その後5
その後5
「結局ここまで来てしまったね・・・」
「だな・・・。結局は何も出来ずに中等部卒業まで来てしまったな・・・」
「そう言わないで。やるべきことはやったんだ。それが報われなかっただけよ?」
「けど出来れば従兄さんには戻って欲しかった・・・」
「仕方ないよ。結局打診してもダメなものはダメだったんだから。気に病まないで?」
「そうですよ。私達風紀委員も同じ気持ちです。アレクサス先輩には学園には戻らなくても、この街には戻って欲しかったです。もっと会話もしたかったのに」
「それも仕方ないだろ。あいつらも言ってただろ?基本はどこか異動を命ぜられることが普通だって」
「それもそうだけど、小等部卒業しても私達の成長を見守って欲しかったな・・・」
「おいおい。あいつらはお前らの親か?同級生に先後輩だろ?親代わりは幾ら何でも無理だろ?」
「『親でも良い!!』」
「・・・」
「何も言えなくなってしまったね」
「ああ。まさかああも言われると何も返答できない」
「はは!確かに。それよりジャリーグやユレイナ達は進路はどうするんだ?俺達は半分別学校に進学やそのまま働きに出た奴もいるが?まあ、ビビアーナやミア、ギューロール等アレクサスやライゼンが関わったのは全員まだこの学園にいるが、お前らは?」
「エザゾブロ先輩。俺達も全員このまま進級希望です。それでも他のクラスメイトはやはり別進路を進む方もいらっしゃることはいらっしゃいます」
「ならこのまま全員今までと変わらずか」
「いえ。変わってるのはありますよ」
「それは?」
「アレクサスやライゼンがいないことです」
「『・・・』」
「それは仕方ないだろ。それはお前らも分かってたんじゃないの?」
「はい。既に割り切っています。ですが敢えて言ってみました」
「そう言う事か。まあでも事実だしな。あいつらには何度救われたか・・・」
「先輩?それを言うのなら俺達貴族や風紀委員もですよ」
「そうだったな。しかし出来れば今年のお前らの卒業式には来て欲しいものだが・・・」
「難しいんじゃないですか?今アレクサスが居るのは?」
「知ってる。というかお前らも知ってるだろ?紛争地域」
「『はい』」
「いや~。それを聞いたときもの凄く驚いたな。俺の先輩、今は卒業して別々の進路を歩んでいる先輩ですら顔を引きつっていたな」
「無理もないだろ」
「あ。ジュミン先輩。他の方々も。高等生活は順調ですか?」
「順調さ。それに来年度からは大学生活なんだ。寧ろそっちが心配だ」
「大丈夫ですよ。男気溢れる先輩なら直ぐに慣れますよ」
「おい。エザゾブロ。それって私に女気が無いと言ってるのか?」
「い、いえ!そんなことはございません!」
「フン!まあいい。それよりアレクサスの行き先は私達も驚いた。お陰で数日間は授業が手つかずになってしまって教師から叱りと心配をかけてしまった」
「あ、流石に先輩方も」
「ああ。何なら今年で大学も卒業してこの春から働きにでる予定の先輩達も『アレクサス君のところに行くんだ!』と駄々こね始めてしまって。お陰で宥めるのが大変だった」
「あらら。お疲れ様です・・・。達?」
「実はアレクサスの容姿と性格に惹かれたのが後を絶たなかったんだ。それはお前らも知ってるだろ?」
「はい。入学当時からモテモテでした。それがそちらにまで及んでいたとは・・・」
「いや。ちょっと違うんだがな?」
「どういうことですか?」
「それは俺も聞かせて欲しい」
「おや。ウィギズス先輩。大学卒業の下準備はしなくても良いのですか?確か実行委員では?」
「ああ。ちょっと休憩している。他も今は飲み物を買ったりしているから平気だ。それで?」
「実はアレクサスが風紀委員に入るまでは、そこまで興味が無かったのがいるんだ」
「あああれですか?噂で聞いたことがあるくらいとか?」
「その通りで、初めはそんな後輩もいるんだ~くらいだったのが、いざ風紀委員に入って、直接関わりを持ち始めたら『あれ?意外に良い男かも?』と惚れ始める女子も居たんだ」
「なるほどな。俺も高等部の時は風紀委員に所属していたんだが、同じ風紀委員で同学年でもある俺に『下級生との交流の深め方を!』といった問い合わせが後が絶たなかったんだが、そう言う事か」
「そう言う事なのです」
「だから異様に対応に追われてたのか・・・。それで当の本人は小等部で卒業とあの場で発表。現場は混乱していたな~」
「ええ。その通りよ。そして卒業後の進路が?」
「紛争地域に派遣と聞いてアレクサスと交流がある者女子は発狂、男子は混乱、挙句には俺が私がの始末ってか・・・」
「そのお顔。心中お察しします」
「ああ。ありがとう。まあだが12歳の若者が紛争地域にとか、アレクサスの上司はどんな鬼畜上司だよ!と俺も思ったな」
「ですが法には犯していませんので、どうしようもありませんよ」
「分かってるわい。ったく。早く戻ってこないと今年の卒業生も死屍累々になりかねんぞ?」
「『・・・』」
「そう言えばそうでしたね。去年とおととしの卒業式は酷かったですね」
「今思い出すだけでも吐き気が・・・」
「それ以上は思い出さないほうが良いですよ。あれを処理した先輩の気が知れないので」
「ああ。出来ればこの思考は持たないほうが身のためだ」
「あの時は酷かったよね~・・・」
「ああ。卒業式の行進なんて、先生がネクロマンサーで後ろに操り人形のような感じだったな・・・」
「あれは今思い出すだけでも異様な光景だったね」
「あの空気を乗り切った私達も褒めて欲しかった~」
「そんなことで褒めてたらキリないぞ?」
「分かってるよ。それよりサラ王女。彼からの連絡はその後は?」
「正直芳しくありません。恐らくまだ紛争地域にいるのかと」
「『・・・』」
「まだいるのか・・・。何年目だ?」
「3年目か?」
「3年目か・・・。俺が言うのも何だが、良く生き残ってるな・・・」
「ちょっと!」
「それって従兄さんが生きていて残念と思ってるのですか!?」
「どういうことなの!?」
「お前ら一旦落ち着け!!俺はそういう意味で言ったわけでは無いぞ!!」
「じゃあ何!!」
「普通に考えたら紛争地域に行くだけでも命を投げ出すことだ。それは分かってるよな?」
「『(コク)』」
「その状況下で生き残ってて『すげぇな』と思っているんだ」
「凄い?」
「考えてみ?普通の兵士は長くても2年目で散ることも多い。そんな中3年も生き残っている。それだけの実力がないと出来ない事だ。俺はそんな彼を尊敬するね」
「尊敬」
「ああ。俺だったら1年目どころか、初日に死んでもおかしくないだろうからな。それに比べたら、あいつは生き抜くすべを持っているという事だ。それだけでも尊敬に値すると俺は思っている」
「『・・・』」
「明日にでも死んでしまう可能性があるのに、それを生き残っている。いや、生き抜いているんだ。それを俺達がクヨクヨしてどうするんだ?俺はそうしてあいつの生存を祈っているんだ。お前らはどうだ?」
「・・・」
「そうだね。ああもう!この話したのは何回目よ!!」
「そうだったな。いつまでも下向いてはあいつに怒られてしまうな。続けるか!!」
「『賛成!!』」
・・・・・
『では皆さん。お待たせしました。大高中小合同卒業式を始めます。今回の卒業式は時間に余裕がなかったため、合同での卒業となってしまった事をお詫びいたします。ではまず学園長からのご挨拶です』
『では早速卒業証書授与に移ります。まずは小等部の皆さんからどうぞ』
『では次に今回の来賓の方をご紹介いたします。卒業生の皆さんは会釈をお願いしたします』
「今回は何人だろうな・・・」
「さあな。だが今回は合同だからかなり多いんじゃないか?」
「止めてくれ・・・」
「そう言うな。これも最後の行事と思えばまだ楽だぞ?今だけでも耐えろ」
『では右から各国王の方々です。まずはこの国の王、ラーズベルト王です』
『卒業おめでとう』
『では次にこちらの方・・・』
『では最後に・・・え?』
「『?』」
『す、すいません。ちょっと・・・』
「な、なんだ?」
「さあ。分からんが何かトラブルでもあったか?」
『本当なんですね・・・。分かりました。え~ゴホン。大変失礼いたしました。では最後にこちらの方をご紹介いたします。日本国自衛隊よりアレクサス様、並びに外務省からライゼン様』
「『え!?』」
『皆、お久しぶりです。そしてご卒業おめでとうございます』
『卒業おめでとう』
ザワザワザワザワ・・・
『皆様。ご静粛にお願いします。では次に・・・』
・・・・・
「『アレクサス!ライゼン!』」
「おうお前ら。久しぶりだな。みんなも大人になって来たな~」
「・・・」
「大人にって・・・俺達は変わらんぞ。それにライゼンは相変わらず寡黙だな~」
「まあな」
「だが前よりかは会話するようになったな。何か変化でもあったか?」
「そうではない。だが取り敢えずひと段落したってところだ」
「ひと段落?」
「ああ」
「やあ。久しぶりだな我が甥よ」
「久しぶり!!」
「どうも叔父さん。サラも」
「こっちに帰って来たという事は?」
「ねえ!帰って来たの!?」
「おうおう。一斉に話してくるな。一から説明するから。まずは、お久しぶりです。ラフ先生、システィー先生」
「ああ。元気そうで何よりだ」
「はい。お久しぶりです。結構身長伸びましたね」
「まあ、最後に会ってから3年ですからね。伸びるのも当然と言うものです」
「そうかい。とにかくお帰り」
「はい。次にゴウリーグ達から聞こうか」
「なら代表して俺が。こっちに戻って来たのか?それとも今日だけ戻ってきただけ?」
「そういう意味なら、厳密には戻ってきてない」
「厳密には?」
「どういうことですか先輩?」
「また異動になった」
「『・・・』」
「異動か・・・」
「今度はどこに?」
「お前らが考えてることではないぞ。今度は国境警備隊に異動だ」
「国境警備隊?」
「という事は戦闘の前線ではないってこと?」
「別の意味では前線かもな。何しろ他国からの砦だ」
「『!!』」
「そうか・・・そうか・・・」
「?どうした?」
「・・・いや。何でもない。んで?どこの国境警備隊なんだ?」
「このラーズベルト王国のお隣、アーエフ騎士王国と日本国との国境警備隊に来月から所属する予定だ」
「あ、そこの国境警備隊なんだ。今度は一気に近くなったな」
「だな。お陰でのんびり出来そうだ」
「先輩。もう戦闘の前線には行かないんですか?」
「ああ。取り敢えずはな。まあまた異動があれば別だが、今のところはその予定は無いな」
「そうですか~・・・。良かった~・・・」
「ね・・・安心したよね・・・」
「はい!」
「さっきからお前ら一体どうしたんだ?」
「『・・・』」
「?」
「実はね?私達全員心配したの」
「何に?」
「アレクサスが紛争地域の前線にいると聞いて」
「あ~、まあ無理もないだろうな。家族や友人がいつ死んでもおかしくない場所に常にではないがいるようなものだからな。気が気ではなかったろうな」
「そうよ!もう!心配したんだから!!」
ドス!!!
「『アレクサス!!』」
「わあ!!そんなに一斉に抱き着くな!!」
「『抱き着くもん!!うわーーーん!!!』」
「泣くな!!俺は戻ったからよ!!」
「まあ、今はそのままにしておけ」
「ライゼン!?」
「俺は直ぐそばにいるし、お前の状況なんて別に知らなくても良いが、こいつらにとってはかけがえのない存在を失うと事だったんだ。それだけは自覚しろ」
「仕方ないだろ?俺は武官だからよ。こういうのは日常茶飯事なんだ。いちいち気にしてられるかよ?」
「それを女子達の前で言えるお前の度胸も羨ましいわい。まあ、お前らも程々にな」
「『はい!!』」
「久しぶりだなライゼン」
「ああ。ああそれとエザゾブロ。あの伝言は伝えといた。まあ今となっては要らなかったかもしれんが」
「いや。それでも良いんだ。ありがとう」
「いいさ」
「ところでさっきあいつのそばにずっといたと言っていたが、どういう事なんだ?」
「あ、それ俺も気になったぞ?」
「どうも久しぶり、大学部と高等部のお前ら」
「年上に対しての態度は未だ変わらずか」
「期待するだけ無駄さ」
「だな」
「何だそれ?まあいいや。それでさっきの話なんだが、俺は前線には行っていない。だがあいつの所属した基地には常に俺はいたな。情報収集などを主にな」
「ああそう言う事か。そう言えば常に前線にいるのは違うと言っていたな?つまり本日の任務が終われば?」
「ああ。毎回基地にRTBしていたからな。常に危険にさらされたという訳ではないぞ」
「けどいたのは変わりないんだろ?」
「まあな」
「なら今回の異動は?」
「もしかしてあの紛争地域が消滅したとか?」
「その話はこいつらにも聞かせてやってくれ」
「分かった。お前ら、そろそろアレクサスを放してやれ」
「『は~い』」
「はぁ・・・助かった。ちょっと水飲んでくる。その間説明を頼む」
「はいよ。それでさっき公爵子息から質問があったから返答しようと思う。今回の異動だが、お前らの中では紛争地域が消滅したから戻って来たのか?と思っているらしいが実は違う」
「『・・・』」
「なら何で戻ってこれたの?」
「当初の任務はあくまでも難民の救出だけで介入ではないんだ。それでその救出作戦がひと段落ついてそこまでの人員を必要としなくなったから、それぞれ各所に必要な場所に異動になった。それだけの話さ」
「ではまだあの場所にいる兵士もいるのでしょうか?」
「一応見張りと今後の動きを監視する役割として、幾つかの部隊は引き続き海上基地に残留している。だが大まかな任務は終えたから、俺とアレクサスはこっちに戻ってきた、そう言う事だ」
「そうだったのですね。それで今度の異動先は?」
「俺は一旦休暇を取っている。暫くはアレクサスと一緒だ。アレクサスの方は上からの命令で国境警備隊に異動となった」
「そうなのね。でも何で国境警備隊なの?あそこの管轄って日本国とは別組織の総合ギルドと外務省の管轄じゃないの?」
「そうですわね。どうしてなのですの?」
「流石貴族は詳しいな。確かに管轄としてはその通りなんだが、近年検問所での貨物通過量が増大してな。ちょっと手が足らないんだ。しかも物の価値とかも国によって違うから、それを調査するのも拍車が掛かってな。それで自衛隊に応援を寄こしてもらっている訳だ」
「そんなに輸出が多いの?」
「どうやらそうみたいでな。しかも出国審査を通過しても入国審査を通るまでの道路で密輸も起きる始末、なので強化するという意味でも人手が必要なんだ」
「うわぁ・・・。それってどこの管轄になるの?出国はした、けど入国していないとなると?」
「それも複雑でな。それで騎士王国の兵士達と連携を組むことで合意を得たんだ」
「なるほどね。警備強化としてもか。取り敢えず分かったけど、ライゼンは?」
「俺は引き続き自分の支部に戻る事になる。だがその前にやることが出来てな。それで今休暇を貰っているところだ」
「やること?」
「実はな。あんまり言いたくないんだが、強引に婚姻の話が持ち上がってな」
「『え!?』」
「誰に!?」
「俺とアレクサス」
「『何で~~!?』」
「いやな?いつもの通りアレクサスは戦場で、俺は基地からアレクサスに指示を出していたんだが、ある日俺達と同じ世代の女子4人組を救出したんだがな、そいつらの所属が神族でな」
「神族?神族なら俺達の知り合いにもいなかったか?」
「いたな。現にここにいるな」
「私だね。けど婚姻の話はこっちに来ていないから、別のところから来た神族なのかな?」
「その通りで、救出した神族が別の場所を管轄としている神族なんだ。けどな?その神族が俺とアレクサスに惚れてしまってな。それで強引に話が進んでしまって、遂に結婚の話まで出てしまったんだ。現にこうやって部外者なのに」
「「「「ライゼン!!アレクサスは!?」」」」
「とこのように私達は卒業生です!と言わんばかりに入ってきてな」
「『!?』」
「ねえお姉様・・・。何この子達・・・」
「凄く可愛い・・・。これは強烈なライバルかも?」
「『・・・』」
「なあ・・・。女子達の目が・・・」
「見ないほうが良いぞ?」
「あら~ライゼン?この小娘たちは?」
「『こむっ!?』」
「こいつらは俺とアレクサスの同級生に先輩後輩たちだ」
「へえ~?もしかしてライゼンとアレクサス、浮気?」
「浮気も何も、お前らが勝手に婚姻の話を進ませているだけだろうが。こちとらそんな言われる筋合いはない」
「うわ~ライゼン。相変わらず斬新というかキツイというか」
「事実を言ってどうするんだ?」
「・・・それもそうか・・・」
「ねえライゼン?アレクサスは?」
「そこにいる」
「「「「アレクサス!!」」」」
「お~うなんだ?」
「俺達に浮気疑惑が浮上したんだと」
「浮気!?何で!?」
「俺らの同級生と先後輩に対して色目使ってるのかとな?」
「そんな訳なんだがな・・・。完全にこいつらはとばっちりだな。それで?どう返答したんだ?」
「返答も何も『相変わらずの思考で安心したこのアホ共め』とな」
「『言ってることが違う!!』」
「違わないだろ?」
「あ~いい。ライゼンの事だから、相変わらず辛辣な返答をしたんだろ?それくらい分かるさ」
「「「「流石アレクサス」」」」
「『話が』」
「「「「「『分かるわ~』」」」」」
「「「「「『ムッ!』」」」」」
「はいはいいがみ合わない。そう言う事で、俺達はまた元に戻ったからよろしくな」
「おう!また遊びに行くからな!」
「楽しみにしておく」
「ああそうだ。アレクサス、ライゼン」
「「?」」
「『お帰り』」
「「おう」」
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