次の派遣先
次の派遣先
「結局裁判結果はどうなった?」
「未成年を戦場に送り込んで、国際違反した国王や大統領などは本国にて生涯犯罪奴隷及び死罪となった。それと世襲制国家は一旦解体し、新しい国家として再建するそうだ」
「まあ、そうなるな。だが結局世襲制は変わらないんじゃないか?」
「ああ。最終的には変わらない。だから死に物狂いで将来有望な一家を選出するそうだ」
「王族一家は?やはり解体?」
「遠縁の血縁全て解体となったぞ。けど話を聞いたら元国王独断で行っていたそうだから、処罰や奴隷落ちは免除した」
「あれが独断とはな・・・信じられないが、それが事実だろうな」
「まあな。これは覆ることのない事だからな」
「国際違反した奴らは良いとして、他は?」
「誘拐に加担した国王などは、犯罪奴隷処分及び懲役刑とした。こっちの場合は特に王族を解体せず、今後このようなことが無いように忠告したそうだ」
「まあ、そうなるな。この機会で反面教師として育って欲しいものだ。謝罪しなかった者は?」
「罰金刑及び動員した経費などを請求した。今頃ヒーヒー言ってるだろうな」
「そうなっても文句を言えないことをしたんだ。因果応報さ」
「まあな。これでこの件はお終いさ」
「そうか。ライゼン、報告ありがとう」
「お安い御用さ。それにしても年明け早々この対応に追われるとはな・・・」
「まあな・・・。正直言えば年末に引き渡した時点でお終いで年明けはのんびり過ごそうと思ったらこれだもんな・・・。お陰で叔父さんにキャンセルを入れる羽目になってしまったな」
「何だろうな・・・。こんなことをするために外務省に入省した訳じゃないんだがな・・・」
「言うな。悲しくなる・・・。言っとくが心の境地に入るんじゃないぞ?」
「・・・入る気だったんだがな・・・。アレクサスに現実に戻された」
「戻ってこい。けどようやくさっきの報告でこの件は全て終わったんだ。冬休みは残り少ないが、その分たっぷりとのんびり過ごそうぜ?」
「・・・どうやらそうはいかないみたいだぞ・・・あれ」
「・・・」
トコ・・・トコ・・・トコ・・・トコ・・・
「おうおう?随分と疲れているな?」
「何か子供と思えない感じで老けていってないか?」
「そう言わないでくださいよ~」
「はい。大人とは違って俺達はまだ子供なので」
「そこで子供の立場を使うでないぞ?」
「それに大人になったらこれが普通になるんだ。覚悟しろよ?」
「「はぁ~・・・。それは良いとして、失礼しました。今回はどのようなご用でしょうか?海自の一等海佐と外務課長?」」
「「ああ。まず君達の次の派遣先が決まった」」
「「派遣先ですか?正式にですか?」」
「「ああ。正式に決まった」」
「そうですか。あ、お座りになりますか?」」
「「ああ。失礼する」」
「「お茶とかは?」」
「「貰おう」」
「「ではご用意します」」
「「お待たせしました」」
「「ありがとう。では飲みながら話そう。「まずはお先どうぞ海佐」」
「ではお先。アレクサス。今度の派遣先は例の前に話にあった、あの場所で決まった」
「あの海上基地ですか?」
「そうだ。あの場所だ」
「因みに最寄りの都市に軍港は?」
「ある。4つだったかな?そこはちょっと確認するが軍港があるのは確かだ」
「そうですか。4つとなると?拠点がそこだとして派遣先は、あの?」
「そうだ。あの紛争地域で有名な場所だ。まず世界名はブイルウェー。星名はニュルキル。国名はエルウェルビーン連邦だ。ここに派遣が先程決まった。因みに外務省はこの場所はご存じ?」
「ああ。今把握している中で最大の紛争地域かつ異世界最悪の治安、そして死亡率が90%超える場所だろ?」
「そうだ。もはや国家として成り立っているのかが怪しいところだな。因みに地球のアフガンやイラク、アフリカや南米と比べたらどっちが死亡率や治安の悪さが上なんだ?」
「まず一番治安が悪い国、ベネズエラの約100倍の治安の悪さ、死亡率は正直比にならないだろう。100人に60人の子供が人族年齢10歳も生きることなく病や戦闘で亡くなっているところだ」
「あらら。地球より悪かったか。まあ、今回の派遣先はそこだ。ここまでで質問は?」
「任務内容はこれからですか?」
「そうだ」
「でしたら次お願いします」
「分かった。この拠点での任務内容だが、難民の救出及び護衛を頼みたい」
「はい」
「役割だが、まず海上基地に着いたらヘリ乗って派遣先まで行ってくれ。現地では仮設のヘリポートが備わってあるからそこでヘリが着陸する。着陸したらまずはヘリポート付近に難民がいないかどうかを確認してくれ。いたら即座にヘリに搭乗させろ」
「定員は?」
「精々30人、多くても50人が限界だ。定員をオーバーしたら飛べないと思ってくれ。難民を搭乗させて定員に到達したらヘリが飛び立つ。その難民の安全を確保するんだ」
「難民の搭乗が完了しても俺達が乗れない場合は?」
「ヘリは2機用意している。2機目が乗り切れなかった隊員用のヘリだ。その難民を引き連れて軍港まで連れて行く。降ろし終わったらまた紛争地域に向かう。その繰り返しだ」
「分かりました。もし2機目も乗れなかった場合は?」
「その場合は次便まで待て。その時に難民が居たらそいつらに危害が及ばないように護衛してくれ」
「分かりました。難民探しは?」
「当然難民探しもやってもらう。ただ一人での行動は危険だから班行動になる8~10人で一班だな」
「他班と合流は?」
「基本無い。それと一班が確保できる難民の数も限られる。1班100人が限界だ。数人程度なら超過しても構わないが、それ以上は安全に問題があるし、難民に危害が及びかねない。その時は残念だが次が来るまで難民には待ってもらうか、誰か一人が残る羽目になるが、その場合は命の保証が出来ないことを理解してくれ」
「分かりました。それで大体一日どれくらいですか?」
「燃料は化石燃料ではなく魔力や魔石だから24時間飛行は可能だが、日暮れから夜明けまでは暗闇過ぎて危険度が増す。そう考えると精々最大12~3時間が限界だ。それで一日に輸送できる回数は精々5~6往復しか出来ない」
「つまり最大で一日600人・・・今どれくらい完了しているのですか?」
「・・・正直分からない」
「分からない?」
「ああ。何せ誰もかもが健全な身体をしているわけでは無い。病人や怪我人、それだけでなくヘリの上昇と下降に耐えられない幼児もいる。その影響もあって現在の状況が不明なんだ」
「・・・思ってた以上に酷いですね・・・。そもそも何故紛争に?」
「連邦が故、それぞれの思考が激突してそれが過激になったのが始まりだ。まだ戦闘が開始してから2~3年しか経ってない」
「俺達が介入できない理由は?」
「国同士とか、最近あった国際法、それと他国の国民を誘拐して自国で強制に仕わせる等なら俺達は介入が出来るが、今回は自国内での出来事なんだ。そう簡単には介入できない」
「では何故難民逃しを我々が?」
「それは依頼されたからだ。連邦からな」
「国家として役割を果たしていないところから依頼?」
「ああ。俺達も最初は疑ったが、虚偽の無い真実の依頼と分かったため今はこうして以来遂行のため、難民を他国に逃している」
「そうですか。大まかには分かりました。日没後は?」
「その場合は最終便のヘリ搭乗して海上基地または軍港に戻って休養してくれ。これが毎日続くからな」
「そうですね。俺達が休めても彼らに休息どころか、明日が来るのかどうかも怪しいですからね」
「そうだ。その心意気だ。一応一通り説明はしたかな?質問は?」
「海上基地の規模は?」
「海上石油プラットフォームをベースに、直径10キロが海上基地だ。ここの在籍人数は20万人だ」
「防衛能力は?」
「まず海保巡視船が一番外側に。その内側に海自の警備艦、護衛艦ともいうが、それが内側に配備している。海上はこの2重で防衛している。プラットフォームには誘導ミサイルや榴弾、機関銃、魚雷、大砲などを備わっている。それとレーダー探知機て上空も見張っている。空自の協力も得ている」
「分かりました。ではそこに今年の4月からという事でよろしいでしょうか?」
「ああ。それで頼む」
「分かりました」
「こっちは終わったから次はそっちだ」
「ああ。ライゼン。君にはワーズナー星に戻って事務作業や雑用を頼みたい」
「やはりそうなりましたか。まあ今回が特例ですものね?」
「そうだ。今回が特例だ。まあ、前例がない訳ではないが、滅多には無い事であることに変わりはないからな」
「はい」
「それと青少年課にいる間に幾つか仕事を任せたい」
「その仕事とは?」
「今はざっくりとしか説明できないが、いずれ君にはサイバーセキュリティについて欲しい」
「サイバーですか?けど異世界にサイバーは・・・」
「確かにいらない。だが機械兵やアーティファクトなどには魔法や精密機器が入っている。君にはこの解析、破壊、作成などを頼みたいと思っている」
「なるほど。地球であるようなインターネットやオンラインではなく、ITで対抗しよう、そういう考えですね?」
「そうだ。まあ正直機械とかアーティファクトの時点でオンラインじみている様な気がするが、それはそれとして、そう言う事を今後頼みたい」
「因みにダンジョンや施設などにある防衛のためのアーティファクトなどは?」
「それも対象だ。だが今は事務作業が先だ」
「分かっております。その任務。着任したいと思います。まだ辞令が来たわけではありませんよね?」
「ああ。あくまでも正式に決まっただけだから、辞令はもう少し先だ」
「分かりました。そのサイバーセキュリティは、他星もあるでしょうけど、その際の異動はあるのでしょうか?」
「あることにはあるが、それは出張がてらだ。基本はそれぞれ所属している支部にて活動してもらう」
「分かりました。それと暫く先になるでしょうが、紛争地域に干渉とかは?」
「何を以って干渉になるかどうかは分からんが、少なくともライゼンの隣にいる自衛官のアレクサスの補助は映像越しではあるが、干渉することになるだろう。ライゼンは現地に向かう自衛官に映像を介して指示を出したりするんだ」
「なるほど。俺は椅子に座りながら映像越しにでるアーティファクトなどを解析。その場で破壊または持ち帰りが可能なら指示を出す。そういう頃ですね?」
「端的に言えばそう言う事だ」
「分かりました。俺が基地に入るという事は?」
「ある。だが同伴はしない」
「同伴は無しですね。分かりました」
「他に質問は?」
「いえ。ございません」
「分かった。これにて終了する。悪かったな。せっかくの休養を」
「「いえ。大丈夫です。ご足労頂きありがとうございます」」
「「ああ。では失礼する」」
「「お疲れ様でした」」
「ということで、俺達の次の派遣先が決まったな」
「ああ。しかしアレクサスは紛争地域かい。何故お前なんだろうな」
「そこは分からんが、上の命令なんだ。遂行するまでさ」
「だが結構危険だろ?大丈夫なのか?」
「ライゼンよ。珍しく心配してくれるではないか。熱でも出たか?」
「いや。そう言うのではない。だが成人ならまだしも、何故お前なんだろうなと不思議に思ってた」
「まあ、それは俺も同じさ。ま、流されてみようではないか」
「濁流にのみこまれるなよ?」
「お前こそ。だが今は」
「ああ」
「「ゆっくりと時間を浪費するだけさ」」




