その後2
その後2
「まだ本調子にはなれないか?」
「・・・ウージロ先輩・・・。はい。まだ本調子にはなれません。寧ろ更にモチベーションが低下している感じが自分でも分かります・・・」
「お前リーダーだろ?そんな調子で良いのかよ?」
「・・・」
「思ってない。けどどうしたら良いのかが分からない。そんな表情をしているな?」
「・・・分かりますか?」
「誰が見ても分かると思うぞ?」
「・・・そんなに分かりやすいですか?」
「ああ。本来同じ隊内でもあまり関わりない奴でもな」
「・・・」
「何故本調子になっていないか分かるか?」
「・・・いいえ・・・」
「自分でも思っている以上に否定的な思考をしているんだ。リーダーという圧に圧倒されてな」
「・・・」
「自分でも分かってるだろ?自分が思ってる以上にこの仕事は過酷であることが」
「・・・はい・・・」
「確かにやってみたい!という気持ちがあるのは分かるし、実際なってみて見えてくるものもある。そして思ってた以上に過酷であることも」
「・・・はい・・・」
「けどな?世の中楽な仕事は無いんだよ。気楽はあってもな。何が言いたいか分かるか?」
「・・・いいえ・・・」
「リーダーになっても仕事内容はそこまで変わらないという事だ。変わったのは、いつもなら相談に乗ってくれる方が、今度は他人から乗られる側と、それによる責任が加わっただけだ。正直それくらいしか変わってない。お前の仕事はな」
「・・・」
「ではなんでここまでお前がしんどい思いをしてるか分かるか?簡単な話だ。あの坊主が色々手を出していたんだ」
「?」
「言ってる意味が分からないだろ?だが事実なんだ。本来俺達私達の仕事ではないことまであいつは手を出していたんだ。その証拠にあの坊主がいた時の内訳はどうだった?」
「えっと、800人中400人が現場、200人が事務、その内100人が事務職と100人が書記、150人がアーティファクトや端末の点検、50人が先生との連携・・・あ」
「分かったか?」
「はい。つまりアレクサスは現場のみならず、端末や事務にも首を突っ込んで自分達のやりやすいようにした、という事ですね?」
「ああ。正確に言えばあいつ自身がやりやすいようにしただけだ。それが思わぬ副産物を生んだだけの事だ」
「え!?あれって今までに無かったのですか!?」
「現場と事務は今までにもあるが、それのみならず全ての部署を総括するなんていうのは初めてだ。だからあれだけ大規模人数になっていったんだ。それが故に影響エザゾブロが苦労する羽目になってしまったんだ。今まで何かあればあの坊主が色々工夫していたからな」
「だからあんなに・・・」
「ああ。そう言う事だ。だからエザゾブロが全てを負う必要は無い。あいつにはあいつのやりやすいやり方があるように、エザゾブロにはエザゾブロのやり方があるんだ。まずはそれを見つけて行こうや」
「・・・はい。それを聞いて少々ではありますが、やってみようという気になりました。ありがとうございます」
「俺は何もしちゃない。ただの先輩からの口うるさい説教とだけ思えば良いさ」
「そうは思いませんよ。では、行きましょうか?」
「ああ」
・・・・・
「『・・・』」
「もしかして何かしようとしていませんか?」
「『・・・』」
「先程申した通り、日本国に楯突くのは出来ませんよ?彼らの反感を買うだけです」
「けど・・・!?」
「納得が出来ないのも無理はないです。ですが今回はダメです」
「何故!?未成年を戦場に送ってるのよ!?」
「はい。それは間違えないです。ですが例外もあるのです。お分かりですか?」
「『・・・』」
「それは・・・」
「私がお答えしますわ。未成年の戦場送りはダメでも例外がある理由、それはアレクサス様自身が正規軍に所属している。そう言う事ですわね?」
「ご明察です。その通りでして、日本国は正規軍または従軍している未成年に対しては例外としています。現に他国や他星で未成年での従軍しているところはありますし、その本人が戦場に送り込んでも日本国は異議を申し立てていません。つまりはそう言う事なのです」
「ではこのまま見過ごせと!?」
「ご不満は最もです。ですが逆らえないのも事実です。軍に所属している方でしたらお分かりでしょう。上の命令には逆らえないのが」
「『・・・』」
「無言か目を逸らしているのが証拠です」
「何も・・・出来ないの・・・?」
「『・・・』」
「ねえ?元傭兵さん?何も出来ないのですか?」
「ああ・・・。このままだとサラ王女が可哀そうだ・・・」
「アレクサス君も心配よ・・・。何しろ戦死してもおかしくない場所に今もいるのよね・・・?」
「どうにか出来ないのか・・・」
「このままだと私達までおかしくないそう・・・」
「ですわね・・・。私達と同い年が戦場に・・・。とてもではありませんが耐えきれませんわ・・・」
「僭越ながら、私達メイドも不安です・・・」
「安心してください。執事も同様です・・・」
「何を以って安心かは知らんが、王女達殿。そのお気持ちは俺達近衛兵も同じですぞ」
「『・・・』」
「・・・案はない訳ではない」
「『!』」
「今、なんと!?」
「案がない訳ではないのです」
「そ、それは本当ですか!?」
「はい。一応ではありますが」
「それでも構いません!!お教えください!!」
「・・・」
「お願いします!!」
「なあ!俺達からも頼む!」
「私達からも!」
「・・・先程の暴言を撤回する。だから教えてくれ」
「私達からもお願いいたします・・・」
「ちょちょ!?そんなに全員で頭をおさげにならなくとも・・・王女様たちも。何故そこまで・・・」
「それは勿論」
「『私達のお仲間ですから!』」
「・・・」
「『お願いします!』」
「その案を提示する前に幾つか皆さんに質問がございます」
「『はい』」
「まず一つ目。今回は日本国が直々にアレクサス様に対して命令を下しています。その事はお分かりですよね?」
「ああ。勿論だ。俺達の父親に直談判しても無駄というのは分かっている。だが出来る限りのことをする」
「では2つ目です。今回のアレクサス様の派兵地は、異世界一治安が悪いところです。何かしらの介入は?」
「私達はその治安が悪い場所を、承知してながら他人事にしていましたわ。そのようなことからアレクサス様が派兵されてしまったと、放置してしまった事に今更ながら後悔していますわ。その償いをしたいのです」
「3つ目です。もし貴方達自身が派兵されても?」
「文句は言えないわ。ここまで野放しにしていたもの」
「4つ目です。寧ろこれが大きいかと。どうにかするという事は彼自身を否定することになる」
「否定?」
「どういう事?」
「アレクサス様は国に忠を尽くしています。その彼を否定することになりかねないのです。負傷やPTSDで異動ならまだしも、何もないにも関わらずたった1ヵ月ほどで異動となると、彼の思考はこうなることでしょう『何かやってしまった。ミスを犯したのか?』と。その責任とまでは言いませんが、それに近いような事になっても?」
「『・・・』」
「まだあります。これが一番でしょう」
「待って?さっきは?」
「先程のは大きい。なので1番ではないのです」
「なるほどね。それで?」
「5つ目に、もし思い通りに行かなくても自制できますか?強硬手段を取る気ですか?そうなった場合は日本国と対立する羽目になりますが、それでもやりますか?」
「『・・・』」
「3つ目まではどうにかなるでしょう。4つ目以降はどうするのですか?まずはそこをどうにかしないとどうにも出来ませんよ?」
「・・・もうちょい考えさせて・・・」
「その方が賢明かと」
・・・・・
「・・・張り合い無いな・・・」
「そう言っても仕方ないわよ?」
「ユレイナの言う通りだ。脳筋マークが言ってもどうにもならないぞ?」
「そうは言ってもよゴウリーグ。アレクサスがいないといまいちやる気に欠けるんだよ」
「それは俺に言うな。張り合いたいのならホブロやバロンとかに挑んだらどうだ?」
「それなら既にやり合っている。だがな?」
「?」
「脳筋が強すぎてどう立ち回ってもこいつが勝ってしまうんだ」
「お陰でこっちはボロボロだ」
「あ~・・・。それは想定外だったな・・・」
「男勝りのアデラインとかはどうだ?」
「私が相手?私は別に構わないが、こいつをどうにかできると思うか?」
「出来ないのか?」
「流石にそこまでの技術はない」
「ならカイルに頼むか?あいつは身長の高いドワーフ族だから力があるぞ?」
「俺は力こそあるが、戦闘技術は皆無だぞ?しかもここは魔法学園だ。関係あるか?」
「あ~・・・ないな。なら魔法に強いアリメイやメルカイナ、リヨンに頼むか?」
「止めてよ~。私達じゃあの脳筋を相手には出来ないわ。耐久力が高すぎるもん」
「試しにこの脳筋に向かって雷撃を落としてみたわ。平気な顔をしていたわ」
「『oh・・・』」
「最後に私のサイクロンを受けていても、ダメージ皆無だったよ。こんなことはアレクサスとこの脳筋にしか出来ないわよ。とてもじゃないけどこのバカをどうにか出来ることなんて不可能よ」
「ならアーティファクトや機械兵に詳しいダロムにベン、最近やり始めたアーカイブやオーユはどうなんだ?」
「一言で言おう」
「『アーティファクトは制御出来ずに破壊。機械兵はこいつの頭突きで粉々に砕けた』」
「こいつどんだけ脳筋なのよ・・・。これだとオールラウンダーの私達風紀委員全員が相手にしてもピンピン平気な顔で立ってそうね?」
「かもしれん。やはりこいつの相手はアレクサスじゃないと。またはライゼンか?」
「アレクサスもライゼンもこっちに来れるのか?」
「アレクサスは無理でもライゼンなら来れるかもしれんな?連絡してみようか?」
「場所知ってるのか?」
「あいつの家を知る必要は無いだろ。あいつの職場に送り付ければいい」
「・・・外務省だよ?迷惑にならない?」
「そうよ?ラウラの言う通りよ?迷惑じゃない?」
「平気だろ?見ず知らずの相手ではないんだしさ。視察しに来てくれという名目なら?」
「『・・・』」
「一応送り付けてみるか・・・」
「けど今送ったところで向こうに届くのはいつ頃よ?」
「軽く一週間じゃないか?良く分からんけど。何しろ今ライゼンがいるのは他星だからな」
「・・・という事は一週間以上もこいつの欲求不満に付き合わなければいけないのか・・・?」
「しんどいな・・・」
「おい!アデライン!!それは無いだろ!?」
「事実だろ?」
「・・・」
「まあいい。送ってみる」
「その必要は無いぞ」
「『?』」
「アホか。送りつけるな。迷惑だ」
「『ライゼン』」
「久しぶりだな。んで?こいつの相手をすればいいのか?」
「お前!?いつ頃に!?」
「それはどうでもいい。今はこいつの相手が先だ」
「お、おう・・・」
「んで?やるの?やらないの?」
「『・・・』」
「おいおい。お待ちかねのバトルだぞ?」
「あ、ああ!!頼むぞライゼン!!」
「・・・」




