志望数
志望数
防衛省異世界支部
「・・・」
「何してるんだ?」
「?おお同期よ。実は採用担当者の一部に抜擢されたんだが・・・」
「お前が?お前今別の事務関係で手が付けられなかったんじゃないか?」
「それが海将補からの通達でな。こっちに専念してくれと」
「あー・・・。将補からのお達しだと逆らえんな・・・。けどお前俺と階級一緒だろ?」
「ああ。俺は三等海佐。お前は三等空佐」
「なら二佐以上に丸投げでもしたら?」
「それがそれも出払っているんだと。海洋調査やら海賊対策に」
「は?けど他にもいるだろ?」
「あのな?当支部内に勤務している幹部、それも佐官クラスは何人いると思っている?予想以上に少ないぞ?」
「・・・ということは・・・」
「察してるかもしれんが、現状将官を除く俺こと三佐が指揮している」
「・・・それは大変なこった。いや〜人員不足は分かっていたが、ここまで足りんとはな・・・。上は異世界人の本省務めも始めるんだろうか?」
「制約があるから異世界限定だろうが、異世界にある防衛省支部には間違いなく組み込むだろうな。階級も最高で二佐らしいし」
「いつか俺たちが上司部下の関係になる訳か・・・。ま、別に良いがな」
「まあな。良くも悪くも俺たちは階級社会だし、それなりに絞ってやれば戦力にもなるだろ」
「だな。そこは期待しよう。それで?なんでボーッとしていたんだ?」
「・・・今データが届いたんだが・・・」
「何の?」
「募集数」
「ああ。それで?」
「この部屋入って分からなかったか?重苦しい空気感に」
「・・・まさか・・・」
「今そのデータのページのままだから見てもいいぞ」
「悪い。ちょっとみるぞ?」
「これマジか?」
「マジだ」
「枠数は無制限だからそれは良いとして・・・にしてもな・・・」
まさか募集数が10万とはな・・・。確かにこれは死ぬぞ?この数を捌くとなると、とても手が足りん・・・
「しかもな?この部屋にいる部署全員が採用担当兼教育担当でもあるんだ」
「は!?ここにいる全員か!?100人は超えているだろ!?」
「ああ。上も何を考えているのかが分からん。基地や駐屯地にいる佐官に任せれば良いのに何故かこっちに矢が立ってしまった」
「ちょっと待て?じゃあここの連中を駆り出したら本来の業務は?」
「別部署に丸投げだ。一応出来る限る引き継ぎはするが、量がな・・・」
「だから目が魚の目の如く死んでいたのか・・・」
「そういうことだ。しかもな?」
「まだあるんか?」
「この数はあくまでも高等教育を受けた数、つまり大学を卒業した後のここへの就職希望の数だ。一般採用は別にある」
「・・・その数字を見たくないんだが、数は?」
「表示してある」
「・・・!?」
「引くだろ?」
「何故10倍の100万なんだ!?手が足らんだろ!?」
「ああ。だからお前にももしかしたら通達が来るかもしれん」
「ここにか!?」
「ああ。心にした方が良いぞ?」
「・・・そんな悲壮な目で見ないでくれ・・・。というか武官志望でこの数だから、文官となると・・・」
「あっちも悲惨かもな」
ところ変わって警察庁(本土)
「改めて異世界進出、おめでとうございます警察庁長官殿」
「ああ。けど私は基本異世界には行かんからな。警察庁支部の支部長には警視監に勤めてもらう。まあ見回りくらいはしようか」
「それくらいは宜しいかと。それで、誰を推薦しますか?」
「推薦ね・・・。そもそも異世界に行きたい警視監ってこの庁内にいるのか?」
「・・・正直怪しいかと。何しろ支部長と言いましても階級は変わり無いのですから、やりたがる者はいないかと」
「警視長からは?もしやってくれるなら昇級してもらうが?」
「お言葉ですが、それも難しいかと。何しろ昇級しても異世界限定。本土に戻ったところで階級は前に戻ってしまうので」
「そう言えばそうだったな・・・。異世界だから何でもOKなだけだもんな。こっちに戻っても定員があるからやる訳がない・・・か・・・」
「はい。そこで提案なのですが、異世界に行きたい警察官を募って受けた者には昇級を異世界限定ではありますが、約束されてはいかがでしょう?勿論注意事項をお伝えした上で、にはなりますが」
「・・・それでやってみるか」
「はい」
警察庁異世界支部
「まさか引き受けたら警視正から一気に警視監まで上がるとは・・・。しかもまだ俺40前半なのに」
「まだ良いじゃないか?俺なんて警視正の昇格試験に合格後にこれだぞ?しかも俺は30終盤でだ」
「本来は俺が年上だから敬語は控えるよう律するのだが、まあこの際良いや。それで?警視監数は何人になったんだ?」
「異世界支部では100人程度になった。一応ここにいる全員が警視監ということになるな」
「そうか。では誰が支部長になる?」
「『・・・』」
「まあそうなるわな。階級が変わらないもんな。しかも本土に戻れば階級が戻るとなると、まあやる価値はないわな。そこで提案なんだが、ローテーションで回すというのはどうだ?」
「・・・」
「まあ、それなら・・・」
「私も・・・」
「よし。決定。初めは言い出しっぺの俺がやるよ。その代わり来年か再来年は別の警視監にやってもらうからな」
「『ああ、分かった』」
「それで?最初の仕事として募集は?」
「まずは場所を移動しよう。大規模会議室で行おう」
「おう」
「お待たせ今期の支部長となった者だ。階級は警視監のままだがよろしく頼む」
「『はい!』」
「では初めに募集はどうなった?」
「は!では私警視から。募集数は50万人。こちらは大卒のみの数です。一般枠では約300万人が募りました」
「『!!??』」
「おい!?いくら何でも多過ぎやしないか!?」
「流石にガセでは?」
「いえ警視長これは現時点です。実はまだ締め切っていない為、まだ増えています。その証拠にスクリーンをご覧下さい」
「こ、これは!?」
「はい。急激に伸びています。勿論篩にもかけますが、このように既に大卒で70万人。一般枠に至っては400万人を超えました」
「どうします?警視監達」
「『・・・』」
「・・・いや。まだ締め切るな。ラインは大卒100万人一般枠は500万人。どちらか早い方が到達後に締め切ろう。そうでもしなければとても手が足りん」
「分かりました。ではそのように」
「では次に犯罪傾向や対策だが、どうだ?俺達地球人でも対応可能か?」
「実はその傾向に詳しい方にお呼びしています。こちらへ」
「はい」
「どうもお疲れ様です。異世界にて警務隊に勤務していた三等陸佐です。階級の比較としては県警本部では警部、通常警察署でしたら警視が近いかと。よろしくお願いします」
「では便宜上三佐または警視として扱う。それで?異世界の治安および犯罪とかは?」
「正直申し上げますと、我々自衛隊の警務隊が相当尽力したとはいえ、まだまだ犯罪率が高い傾向にございます。恐らく中南米並みの犯罪率の高さが分かりやすいかと」
「『!?』」
「そ、そんなに高いのですか!?」
「ああ。正直交番レベルの人数では対応しきれないのが多く発生している。具体的には30分に1回以上は課クラスの人数が出動するくらいには」
「課クラスということは?」
「一つの事件に付き2〜30人は必要という事」
「そ、そうか・・・。そんなに必要か・・・。確かにこれは直ぐに人手が欲しくなるな」
「はい。なので本格的に異世界人が稼働するまでは人手確保のため、警視正クラスまで現場に駆り出されるのも珍しくないかと思われます」
「警視正クラスが平気で現場、か・・・」
「はい」
「取り敢えず人手は分かった。では犯罪は?」
「一応地球と大して変わらないですが、一番違うのは一般人が攻撃魔法や杖、剣を常に持ち歩いています」
「そう言えば異世界には魔物とか盗賊退治のため武器を常に携行している職業があると言っていたな?」
「はい。それの代表が冒険者です。この職業は常に何かしらの武器携行をしています」
「因みに許可証とかは?」
「いや。全くないです。変な話未就学児ですら武器を持っています。けどそれが普通なのです」
「『!!??』」
「つまり市民全員が銃、いや銃ではないんだが武器を何かしら持っているという事か!?」
「その認識で合っている」
「そ、そうか・・・。これは防具が重要になってくるな・・・」
「そうですね。いつも着用している防刃着では対応できないと思います。かといって防弾チョッキも嵩張るので、その瀬戸際が重要かと思います。あとは警察にも魔法を覚えてもらうとか」
「そう言えばそれを聞きたかったんだが、俺たちにも出来るのか?魔法発動」
「恐らく可能かと思います。根拠はないのですが、少なくとも自衛隊、外務省、海保全て魔法発動は可能でした。勿論威力や強度に左右はありますが、基本は貴方方でも可能かと思われます。一応私以外にもこちらに来て頂いているので後ほどご教授いたします。
それで話を戻しまして、犯罪としては万引きに無銭飲食は日常茶飯事で発生します。それとVIPの誘拐もかなりの頻度で発生しますね。それと強盗も日本に比べ10倍以上発生しています。あとこれも多いのが闇組織、所謂反社会関連の事案も発生しています。殺人はそこまで多くないですが、それでも発生数では日本の100倍はあります。一応こんな感じでしょうか?」
「『・・・』」
「・・・どうやら我々は平和ボケし過ぎたかもしれんな。これは身を引き締めないとかなり疲弊するかもな」
「確かに。これはなかなか一筋縄ではいかないと思いますね。結構骨が折れるかと」
「もし宜しければ数日間教育がてら一緒に行動を共にしますか?」
「・・・確かに論より証拠だな。だがこちらも人材育成も力に入れたい。長くは出来んぞ?」
「早ければ3〜4日、遅くても1週間で済みます」
「ならいいか。頼めるか?」
「お任せを」
「では頼む。他は?」
「『・・・』」
「無いようだな。ではこれにて解散。今後は警視長より上の階級は採用担当および現場からの意見、そして今後の対策と人員配置などを会議する。警視正以下は最大1週間の現場出向を命ずる」
「『は!』」




