試験前の出来事
試験前の出来事
とある試験会場
「ここかな?日本国憲兵と警備隊合同採用試験場というのは」
「みたいだな。しかし建物の大きさが尋常じゃない位に大きいな。これだと私らの王城より大きいんじゃないか?」
「かも知れないね。ここまで大きいとは私も思わなかったんだもの」
「・・・」
「どうしたの?」
「・・・改めて思うと緊張するな・・・」
「・・・やっぱりそう?」
「ああ。幾ら試験資格の条項に学歴や性別などを問わないとはいえ、やっぱり採用されないとわざわざ母国の兵士辞めてまできた意味無いし」
「そうだね。私たちって母国では女性だけという理由で兵士になれないとか、何も出来ないとか、私たちの事を何も知らないくせに雑用ばかりさせて!」
「だからこそ見返すためにも、わざわざ改めて勉強したからな。ここで踏ん張らないとな」
「ええ。さてと、そろそろ入る?」
「そうだな。えっと?入り口は・・・」
「試験会場への入り口はこちらです〜」
「あそこみたいだな」
「そうだね。しかし結構並んでるね〜。こりゃたまげた」
「何年寄りくさいことを言ってるんだ?」
「だって見て分かるでしょ?入り口までの人数」
「まあな・・・。凄い行列だな・・・。列だけで1万人は居そうだな・・・」
「ここから始まるんだね。長い道のりが」
「だな。並ぼうか」
「うん!」
「ここからね?うは〜〜・・・。入り口が見えない・・・」
「一応20レーンは用意されているけど、それでも少々時間が掛かりそうだな・・・」
「・・・暇だし、ちょっとだけ勉強する?」
「そうだな」
「お?ここだな。入り口。この後ろで良いのか?」
「どうやらそうみたいでっせ?兄貴」
「ここで俺らの伝説が始まる訳か・・・。そう思うと感慨深いな・・・」
「そうですね。兄貴、兄貴は勉強はしたんですか?」
「資料に書いてあったのはしたんだが、それ以外は全くだ」
「まあ、それくらいしか出来ませんな・・・。けど兄貴なら大丈夫でっせ!」
「そうか?それなら見ておけよ?俺の輝かしい姿を!!」
「はい!」
「「ガッハッハッハッハ!!!」」
「なんか後ろが騒がしいな・・・」
「これじゃ集中出来ない・・・!!」
「誰か注意を・・・」
「そこの風貌が悪そうな二人」
「あ?」
「何だよ?」
「ここは日本国、しかもこれから大事な試験を控えている連中ばかりだ。そんな試験場にお前らが馬鹿騒ぎしてどうする?気が散るだろ」
「何だよお前?ヒーロー気取りか?」
「そういうんじゃない。ただ大人しくしておけと忠告しているだけだ」
「忠告?何だそれ?バカだろ?」
「「ハッハッハ!!」」
「そうか。忠告を無視するんだな?」
「だからなんだ?」
「なら君らに会わせても問題ないな?」
「は?」
「今、君らの横に立っている日本国警備隊がお待ちかねだ」
「『!?』」
「どうも忠告進言をありがとう紳士よ。けどその忠告を無視するんだから、問題なく処分するわ」
「処分?どうやってするよ?日本国警備隊の女」
「簡単だよ〜。こうやって」
グギギギギ!!!
「う!?なんて力だ!?く、くるし・・・」
「あ、兄貴!?て、てめえ!!兄貴に何し・・・ぐえ!!!??」
う、嘘!?あ、あの女性警備隊さん、あんなに小柄なのに大男の首を片手で持ち上げながら取り巻きを足蹴りした!?
「く、クソ!!なら魔法で・・・」
「私の方が早いよ?対処できるかな〜?はい」
「む、無詠唱・・・グハ!!??」
こ、今度は無詠唱で速度も子分より勝ってる!?しかもその間にももう片方の手はあの大男の首を掴んだままだし・・・
「よ、よくも俺の子分を・・・」
「まだ喋れる度胸はあるみたいね。君はどう対処する?」
「足でお前を蹴飛ばす・・・!?」
「『え!?』」
「う、嘘だろ?あの女・・・」
「な、何が起きたの!?」
「ねえ・・・。今私の目に何が映ったんだ?全く理解が出来なかったんだが・・・」
「私もよ・・・」
「何が起きたという顔をしてるね?なら教えてあげる。君の首を掴んだまま私は君を持ち上げている。ここまでは良いね?その後君は足で私を蹴り飛ばして束縛を解こうと思った。けど身体能力の高い私にあしらわれた。でしょ?」
「だ、だから何した・・・」
「簡単よ。掴んでいる手から伸びている腕。その腕の肘を軸にして私はその場で360度時計回りで回った。けどそのままだと首を掴んだままに出来ない。だから一瞬で手を離し、また掴んだという訳」
「そ、そんなことが出来るわけ」
「今こうしてやってのけたんだから、事実だよ?それとも何?信じられない訳?ならもう一回やってみれば?」
「このクソ女!!調子に乗るな・・・」
ガシ!!!
「ほ、本当に・・・」
「回転して・・・」
「掴み直した・・・」
「さてと。そろそろ連れて行くか。子分も一緒に」
「お、おい!?俺を何処に連れて行かせる気だ!?」
「何処って、牢獄に決まってるでしょ?そこで君たちは日本国公認の犯罪者として登録される。そのお墨付きは怖いわよ〜?」
「す、すいま・・・」
「今謝っても遅いよ?さっきの忠告してくれた段階で止めていればここまでにはならなかったのにな〜・・・。あ〜あ〜残念残念」
「「ぎゃあああああ!!??」」
「『・・・・』」
「な、何か・・・」
「ああ・・・。凄いものを見せられたな・・・。あれが日本国警備隊の隊員・・・」
「『ご、ゴクリ・・・』」
「君たち、怪我ないか?」
「あ、はい。大丈夫です。先程の警備隊さんが連れて行ってくれましたから」
「そうか。それは何より。君たちはこの後行われる試験に集中しなさい」
「あ、あの!」
「?どうした?」
「先程の女性隊員さんの身のこなし。もしかしてあれも試験では求められるのですか?」
「いや。試験ではそういうのはない。あくまでもこの後行われる採用試験を合格して、学校内での教育に似たようなこと教え込まれて、最後に正式な試験の時に身体能力を問われる時に使われることだから、今の段階では気にしなくて良い」
「そ、そうなんですね・・・。あれ?2回?」
「資料にも書いてあったが、試験は2回行われる。今日この後行われる採用試験と、学校卒業試験。この2回共合格後に初めて国家警備隊または日本国警備隊に成れる、ということだ」
「そ、そうなんですね。因みにどちらがハードルとして高いんですか?」
「ハードルは学校卒業試験の方が高いな。何しろああいった能力もそうだが、知識や連帯感、規則も問われるからな。後半の方がハードだよ」
「そ、そうなんですね・・・」
「ま、頑張ってな」
「あれも問われるとか、やっていけるのかな・・・」
「私も不安になってきた・・・」
「どうやら他の受験者も同じみたいだね・・・」
「おっと。まもなく入るよ」
「試験会場の入り口はこちらです〜。建物に入る前に保安検査を行います〜。荷物はコンベアーの上に載せて下さい。貴重品などは身につけたままで大丈夫です。そのまま身一つで探知機に進んできださい〜。通り抜けて問題なければご自身の荷物を持って先に進んで下さい」
「保安検査?」
「あれみたいだ。荷物を棚の上に載せて、金属のボックスみたいな物で検査するみたいだ。私たちは金属の扉を通って問題なければそのまま進んで良いみたいだ」
「凄いねあれ。あれ何で出来ているんだろう?」
「さあ?けど中身を見られる訳ではなさそうだから、盗まれる心配はないな」
「そこは安心・・・」
ピーーーーーー!!!!
「『!?』」
「な、何!?」
「そこの君ら」
「は、はい!!」
「あ、前の3人見たいね」
「び、びっくりした〜〜・・・」
「君ら、バックの中身を出せ」
「な、何故です!?」
「君らのバックの中にマジックアイテムがあるだろ。耳に入れる通信機器か何かを」
「・・・」
「これを何に使うんだ?」
「何って、試験時間まで聞こうかと」
「何を?」
「そ、それは・・・」
「「「・・・」」」
「今回の試験に聞き取り試験は無い。もう一度聴く。目的は?」
「「「・・・」」」
「答えられないか。もしカンニングをしようものなら速攻で不採用だ。そして悪質なら牢獄へ行き、最悪は前科持ちだ。それでも良いのか?」
「「「良くないです!!」」」
「なら今の段階で言え。今の段階で正直に話せばこのマジックアイテムを没収し、終了後に返却する。そしてこのまま会場に進め。ただし試験中にカンニング行為が認められれば、その場で試験終了、晴れて前科持ちだ。それでも良いのか?」
「「「(フルフルフルフル!!!)」」」
「なら今言え」
「「「・・・カンニングに使用しようと思いました・・・」」」
「ならどうする?引き返すか?それとも終了時まで預けか?」
「「「・・・預けでお願いします・・・」」」
「宜しい。あとお前は財布の中身を改める。これも同様だ。君はマジックアイテムではなく単なる紙だが、どうする?」
「・・・はい・・・。お願いします・・・」
「財布は返す。ただし紙は処分だ。分かったら先行け」
「は、はい・・・」
「このように、この機械はアーティファクトやマジックアイテム、その他不正に関わるものを探知するものである。勿論発見次第問いただす。この場で正直に話し、引き返すまたは処分または預けなら不正行為として連行しない、が、仮に言い逃れし、試験中にカンニング行為が発生次第試験終了し牢獄送りとなる。最悪は不正行為による前科持ちだ。それが嫌なら肝に銘じろ」
「『は、はい』」
「そ、そんな恐ろしい機械だなんて・・・」
「き、緊張するな・・・」
「疑わしいものが無ければそのまま素通りみたいな感じで大丈夫だぞ〜」
「『(そんなこと言われても・・・)』」
「き、緊張した〜・・・」
「いきなり疲れたな・・・」
「うん・・・。あの保安検査、心臓に悪いよ〜・・・」
「けどこれであとは試験に臨むだけだ。今ここでへばっても仕方ない」
「そうは言うけど・・・。何かどっと来たよ・・・」
「分かる。けどまだ試験は始まってもいない。これからが本番だぞ?」
「分かってるよ〜。それで?私たちの目指す会場は?」
「試験会場はこちらです〜。右の入り口が憲兵、左が警備隊の試験会場になっています〜。お間違えのない様にお願いします」
「「左」」
試験会場入り口(保安検査前)
「そろそろ締め切り時間だな。来場者数は?」
「収容人数5万がほぼ満席の見込みね」
「まあ、合同とはいえ、凄い人数だな。これが同時に100ヶ所で行われるんだから、凄いよな」
「それほど皆成りたかったんだろうね。日本国に」
「けど何故だ?母国でも頑張れたというのに」
「三等空尉、どうやら私たちが思っている以上に他国は劣悪かつ過酷みたいです。一部は男女差別に種族差別。また一部は能力優秀なのにそれを生き殺しみたいに、所謂ブラックに。また一部はその国自体に嫌悪感や期待すら持てずにいるとか。挙句には見返しまである始末とか」
「・・・警部補・・・それマジか?」
「ええ。地球以上に闇が深いですね。それが故、最後の望みとしてここにくる方も少なからずいるとか」
「・・・そんな背景に試験に臨んで欲しくはないんだがな・・・」
「けどそれを逆手に取れば、逆に良い人材になるのでは?」
「どういうことだ?」
「母国に希望を持てない。あとがない。ここを最後に賭ける。つまり手を抜いたら負け。その先は絶望しかない。なら自分に出来る最大限な努力をし挑む。全てはこれからの為に」
「・・・」
「ですのでこれから私たちがすることは?」
「その奴らを絶望にさせない様に最大限教え込む。ということか・・・。これはなかなか骨が折れそうだな」
「けど私たちなら出来ますよ」
「そう祈ろう。さてと。そろそろ閉めるぞ」
「はい」
これから彼らの道が決まる




