連行
連行
「・・・」
「・・・」
「んぅ・・・。ちょっと寝すぎたか・・・それより連絡連絡。ライゼン?」
『おう?こんな時間にどうした?』
「悪い。今何時だ?」
『日付変更前だ』
「分かった。一応報告なんだが、任務完了した」
『そうか。それで今はどこだ?』
「任務終了したが、他部隊の消耗が激しいから下山前に一旦野宿することになった。だからまだあの都市の近くだぞ」
『分かった。なら例の会議室まで3~4日ってところか?』
「そんなところだ。多分だが大晦日の前日までには決着が着くだろうよ」
『そうなると良いな。まあ取り敢えずお疲れ様。質問は?』
「映像の記録は?それとあの会議室に動員は完了したのか?」
『映像はバッチリと記録済みだ。もう映像機能を止めて良いぞ。それとあの臨時同盟に突入する部隊の準備は完了している。あとはお前次第だ』
「そうか。なら3~4日後に着くから出動を掛けて良いと思うぞ」
『分かった。手配しておく。まだ寝ておけよ?』
「そうは言ってもまた移動するしな。やることが無いんだ」
『それは俺に言うな』
「分かってるよ。んじゃ」
「はいよ。気を付けろよ」
「お前ら!朝だぞ!」
「・・・」
「ああ~・・・眠い・・・」
「起きろよ。まあ戦闘事態はないが、戻るまで仕事だからな~」
「『へ~い・・・』」
「・・・」
「あんな感じになるのも無理もないと思うぞ?」
「そうだな。戦時中となるとこれよりさらに過酷になるからな。今だけはゆっくりさせてあげな?」
「だがこんなところで長居は禁物だ。それなら早く戻って休息を与えたほうがまだマシだ」
「それもそうだがな・・・」
「いや。結局長居したところで疲れは取れないんだ。慣れない土地に戦闘癖で寝付けないんだからな。それなら早く戻るという案も一理あるからな」
「だろ?だから長居は禁物だ」
「『・・・』」
「・・・しょうがないな~・・・」
「ま、確かにこんなところにいても意味ないしな」
「そうですね」
「お前ら!飯後に帰還を開始するぞ!!」
「『了解』」
「よし。ここまで無事に何事もなく帰還が出来たことに神に感謝しよう」
「ああ。そう言えばお前の国は神を信仰していたな?」
「そういうお前の国はどうなんだ?」
「神は信じているが、あんたの国ほど信仰はしていないさ」
「そうかい。ま、それはそれぞれだからな」
「そういうこった。さて。連合軍としてはこの場を以って解散になるんだが、お前らはこの後は?」
「上官の俺らは臨時同盟の王たちと会合だろ。部下たちは各自自分の国へ帰還するだろう」
「そうか。なら一旦この場を締めるか」
「だな」
「お前ら!!此度の戦闘、お疲れであった!!俺達上官はこの後報告に上がるからもう少しこの都市に残るが、お前らは準備出来次第それぞれの国へ帰還してくれ。それと今回の被害は決して小さくなかった。仲間と共に亡くなった仲間を戦果を報告してやれ。彼らも俺達と一緒の仲間であり家族だ。それを忘れるな!!」
「『おう!!』」
「では解散!!」
「『おおおお!!!』」
「本当ならもう少し饒舌な言葉を並べたらよかったが、そう簡単にはいかないな」
「大丈夫よ。部下だって綺麗事を並べるより今言った言葉が良いと思っている筈よ。大丈夫よ」
「そうだと良いな。さて。お前らも来るか?」
「勿論さ。この子の事もあるしな」
「そう言えばそうだったな。この子は今後どうするか聞かないとな」
「改めて言うが、済まなかったな。こんなことに巻き込んでしまって」
「俺に言わないでください。そういうのでしたらバカな行動を取った王らに言って下さい。自分が言うのも何ですが、貴方達に恨みとかはありません。寧ろ危険なことは出来るだけ避け、目の当たりをしないように努力なさってたではありませんか。結果的に言えば全くの逆になってしまいましたが、それでも自分は貴方達の行動に感謝しますよ」
「すまんな・・・」
「ただ勘違いしないで頂きたいのは、貴方達の事は良くても王たちが自分にしたことを許したわけではありませんので」
「それは勿論よ!どんどん反論して良いからね。私達も応援するわ」
「ありがとうございます。取り敢えず向かいますか?」
「そうだな。一緒に行くか?」
「ではお言葉に甘えて」
「・・・つくづく子供に見えないな。君と同じ年代もこうなのか?」
「これは自分だけだと思ってください。他は貴方達の思っていることと一緒なので」
「流石に一緒じゃないよな。まあ分かったよ」
「ところで何人行くのですか?」
「25ヵ国がいるからな。最低でも25人と副官、それと君合わせて4~50人ってところか?」
「なんか、大人数になってしまいましたね」
「しょうがないさ」
「さて着いたぞ。ここは初めて来たか?」
「いえ。連れ去られた日に一回来てますので、ここに来るのは2回目ですね」
「なら王たちとは顔見知りかな?すまんな、本当なら顔を見たくないと思っているのにな。けど君をどうするか聞かないことには俺達も動けないから、ちょっとの間我慢してくれないか?」
「良いですよ。それに自分自身も文句垂らしたいと思っていましたから」
「おう・・・随分と憤りを感じているみたいだな・・・」
「しょうがないわよ。子供が戦場に投入よ?そりゃそうなるわよ。それによく考えてみて?私達軍人とはいえ、所帯を持っているのもいるのよ?その子供が戦場に行ってると言われたら『君達はバカか!?』と罵りたくなるわよ」
「それもそうか。確かに俺の子供が連れ去られたら、それだけでも発狂するわな」
「でしょ?だから無理もないわ。だからこの子には最大限味方に付きましょう」
「だな」
コンコン
「誰だ?」
「私です。例の都市から帰還しました」
「入れ」
「失礼します・・・」
「ふむ。元気だったか?」
「はい。全員ではありませんが、帰還致しました」
「そうか。大儀であった。報告する前にまずは全員席に着け」
「ありがとうございます」
「飲み物は?」
「頂いても?」
「構わん。すまんがその子も含めて飲み物を出してくれ」
「『かしこまりました』」
「お飲み物は何が良いですか?」
「何がありますか?」
「基本的には紅茶になります。ですがもし舌が受け付けないのであれば、果汁水もお出し出来ます」
「ならコーヒーはどうですか?」
「!?コーヒーですか?」
「コーヒー」
「ございます」
「ではそれで」
「かしこまりました」
「お待たせしました。コーヒーでございます。お砂糖と乳はこちらです」
「ありがとう」
コクコク
「うん。いい味ですね」
「お褒めのお言葉、光栄でございます。では失礼します」
「どうも」
「おまえ、苦くないのか!?」
「私でもコーヒーは苦くて飲めないのに・・・」
「しかも砂糖も乳も入れずに、よくそのまま飲めれるな?」
「すいません。自分紅茶はちょっと・・・」
「どうして?おいしいのに」
「飲めれることは飲めれるのですが、自分は甘いのがちょっと受け付けなくて」
「『・・・』」
「嘘だろ・・・」
「何度も言うが、お前本当に子供か?」
「見た目通りの年齢ですけど、何か?」
「・・・なんでもない・・・」
「はっはっは!!!紅茶が甘くて飲めない子供は初めて聞いたな!!面白い!!!益々興味が湧くな!!まあそれは今は良いな。では飲み物も回ったようだし、報告を聞こうか。まずは戦火の報告を頼む」
「はい。では発言します。まずあの問題の都市ですが、任務内容の通り、殲滅を完了いたしました」
「今回の戦闘は生存者は受け付けないと言ったが、どうだ?」
「はい。任務の通り、都市内にいる在住者の滅殺を完了しています」
「という事は生存者なしね?」
「左様でございます」
「分かったわ」
「では次に被害報告をお願いします」
「被害は最終的に100万の内約40万人が死傷いたしました」
「そこそこの被害ですね。なぜそこまで拡大したのでしょうか?」
「それは私が。まず敵は事前に報告を受けた通り、騎馬、大砲、魔導士、機械兵など色々戦闘で展開してきました。空軍もあるのはお聞きしました。ですが事前に報告が上がっているのより、それより上の戦力を動員してきました。例えば空軍は報告時より2倍、大砲は5倍、魔導士とかでは数ではなく威力などを上げて参戦してきたため、ガードや耐久が出来ずに被害が拡大してしまいました」
「なるほどな。それは確かに戦力増強されても不思議ではないな。だが他にもあるだろ?」
「はい。一番の被害は市街地戦です。市街地内はかなり入り組んでおり、行き止まりに誘われた後に退路を塞がれてそのまま敵の罠に引っかかってしまい、お亡くなりというのもありました。他には敵はこちらの想定以上に子供兵の動員が速く、建物の屋上から矢を一直線に放って来たり、魔法を使って盾を貫通してきました。それも被害拡大の要因かと」
「そうか。分かった。まあ聞かずともどこが一番被害が大きかったのかは分かるが、一応聞こう。どこが一番被害が大きかったんだ?」
「前線に居た兵士達です。ここだけで4割の内の2割の被害を出しています」
「そうか。致し方ないな。その後の都市は?」
「最終的に焼け野原にしました」
「焼け野原かい!!それは仲間を喪った恨みからかい?」
「それもありますが、子供も殺害対象になってしまった要因はお前らにあるという、一種の裁きでもあるのです。あとは、ゾンビ化、つまりアンデッドとして蘇ることを防ぐという意味で焼け野原にしました」
「仲間を喪い裁きを掛け、亡霊やゾンビ化になるというのを防ぐため焼け野原にしたのか。痛快だな。さぞかし大喜びしただろうな」
「いいえ。仲間を喪っているので歓喜に満ち溢れることはありませんでした」
「それは、すまない」
「構いません。取り敢えず、報告は以上になります」
「分かった。ご苦労。次にこの子の戦果を聞きたい」
「この子ですね。分かりました。良いか?」
「どうぞ。お任せします」
「分かった。本人の許可も下りたという事で、ご報告いたします。まずこの子の戦果はかなりのものです」
「ほう?というと?」
「まずこちらをご覧ください。悪いが、大型盾を出してくれないか?」
「分かりました。こちらです」
ドスーーーン!!!
「『!?』」
「おい。この盾は!?」
「大きくないか!?しかも縦にも横にも長いな!!」
「はい。盾の中央と端に縦長の盾を装着することによって立った状態から顔を横に出すことが出来るのです。難点としては重厚なので重すぎることです。どうぞ持ってみてください」
「では俺が代表として持ち上げてみようではないか!?」
「流石!!ここは軍事大国、将軍の出番だな!!」
「では・・・ふん!!!~~~~重いー---!!!」
「『重い!?』」
「ダメだ・・・はぁはぁ・・・持ち上がる気がしない・・・」
「そんなに重たいのか?」
「あ”あ”。はぁはぁ。これは重すぎる。お前らもやってみるか?」
「いや・・・お前で持ち上がらないのなら俺達でも無理だろ・・・」
「これはこの子は・・・」
「はい。頼んだ」
「はい」
ガシ!!ビュンビュン!!
「お前!!こんなところで振り回すな!!!」
「まあ、この通り余裕で振り回すことが可能なのです」
「し、信じられない・・・」
「その強靭な腕を使い、この子には全体の盾として立ち回りをしてもらいました」
「『全体の盾!?』」
「はい。この子は魔法で離れた盾を持つことが出来るのです。それを使って盾にしてもらいました」
「そうか。それならかなりの成果だな。だがその盾は難点もあるのじゃないか?」
「はい。ございます。この盾は市街地には全く向いていません。ですので砦までの切り開きはこの子に一任しました。それで市街地に突入することが出来ました」
「切り開きか・・・確かにそれだけ聞くと切り開きとは言わないが、敵の攻撃を全て受けて隙を突きながら接近したんだから切り開きか。確かに言えてるな。盾の効果は?」
「大砲の弾、矢、魔導士の魔法、敵空軍のブレス、挙句には敵機械兵のブレスを受けきる効果がありました」
「『!?』」
「そ、それは本当か!?」
「はい。証人として私達全員と今帰還途中の兵士。空軍も目撃しているので証言してくれます」
「それは大戦果ではないか。だが市街地には入らなかったのか?」
「はい」
「それは何故?」
「実は、敵は秘密兵器を隠していたのです」
「秘密兵器ですか?」
「それはいったい何?」
「実は彼らの背後にある崖を利用して、その中に超巨大砲撃砲が隠されてあったのです」
「『!?』」
「驚くことが続いているが、それに気づいたのは?」
「この子です。この子が崖に違和感を覚え、兵士で共有されている望遠鏡での観察の結果、山の途中に人工物を確認。一部隊を引き連れてその場所に向かった結果隠し場所が判明したのです」
「そ、それは凄いな・・・」
「勿論そこも?」
「はい。残敵は殺し、施設も破壊しました」
「それは何よりだが、それが分からなかったら・・・」
「下手すれば敗北していたでしょう」
「『・・・』」
「恐ろしいな・・・。しかしよく気が付いたな?何故分かった?」
「それは本人に聞きましょう」
「簡単です。今回の敵はただの盗賊や傭兵ではありません。退役軍人、つまり元軍人です。その元軍人が何か策が無いとは思いますか?」
「・・・そういうことか。逆を突かれた。そう言う事か」
「そうです。王たちは灯台下暗しの意味をご存じですか?」
「?いや?他は?」
「『いや?』」
「“意味は身近な事情はかえってわかりにくい事”。つまり深く考えすぎ、またはそこしか目線が行っていて、肝心なこと手付かずとか、一周回って思い返すことが無かった。今言ったのはほんの一例ですが、意味は分かりましたか?」
「ああ。嫌と言う程な。つまり、俺達は敵が元軍人と言いながらただの敵と錯覚していた。そして頭脳明晰な奴ほど周りの事を見ずに混乱に陥りやすい。更に言えば軍人なら並大抵なことはしない。つまり裏の裏をかく。そういうことだな。君はそこに気づいたと?」
「大まかに言えばですが、そう言う事です。何しろ考えてみてください?元軍人が都市内で収まると思いますか?」
「『・・・』」
「それはないな。あらゆることをするだろうな。それこそ地形とか」
「そう言う事です」
「全く・・・。子供に教えられるとはな・・・」
「全くよ・・・」
「とにかく。それがこの子の成果ですね?」
「そうです。以上がこの子の戦果となります」
「『・・・』」
「これは、思ってたのより遥かに良い人材だな」
「はい。正直欲しくなってきましたよ?」
「まあそれはさておき。とにかくご苦労だった。各自に後程褒美を差し上げよう」
「『ありがとうございます』」
「戦果と被害報告を終了した。最後に聞いておきたいことはあるか?」
「はい。この子はどうなされますか?」
「勿論俺達が責任を以って魔法学園まで送迎しよう。その上で依頼したい。この子の送りを頼めるか?」
「はい。勿論でございます」
「なら頼む」
「はい」
「では会議を終了したいと思うが、異論は?」
「『異議なし』」
「ではこの会議を・・・」
「ほう?終了するのですか?」
「?何かあるのか?」
「はい。会議を本当に終了するのですか?」
「他にあるのか?」
「自分に対して何もないのですか?」
「君に対して?先程褒美を差し上げると言ったが?それでは不満なのか?」
「不満ですね。本当に無いのですか?」
「褒美では不足か?」
「褒美は良いのです。最後に聞きます。自分に対して何もないのですか?」
「『・・・』」
「無いみたいですね。失望しました」
「失望?は!何に失望したんだい?」
「分かりました。ではその上言います」
「言う?何をだい?」
「俺に対しての謝罪はないのか?と言ってるんだ」
「『・・・』」
「謝罪?何に対して?」
「俺を連れ去ったことに対してだ」
「出頭命令を無視したのはお前だろ?だから実力行使に出たまでだ」
「出頭命令?俺はそんなの聞いていないが?」
「何?ラーズベルト王国から出頭命令が来たはずだが?」
「いや?」
「どういう事だ・・・。まさか、お前!」
「ああ。俺の手でこの子に出頭命令が来ないようにしていた」
「何故だ!?何故こんなことしたんだ!?」
「ラーズベルト王?納得のいく理由をお願いします。場合によってはどうなるか分かりますよね?」
「ああ。知っている。だから今から申す」
「お願いします」
「まずな?この子は俺の血縁者だ」
「『!?』」
「な・・・」
「え!?どこと!?」
「という事は、王族!?」
「ちょっと待てお前ら!!いったん収まれ!!詳しく話す」
「ああ。すまない」
「先ほど言った通り、この子は俺の血縁者だ。それは聞いたな?」
「ああ」
「だが直接の繋がりはない」
「は?」
「どういう事?」
「それも今から言う。お前らに聞きたいが、ローズマリー公爵をご存じか?」
「ローズマリー公爵?」
「ああはい、あの公爵という立場ながら大公の権限を持っている女性ですね。そう言えば王族と公爵って従姉弟でしたっけ?」
「ああ。俺の父の姉の娘だ」
「そのローズマリー公爵がどうしたんですか?あの方はまだ未婚では?いつも生き残りと愚痴っていますが」
「ああ。女王と従姉って友人だったか?」
「そうね。まだ未婚でしょ?最近会ってないけど」
「最近って何時?」
「10年前かな?文通はしてるけど、なかなか会えないみたいだけど。元気にしてる?」
「ああ。彼女の夫と一緒に住んでいるぞ」
「そうなの。夫が出来たのね~・・・。夫?」
「夫」
「ねえ?今夫って言った?」
「ああ。言ったぞ。だからいま彼女は既婚者だ」
「う、嘘!!!どこと!?」
「それも今説明する」
「わ。分かったわ・・・。彼女が、結婚?」
「話を続けると、彼女の夫がこの子の父親だ。そしてもう一つ、彼女は子供もいるんだが」
「こ、子供!?ま、まさかその子が!?」
「落ち着け。そのローズマリー公爵の子供ではない。その夫は2人の妻を持っていて、この子はそのもう一人の方だ」
「そ、そうなのね・・・。彼女が結婚で子供も・・・。今度会った時に祝ってやらないとね」
「そうしてやれ。そう簡単にはいかないがな・・・」
「どういう事?」
「それは追々な。つまりそう言った理由で俺はこの子に出頭命令をあげなかったんだ」
「まさかのこの子は間接的に王の血縁者に・・・」
「ああ。そう言う事だ。だが先ほど言った通り直接ではない。関わりが少ないのも無理はない」
「それもそうか。だがそれなら何故君の隠密部隊がこの子の存在を知らないんだ?普通に考えたらあり得ないだろ?」
「まあな。だが無理もない。この子は王城とは違う別の場所に住んでいるからな」
「そうか。それなら無理もないが、そうなると不思議だな?」
「何がですか?」
「ああ。軍人には分からないか。貴族のルールでは嫁に出すとき、降嫁出来る限度が決まってるんだ」
「降嫁出来る限度ですか?」
「ああ。例は幾つもあるんだ。例えば公爵令嬢なら2つ下の伯爵までとか。辺境伯なら子爵または男爵までとかな」
「?伯爵?それだと3つですよね?」
「いや、違う」
「は?どういう事だ?」
「他の世界は知らないが、少なくともこの星では侯爵と辺境伯は一緒なんだ。だからそこだけ飛ぶんだ。なら公爵の2つ下は?」
「侯爵と辺境伯は一緒だから、その下は伯爵、そう言う事か」
「そう言う事だ。すいません話の骨を折ってしまって」
「いやいい。説明の手間が省けた。それで不思議に思ったのは、ローズマリー公爵の夫は話を聞いた限り一般人だよな?どうしたら一般人が貴族、しかも当主と婚姻出来るんだ?」
「あ、確かにそうですね?どういう事ですか?」
「いや、彼女の夫は一般人ではないぞ?」
「?どっかの貴族か?」
「いや、貴族でもない。今この場にいるお前らと一緒だ」
「彼ら?軍人か?」
「ああ。夫は軍人だ」
「どこのだ?」
「それを言うのはちょっと躊躇う」
「何故だ?普通に発言すればいい話ではないか?それとも偽りか?」
「いや違う。違うが俺の口から発言は出来ない」
「出来ない?しないのではなく?」
「ああ。もしどこの軍人か聞きたい場合は俺の甥に言え。最も甥も発言してくれるかどうかは正直怪しいものだがな」
「なら聞いてみるさ。それで?お父さんはどこの軍人だ?」
「それを聞いてどうする?」
「まあ、聞くだけさ。どうしたらこんな優秀な子供が出来上がるのか?とな」
「本音は?」
「君を引き入れたい」
「だろうな。こんな子供を戦場に送り込むバカな奴らだからな」
「バカとは、些か語弊があるな」
「どこがだ?未成年の戦場送りは国際法に違反するぞ?」
「違反?は!あんな日本国が作った国際法なんて知らないさ。そんなの俺達全員が揉み消すさ」
「・・・その意見は他国も同意の上なのか?」
「全ての国ではないが、少なくともここにいる25ヶ国の内10ヶ国は同じ意見だよ?」
「・・・そのセリフをよく部下の目の前で発言出来るな?」
「まあ、お前らは良くも悪くも国に忠実だからな。良い部下さ」
「・・・どう思いますか?」
「・・・正直驚くに堪えません・・・」
「ああ・・・。こんな王の部下が俺達なんて・・・」
「想像もしたくないわね・・・」
「では2つ聞きます。今許されるならどうしたいですか?」
「許されるならか・・・俺ならこの王と縁を切りたいと思う。出来れば殴りたいとも」
「私もよ」
「それは国を捨ててまでですか?」
「・・・捨ててまで・・・」
「流石にそこまでは・・・」
「・・・無いですね・・・」
「そうですか。ではもう一つ。この状況が覆るとしたらどうしますか?」
「覆る?」
「どういう事」
「良いから」
「・・・覆るなら思ってもない事」
「逆に好都合と思うわ」
「そうですか」
「けどそれを聞いてどうするんだ?」
「いや?聞いてみただけです。それで?本当に国際法を無視するんだな?」
「何度も言わせるな」
「24ヵ国は俺に謝罪なし?」
「ああ。しない」
「その言葉に偽りは?」
「『ない!!』」
「分かりました。おい」
『『了解』』
バン!!!!
「『動くな!!!』」
「『全員手をあげろ!!!』」
「な、なんだ!?」
「『手をあげろ!!!出ないと殺す!!』」
「殺す!?」
「君達、王に向かって何を!!」
「膝を折れ」
「『了解』」
ゴギ!!!
「ぎゃあああ!?」
「うるさい」
「君達、ただで・・・え!?」
「気づきましたか?」
「な、何で黙る・・・え・・・」
「どうも、こんにちは」
「そ、その胸と背中に大きく書かれているのは、本物か?」
「本物は本物だ」
「な、何でここに・・・」
「『日本外務省と日本自衛隊がいるんだよ!?』」
「俺が呼んだんだ。俺もこのIDの通り」
「『!?』」
「お前・・・まさか・・・」
「ああ。俺も日本国に所属している。だから呼ぶことが出来たぞ」
「はっっっ、はは!!だが証拠は!?」
「バカだな~。俺達がそこまで馬鹿だと思うか?外を見てみろ?」
「外?・・・え?」
「デモが起きてるだろ。その掲げられた物に書いてある文字は?」
“王は裏切りもの!退陣しろ!”
“王たちは国際法を無視した罪人だ”
「ああ。何故か分かるか?」
「・・・」
「分からないのも無理はないよな?この子の腹に撮影機材、俺達はボディカメラと呼んでるが、そのカメラはその風景を記録することが出来るんだ。そして流すことも」
「『嘘だろ・・・』」
「連れて行け。未成年者誘拐と戦場幇助、国際法違反だ」
「な、何でラーズベルト王は連れていかれないんだ!?」
「簡単な話だ。お前らが強行した。その記録もある。ここで流しても良いがそうなるとどうなるかな~?」
「『・・・』」
「だから俺はこういったんだ25ヶ国ではなく24ヶ国とな」
「『・・・』」
「クソ・・・」
「頼む」
「『了解』」
「という事だ。色々と展開が速くて申し訳ないが、そういうことだ」
「そ、それは良いが、それだと俺達は・・・」
「上の命令には逆らえなかっただけだ。俺から情状酌量の余地ありと進言してやる」
「・・・」
「すまんが頼む・・・」
「ああ。それともしもうこれ以上国のことを信用できないのなら、うってつけの職場があるぞ」
「それは?」
「・・・日本国の警備隊だ」
「『日本の警備隊!?』」
「け、けど日本国の治安維持って・・・」
「ああ。一応外務も自衛も両方担っているが、どうしてもお国の事情や種族の事情などは分からないんだ。そう言うのはお前らが詳しいと思うから」
「た、確かにそれはそうだが・・・」
「良いのか?」
「何が?」
「俺達が行っても?」
「大丈夫だ。寧ろ連絡してくれたら向こうは大歓迎するさ」
「そういうものか?」
「そういうものさ。とにかく考えてくれ」
「あ、ああ・・・」
「けどその場合の肩書は・・・」
「その場合は外務の特殊文官ではなければ自衛隊の武官でもない。文民警備隊になる。街中の治安を担う仕事だ。お前らにはうってつけの職場だと思うが?」
「ま、まあ、一応参考に考えておく」
「分かった。じゃあ」
・・・・・
「お疲れ様」
「長かったな?」
「まあな。正直、年越ししても帰れないかと思ってた」
「いや、お前はそこまで時間は掛からせないだろ?」
「それは分からんぞ?もしかしたら不慮な事態で延長もあり得るからな。あのバカらは?」
「今裁判所だろ」
「そうか。流石に次期国王、または大統領はまともな奴が良いな」
「それは国民、または王族が決めるさ。だが少なからずあの国たちは俺達に喧嘩を売ったんだ。その代償は大きいだろう」
「まあな。それはさておき。ライゼンよ。お前はこれからどうする?」
「俺か?おれはのんびりと一人を楽しむさ」
「ならそこ俺が入っても?」
「・・・たまにはそれも良いな。何か食うか?」
「そうだな・・・。取り敢えず肉が食いたいな」
「用意しよう。その前にジュースで乾杯しようか」
「良いな」
「「乾杯」」




