番外編2
番外編2
今日も平和に過ごす人々を見て、一組の夫婦が呟く日常から始まる
「おはよう。今日もいい天気だな」
「ええ。今日も何気ない一日の始まりね」
「子供らは?」
「そろそろ起きるんじゃないかな?」
「もう起きないと学園に遅刻するんじゃないか?」
「そうね」
ドタドタドタドタ!!!!
「うん。起こす必要はなさそうだ」
「そうね」
「『おはよう。父さん母さん』」
「「おはよう」」
「早く支度しろよ〜」
「朝ご飯できてるからね〜」
「『は〜い』」
「さて。そろそろ俺も出勤の支度をするか」
「今日は何処に?」
「それは職場に行かないと分からないが、予定では40番地区じゃないか?」
「商業が立ち並ぶ地区ね。全くこの国巨大さにいつも毎日呆れ果てるわ。しかも40って言ったら」
「ああ。大企業や世界的有名な企業もそこにある。つまり必然的に人の通行もかなり多い」
「確かそこを根城にしているスリとか路上強盗が頻発している地区でもあるよね?」
「ああ。だから最近では合同でそこを警備しているんだ」
「警備隊も大変ね」
「それを言ったら君もだろうが、その40番地区に君の職場があるから」
「そうなのよね。毎日毎日職場に到着する度に耳にするのよね『誰かのバッグが盗られた』とか『財布スられた』とか」
「気をつけろよ?」
「ありがとう。今日も街を、そして今日は私も守ってね?警備隊さん」
「おう。任せろよ」
「おはようございます」
「ああ。おはよう。えっと今日は?」
「先輩、俺達と同じ地域の担当みたいですよ。ほら」
「担当先は・・・確かにそうだな。今日はよろしくな」
「はい。久しぶりですね。先輩とこうやって肩を並べるのは」
「そうだな。いつぶりだ?」
「大体半年以上前かと」
「そんなに前か。時が流れるのは早いな」
「そうですね。おっとそれと今日の担当地域にはこのチームも入るみたいですよ」
「どれどれ?ああ。千里眼を持ったエルフ族も入るのか。確かに適任だな。あと妖精族も・・・。妖精族?何でだ?」
「えっと確か・・・」
「被害者の多くが女性だからですよ係長」
「そうなのか?統計が出たのか?」
「そうですね。今持っている資料を渡します」
「すまんな・・・。これ最近か?ちょっと多くないか?しかも確かに若い女性が多く狙われているな・・・若い?言っては悪いが中年とかは?」
「どうやらそのまま路地裏に引き摺り込んで、そのままお世話したいそうです」
「オブラートに包んでくれてありがとう。そういうことか。でも若い女性なら力もあるんじゃ?」
「それがそうもいかないそうです。何か魔法か魔術で動けなくするのがあって身動きを取れなくしているとか」
「それは厄介だな。それで種族都合上女性しかいない妖精族が抜擢された訳か」
「そういうことです。ちなみに係長の言葉に棘があるのは気のせいですか?」
「?そう聞こえたか?それはすまなかった。君たちも役に立っているのは知っているから。許してくれ」
「表裏のない係長だから信頼しているのですよ?気を付けてください」
「すまんすまん。あとの同行者は?」
「取り敢えず、あとは何人かの力のある獣人族や空飛べる種族で今日は警戒に当たる感じかと」
「そうか。なら集合して朝の朝礼を行ってから出発するか」
「そうですね」
「おはよう諸君今日も国民市民達の心身と懐を守るように」
「『はい』」
「おはよう。指令部これより40番地区の警戒を始める」
『了解』
「とりあえず分かれるか?」
「そうですね」
「係長、ここの地区のラッシュの時間帯ってこんなに混むんですか?」
「こんなものだろ。ここはこの国の超が付くほどの有名企業や大手大企業が集る地区であるんだ。これだけ多くて当然だろ」
「だって見てくださいよ。馬車にはこんもりと乗ってますし、飛行船なんてとても重そうですよ」
「まあそういうものだろ。それより警戒しろよ」
「はい・・・。っと早速あの辺りが怪しそうですね・・・」
「本当だな・・・行ってみるか・・・人混みに紛れながら・・・流れに出来るだけ任せて・・・いたぞ、お前ら。大規模停留所南側に集合。種族人族と魔族の2人組。片方は土色の帽子を被っている」
『『了解』』
「今日の獲物は・・・このうまそうな女体で行こうか・・・」
「ですね兄貴。今日も今日とて獲物発見とは。やっぱりここの地区は外せれないですね〜」
「おうよ。では早速・・・行け」
「はいっす!!」
キャ!!!!!
「はい確保」
「クソ!!!」
「先輩が連絡してくれたお陰で先回りできました」
「いざという時は先輩だろうが上司だろうが、使えるものは何でも使っていけ」
「いつも言ってますよ〜先輩。取り敢えず外道らを連行していきます」
「頼んだ。お前らは女性のケアを頼む」
「わかりました」
キャ!!!!
「『!!!!』」
「別の場所か!!!お前ら行くぞ!!!」
「『はい!!!』」
「どうした!?」
「ああ警備隊の方々、お疲れ様」
「ああこれは衛兵ではありませんか。それで?どういった事案だ?」
「こちらの10代女性狼族が出勤途中にお尻と尻尾を触られたと」
「迷惑防止法違反か・・・。人相は?」
「人族に近そうだけど人族ではない雰囲気があったそうだ」
「人族だけど人族ではない・・・。ハイヒューマンか?」
「恐らくはそうかと」
「この都市にハイヒューマンはそう多くない。探せ!」
「『はい!!!』」
「お前らも警備隊と一緒に行け!!」
「『了解!!!』」
「ダメです!!」
「逃げられました・・・」
「そうか・・・」
「それと被害者からこのような情報が」
「なんだ?」
「不審者がウロつき回ってる?何でそれを衛兵や警備隊に言わないんだ?」
「それが彼女の職場が王城の関係者らしくて。一応近衛兵と上司にお伝えして警戒をしてもらったそうですが、あくまでも王城周辺のみで」
「こっちまではノーマークだったと。それが衛兵からの情報か?」
「はい。被害者から衛兵が聞き込みをしてわかったことなので、報告はそのまま衛兵が王城へ行くそうです」
「そうか」
「すまんな。警備隊の方々に手を貸してもらって」
「構わないさ。それは逆も然りだろ?」
「それもそうだな。それで?犯人は?」
「直接顔を見ていないから逃げられたそうだ。一応ハイヒューマン自体多くはないから見つけれるかと思ったが」
「そうか・・・。俺たち衛兵の一部が顔を見ていたからお前らと一緒なら追えると思ったが、こっちの力不足でも合ったか」
「そこは責めてもしょうがない。むしろ顔を見たのなら警戒もしやすいだろうからな。次に逮捕すればいいのさ」
「それもそうだな。取り敢えず報告に行ってくる」
「おう」
「どうも。近衛兵隊長及びこちらの上司の方に取り次いでもらいたい」
「これは衛兵とお隣は王城の関係者ですね。どうぞお通りください」
「どうもおはよう」
「おはようございます近衛兵隊長。それと上司の方も」
「ああ。おはよう。それで?どういった要件だい?」
「実は隣にいますこちらの女性が先ほど出勤途中の路上に痴漢行為を受けまして」
「「!!」」
「私ら衛兵と偶々悲鳴で駆けつけた警備隊の方と一緒に犯人を追跡したのですが、逃亡されまして。こちらの方の護衛も兼ねてご報告を」
「そうなのか」
「大変だったね。私も今は夫がいるしこの歳だからないんだが、若い頃は似たようなことがあったから気持ちわかるさ。気持ち悪かったでしょ?」
「・・・はい・・・」
「今日の業務は取り敢えず置いといていいから、休憩室か医務室で休んできな。私が各方面に取り繕うから」
「・・・はい・・・」
「そういうことで一旦席を外す」
「ええ。その方がよろしいかと。こちらに戻った時にまたお話を」
「そうさね」
「お待たせ。それで?何で彼女なんだい?」
「そこは分かりませんが、何か心当たりはありますか?例えば付き纏い不審者などは?」
「以前にこの周辺でそう言ったのは耳にしていたから警戒はしていたんだが、まさか出勤途中とはな・・・」
「見落としていましたな・・・。私ら近衛兵が街にいる衛兵や警備隊にこの事をお伝えしていれば」
「今更悔やんでも仕方ありません。それよりまずはこのような事案が起きないようにするのが重要です」
「それもそうですね。それで?何か分かったのですか?」
「王城付近での不審者と今回の件が繋がっているのかは分かりませんが、被疑者はハイヒューマンである可能性があるかと」
「「ハイヒューマン?」」
「ならそんなに多くないはず。直ぐに見つけられると思うが?」
「・・・言っては何ですが、本当にハイヒューマンなのかが怪しいところです。というのも彼女の言葉だけでは。もっとこう特徴のあることが欲しいのです。獣人なら耳、魔族なら角、吸血鬼なら牙など、そういったのが無いと、ハイヒューマンと断定するには」
「確かにな。彼女はなんて言ったんだい?」
「“人族っぽいが人族では無い”というだけです」
「・・・それだけだとハイヒューマンと断言できないですね・・・。下手に断言すれば」
「種族差別になりかねんな・・・」
「ですので、上司の方にお願いしたいのが、彼女のケアと同時にもっと詳細が欲しいのです。些細なことでも構わないので」
「分かった。何とか聞いてみるさ」
「どうだい?落ち着いたかい」
「はい。何とか落ち着きました。すいません折角の業務を」
「いいさ。それにその状態で普通に業務をすること自体間違いなんだ。そんな感じで休まないと心身ともにボロボロになってしまう。それなら休んでしまえ。そういうことさ」
「ありがとうございます。先ほどまで泣いていたので逆にスッキリしました」
「そうかい。それは何よりだ。それで?他に何か思い出したかい?」
「どうとは?」
「朝の出来事さ。数時間おいて落ち着いてきたんだ。何か思い出すとかは?」
「・・・あ、そういえば、あの時ハイヒューマンなのかな?と思ったのですが、よくよく思い出してみると違うかも」
「ほう?どんな用にだい?」
「その人、気配を感じなかったんですよ。まあ通勤の時間帯というのもあると思うのですが、普通多少分かりません?自分の周囲の距離感と言いますか、他の人の距離というか?」
「ああ。私も何となくだけど分かるさ」
「ですよね?けどなぜかその人はかんじはなかったんですよ。まるで急に目の前に現れたの如く」
「ほう?他には?」
「兎に角足が速いですね。私が狼族というのはご存知ですよね?」
「ああ。特に狼族は目も良いよな?」
「はい。獲物を捉えるためにも並外れた動体視力も持ち合わせているのですが、その時は動揺もありましたが、目で追えるのがやっとな感じでした」
「狼の目でも追えるのがやっと?そんなにかい?」
「はい。少なくとも同族以外でそれだけ速いのは見たことありません。なのでてっきり魔法か何かで消えたのかと。あと、亡霊系の種族も姿が消えるじゃ無いですか?そう言ったのとか、姿形を変えれる種族とか」
「・・・分かった・・・どう思うかい?」
「え?」
「すまんな。近衛兵や衛兵にもこっそり同席させてもらっていたさ。許してくれ」
「いいえ。私も曖昧なのが悪いのですから。それで、お役に立ちそうですか?」
「種族ではハーフに近いですね」
「ハーフ?ハーフリンクですか?」
「いいや。文字通りハーフ。異種族で生まれた子供ということさ」
「数は多くはありませんが、いるのは確かです。そこから辿るとなると・・・」
「骨折れる作業だけど何とかなりそうだな。手伝ってもらえますか?」
「もちろんですよ」
「あ、私も・・・」
「貴女は取り敢えず通常通りにしてください。最後に聞きますから」
「はい」
「では一旦これで」
「お疲れ様」
「それで?どうでした?該当する者は?」
「う〜ん。ちょっと数が多いな・・・。この国からこの都市へ限定して更に在住者と訪問者を合わせると、軽く4桁は居るな・・・」
「ちょっと侮っていましたね。そこまで多くないと踏んでいたのですが・・・」
「まあ取り敢えず訪問者は省いて良いだろうな。何しろ日数が長い。短期滞在者では無いのは確かだ。まずはそこから絞って、次に」
「都市の端付近も省いてよろしいかと。例え容疑者がそれだけ遠くに住んでいたら移動だけでも時間がかかりますから」
「そうなるとハーフが多いのは先端辺りが多いから、結構絞られてきたな」
「それでも100人近くは居ますね。ここから絞り込むとなると・・・」
「骨折れるがやるしかない。聞き込みだ。衛兵にも協力を仰げ」
「了解です。俺が連絡しますので、聞き込みに行ってきてください」
「すまんな」
「あ、どうも警備隊です。捜査専門の衛兵に取り次ぎを」
『お待ちを』
『お待たせしました』
「先日、王城関係者が被害に遭われたことに関して進展が。該当しそうな方をリストに上げましたので、そちらに伝書鳩で送ります。一応先に我々警備隊が先に聞き込みに行ってますが、数が多いので衛兵に協力を仰ぎたいと思います」
『分かりました。そのリストが来次第こちらも動きます。ありがとうございます』
「結果はどうでしたか?」
「悪くないがよくもないな。衛兵との協力もあって何とか30人までは絞れたが、これ以上は絞り込めんな。何しろ容疑者に勘付かれる恐れがある」
「そうですか。でしたら情報を近衛兵にも共有して、それっぽいのがいましたら捕らえて貰うのはというのは?」
「冤罪のリスクがあるが仕方ないな。この情報を他の機関へ共有。そして犯人確保に努めよ」
「『はい』」
・・・・・
「さて。初めての都市に入れたぞ。このあとはどうしようか」
「そこのお兄さん?この都市は初めてかい?」
「おやおばちゃん。そうだね。初めてだ」
「ならこの街の名物を食って行きなさい。クセになる味だから。ちょっと胃もたれが心配だけどね。カッカッカ」
「なら食って行こうか。オススメの店は?」
「今立っている大通りを東に進めば行列がある。その店だよ。そこはいつも行列を成しているからわかるはずさ」
「ありがとうおばちゃん。行ってみるよ」
「それと近頃スリも多いから気をつけないよ」
「ありがとう。あ、これお礼」
「これはありがとうね」
「えっと?ここか・・・確かに行列ができているな。どれくらい並ぶのか?」
「現在待ち時間は30分です!」
「30分なら待つか・・・」
「まさかのタコライスとはな。けどかなりクセつよな味だが、美味かったな。けど確かに人によっては胃もたれするかもな。この後は、取り敢えず宿探すか。さっきの店員に聞くか。あのすいません。この近くで宿屋ってどこですか?」
「宿屋ですか?予算は?」
「安いのがいいが特に予算は決まってない」
「でしたら2ブロック北に宿が集まるブロックがあるので、そこでしたらあるかもしれません」
「ありがとうございます」
「っとここのストリートみたいだなって結構あるな・・・。取り敢えず直感信じてここで」
「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」
「取り敢えず二日泊まりたいのですが空いてますか?」
「分かりましたご予約は?」
「ないです」
「素泊まりと食事付き、どちらが良いですか?」
「飯は外で食いたいから、素泊まりで」
「お風呂は共用と個別、どちらが良いですか?」
「共用で」
「そしましたら40フィートになりますが如何しますか?」
「それでお願いします」
「かしこまりました。こちらがお部屋の鍵です。3階の階段を登った向かい側にあります。ではごゆっくりとお寛ぎ下さい」
「ありがとう」
「晩飯はここで食うか・・・っと?」
「離してください!!」
「こっち来い!!」
「離せ!?」
「・・・食う前に対処するか・・・。あの客は?」
「・・・良く来る悪党みたいな方ですよ。力が強いのもそうですが、権力もある方なんですよ。確か何処かの貴族の子息だとか」
「当主は何してるんだ?」
「当主様というより、その一族自体が遠方でそこまで耳が届かないのと、その前にもみ消しがある噂や独断があって対処が出来ないのが現状なのです」
「警備兵や憲兵は?」
「その前に解散や金などで口封じ、挙句には連れ込みもあって皆恐れて何も出来ないのです」
「なら今回は俺が対処しよう」
「え?」
「離して!!」
「はいそこまで」
「あ!?なんだお前!?」
「単なる通りすがりの訪問者さ」
「何の用だよ!?」
「彼女を離してやりな?」
「は!何を言い出すかと思えば・・・。これは俺たちの問題だ。な〜」
「うるさい!!」
「まあまあ。取り敢えず離しな?」
「嫌だと言ったら?」
「・・・実力行使はしたくないがするしかないよな?」
「ならやってみろや!!オラ!!」
「それで?何だって?やってみろだっけ?」
「い、いいえ・・・。なんじぇもぼぁりまじぇん」
「何だって?声張りな?じゃないと聞こえないぞ?」
「な、何でもありません!!」
「なら次どうするか分かるな?」
「じじゅれいじばす・・・」
「失礼するなら早く立ち去りな」
おおおおお!!!
「お兄さん!!ありがとうございます!!」
「いいや。寧ろ大丈夫か?」
「はい!お陰様で」
「なら何より」
「あ、あのお客様!」
「うん?」
「今回撃退していただいたお礼に。食事代は無料で構いませんので」
「・・・いやこの程度でそれはないだろ?」
「いいえ。寧ろこちらからお願いします!!オーナーや店長、料理長から許可も取っています。ほら、厨房入り口に」
「「「(グ!!!)」」」
「たかだかこんなことでそんな待遇は・・・」
「『たかだかではありません!!』」
「お、おう・・・ていうかなんか増えてね?」
「これは失礼しました。あまりにも鮮やかで思わず見惚れてしまいました。私らはこの街の警備隊と衛兵でござまいす」
「警備隊ならさっきの輩は?」
「勿論確保しました」
「ならコッテリと絞り込んでやれ。色々と犯罪を犯しているだろうからな」
「それは勿論です」
「まあ取り敢えずは飯にするか」
「なので無料で・・・」
「普通に金払う。これは譲れん。それでも無料ならここを立ち去る。それだけだ」
「・・・頑固ですね・・・。分かりました。では代わりに最高のお料理をお出しすることをお約束いたします。それなら如何ですか?」
「その約束を遵守できるなら」
「お任せください!!」
「はあ〜食ったくった・・・宿に戻るか」
「あ、あの!!」
「うん?君はさっきの?ってあれ?二人?」
「ああ。私たち双子なんですよ」
「そうなのか。それで?」
「この度は姉を助けていただき有難うございます!」
「別に大した事はない。それにあいつ自身が力あるから手出しできなかったのも仕方ないだろうな。まあ逮捕された以上はその際は衛兵や警備兵たちの仕事だろ?」
「はい我々にお任せください」
「んで?」
「えっと・・・。翌日のお食事とかをご一緒に、というのは・・・」
「ありがたい事だが、あの場で発言した通り、俺はこの都市では単なる訪問者だ。それ以上もそれ以下もない。だから数日経ったらここを後にする。なのでそこまでする必要はない」
「そうですか・・・」
「それにお前らも忘れているだろうが、一歩間違えれば公共の場での喧嘩だ。逆に褒められたものではないだろ」
「『・・・』」
「だから気持ちだけ受け取っておく。じゃな」
「紳士な方でしたね」
「まさか姉のお誘いを断るとは。まあガサツさが響いたかもしれませんが」
「良く言うわよ。貴女だって今朝は痴漢の被害者で対処できなかったじゃない?しかも動転していたとはいえ、ハイヒューマンと間違えるなんて」
「それは言わないでよ・・・。それで?彼は本当にただの訪問者?姉の誘いを断ったプラスあの野朗を撃退できるなんて」
「調べてみないことには分かりませんが、恐らく本当に単なる訪問者かと、念の為国境警備隊にも連絡とってみますが」
「ま、いいわ。それより早く家に帰って支度をしないと」
ピーピーピーピー
「あ、俺だ。何だ?」
『あ、お疲れ様』
「おう。どうした?」
『実はさっきお前らが詰所に連行した傲慢な野郎。まさかの事実が判明したんだ』
「事実?何だ?」
『それが、ここ最近女性を食い物にしている野郎と言うのが判明したんだ』
「「!?」」
「え!?まさか今朝の痴漢騒ぎも・・・」
『ああ。彼に間違いない』
「証拠は!?」
『奴の家を家宅捜索した。ああ勿論奴が今住んでいる場所だぞ。そしたらわんさかと証拠が出てきた。今朝のことからここ半年の痴漢や強盗関連の事案も。更に殺人の加担も』
「「!?」」
「そういえばウエイトレスも言っていたね。あいつが色々と加担しているって。まさか本当に・・・」
『ああ。だからこれからより調べることにする。そういえば顔は見なかったかい?』
「さっきの?なら当事者は私の姉だから直接は見てないよ?」
『なら詰所に来てみろ。恐らくは同じ顔だろうから』
「う、うん」
「まさか解決するなんて」
「思わぬ形でな」
「まだ解決してないよ。私がその顔に見覚えがないと意味がないからね」
「そうだな」
「どうだった?」
「うん。やはり彼だわ・・・全て特徴が一致するもの」
「ならこれから徹底的に取り調べを行わないとな」
「取り敢えず解決?」
「ここまで来るとな。俺は衛兵詰所に戻って報告してくる」
「あ、私も王城に帰って報告してくる」
「結局色々と余罪が出て強制送還の後奴の故郷で裁判が行われるそうだ」
「だろうね。それと例の彼に感謝状を送りたいと」
「感謝状?王から?」
「いや。王ではなく私の上司や近衛兵隊長から」
「そうなのね」
「まあ、彼からすれば単なる暴漢からだけだろうけど、それで感謝状なんて」
「まあ夢にも思ってないだろうな。けどそれほど感謝していると言うことさ」
「そうね。取り敢えず迎えに行く?」
「ああ。だがなぜか知らんが彼は断る気がする。直感なんだけど」
「奇遇ね。私もよ」
「話によればここらしいけど・・・」
「入ってみるか」
「どうも警備隊です。飲み屋であった出来事で彼に取次を」
「飲み屋?」
「はい。暴漢騒ぎがあったあの場所です。彼に近衛兵から感謝状が」
「ああそれで。けど申し訳ございませんが彼はもういませんよ」
「『いない?』」
「はい。何でも予定が出来たから切り上げると。差額の代金も受け取らずに」
「どれくらい前ですか?」
「2時間前ですね」
「『・・・』」
「2時間前なら」
「普通ならもう都市を超えていますね」
「どうやら感謝状は贈れそうにありませんね」
「そうみたいだね。私から各方面に伝達しておくよ」
「すいません。お願いします」
「全く。彼は何者でしょう?」
「それは私らに聞かれても。けど紳士な方です。きっとどこかで誰かを無償かつ名乗らずに助けていると思うよ」
「そうですね」
「どうせ誰かから感謝やら取り繕いが起きると予想したから早めに出たが、正解だったな。それより俺にとっての成果はこの都市で頻繁に起きている権力者関係の犯罪を潰せたことだ。これにより治安も改善するだろう」
『俺だ』
「例の件解決した」
『手柄は?』
「当然あの都市にいる行政執行機関だ」
『それは何より。わかっているとおもうが、我々の任務は非公開、極少数を除いて知られてはいけない存在である。故に毎度偽名や仮面を変える。それが我々、日本国自衛隊の隠密部隊だ』
「分かっている。次は?」
『その星では知らないものはいない、小さな子どもや僻地な場所の住民ですら知っている芸能系企業、企業内容は発掘、育成、仲介、正直こっちのテレビと総じて変わらない。あるとすれば規模がかなり大きくそしてかなり評判のいい。とにかくそこで一定期間の警護が次の任務だ。因みに今送ったPDFの中に誰か知っている芸能人はいるか?』
「・・・いない。というか芸能系企業の割には大きすぎないか?」
『正直規模だけでも驚きだが、芸能のジャンル数も凄まじい。正直その企業に入れば演者、音楽、裏方、挙句には経営までうまく行く始末、その証拠に大体育成や演者の経営者にそこ出身の人しかいない。変な話忌み人で嫌われているのですら成功すれば将来安泰は間違いないだろうな』
「・・・まあいいや・・・。それで?誰を担当するんだ?まさか全員か?」
『いや。全員には間違いないが、枝分かれした企業まで面倒は見切れない。なのでその母体に所属している全員を対象とした』
「・・・裏方もか?」
『・・・』
「その無言が答えだな。終わった後は長期休暇を求む」
『良いだろう』
「・・・それにしても老若男女問わず凄まじい数だな・・・」
『何なら子役やそのアイドルまでいる始末。また更に熟年のアイドルもいる』
「・・・顔バレしても知らんぞ・・・」
『その場合は責任は取れない。バレた暁は異動か本国へ返還だろうな』
「時々それでも良いと思ってしまう自分がいるぞ・・・。変わるか?」
『やめとく。それと三等陸佐から伝言だ。誰でも良いから多少知識を身につけた方が良い。世間知らずと思われてしまって逆に悪目立ちするぞ』
「用心しておく。・・・いや、逆にそれも良いかもな?」
『どう言うことだ?』
「無理に知らないことを蓄えても仕方ない。それなら逆にそれを逆手にとって敢えて顔を覚えてもらう。どうせ名も顔も偽りなんだ。変装は簡単に出来るし任務遂行後の変装も容易だ」
『そう言うことか。なら敢えてそうしておく。最後に所属している人を全員送る。最低でもこれは覚えておけ』
「了解した」
今日も何処かで誰かを陰ながら見ている。
もしかしたら貴方の後ろにもいるかも?
これ以上は書けません。
また書くかもしれませんが完結済みとします。
無責任で申し訳ございません




