パトロール
パトロール
「さて、魔法の習得も終わった事だし、いよいよパトロールするか」
「『・・・』」
「?」
「おい・・・」
「何だ?」
「無理やり習得された上にこの後パトロールだ?鬼畜じゃないか!?」
「何故だ?」
「『何故だ?』じゃないわタコ!脳のキャパオーバーでパンク寸前だわ!」
「?そんなこと?平気だよそれくらい〜」
この野郎〜。平気な顔でよくそんなこと言えるな!やはり自衛隊の奴ってみんな脳筋なのか?その方が説得力があるぞ?
「んで?休憩するのか?」
「?」
「だから、休憩。するの?しないの?」
「あ、ああ。勿論する」
「なら今から20分の休憩にするか。再集合場所はここで。良いな?」
「ああ」
「タバコは吸うか?」
「吸う」
「なら喫煙者はこっちだ」
喫煙所
「普通に休憩取るのな。てっきり鬼かと思ったぞ」
「・・・」
「どうした?まさか本当に!?」
「いや違う」
「ならなんだ?」
「休憩取れるうちはとった方がいいと思ってな」
「何だその意味深な発言は?」
「いやな?この後パトロールだろ?その際だが、一旦日本の思考とは違うから頭の中をリセットしてほしくてな」
「・・・。構わないが、そんなに違うのか?」
「勿論まだ慣れていないというのもあるが、2〜3日は相当疲労で時には寝過ごしや居眠りがあるかもしれんから」
「そんなにか・・・」
「まあな。特に終戦後が一番キツかったらしい」
「終戦後?地球の第二次ではなく?」
「異世界のだ。正直悲惨だったらしい」
「だった?」
「ああ。戦争難民、捕虜、死体、衛生状態が悪く疫病、感染症、収入がないから犯罪率増加。色々と手が付けれなかったとか」
「『・・・』」
「それに比べればいくら長い年月が経ったとはいえ、改善したらしいからな。それでもまだまだ蔓延っているのも事実だ。そんな世界にこれからお前らを送り込むんだ。一旦頭を空っぽにしないと色々精神面でも追いやられると思ってな」
「そういう事か・・・。どうやら思っていた以上に侮っていたというか、甘かったみたいだな・・・」
「それをこれから目の前で見るんだ。覚悟を決めた方が良い」
「分かった」
「そろそろ行くか。ああ、まだ吸い切ってないのなら吸い切ってから来い」
「『はい』」
「但しお前はダメだ。チャラそうな警部補」
「え?何故です?タバコですよ?二佐」
「お前はタバコじゃなくて葉巻だろ?それ吸い終わるのにどれくらい時間が掛かるんだ?」
「う〜ん?あと30分以上?」
「アホか。さっさと来い〜」
「は〜い・・・」
「『はっはっはっはっは!!!』」
集合場所
「さて。班分けも終わったし、乗り込むぞ。今日はキャラバンやハイエースに乗って移動する。門を出たら各自巡回エリアに向かえ」
「『はい!』」
「運転、頼んだぞお前ら。警察に色々と教えてやってくれ。今後はお前らと共に捜査などに加わるんだからな」
「『はい』」
車内
「そう言えば何で警察車両なんだ?てっきり自衛隊車両になると思っていたんだが・・・」
「それも考えたんだが、せっかく警察車両がこっちに来てるのなら国民周知の目的も兼ねてこっちにしようと会議で決まったんだ。それにペイント自体は簡単に終わったから手っ取り早く運用したいというのもあるだろうな」
「そういうもんか。確かに英語のポリスが現地語の警備隊に変わっていたな」
「ああ。まあバンタイプの使用頻度が現時点ではあまりないだろうが、将来は運用頻度も増えるだろう。セダンタイプでは乗用人数も限られるしな」
「それもそうか。それにしても結構走ってないか?既にエリアに入ってもおかしくないと思うんだが?」
「実はなんだが、今まで警務隊だけだったんだ。治安維持がな」
「それは聞いた。それがどうした?」
「その警務隊があるのは基地または駐屯地のみなんだ」
「うん。うん?のみ?」
「そう。のみ」
「・・・つまり、あれか?一定エリアに一つの警察署が本来なら必要のところが、ない。更に言えば巡回も応援も全て基地からの派遣。そういうことか?」
「大当たり。それを当てた警視には景品を」
「いや、いらん。マジか・・・。今後建設予定は?」
「今数十ヶ所を建設中だ。地元住民やハロワ、ギルド関連に外注依頼も掛けて大急ぎで建設中だ」
「そうか。けど結構日数を要するだろ?」
「いや?そこまで掛からないそうだ。2週間もあれば建つと」
「2週間!?労働基準に建築基準法は!?」
「労働は3交代制、建築は問題ない。日本の建築家が用意した物だ。耐震も問題ないぞ」
「そうか・・・。そんなに雇ったのか・・・?」
「人数は知らんが、噂ではとにかく破格らしい。何でも高給を受け取れるとか」
「インフラ整備でもないのに?」
「公共事業だからじゃないか?そこは分からん。おっと、そろそろだな」
「やっとか。駐屯地を出て1時間弱か。本当に基地を軸にしてるんだな」
「まあそれも2週間ほどの辛抱だ。どうする?一旦降りて歩いてみるか?」
「街並み自体は確かに中世みたいな感じだな」
「ああ。けどこれも場所による。平安時代な場所もあればツリーハウス、空中浮遊している場所もあるからな」
「・・・本当に色々あるな・・・」
「これから慣れるさ。っとここだな。一曹、ここでいい」
「了解です」
「ここは?」
「商業地区と住宅街の真ん中あたりだ。このメインストリートを境に南に住宅エリア、主に中間層が在住だ。北にそのターゲットをメインにした商業が立ち並ぶ」
「そうか。ちょっとみてもいいか?どんなのが売ってるのかをみたい」
「構わんぞ。それに日本本土でもあるだろ。警察官立ち寄り所とか」
「ああ。あ」
「そういうことだ。次いでにここで見回りしようや。そうだな。一曹、何人か連れて西方面を頼めるか?」
「分かりました班長は東ですね?」
「ああ。何かあれば無線を」
「はい。けど直ぐに事案が発生すると思いますけどね・・・」
「かもな。頼んだ」
「了解です。警部補達、行きましょうか」
「ああ」
「そんな直ぐに発生するのか?」
「統計上で既に証明されてしまっている。恐らく後数秒後に事案が」
きゃあああああ!!!????
「な?」
「・・・」
「さてと、行くか」
「こっちこっち!!憲兵さん!!」
「こちらですね?お怪我は?」
「大丈夫よ!それより強盗よ強盗!!」
「強盗ですね?顔は?」
「一人じゃないから全員は見てないわね・・・」
「そうですか。そしたらちょっといいですか?」
「?はい?」
「他に顔を見た方はこちらへ」
「おい二佐。どうやって聞き出すんだよ?これじゃ記憶の混同が」
「安心しろ。ここで魔法が使うんだ」
「魔法?ああ。そういう事か」
「察しが早いな。部下に説明を頼めるか?俺は別班と近くに応援を呼べるか聞いてみる」
「分かった。お前ら。脳みそに強制的に注ぎ込まれた魔法を使うときだ。詠唱を使っても良いから対象者から犯人の記憶を引き出してそれを絵かカメラ映像などを見せろ。あとは分かるな?」
「『はい!!』」
「流石、警察は仕事が早いな」
「勿論。それが犯人確保が任務だからな」
「なら俺も。CPこちら33番エリア巡回のガンマ2。33番商業エリアにて強盗事案発生。応援を求む。現在人相を目撃者から照会中」
『CP了解。ジュリー2、ジュリー5、キロ10、エコー1、エコー8が対応可能。事案対応を頼む』
『『了解』』
『二佐、西はどうします?』
「そのままパトロールを続けろ。多分そっちでも事案が発生すると思う。そっちに専念してくれ」
『了解です』
「西でも事案が発生するのか?それも矢継ぎ早に?」
「忘れたか?ここは異世界だ。犯罪発生率は日本の比ではないぞ?その証拠に」
『CPこちら33番エリア巡回のガンマ3。こちらも強盗事案発生、ただこちらは怪我人が出ているため優先度はこちらが上位である。応援を求む』
「な?」
「マジかよ・・・」
『CP了解。アルファ1〜3、フォックス4〜7、エコー10、11、対応頼む。エコー11は怪我人治療に専念。周辺の地元治療人と協力の上、怪我人の搬送も可能であれば頼む』
『『了解』』
『ガンマ3、こちらエコー11。怪我人の容態は?』
『息はあるがショック状態である。それと怪我人は3人、あとは切り傷のためこちらで対応可能。なお照会は終了、この後マップに容疑者の位置を送る。恐らくアルファチームが近いと思われる』
『エコー11了解3分で行く』
『アルファ了解。容疑者確保へ向かう。人数は?』
『容疑者10人。全員男。身長180cm、これも全員。見た目はどう見てもヤバそうなやつ。これで分かるか?』
『は!大体分かるが念の為端末反映よろしく』
『了解』
「早い・・・。端末?」
「空中投影型の端末だ。これなら嵩張らないし広範囲だからやりやすいんだ。まあタブレットでも良いと思うからそこは個人の自由だな」
「そうか。まあそこはおいおいだな。それより分かったぞ。人相はこれでカメラで最新だとここに引っかかった」
「分かった。現場保全は俺たちがやって、犯人確保は別動隊に任せよう」
「分かった。俺が無線送ろうか。CPこちらガンマ2。照会完了。端末に送る。恐らくタブレットによると近いのはジュリー5、続いてキロ10だ」
『CP了解。言われた班は犯人確保へ。それ以外は現場へ。容疑者の人数は?』
『人数7人。男4女2オカマ1。人相はタブレットや端末にて確認。それと女の一人は猫族のため跳躍力があると思われる。天井などの逃走も視野に』
『CP了解』
『ジュリー5了解。ジュリー2、男は任せろ。女を頼む。特に猫族だ』
『ジュリー2了解』
『キロ10了解。ジュリー2はその猫族中心に頼む。残りは任せろ』
『了解。すまんが頼んだ』
「流石だな」
「なに。見様見真似だ。しかしこれだと検挙は1時間以内に終わりそうだな。流石異世界。魔法があればなんでも出来るな」
「勘違いするな。魔法でも万能ではない。現に追跡は俺たちの技術を使ってるんだ。魔法にそういうのはない」
「そう言われるとそうだな。それより現場保全だ」
「おう」
『CP、こちらジュリー5、逃走犯7人全員確保。これより事案発生現場へ向かう』
『CP、こちらアルファ3、逃走犯10人全員確保。同じく現場に送る。それとガンマ3。確かに顔とかがヤバい連中だな』
『だろ?』
『ああ。後で合流する。以上』
『CP了解』
しばらく経った夕方
「随分疲弊してるな?」
「・・・言ってくれるな・・・。今朝の強盗事案終了直後に
別の事案の対応
その後馬車同士の自己処理
人探し
その後また強盗、今度は強盗致死
その後喧嘩仲裁
無銭飲食
万引き
スラム内の事案
偽装書類の対応
横領犯確保
立て籠もり
まさかの異世界警備隊の腐敗があってそれの対応、その後書類作成後にHQへ送付。
これを一日で対応してなおまたパトロール。やる事が多すぎだろ・・・」
「これでも今日の事案としては少ないほどだ。ひどい時には一日20件は発生する時があるからな。しかも所轄内では無い。パトロールしている俺たちだけでだ。これが俺たちの日常だ」
「・・・つくづく人手が足りなくなるな・・・ところでCPとHQの違いは?」
「CPは略さないでいうとコマンドポスト、つまり管轄エリアへ。HQはハードクォーターズ、つまり本部へ。この違いだ。使い方は?なんとなく分かるか?」
「つまり管轄内で収まる場合はCP、超える場合やCPでは収まらない場合はHQ、で良いか?」
「その認識でOKだ」
「因みに管轄超えた場合は俺たちは超えれないのか?」
「いや?別にそういうのは無い。ただ単に一報入れる義務とかがあるだけだ」
「そうなのか。それで?今日はいつまでやるんだ?」
「そうだな・・・今日は残り1時間にしておこうか。まだ教育中だしな」
「そうか・・・。それは有難い。一日の勤務時間は?」
「自衛隊だから参考にはならんから今後で良いか?」
「今後?」
「ああ。異世界人を入れた後だ。そっちに中心として動くだろうからな」
「そう言えばそうだったな。それで?」
「一日二交代制、つまり12時間勤務だ。6〜18、18〜6。これを週4勤務、だそうだ」
「ということは5日で8時間ということか。それって希望制?」
「いや、シフト制だ。融通は利かすそうだ。まあ募集人数が凄まじいみたいだから替えはいくらでもありそうだ」
「その対象は・・・」
「残念だったな。異世界人のみだ。俺たちは日本基準のままだ」
「だよな〜〜・・・」
「とりあえずそろそろ帰還しようか。戻ったら?どうするんだ?」
「?何か聞いてないのか?」
「聞いてないわけでは無いんだが、この後の予定がお前らの座学みたいなんだ」
「なら現地人の講師が俺たちに色々教鞭するんだろ」
「なら基地に戻ったら解散だな。次は明日だな」
「だな。今日はサンキュー」
「いいや。頑張れよ〜。先に言っとくが暫くはこんな感じが続く。後輩が育つまでな。それまでは気合い入れろよ〜」
「・・・。いつか飲みに付き合え。お前の奢りでな」
「それくらい付き合ってやる」




