相手するぞ?」
「な、舐めるな!!俺はこれでも国防相だ!!お前位・・・」
「相手しよう」
その後も日本憲兵と国防相の攻防は続いたが、終始憲兵さんが手玉を取っていた。簡単に言えば国防相が何も出来ない、ただ叫ぶだけの赤子に見えた
「はぁ・・・。はぁ・・・」
「もう限界か?お前の体力もたかが知れてるな・・・。事務作業で体力落ちたか?」
「はぁ・・・。うるせぇ・・・」
「まあ良い」
「あ、あの!!」
「何だ?」
「あ、ありがとう・・・考慮も」
「そう思うなら今回の国防相の所業をこの国民全員に放送しろ。偽りがあればお前も捕える」
「・・・心得た」
「では失礼」
「俺が恐れていたのはこういうことだ。あいつらは何処から監視しているか分からん。無論街中歩いていてもだ。つまり何処かで日本国に諜報されている。それを覚えておけ・・・」
「お、王?どちらへ?」
「国防相の所業を公表してくる。後任はその後だ。日本国は何処かでずっと俺らを監視している。忘れるな。今度は俺かお前らか。その後はこの国の消滅だ。お前らは国民全員を敵に回す度胸があるのか?常に自分の胸に聞け」
「『は、はい・・・(日本国、恐ろしすぎる・・・)』」




