言い争い
意外に妄想は続かないものだな・・・
言い争い
飯も食い終わり、さて学校に向かおうとしたらサラが突然、こう言ってきた
「ねえお従兄さん。一緒に学校に行っても良い?」
「別にわざわざ言う必要もないだろ?けど何故だ?別に俺じゃなくても、サラの友達と一緒にした方がいいと思うのに」
「一番はお従兄さんと一緒にいたい。勿論手を繋いで恋人の様にしたい。けどその前に政治的意味もあるの」
「政治的意味?」
「確かに私達は子供だけど、今のうちに許嫁を決めたら、お父様も国民も安心するの。お従兄さんはこの世界の事は疎いから簡単に教えると、私みたいな王族はこの年くらいから許嫁を決めておかないと、行き遅れや未来の事で不安視する声が上がるの。だから今のうちに決めておくのよ。まあ相手がどうかは別問題になるけどね。だから」
「そういうことか。けど良いのか?極端な話、サラを政治に利用するのと同類だけど」
「良いの。お父様も許嫁がお従兄さんなら『ある意味では禁断の恋だけど、その方が何かと問題が起きてもどうにか出来るはずだ。何とか融通を利かせておこう』と言うと思うの」
「そうか。それにサラ自身もどうなんだ?分かってはいるみたいだけど俺は君に恋をしていない。あくまでもサラからの一方通行なだけ。演技とはいえ君はそれでも良いのか?」
「あまり現実を突きつけないでほしいわね・・・本当ならもっとお従兄さんにベッタリくっついて、振り向かせようと思ってるわよ。けどやっぱりお従兄さんは振り向かない。それは分かっている。分かってる・・・演技だから役目が終えたら用済みになる・・・ぐすっ」
?あっあれ?・・・まさか・・・泣いてる?
「おっおい・・・大丈夫か?」
「大丈夫よ・・・これだけ頑張ってるのに振り向かないことに悲しさを覚えて・・・少し情けなくなってるだけだから・・・」
「そっそうか・・・」
これはどんな言葉も地雷になるな。暫くは様子を見るか。多分だけど背中をさすっても逆に悲しくなるだけだろう。今はそっとするか
「ねえお従兄さん。あなたはこの学園にはただの子供として来たの?それとも自衛隊の任務?」
「・・・あまり言いたく無いっと言えば分かるか?」
「後者の方、ということね」
「すまん」
「良いの。因みにだけど、任務が終わったら・・・その帰るの?えっとカサジマ県だっけ?そこに」
「・・・一応上の指示で動いているから、例え任務中でも帰還命令が来たら直ぐに戻らなければならない。つまりいつ戻るか分からない、というところだ」
「そうなのね・・・つまり今その命令が下りても・・」
「おかしくない、そういうことだ」
「・・・ぐすっ」
・・・これは・・・更なる地雷が設置されたな。いやもう起爆したか?
「うっ・・ううっ・・・ぐすっ・・・ヒック」
・・・起爆した方が正解だな。こりゃこの状態では学園には行けないだろう。どうしたものか
「・・・あ〜アレクサス君?何王女様を泣かせているのかな?」
・・・サラが泣き始めた時点で嫌な予感がしたが、どうやら的中してしまったようだ。はあ〜
しかも何故かは知らんが振り向いたら、クラスメイトほぼ全員と同学年全員とあれは多分2年生と3年生の先輩か?が勢揃いして、俺に敵意を示してきた
「で?何で王女様は泣いているのかな?」
「・・・本人に聞いてくれ・・・悪いけどサラの慰め方が分からないから後は任せるわ。俺がいても多分状況は変わらないと思うから。すまんが頼む・・・えっと、すまん名前はなんだっけ?」
「訳ありみたいね。分かったわ。私はリリーよ」
「リリーか。分かった。すまんが頼む」
「無責任だと思うけど、あんたがそう思うなら仕方ないね」
俺は微妙な空気の中、一人で学園の門をくぐった
☆
「それで?何かされましたか?」
「・・・ううん・・・何もされてません」
「ですが・・・そのようなすすり泣きは・・・こちらとしても心配になります。辛いでしょうが話して頂けませんか?」
「・・・心配をかけ過ぎても悪いですわね・・・分かりましたわ」
私は昨日今日であった出来事を皆さんに打ち明けました。告白、血縁関係、そして禁断の恋、ほぼ全て打ち明けました。ただしお従兄さんが自衛隊で任務で来ていることは秘密です。打ち明けると初めは告白の件で驚いた人もいれば、私が振られて良かったと安堵する人もいました。血縁関係では皆さん、戸惑っていました。何しろ他に血縁者がいたのです。ある意味お従兄さんも王族と知り、先程の敵意も不味いと気づいたのか、顔を青くする人もいました。最後に間接的とはいえ、血の繋がりのある人に恋をしてしまったのでこれは禁断の恋と気づいた人が出てきて、先程の私が何故泣いていたのかを察しどうしたら良いのか、それこそ先程のお従兄さんと同様に対応が分からない人も中にはいました。一緒に背中をさすってくれたリリーも途中から困った表情になってきました
「そっか〜まさかアレクサス君と王女の関係は従兄妹か。確かにこれは分からなくなるわね・・・」
「ええ・・・かと言って今から近親婚を認めるように言っても・・・」
「無理な話ですね・・・」
「アレクサスが俺たちに任せると言った理由も今なら」
「分かってしまうな・・・」
「恋としては一番最悪なパターンだな・・・」
「博士、それは多分お前が説明しなくても大半は分かると思うぞ」
「だな。一目惚れか又は偶然出会い、回数を重ねていき『なんか俺たち気が合うな』となって恋人同士になってふと気がつく。『まさかあの人は兄妹?まさか〜』と初めは気にしないが後々『私の恋人って兄?』と不審が強くなり、探偵などに問い合わせると結婚間近で俺たちは結婚が出来ないことを知る。理由は血縁、しかも兄妹であるから。そしてそれに絶望して片方が亡くなるケースも少なくない、いわゆる生き別れのケースに今回は近い、だろ?」
「・・・俺の口から言うのは憚れるから助かった。そういうことだ・・・」
「なら俺が慰めよっか〜〜・・・」
「『黙って退場しろ!チャラ男!!』」
「おいこいつを連れて行け!」
「「はっ!」
「助けてくれ〜〜!!」
「けどどうしよう・・・私言葉が見つからない」
「悪いけど私もよ・・・」
「こう言うのは正直不謹慎だから余り言いたく無いけど、時間が解決してくれる、と俺は思う・・・」
「ごめん。私も今回だけはそれに一票するわ」
「『・・・』」
☆
先に教室に入ったが噂が呼んだのか、俺に対しての視線が冷たい気がする
「おい、王女を泣かせたって本当か?」
「泣かせたとは些か語弊があるが、本人がそう捉えたのならそうだろうな。勿論謝罪はした」
「そういう問題じゃないと私は思うけど・・・」
「俺もまだ噂しか聞いてないが、聞いた話だと一方的に泣かせたらしいがそこはどうなんだ?」
一方的に泣かせた部分を聞いた瞬間、周囲は驚きと王女様を俺が泣かせたので周囲はブリザードに吹き荒れている。まあ普通に考えたら死罪ものかもな
「それは本人から聞いてくれ。俺の口からは言えない」
「やっぱりなんかしたのでしょう!?」
「なに?王女だからたかろうとかしようとしたのか?」
「最低!」
「敵よ!それも女の敵どころか、みんなの敵よ!」
はあ〜やはりこうなったか・・・まあこればっかりは本当に俺の口からは言えないからな。本人が来てから誤解を解いてもらおう
「アレクサス。ちょっと来い」
「先生もか・・・」
「当たり前だ。単なる喧嘩の仲裁等だったらまあどうにかなるだろうが、今回は相手が王女様だ。理由を聞いて正当な理由が無い限りはお前は生徒指導&退学だろうな」
「まあいいや。理由は俺の口からではなく、本人に聞いた方が早いと思うぞ」
「残念ながらサラ様は話を聞ける状態ではない。何しろ号泣しているからな。場合によっては王が臨場する事も辞さないだろうな」
「・・・そうですか・・・仕方ありませんね」
「・・・何故そんなに冷静なんだ?」
「いや、何でもありません」
「そうか。今日はこんな状況だから授業は午前は中止だろうな」
「・・・」
どうやら相当話が盛り込んでいるな。まあ引き金は俺にあるからどうにも出来んが。
取り敢えず俺は生徒指導室?に連れて行かれた。部屋に入るとサラと教師5人と理事長?学園長?が椅子に座ってサラを宥めていた。俺はその向かい側に座る
「このような出来事が生じた為、君に来てもらった。取り敢えず見知らぬ者もいて誰か誰だか分からん筈だから先に軽く自己紹介な?俺は生活管理及び指導を担当している マークという。一応生活指導を担当している人は何人かいるが、今日は俺が担当する」
マーク先生か。?先生で良いのか?まあいいや。結構がたいが良いな。人族かな?それにしてはがたいがいい。多分その気になれば喧嘩も出来るのではないか?
「次は私ですね。私はこのラローツ魔法学園理事長をしています、リーレイア・ランと言います。今回は当国の王女様が泣かされたと聞いて叱責をしようと思い、参上しました」
参上の単語をここで使うか?普通。まあいいやそんなの気にしても仕方ないしな。女理事長か。なんか外見は幼く見えるな。この人だけなのか?それとも他の学園理事も同じか?
「私はラローツ魔法学園の学園長をしている、ライナ・ルルと言う。私も王女が泣かされたと聞き、そいつを駆除しよう思ってここに来た。多分だけどあんたが今日の命日になるかもな」
バトルジャーキーの学園長が参加か。案外面倒くさいな〜。しかもあの様子だと男前のような感じだから、力押ししてくるだろ?あ〜あ、まさか数日で正体がバレる可能性が出てきて頭痛いよ
「んで、お前がここに呼ばれた理由は分かるな?」
「俺が泣かせた相手、だろ?」
「話が早くて助かる。んで弁明なら今なら聞くがどうする?逆に今謝罪や弁明しないと学園長の武器の餌食だぞ?言っとくがこれは脅しでは無いからな?」
ギラーン!
「・・・本気だな・・・学園長は・・・正直相手したく無い」
「いや、そういう問題では無いのだがまあいい。んで?」
「それは俺の口から言うべきか?俺の考えとしてはどんな事を言っても結局はそいつの剣の餌食になるのと余り変わらないような気がするのだが」
「・・・先ずはその口調だな。目上に対しての姿勢がなっていない。親はどんな教育をしてきたんだ?」
「親の事はいいだろ?それより俺の質問を答えろ。どうなんだ?どっちにしろ餌食か?どうなんだ?場合によってはこの場で学園長VS俺の決闘を申し込んでも良いが?」
わざと相手を挑発する言動をして、相手の出方を待つことにした。それにさっき学園長を相手にするのは面倒と言ったが別に相手のレベルが高いとかではなく、ただ単に後々が面倒なだけだ。例えば学園長に勝ったものとして他の生徒から避けられて、潜入調査どころではなくなる。や、王女が俺の正体をバラしてここに留めて置く代わりに、本来なら断罪対象の者を取り逃してしまい、職務停止など色々面倒。更に言えばこの挑発も意味があり、この場にいる者がその断罪の対象が居たら更に深入りして洗い出す寸法ということ。さてボロが出る者はいるか?




