入学式での喧嘩
喧嘩は喧嘩でも違う意味での喧嘩
入学式での喧嘩
合格発表を確認した後、任務を完了も含めて、親父に報告する。・・・多分『早くない?』か『そいつはバカだな』などの相手の罵倒が第一声だろう。てことで駐屯地へ向かう
「はい。お帰り」
「いつもすいません。他の人だと入場証を提示しても『偽物なのか?』とかしつこくって、嫌になってたもので」
「まあ分かるわね。何しろ特例とはいえ、8歳の子が青少年部に所属しているって言っても信じないしね」
「はい」
「まあ、私は基本いるから安心してね」
「ありがとうございます」
俺はいつも通りの世間話をした後、事務室へ向かう。そこで連絡が出来ると聞いたからだ。さてことわりを入れるか
「すいません。電話?をお借りしたいのですけど、宜しいでしょうか?」
「電話?良いわよ」
「ありがとうございます」
「親父」
『?アレクサスか。どうした?』
「後で上官から連絡が来ると思うけど、内通者の件なんだが、任務完了した。相手は反社会的勢力【エンジェルノーツ】を後ろ盾にしている女性だった。その内通者の女性は現地の王から殲滅の許可を貰ったから殺害した」
『早かったな。もう少し遅いかと思ったから俺ものんびりしていた。上官が後に俺に来るということは、任務も成功と考えていいな。疑っているわけではないが念のためな。となると、任務は終わったから学園に通う意味は無くなってしまったな。元々は内通者を探して、捕らえるか殺す為に作られた建前だからな。俺としては戻って来ても良いし、そっちの学園に通っても別に構わないけど、どうする?』
「う〜ん、親父はどっちが良い?」
『そこは任せる』
「任せるといってもな〜・・・あっそうだ親父。今は俺はフリーだろ?」
『青少年部としては任務はまだあるが、別にアレクサス限定の任務はないからな。フリーで合ってるぞ。それがどうした?』
「親父。俺は学園に探りを入れるよ。表では分からないことも裏なら・・・」
『そういうことか。確かに泥沼のところはあると聞くしな。分かった。どうする?お前の口から言うか?』
「うん。俺から言うから」
『分かった。頑張れよ』
「サンキュー。アウト」
電話を切り、上官に独自の任務を申請する。すると上官も大歓迎してくれた
「ここ最近この国は泥沼が多いと聞く。あとはコネとかで不正を相次いでいるから撤退的に洗い出せ。初めは現地の国の衛兵やら役所に依頼して捕縛させるが、グルとかいた場合はこちらで対処する。その方針で良いか?」
「お願いします」
「よし。ヤシロ・アレクサス2海士 任務を遂行せよ」
「了解」
さて上官の許可も下りたし、いっちょやるか
1週間後。遂に本日は入学式である。制服もキッチリしてるが若干窮屈な服だ。あとは季節によって制服も変わる仕組みになってるみたいだ。今は暖かい時期であるため、人によっては夏服、冬服に分かれているみたいだ。俺は取り敢えず夏服で行くか。制服は白に青ラインが縦に入っているだけのシンプルなデザインだ。あとは胸にチェーン付きの校章バッジがあるくらい。色はチェーンは銀でバッヂも銀になっている。意味があるのかと思い、制服渡された時に質問したら、バッヂの色によって学年が変わると教えてくれた。要は胸バッヂの色=学年色になる。で今年度入学の生徒は銀。だから胸も銀で1年という意味みたいだ。誰もいないのに説明するのはこの辺にして向かうか。いざ学園へ
30分後。多少近道したら予定より早く着いた。まあ遅れるよりかはマシだろう。相変わらずデカイ学園だな〜と軽く呆れていたら後ろから人がぶつかってきた
「申し訳ございません。前方を見ていませんでした。お怪我は?」
後ろを振り返ると、執事みたいな方が声を掛けてきた
「ありません。気にしないで」
「おお。その心遣い、感謝致します。次いで何ですが、申し訳ございませんが、道を開けて頂けますか?今から貴族たちがこの学園に参られますので」
「そういうことならどくよ。元々道のど真ん中に居たら誰だって邪魔と思うわな」
「ありがとうございます」
「因みに誰が来るか、分かりますか?なにぶん常識知らずで申し訳ないのですが貴族が目の前を通ったら頭を下げたりしますか?」
「成る程。承知しました。なら軽く教えしましょう。本日は貴殿も分かる通り、入学式なので国内外の貴族がこの学園に集まります。お子様の晴々の入学や来賓の方々などが来られます。本日来られるのは下は名誉職、上は王関係者方々、勿論王族もこちらへご入学されます。そして立礼ですが、貴族は侯爵以上が立礼の対象となります。礼拝の基準ですが、ただ単にすれ違った程度でしたら何もしなくて構いません。ですが関係者が馬車から下車なさいましたら、道を譲り、片膝を付き、胸に利き手で構いませんので胸に手を当てて、頭を下げます。通り過ぎるか、指示がありましたら頭を上げてください。この場を去りたい場合は、上級貴族は必ず護衛が付きます。その護衛が通り過ぎたらその場を去っても大丈夫です。下級貴族の場合は当主か家族が通り過ぎたらで大丈夫です。分からないことはありますか?」
「いえ、分かりましたので大丈夫です」
「そうですか。それでは私はこの辺で」
ふむ。これから貴族、それも今年は王族が入学するのか。面倒ごとになる前にこの場を去るか。さてその場を去ったのは良いが何処に行ったらいいんだ?軽く迷ったな
「あの〜」
「はいはい?」
声をかけられた方向を向くと2人組の男女が立っていた。男は赤髪でつり目だけど面は優しそうな顔をしている。
女はかなり銀髪で可愛い顔だけど無口っぽい感じがする。
「もしかして今年度入学?」
「そうだけど。お前らは?」
「俺たちも今年入学なんだけど迷ってな。そっちは?」
「残念だったな。俺もだ」
「あちゃ〜どうしようか」
「君たち。そこで何してるんだ?」
急に校舎から男が走ってきた。多分
「貴方は?」
「?ここの教師だ。君達これから入学式だろ?こんなところで何してるんだ?」
やはりな
「実は俺たち、迷ってしまって」
「はぁ。今年度もか。いい加減広すぎるのもつきものだな。しようがない。場所まで案内するからついてこい」
「ありがとうございます」
「君達名前は?」
「俺はアレクサス」「ノールドだ」「・・・ネル」
「宜しく。私はバードだ。それよりアレクサス君か。まさか目の前に現れるとはな。どうせ入学式で見るだろうがそれだと分からないから有難い」
「先生、何故アレクサスをそんなに期待?しているのですか?」
「・・・不思議」
「ああ、アレクサス君ね。ペーパーテストでは第1位なんだ。それも平民がこの点数だからね。貴族主義の教師は面白くない顔をしていたが、私達平民出身にはありがたい話だからな」
「・・・凄い・・・平民で貴族に対抗できるって中々いない」
「確かに、凄いなお前。あっそうだ。アレクサスから教えてもらおう。色々!」
「別に良いが、教えるのは座学だけだぞ。その理由は教師がしてくれるだろう」
「確かにそうだが、けど実技も平均的だから、問題ないはずだ」
ありゃりゃ。正体がバレないようにかなり手加減したんだが、これで平均か。中々危ういなこの学園も
「おっと。それより入学式だ。そこの扉から入ってくれ。場所覚えておけよ〜そこは体育館だから、それも忘れずにな」
「「「はい」」」
てことで何とか辿り着いた。その後、学園長の挨拶や在園生の挨拶(聞くのも嫌だった)を終え、クラス分けが行われた。この学園のクラスはランダムで決まるため、このクラスはダメといった偏りはないので安心だ。因みにクラス単位は数字式で1〜10クラスもある。1クラス約210人もいるそうだ・・・流石マンモス校。さて俺は?・・・第3クラスか。というか名前を探す途中で思ったが女子の比率高くないか?まあ高いと言ってもそんなにではあるが。男=3〜4割/女=6〜7割というところだ。さて向かうか
「よう一緒のクラスだな」
「ノールド?一緒ということは?」
「もちさ!勿論ネルも一緒だ」
「(コク)」
「なら楽だな。知らないメンツが目の前にいると萎縮するからな」
「たはは!なにせ1クラス210人だからな当然だろう」
ということで3人で教室へ向かう。入ると扇状型の机で中央に黒板という配置だった。親父は旅行の時にここにも来たそうだが、親父が言うに「大学か!」と言ってたのを覚えている
「・・・」
えっと〜何故俺が入った瞬間静まった?何か付いてるか?
「『カッコイイ・・・』」
「は?」
「カッコイイ?」
「誰が?ノールド分かるか?」
「いや?俺にもさっぱり。ここでナルシストなら『そんな照れるよ〜』とか『当然だよ。だって俺は世界一カッコイイ男だからな』とか言いそうだけど、生憎それはいない。だから分からん」
「・・・分かる・・・」
「ネルもだ。誰だ?本当に」
全然分からん。先ず何故急に静まったのも知りたいし
「あっあの・・・」
「はい?」
女の子が話しかけて来た。獣人か。・・・何故かモジモジしている
「あっ握手して下さい!」
「『!!?』」
「握手?俺に?」
「(コクコク)」
「まあいいや。はい」
「あっ・・・ありがとうございます!きゃ〜」
なぜ叫ぶ?というか何故獲物を狙うような目を俺に向けてる?そして誰かがコングベルを鳴らしたあと、俺に女子が押し寄せて来た。誰だ!コングベルを鳴らしたの!てか何故持っている!?そして俺は校舎中逃げ回った。
30分後。俺はヘロヘロになりながらも何とか逃げ切り、教室へ戻ってきた。結局同学年だけでなく、上学年や若手の教師まで加わり、追い回されるハメになった。教室に戻っても視線は変わらないが、授業開始の合図が鳴っているため、襲われることは無かった
「疲れた〜・・・何故初日から逃げ回る羽目になるんだ」
「・・・しょうがない。それだけアレクサスはカッコいいし謙虚だから」
「・・・カッコいいってそういうことか・・・」
「(コクコク)」
俺が原因か・・・そうこうしていると、教師が正面に立つ。ようやく授業に入れるかと思いきや
「今日は初日だから、自己紹介した後は解散だ。気をつけて帰れよ。特にアレクサスな。あと、寮に入りたい生徒は俺まで言ってくれ」
とこんな感じなので若干ガッカリだったりする。まあいい。自己紹介だっけ?順番が回ったら適当に言っとこ
「自己紹介の前に私の紹介だな。俺はこのクラス担任のラフ・フォン・タムロン辺境伯だ。担当科目は選択授業の召喚魔法を担当している。妻2人と子供10人の大家族だが全員不自由なく生活している。宜しく」
先生は貴族でしかも辺境伯か。30歳みたいだけど、更に迫力が増してるのは気のせいか?威厳を保つ意味なら良いのだが
「俺の紹介は終わったから次は君達だ。順番は成績が良い順番から紹介してもらう。てことで先ずは首席のアレクサス。お前からだ」
俺からか。しょうがない
「まあどんな自己紹介すれば良いか分からんが、取り敢えずするか。俺はアレクサスという。生まれた街はカサジマケンという、なんか日本国自衛隊だっけ?それが統治している場所から来た。一応親父の縁でこっちに引っ越ししてきた。だから軽く常識知らずだと思うが、宜しく頼む」
取り敢えず頭に思い浮かんだことを言う。すると静粛が広がった。・・・あれ?
「どうかした?何故教師まで黙る?」
「あっああ、すまん。そこの出身者が来るとは聞いていたがまさかアレクサスだったとはな・・・」
「別に只の軍事都市だぞ?特別なことは無いぞ?」
「それはそうなのだが・・・まあいい。よろしくな。誰かアレクサスに対して質問はあるか?」
「『はい!!』」
「おふ・・・女子全員手を挙げるとはな。取り敢えず・・・前から6列目で右から15番目」
「はい!!」
当てられた女子は結構可愛い系の子だ・・・というか全員可愛いか綺麗しかなくないか?
「アレクサスくん!・・・あっあの・・・歳はいくつですか!?」
「歳か?俺は8歳だ」
「『まさかの年上!?』」
何故驚く。更に言えば何故隣のクラスの連中もここに来ている。自己紹介は終わったのか?
「では次・・・に行く前に何故君達がここのクラスに?しかも上学年や教師も含めて・・・何故ここのクラスへ?」
「『当然!アレクサス君を見ている!』」
「・・・」
「アレクサス。どうやらコイツらはバカのようだ。悪いがこのままでいいか?」
「問題ない」
「分かった。では続ける。次は最後列で左から3番目の子」
「はい!アレクサス君・・・恋人はいますか?」
「『!?』」
今度はそれか・・・
「まあ、いないな」
「『よし!』」
何故喜ぶ。そして
「『ふふふ・・・どうやら戦争になるみたいね・・・』」
「うわ・・・なんかアレクサスが誰のものになるかの戦争がここで始まったみたいだな・・・」
「先生・・・戦争という単語をここで使うのはなんか違うような・・・」
「なら女子達を見てみろ?これを戦争と言わずなんと言う?」
「『(キラン!)』」
「確かにこれは戦争ですね・・・」
「だろ?これはこれでお互いに大変だな。色々な意味で」
「確かにそうですね・・・お互い苦労しますね・・・」
「「はぁ・・・」」
「俺の事はまあいい。次の質問は?・・・一番前で俺の正面にいる女子」
「はい!アレクサス君は何処に住むのですか?」
「何?今度はストーカーか?」
「いえ!そうではなく・・・」
「先生、確かに不埒な事はダメですが、これは質問ですので答えたくなければ答えませんので、ここは抑えてください」
「そうだな。すまん」
「いえいえ、取り敢えず質問の答えは、これから寮に入るから、だな」
「『!?今から申請すれば・・・何とか出来るかな?』」
「はぁ・・・これからの悩みの種はどうやらアレクサスの発言にあるようだな・・・」
「先生・・・それだと何でもかんでも俺が原因になりかねませんが・・・」
「胃が痛くなる事実を増やすな・・・しょうがない。次は後ろから3列目で一番右端の女子」
「はい!アレクサス君は好きな食べ物ってありますか?」
「簡単な質問で有難いよ。ありがとう。本来は自己紹介で言ってもらうのが筋だろうけど、君の名前は?」
「!?あ、ありがとう!私を見てくれて。あっ名前だったね。私はレインボーだよ!親は貴族だけど、名誉貴族だから、実質平民だよ。宜しく!」
レインボーは自分の名前を先に紹介できてウキウキみたいだ。逆に他の女子は「先を越された」という声がそこら中に聞こえる。・・・気にしたら負けというやつだな。とそれより
「うん。宜しく。で質問の答えだったな。麺って分かるか?」
「麺?あ〜パスタみたいな?」
「そうそう。そういうのが好きだな〜」
「へぇ〜分かった。今度作って持ってくるよ!」
「?持ってこれないだろ?伸びるぞ?」
「!そうだった・・・どうしたら・・・」
「いいよ別に気にしなくても。それに作ってもらうのも悪いしな。何だったらこれから寮生活だから、俺が作ろうか?」
「えっ?良いの?」
「構わない。ただ俺の好きな食べ物はパスタとは違うから、想像してるのとは違うけど、良い?」
「はい!構いません!」
ひそひそ
・・・これは他の人も呼ばないと大混乱だな
「そんなヒソヒソしなくても全員分は作るから」
「『やった!』」
「お前、料理出来るのか?」
「おう。4歳から料理している。あっノールド、お前も来るか?」
「良いか?」
「おう、友達だしな」
「サンキュー」
「じゃ、次だな。時間がないから次で最後な。えっと?そうだな。じゃあ王女。どうぞ」
王女?この国のか?まあこの星、サラリナの中で最大の魔法学園だしな。王女が通うのも当然か
「初めまして。この国、ラーズベルド王国の第4王女のサラ・バル・ラーズベルドでございます。以後お見知り置きを。それで質問ですが、もし私から『結婚した下さい!』と求婚されましたらどう返答します?先程はもしという単語を使いましたが、私がその気なら貴方に求婚しますが?」
うわ、王女は頬を染めながら、俺に核兵器級の特大爆弾が投げ込んできた!しかも他の女子も「王女自ら求婚!?」と混乱している。俺も急な求婚に戸惑っている。さてどうするか・・・?待てよ?なんか雰囲気が誰かに似てる・・・誰だ?それは後でいい。それよりこの場を凌がないと!今日は入学式でしかも自分の子供がクラスに馴染めるかどうかを見極めに、他の親もこの教室に来ている。しかもその中にいるのだ。サラの親、ラーズベルド王が。うわ!こっちを見てる!まるで「娘はやらんぞ!」と言っているみたいだ。こえ〜。お?横にいるのは王の奥さんかな?中々綺麗な方だ?あれ?やはり誰かに似てる?誰だ?あとで質問してみるか。それよりこの場だな
「それは、この場ではお答えしかねます。確かに好きになった方に自分を知ってもらいたい気持ちは分かります。ですが貴女は王女。急に求婚されても王が困る訳です。王から見れば自分は何処の馬の骨か分からない者。そんな奴に娘を渡すわけにはいかないのです。それに王は貴女を心配しています。政治利用されないか、嫌な思いをしないかなど色々。それは貴女も不本意ではないでしょう。それに自分自身も貴女のことを何も知らない。何も知らないということには何も出来ない。これは大きな差です。貴女ももし政略結婚は除きますが、急に求婚されましたらどう致します?恐らくは断るでしょう。付きまとわれたら恐怖になってしまう。そうなってしまわれたら自分は貴女のことを恐怖の存在として避けるでしょう。それは貴女にとっても嫌なはず。なので自分からはお答えしかねます。友達関係でしたら構いませんが、求婚でしたらまた改めて声を掛けてください」
王が見ているので失礼にならない程度に断りを入れる。チラッと王を見るとグッドサインをしてきたがそれと一緒に何故か、やれやれとした表情を見せた。・・・これは俺しゃなくて王女に対してだな。ふぅ〜何とか巻き添えはしなくてすんだ。
俺の質問が終わり、次の人の自己紹介が始まった。ただ正直名前以外は頭に入っていかない。原因は王女の求婚だ。別に求婚自体は珍しくないが、この歳で求婚を受けるとは思わなかった。更に言えば王も俺に対して呆れ顔だった。何故その顔をしているか分からないが、取り敢えず嫌悪はしてないから良いか。
2時間後にはようやく一通りの自己紹介を終えたので、俺は教師に寮生活の申請をするが、そこでも疲れてる顔を見せた
「その顔をするということはまさか・・・」
「ご想像にお任せする・・・って言っても分かるか?」
「はい。察するに寮生活を希望する生徒が多すぎる件ですかな?」
「図星だ。といっても最初から分かっていたがな・・・はぁ〜・・・特に問題はお前に求婚した王女だな。知っての通り、この学園は通学も寮も両方認めている。王女も通学だったのが急に寮にしてくれと言われてな。多分また求婚してくると思うぞ」
「はぁ〜・・・頭が痛くなる事実をしないでくださいよ〜・・・」
「こればっかりはな・・・」
「デスヨネ・・・」
「取り敢えずほれ。お前がこれから暫く世話になる寮の鍵だ。部屋番号は3302号室だ。鍵は無くすなよ?無くしたら・・・」
「・・・肝に命じます」
波乱の初日が終わろうとしていたが、残念ながらまだ終わらないみたいだ
「失礼、アレクサスで間違っていないな?」
「そうですが、あなた方は?」
「私達は王の護衛隊だ。王が貴方をお呼びです。至急王城までお越しください」
「俺の人生って苦労ものだったっけ?」
「なんか負のオーラが見えていますが・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないだろ・・・」
「心中お察しします」
「向かうか」
てことで王城に向かった・・・何故か簀巻きされた状態で。まあ楽だから良いか
「申し訳ございません。王からの指示で『簀巻きして連れて来い』と」
「あ〜はいはい。構わん」
「ご面倒おかけします」
王城に着くとそのまま簀巻きされた状態で謁見間に向かう。・・・今更思うが王城もデカイな。流石に基地よりかは小さいが。謁見間に着くと俺は放り出された。中々荒いが、これも指示だろう。目にゴミが入るとマズイので目を瞑る。そのままコロコロ転がされて、止まったと思い、目を開けると正面には王とさっきの王女と王の奥さんとその他数人が・・・なんか言い争っていた。・・・おうふ・・・まさか王女のパン○が見えてしまった・・・まさか可愛い熊さんのパン○とはな・・・そこは女の子だからな。だがさっきから
「お父様!なぜアレクサス君を手荒な真似で連れてきたのですか!?怪我でもされたらどうするのですか!?」
「サラ、聞いていただろう。何処の馬の骨も分からん奴に結婚相手は相応しく無い。まさにその通りだ。だから何かよからんことを考えてるやつから指導しようと思ってな。それで連れてきた。・・・まあ流石に求婚を断るとは思わなかったがな」
「求婚を断った事実は私も動揺しましたが、それで分かったではありませんか!アレクサス君は野心も下心もない人だと!野心があれば求婚を断らないで、私を連れ去るなり、なんなりする筈です!下心あれば、私を凌辱する筈です!それがないことは分かったでしょう!」
「それでもだ。一応他の息子娘達にも聞いて、お前以外は全員一致で一度簀巻きした状態で連れてきて、背後関係を洗うとな。本人が善人でも背後が黒なら不味いからな」
「お母様!お兄様!お姉様!宰相!大臣!もうみんな嫌いよ!もう口は聞きません!」
「『!?』」
こう親子喧嘩が続いているのだ
「あっあの〜流石に王女に嫌われるのは不味いかと・・」
「私も同意見です。これを聞かれると弾劾の危機でもあります」
「お父さま。妹に嫌われるのは兄としても辛い取り敢えず離してあげたら?」
「私も弟の意見に同意するわ。話さないとお父様まで危害を加えかねないわよ?」
「そっそうだな。取り敢えず離すか。おい、近衛兵頼む」
「はっ!」
とこんな茶番に付き合わされたが、なんとかなったみたいだな。お陰で少し痺れたぜ。さて話を聞くか
「すまない。お父様が大変失礼なことをした。お父様は王なので簡単に頭を下げるわけにはいかない。代わりに俺が下げるからそれで謝罪を受け取ってもらえないだろうか」
「残念ながらそれは受け取るわけにはいかない。理由はあんたらが謝っていないからだ。別に王としての謝罪は受け取るが、俺を簀巻きして連れてこいに同意したお前らはどうなんだ?別に被害に遭ったのに相手から謝罪がなかったとして、役所に被害届を出しても良いのだぞ?確かにサラ王女の言う通りで自分で言うのもなんだが野心はないが、それでも筋は通さないとな。それとも王族や国のお偉いさんだからなんでも通ると考えているのか?違うか?」
そう全員に自分の考えを言うとお偉いさん方は黙り込んだ。すると
「流石に国の不祥事は国民の信頼に関わる。お前らも謝罪した方がいい」
「確かになんでも通じると思ったら大間違いだったな。すまない。第1王子として、一国民として謝る。すまなかった」
「私も謝るわ。そんなことしたら単なる悪王女だよね。第1王女として、私も一国民として謝るわ。ごめんなさい」
その他の人も謝罪をもらったのでこの問題はこれで良いだろう。次に背後関係だか、これは何故か心当たりがある
「背後関係を洗う前に横の部屋に行こう。応接間だからビクビクしなくても良いぞ」
「別に緊張はしていません。これよりもっとキツイ場を乗り越えていますのでこれくらいではへこたれません」
「ほぅ・・・場慣れしてるということだな?面白い奴だ」
「で背後関係だが洗わせて貰うが、先ずはお主の口から心当たりはあるか?」
「実は一つ心当たりがありまして、王の奥さんです」
その言葉でその奥さんは驚き、周辺はその奥さんに注目する
「え?私が何かしたの?全然分からないのだけど?」
「いえいえ。奥様が善良な方だとはご存知なのでご安心を」
これは嘘では無い。実はあの白黒つけるサングラスを掛けてきているのだ。もし嘘なら捜査が入るからな。念の為に付けてきたのだ。勿論気づかれていない
「では何だ?余り困らせると王としてお前を捕らえるぞ?」
「流石にご勘弁を。別に奥様本人がどうこうではありません。こちらから軽くいくつか質問に答えて頂ければと思いまして」
「私に?良いわよ。何かしら?」
「では、貴女の知り合いに『ローズマリー』という方はいますか?」
すると奥さんは驚いた表情を見せる
「なっ何故その名を?!」
「ローズマリー?ローズマリー!?えっ?まさか公爵家か?」
「確かそう言っていました」
「ねぇアレクサス君だったかな?ローズとの関係は何?出来れば今何処に居るか教えて欲しいのだけど、あの子直ぐにふらっと居なくなってずっと探してたのよもう2年は顔すら見てないから」
「そういうことだったのですか。あっ関係でしたね。自分の父は2人の奥さんが居ます。そのうちの1人が」
「ローズということね?」
「そういうことです。因みにそちらとの関係は?」
「それを答える前にちょっとサラに言わないといけないね。貴女多分だけどアレクサス君と結婚は出来ないと思うよ?」
その事実を伝えたら、サラ王女は驚きを隠せず、更に目に涙を浮かべていた
「何故なのですか?何故多分結婚出来ないのですか?お母様!理由を言ってください!」
「貴女落ち着いて聞いて。これで質問の答えになるから言うね。答えは・・・」
「奥様とローズの関係は姉妹だから。そうですね?ヤヤ様」
「!?何故名前を?いやローズから聞いたのね。そういうことよサラ。さっき名前が出たローズと私の関係は姉妹、そしてこの子がいるということはアレクサス君とサラの関係は?」
「・・・従兄妹、ということですか・・・」
「そういうことね」
「因みにこの事実をご家族の方は?」
「夫以外は知らないわ。夫は初めから知っていたから別に気にしなかった。ただ私が王族になるから、必然的に王血族は爵位が最高位の大公になる。姉は肩書きは公爵なら良いと言ってたから、肩書きは公爵の権限は大公という、ちょっと複雑な事情になっちゃったけどね。因みに姉が大公なのは、貴族なら全員知っているわよ」
「そうでしたか。あの〜1つ質問ですが、もしローズに会いたいのでしたら会わせるのは出来ますがどうしますか?」
「出来るの?出来るなら直ぐにでも!」
「あ〜その前に背後関係がまだ解決していない。それが分かってからでも・・・」
「その必要はないぞ?」
急に声が発せられた言葉に周囲は警戒態勢に入る。因みに俺はこの声の主を知っているからリラックスしている。寧ろ楽になるとのんびりしている
「あ〜近衛兵?後ろ」
「「!?」」
「何者だ!ここへの侵入は厳罰だ!直ぐに去れ!」
「いや何者と言われてもな。強いていえば、そこにいるアレクサスの親だというくらいだけど?」
「くらいとは酷いな親父」
「別にそれくらいだろ?」
「まあ否定はしないな。んで?母さんは?」
「『!?』」
「やはりその言葉で驚くのだな。ところでこの通りだから通っても良いか?」
「そっそうだったな。おい!さっさと通せ!血縁者だ。乱暴な行動は許さんぞ」
「「は・・・はっ!」」
「相変わらず何かと巻き込まれるな〜〜。我が息子のアレクサスは」
「うるせえ。それより母さんは?こいつらが待っているぞ?」
「そうだったな。今は俺の後ろにいるぞ」
スッと親父の後ろから母さんが出てくる
「久しぶりね。国王、我が妹のヤヤ」
「姉さん!どこに行ってたのよ!私がどれだけ心配していたか・・・」
「ごめんね。でもこの通りピンピンしてるから平気だよ。それに今はマサルさんの妻をしてるからね。お互い人妻ということだよ」
「そっか姉さんも子供を産んだのね」
「そうだよ。といってもこの子じゃないけどね」
「どういうこと?」
「簡単だよ。さっきアレクサスは夫1人に妻2人って言ったでしょ?確かに妻の1人は私だけど、この子を産んだのは私じゃなくて、もう1人の妻の方よ。だからこの子との直接の血縁はないよ」
「なるほどね〜。けど血の繋がりはあるからやはりサラとアレクサス君の結婚は出来ないわね」
「そっそんな〜・・・こんなにカッコいいし女の子には優しいし、全然怒らないし、気を遣ってくれるし。何でもokなのに・・・」
「あ〜すまんがえっと?名前はサラで良いんだっけ?」
「はっはいそうです!叔父様!あっ・・・」
「ははっ確かにサラから見れば叔父で俺から見れば姪か。別に叔父で良いぞ?」
「はっはい!では叔父様、何でしょうか?」
「もしかしなくても、アレクサスって学校でも優しいか?例えば求婚を求められても正論をぶつけて、けど私の事を考えているとか。そういうのない?」
その言葉は物凄く心当たりのある言葉だった為、ほぼ全員が黙る。勿論親父も察して
「王まで黙るということは図星だな。アレクサスは相変わらずだな」
「しょうがないだろ。どうしたら女の子が傷つかない言い方すれば良いか分からないからさ。どうしてもこんな感じになってしまうんだ。それは分かってるだろ?」
「それもそうだな」
「あの〜私からいくつか質問いいですか?」
「?失礼。どなたですか?」
「これは失礼しました。私はラーズベルド王国の第1王女のライラ・バル・ラーズベルドです。それで質問ですが、貴方は今はどんな仕事をしているのですか?失礼ながらお父様はかなりの用心深い方で、裏の関係とかを疑っているのです。なので教えて頂ければ」
「おい!誰が用心深いだ!」
「事実でしょう?実際に背後関係を洗うから、アレクサス君を簀巻きにして王城に連れて来いと指示を出したのはお父様ではありませんか。これを用心深い以外になんと言うのですか?
「ぐぬぬ・・・」
あっ親父と母さんのいる目の前でそれを言っちゃうんだ・・・知らないぞ?
「王・・・それはどういうことかな?何故息子が簀巻きにされなければならないんだ?理由を聞いても?」
親父の怒りの炎があがる
「そっそれはサラが求婚した相手がアレクサス君で、今回は求婚を断ったから良いのだが、もう一度求婚されたら考えてやると言ったから、それで背後関係を洗って諦めさせようと思ったのだ。だから・・・」
「それとアレクサスが簀巻きにされるのはちがうのでは?王よ。この一方的な行動があるのなら、うちの捜査の手が入るけど良いのか?」
「そっ捜査?どういうことだ?」
「背後関係を洗うんだったな。だったら好都合だ。こっちから捜査のメスを入れて貰う!アレクサスあれを出せ。見せれば分かるだろう」
「分かったよ親父」
「貴様らは何をしようとしてるのだ!」
おお〜王が喧嘩腰になった。火に油を注いだな
「簡単さ。背後関係を洗うのだろ?なら俺たちの正体を知っておこうと思ってな。別に身構えなくても良いぞ。襲う訳ではないからな。信頼出来ないなら近衛兵を全員集めてもいいが?」
「すまんが王だからな。一応念の為衛兵と役所もつれて参る」
「別に良い。好きにしろ」
王は呑気に玉座にふんぞり返ってるが、それも今のうちだな。
1時間後
「ほれ、役所や近衛兵と衛兵も冒険者なども連れてきた。これなら安心だ。さあ正体を教えてもらおう」
わお〜マジで勢揃いだ
「やはり用心深いに違いはないな。驚くなよ。それで慈悲されても俺たちは問答無用でいかせてもらう」
「さっさと言え!」
おぅおぅ。王自身が頭に血昇らせて怒鳴っているよ。
これはさっさとバラした方が良いかもな
「アレクサス」
「おう親父」
言おうとした矢先、親父も察したみたいなので俺も即座に懐から例のものを出す
「改めて皆さんに自分達の自己紹介を。私は『日本国航空自衛隊のヤシロ・マサル2等空佐』です」
パカっ
「マジかよ親父昇進かよ。羨ましいぜ。と俺だな。俺は『海上自衛隊のヤシロ・アレクサス1等海士』です」
俺も手帳を見せる
「お?アレクサスも昇進したやん。おめでとう!」
「ははっあざーす!」
「んで?これ見てどうだお前らは?喧嘩を買っても良いぞ?」
「『すんません!謝るのでそれだけは』」
わお〜全員土下座だ(今回も例外無く全員謝罪した。王城勤務のメイド、近衛兵、衛兵などや、役所、指名を受けた冒険者、ギルドなど)。
「王は?」
「私も謝らせて頂きます。申し訳ありません」
「おい、王が頭下げたぞ?」
「そりゃ王より自衛隊が上だしな」
「確か神や魔神より上だったな」
「だからか」
まあ収拾が付いたみたいだな。
30分後には混乱前の状態に戻ったが、残念ながら
「なあ?さっきの威厳はどうした?権力を振りかざして結局はこれか?王も終わったな」
「わっ悪かったから悪かったから、もうやめてくれ」
「う〜ん。これは暴力で治さないとダメか?」
「やめてくれ、やめて下さい」
そう。俺の親父の怒りの炎は収まらない。それどころか
「貴女たちもサラ除いて全員がアレクサスを簀巻き案に賛成したそうね?君達も同じ目にあいたいのかな?」
「「ひぃ!?」」
「あっそうだ。そう言えば簀巻きされたって聞いたからそうね。近衛兵さん。ちょっとこの子達に簀巻きするの手伝ってもらえませんか?」
「「えっ?さっ流石にそれは命令に反します・・・」」
「何?あんたら近衛兵もこの子達の味方なんだ・・・悲しいな。なら貴方達も簀巻きになってもらおうかな?」
「「そっそれだけは・・・」」
「さっさと手伝え!」
「「はっはいぃぃぃ!」」
と今度は母さんの絶対零度の視線を浴びせながら罵倒していた。その間、俺とサラは
「アレクサス君、いえお従兄さんと呼ばせて頂きます。やっぱり付き合ったらダメですか?やっぱり私はお従兄さんが好きです」
そう。俺が自衛隊所属と話してもこの通りである。寧ろ俺に対する熱い視線が辛い
「悪いな。俺はサラのことが好きではないんだ。それで好きです。付き合ってくださいと言われてもな。確かに可愛いけど別に俺でなくても良いじゃないか?」
「嫌です。私はお従兄さんが良い」
「そんなことを言われてもな・・・」
うん。ずっと熱い視線のままだ。そして少しずつ、口調が変わってきた。それでも
「うん。やはりダメだ。従兄妹同士だからな」
「そっそんな〜・・・」
「別に付き合えば良いじゃん」
「親父。もう王をシバかなくって良いのか?」
「おう。まだ物足りん気もするが、取り敢えずこんなもんだろう」
そう言って視線を王に向けると
「じっ自衛隊ってバケモノじゃ・・・」
「あん?誰がバケモノだって?」
「ひぃ!?」
「王は後で更にシバく。それで続きだがサラ、実はアレクサスな?結構鈍感で娘達からも好意の視線をしても気づかないからな。それに良く娘達の面倒をアレクサスが見てあげてるんだ。だから娘達も良く『大兄のお嫁さんになる』って良く言ってるんだ。本人はそれでも気づかないけどな。だから俺は別に良いと考えてるんだ」
「叔父様・・・ありがとうございます!」
「そうね。私達も良いと思ってるわよ。そうよね?」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜえ・・・ぞっぞうでずね・・・(バタリ)」
「誰が休んで良いと言った!?立てや!末っ子はまだ3歳の女の子だけどあんたらよりかはよっぽど出来るわ!最低でも腕立て伏せは500回は行ける!それに対してあんたらはどうだ?まだ50回だろ?まだ10分の1しか終わってないぞ!あと50回な」
「『・・・』」
「返事は!!?」
「『はっはい!!』」
「と、このバカ達は置いといて、アレクサス、貴方も少しは女の子の気持ちも考えたら?こんなに可愛い子を断るのは酷だと思うわよ?姿も随一でしょう?銀髪で目はクリクリしていて青目、小顔で美人スタイルも文句なし。最後に下着も可愛くて女の子をしているからファッションも文句なし。だから私は良いと思うわよ?まあ結婚は別問題だけどね」
「おっ叔母様・・・!?ごっごめんなさい!」
「確かにおばさんはね・・・普通にローズで良いわよ?」
「はっはい!ローズさん、あと下着を見ないで下さい!」
サラは恥ずかしそうに、スカートを抑えながら涙目で母さんを睨む
「ゴメンゴメン。つまりそういうことだから」
「「・・・」」
どうするんだ?これ
2時間後には王城を去り、寮へ向かう。勿論横にはサラ。周辺には近衛兵がいる。中々異様な光景である。まあ王女だしな。それに従兄弟もいることが分かり、嬉しい気持ちだ。因みに王城はまだ親父と母さんが残ってシゴキをしている。なので王城を出る際には「従弟よ。すまなかったから頼む。この化物達を説得してくれ」や「甥よ、頼む。お父さんを止めて下さい」などが響いていたが全て無視だ。何しろ学園があるしな。それにこの騒動の発端は彼らにある。なので「悪い。学園があるから」といって出てきた。勿論門番や他の近衛兵やメイド、執事にもまだ親たちがシゴいていると伝えてある。全員、俺たちが自衛隊所属に恐怖を覚え、シゴいているという単語に悲鳴をあげるものもいた。すまんがもう少しだけシゴキに付き合ってくれ。
寮には夜に着いてしまったので晩飯を食わずに寝てしまった。何故かサラも一緒にだ。この寮は男女混合の寮なのが幸いした。別だったら指導ものだからな。寝る前にサラにこう言われたのを覚えている
「やっぱりお従兄さんが好き。初めは手を繋いでキス程度で良いのでお願いします」
「初めはという言葉に違和感を覚えるが、それくらいなら」
「ありがとう!大好きよお従兄さん・・・(チュ)」
頬にキスされたが気にせず寝に入った
初日はとことん疲れた。これは次の日も怖いな。特に女子は、猛獣のように来るからな。俺は飛べない鳥か鹿か何かか!
王城内の会話
(マサル)「おい!誰がくたばっていいと言った!さっさと立て!立たないと重量をプラス100キロだ!」
(国王)「100キロ!?そんなのどうやって持ち上げるんだ!?大体そんなのお主でも持ち・・・!?」
(マサル)「上げられないとでも思ったか?残念だったな普通に片手で持ち上がるわ!ほれ。持ち上げないと更に重量を増やすぞ!」
(国王)「ひぃ!」
(メイド)「重量100キロを片手でって・・・」
「力自慢でも持ち上がりませんね・・・」
「それを普通にやってのける自衛隊って・・・」
「確か誰か『あっ自衛隊ってカッコいい』と言って結婚したいと言ってた方がいましたがこれを聴くと・・・」
「流石に冷めるかもですね。けど肌を見せると筋肉マッチョですから、更にそれで容姿も完璧なら?」
「『カッコいい・・・』」
(執事)「メイド達、すみませんがそれはこちらにいる力自慢の方でも無理ですね」
「確かに私は精々70キロが限界ですね。そこからプラス100キロって・・・聞くだけで恐ろしいですね」
「しかも片手でって言ってましたからね」
「一体どんなトレーニングしたら片手で100キロを持ち上げるのでしょうか?」
「それは分かりませんが、想像を絶する訓練に変わりはないかと・・・」
「『(ブルブル)」」
(近衛兵)「100キロか。しかも片手でか。持ち上がるのか?」
「無理でしょう。何しろ片手でですよ?今若手5人が持っているものでも80キロないかくらいです。一度持ち上げてみますか?」
「やってみよう・・・!?両手でも持ち上がらないだと!?これを平然とやってのけるなんて・・・」
「ええ。だから正気の沙汰じゃないと思います」
「僕達5人でもこれですからね。凄いとしか・・・」
「それにこんなの続けたら身体が持ちません」
「『無理と判断しましょう』」
(衛兵)「隊長、もし100キロを持ち上げる新人が来ましたらどうします?」
「衛兵という仕事だからな即戦力になるだろう。けど」
「はい。そんなの熊人でも無理ですよ。レベルとしてはエンシェントが付く魔物をソロで討伐に向かうようなものですね」
「あれか、対抗できるのは宮廷に働くくらいの魔法使いか?魔法使いだって直接では無いが、魔法を掛ければ何とか持ち上がるだろう?」
「残念ながら私達魔法使いでもそれは無理です。結局は先程の説明にあったように、それだけレベルがないと」
「けどそんなやつが現れて勧誘すれば」
「ええ、軍に所属しても平気でしょう。下手をすれば・・」
「自衛隊に対抗できるかもな」
「『何とか集めてみるか?』」
色々な思惑がある、そして4者が揃う
(メイド)「あっこれはこれは」
(執事)「皆さんお揃いで」
(近衛兵)「まあ、あの怒号が響けば」
(衛兵)「そうなるわな」
(メイド)「私達は筋肉にスタイルが良ければも良いと」
(執事)「私達は少し恐怖に怯えるので多少なりとも抑えていただければと思います」
(近衛兵)「自分達は付いていくのは無理と判断したのでこのまま傍観ですね」
(衛兵)「俺たちはもし100キロを持ち上げる奴が現れたら勧誘するだな」
(執事)「それは大胆に行きましたね。そんな人なんて中々現れないと思いますが」
(衛兵)「確かにですね。まさか自衛隊に対抗しようとは考えてないですよね。あの方達はバケモノですよ?」
(近衛兵)「けど最低でも足止めだけは出来るだろう?」
(メイド)「流石に無理と考えます。何しろ1人の自衛隊に100万人がいても対抗は出来ませんからね一騎当千以上ですよ」
(執事、近衛兵)「確かに・・・」
色々な思想が飛び交うがそれを取り崩すように怒号が響く
(マサル)「何してるんだ?持ち上げられないで何が国王だ!?こうなりゃあれだな、魔獣の森に放ってサバイバルさせた方がマシか?よし、次は400キロを1cm持ち上がろ!終わったらサバイバルだ!とことんその性根が腐ったところを治してやる!覚悟しろ!サバイバルから戻るのは2週間後だ!その間は業務全停止!食糧も現地で調達だ!」
(国王)「誰かお助けを〜・・・」
(マサル)「ツベコベ言わずやれ!何?顔にマグマを掛けようか?」
(国王)「わ、分かりました・・・」
それを聞いた途端4者は
「『国王、貴方のことは忘れません』」
と何処かネタにありそうな言葉と
「『うん。無理ですね』」
と諦めじみた言葉が響いていた




