その後3
その後3
「ありがとうライゼン。お陰でリフレッシュ出来たぞ」
「そうかい。脳筋のストレス発散が出来て何よりだ。まあ、俺も支部内で缶詰め状態だったからな」
「そうなの?てっきり外回りでも言ってるのかと・・・」
「いや。今後暫くは缶詰め状態が続くさ」
「え?じゃあなんで今まで学園にいたの?あれって外回りの類だよね?」
「ユレイナの疑問は最もだが、その場合は今回だけの特例だったと思えば良い」
「今回だけの特例?」
「ああ。あの時は知っての通り不正が横行していたんだ。その余波は色んな所に及ぼしていて、それを根本的に排除するために人員を送り込んでいたんだ。だがそう簡単に人員を割くのも出来ない時があるんだが、その時はタイミング悪く新たな世界も見つけてしまってな。そっちに人員を送り込んでいたからこっちの手が足りなくなってしまったんだ。そこで白羽の矢が立ったのが、俺達未成年の外交官を送り込むことなんだ。それでこっちに来たわけだ」
「そうだったんだ。それで?何とかその問題は解決したの?」
「取り敢えずは解決した。去年末にな。それで人員を割く必要がなくなったから俺が支部に戻ることになったんだ」
「そうなんだね。じゃあアレクサス君の場合は?」
「お前らも久しぶりだな。エザゾブロやミア達よ」
「ヤッホー。久しぶり~。それで?アレクサス君の場合は?」
「あいつは元々上からの命令でこっちに来たから別に特に特定のだれか、というのは無かったんだ。それにあいつは別の学園にも通ってみたいとも言っていたしな。必然だったろうな」
「そうなんだね。じゃあ今は?」
「あいつは今紛争地域にいる」
「『!!』」
「どこの!?」
「実はそこが数年前に発見した場所でな。運悪く治安が劣悪な場所を当ててしまったようだ。場所なんだが、世界名ブイルウェー。星名はニュルキル。国名はエルウェルビーン連邦。ここが今あいつの居る場所だ」
「エルウェルビーン連邦・・・」
「どんな場所なの?」
「まだ地名が判明してからそんなに経っていないから無理もないかもな。実はその土地のみならず、その星自体が極端なんだ」
「どう極端なんだ?」
「東に行けば治安が良くなり、西に行けば治安が悪くなるという感じなんだ。実際にその国を境に分かれている。なんなら東と西で壁を作っているくらい」
「壁って?」
「物理的に壁を作って自由に行き来をしないようにしたんだ」
「『・・・』」
「た、確かに極端ね・・・」
「んでアレクサスは今その国に派遣されている。任務の内容は主に難民救出だな」
「難民なんかい。しかし何で?」
「そうだ。あいつらが軍事介入すれば良いじゃないか?」
「そうは言うがな。こっちにだって色々規定があるんだ。その規定を犯す訳にはいかない。だから難民救出だけこなしているんだ」
「そうなんだな。因みにアレクサスはずっとその国に?」
「腰を下ろしているってか?いや違う。実はその国から更に東に行くと大きい海が広がるんだ。対岸まで2000キロだから、大体850くらいか?もうちょい行ったところが対岸なんだが、その中間に海上基地があってな。そこで寝泊まりしている」
「あ、じゃ、ずっといるわけでな無いんだね?」
「そうだ」
「安心した・・・」
「けどどうやって難民を移送するのですか?」
「フラーラ達も久々に見たな。お前ら見たことあるか?ヘリを」
「『ヘリ?』」
「ああ。もしかして全面鉄でできた竜ですか?」
「まあ、そう思えば良い。それを使って移送するんだ。流れとしては、まずヘリで現地まで行って難民を見つけてヘリまで誘導、乗せた後に東に向かい、東の対岸にある軍港まで移送。そこで降ろしたらまたヘリに乗って現地に向かうのを繰り返している」
「一日どれくらいできるの?」
「分からんけど、結構遠方だから5往復が限界じゃないか?だが出動しているヘリの数もかなりの量だから、1日で救えれる命も多い」
「危険性は?」
「そんなの言わずもがなだ。自分だって死ぬ可能性があるからな。実際に自衛隊が難民救出する前に数多の国軍も難民救出をしていたんだが、予想を遥かに超える双方の攻撃力に1日で戦死者が三桁になるのも珍しくなかったそうだ。その後俺達に依頼が入って加わっていたんだが、暫くすると日本国だけになってしまったんだ。何故か分かるか?」
「『・・・』」
「・・・あまりにも被害が大きすぎたから?」
「その通りだ。俺達の死者はいないが協力軍の死傷者が日に日に嵩んでいったんだ。それで他国軍は撤退して行った。今は俺達日本国のみで行っている」
「そうか・・・。何だろうな、結局皆日本国にしか頼れないのが何とも情けないな・・・」
「仕方ないだろ。俺達も受け入れている。それが運命かもしれんな・・・」
「死ぬかもしれない土地に!?」
「勘違いするなよ?あいつだって国に命を捧げているんだ。そこで戦死すれば、あいつも本望と思うだろうな」
「でも」
「お前らだって軍に入ればそんなものだぞ。それはこの国のみならず、他国も同様だ」
「『・・・』」
「それと聞いたぞエザゾブロ」
「何が?」
「“俺にリーダーが務まるのか?”」
「!」
「誰から?とは言うなよ。告げ口者は秘匿だ。それはそれとして、お前に務まるのかどうかは俺にも知らん。だがお前には考える時間も相談する時間、そして明日もあるんだ」
「?何言ってるんだ?そんなの当たり前じゃないか?」
「『うん』」
「ならお前らガロウスやルーカスも含めて、風紀委員であいつの部隊にいた全員に聞く。お前らに明日はある。そんなの当然と言ったな?なら今紛争地域にいるあいつ、アレクサスはどうなんだ?あいつは明日にだって死ぬ可能性が十分あり得る場所にいるんだ。そいつに明日があるさなんて言えるか?」
「『・・・』」
「言えない・・・。死ぬ可能性があると考えると・・・」
「俺もだ・・・。そんな無責任な言い方は出来ない・・・」
「私も・・・。急に亡くなったら、もっとああすれば良かったと後悔するかも・・・」
「・・・正直明日が怖い・・・逃げ出したい・・・」
「こんな感じで精神面でもかなりキテしまう。そんな中アレクサスは明日も希望を以って任務を遂行しているんだ。ここまで言えば俺が何言いたいか分かるな?」
「『(コク)』」
「明日がある俺達はそれだけ恵まれている。当たり前を大切にしろ。そしてそれを考える時間は十分にある。あとはお前ら、いやこれはライゼンの言う事だから、この場合は俺達次第」
「分かってるじゃないか。そう言う事だ。時には仲間とぶつかり合え。それで見えてくることもあることを頭に覚えておけ。じゃ、俺は戻る」
「ああ。すまんな。お陰で目が覚めた」
「俺は何もしていない。それ以前にお前は誰からか助言を貰っているんじゃないか?」
「!!相変わらずお前は怖いわ・・・」
「それが分かれば上等だ。じゃあな」
「ああ・・・。ああそうだ!」
「何だ?」
「アレクサスに会ったら伝言を伝えて欲しい!!」
「・・・受け取ろう・・・」
「“俺達は大丈夫だ。だから戻ってこい。生き残るんじゃない。生き抜け!”」
「・・・お前らしくないが、それが本心なんだろ?伝えておく」
「頼む!!」
・・・・・
「無責任になってしまいますが、それでもアレクサス様をどうにかしたいです!!」
「・・・私が言いましたお約束はどうなりますか?わざわざ私が赤裸々に話したこれを・・・」
「それは・・・、非常に申し訳なく思います。ですが、そのお約束を無下にしてまでアレクサス様をどうにか引き戻したいのです!!」
「左様ですか。それでしたらこれ以上は申しません。この後はお嬢様方次第です・・・」
「けどありがとう。貴方の過去をここで明かしてもらって。お陰で今アレクサス君の居場所が分かったから」
「・・・」
「まあ良いわ。それで?サラは何か案でもある?あの子の従妹なんでしょ?」
「考えているけど、案が思いつかないの。今従兄さんの所属していた基地に行っても今はいないでしょうし・・・」
「ならあの子のお父様は?って階級が低かったら意味が無いけど・・・」
「いえ。従兄さんのお父上の階級は高いですよ?確か二佐だから、中佐な筈よ?」
「『!?』」
「ちゅ、中佐って、かなり高いじゃない!ならどうにかなるんじゃない?」
「それがそうもいかないの。この決定は更に上から見たいで。多分少将か中将からの命令だと思うから、そう簡単に覆らないと思うよ?」
「なら私達のお父様かお母様に頼み込むというのは?」
「それは俺達も考えたが、それでどうにかなるのなら既に実行しているのじゃない?」
「・・・それもそうね・・・。はぁ、どうにかならないのかな・・・」
「『・・・』」
「・・・あ、いや・・・」
「何か思い浮かんだか?」
「・・・う~ん。どうなのかな~・・・」
「取り敢えず言ってみたら?」
「えっとな。どうにか出来ないのなら、協力はどうなのか?と思ってな」
「協力?」
「何で?」
「だってよ?今アレクサスが行ってる理由って多分人手不足で行ってるんだよな?確証はないけど」
「多分ね?」
「なら少しでも戦況を変えるべく、俺達の兵士も派兵するのはどうなのかと思ってな」
「戦争ではないぞ?」
「知ってる。だから戦争参加ではなく、あくまでも援助という形で派兵はどうかな?と思っただけだ」
「援助か・・・」
「でもそれならお父様たちも出来るんじゃないかな?」
「そうだね!ちょっとダメもとで頼んでみようか!」
「それならまずは今日は解散して、また明日集まりましょう」
「『賛成!』」




